ただいま、と言いながら扉を開けると温かくスパイシーな香りが出迎え
てくれる。さくらさんやお爺ちゃんがいなくなってしまって以来私達が家
に居る時間は徐々に減り、代わりに芳乃家で身を寄せ合うように過ごす時
が加速度的に増えつつある。そして今日も……
「あ、お帰りなさい。お姉ちゃん。」
居間に居たのは由夢ちゃんひとり。猫みたいに背中を丸めておこたに入
ったまま、温々とした笑顔で振り返ってくれる。
「うん、ただいま。弟くんは?」
「お部屋じゃないかな。勉強中だと思うよ。」
「ふうん、そうなんだ。」返事をしながら家中に漂っている匂いの源を
探ってみると、案の定、お台所でコトコトと火に掛けられている大きなお
鍋に行き着く「晩ご飯はカレーなの?」
「うん、そうだよ。私と兄さんの合作なの。」
そう微笑む由夢ちゃんの顔は活き活きと生命力に溢れ、いつもと変わら
ない筈の蛍光灯の明かりさえ反射する頬も何処か輝いて見える。きっとそ
れが好きな人に抱かれて悦びを感じることで分泌されるフェロモンの賜で
あろう事は、未だ純潔を捨てていない私にでも分かる。
(……由夢ちゃん、また弟くんと……)
ニコニコとテレビを見て笑う妹の横顔は全てを満たされた女の子特有の
自信と余裕と幸福感に満ち、日を追う毎に大人びてゆくように思える。か
ったるいかったるいと繰り返して逃げ回っていたお料理や家事とも正面か
ら向かい合い、意地を張る必要がなくなった弟くんのアドバイスを素直に
聞き入れることによってメキメキと上達していっている。由夢ちゃんの年
齢でセックスの習慣を持ってしまうのは正直良い事だとは思えないけど、
こうして幸せを謳歌している二人が私の目に付かないように(イコールと
まではいかなくても、ある程度は節度と自制を弁えていると言うことなの
だろう)行為を重ねている以上、この二人が乗り越えてきた障害の大きさ
と考え合わせて小姑のように口五月蠅く接してしまうのは些か厳しすぎる
ような気がして、ついつい見て見ぬふりをしてしまう事も多い。
「あれ? どうしたのお姉ちゃん?」
「え……あ、ああ……なんでもないよ。とりあえず、先に着替えて来ち
ゃおうかな。お鍋は大丈夫?」
「えへへっ、大丈夫だいじょーぶ! 私が見てるから、お姉ちゃんもゆ
っくりしてて良いよ。」
きっとアラームがセットしてあるのだろう携帯電話を得意そうに掲げて
みせる由夢ちゃん。その優しい眼差しに、何故か私はチクリとした痛みを
胸に感じてしまう。
「……疎外感嫉妬……なのかな?」
一人になり、その言葉を口にすると胸の痛みが一層強くなる。予知夢と
いう力で私以上に明確なビジョンを目にしていたにも関わらず最後まで望
みを捨てず、こうして結ばれることが出来た由夢ちゃんと、最初から達観
した振りで何もかもを諦めていた私。いや、それどころか由夢ちゃんと弟
くんを形振り構わず引き裂こうとしていた申し訳なさが捨てきれないのか
も知れない。そんな私に今の二人を諫めたり、増してや保護者面する権利
などないという後ろめたさが、無意識のうちに壁を作っているのか。
「……ううん。」いや、それすら私の本心とは違う。きっと、この気持
ちは「………嫉妬、なんだ……」
私が欲しかった物を手にした由夢ちゃん。私が逃げ出し手放してしまっ
た物を最後まで守りきった由夢ちゃん。そんな私の前で幸せな顔をし、私
の知らないところで弟くんに抱かれ恋人として愛されてる由夢ちゃん。そ
して、そんな私に辛さの知らず無神経に家族ごっこを続けようとする由夢
ちゃん。姉である私を見下し、哀れむように余裕の優しさを見せつけて私
の居場所を奪って私の目の前で弟くんを独占して弟くんとのセックスの余
韻を私に嗅がせて最後には弟くんとの愛の結晶を……
「い………いやぁ……!」
余りの嫌悪感で喉が詰まり、涙が溢れてくる。由夢ちゃんではない。弟
くんでもない。一番嫌なのは、そう……!
「……私……なんだね。私って………なんて嫌な女……」
僅かに欠けた何処かから、私の心は醜く蝕まれ始めていた。
「あむっ。」
可愛らしい掛け声と共に、化粧っ気もない小さな唇がパンパンに膨れ
上がった男の子の一番太い部分を苦もなく飲み込んだ。
「ぬあっ! ゆ、由夢!?」
「ん? らり?」
「お前、日に日に巧く……っ!」
「えへへ……」休日の朝。相変わらず寝坊癖が抜けきれない弟くんのベ
ッドの上に乗り、掛け布団を剥ぎ取りパジャマのズボンとパンツを脱がせ
た由夢ちゃんがお口で弟くんのを舐め回しながら楽しそうに笑う「……そ
りゃ、いつだって兄さんの様子を観察しながらしてたんだもん。兄さんの
弱いところは、もう大体は把握済みだよ。」
朝ご飯が出来上がっても降りてこない二人の様子を見に来た私は、僅か
に開いたドアの隙間から漏れてくる聞き慣れない水音と会話の内容に引き
寄せられ、かいま見える光景に愕然となってしまった。
「か、観察ぅ?」
「そうだよ。兄さんの感じてる顔って凄くカワイイし、この子がピクピ
ク反応するのも面白いから直ぐに覚えちゃった。あと、兄さんの好きなカ
ッコとかもね?」
そう無邪気に笑う由夢ちゃんは学校の制服姿。といってもそれは下半身
だけで、上着もシャツも脱いだ由夢ちゃんの上半身を覆っているのは私も
見たことがないブラ一枚。もしかしたら弟くんに見てもらいたくて買った
ばかりなのかも知れない下着は大人しめのレースが可愛らしい淡いピンク
色で、普段は服の下に隠れていて日焼けとは無縁な白い素肌にとても良く
似合っている。
「兄さん、こうやってブラをしてる時に出来る胸の谷間とかが大好きで
しょ? ベッドの下に隠してた本とかも、ブラの中を上から覗き込むみた
いなアングルの写真が多かったしね。」
「だ、だからアレはたまたま……とゆーかお前、アレは音姉に言われて
全部燃やしたんじゃなかったのか? まさか黙……ぅあっ!」
「もぉ! 兄しゃんは大人しくわらしのお口で気持ち良くなっれてれば
ひーのっ!!」
(あ……!)
あの引っ込み思案の由夢ちゃんが弟くんの部屋に押しかけて、寝ている
弟くんを脱がせて弟くんのをお菓子か何かのように口に含んで舐めている
と言うだけでも衝撃的だったというのに、今度は由夢ちゃんの小さなお口
が弟くんのを根本まで咥え込んで、しかもそのまま片言ながらも喋ってい
るのだ。正直、私は目の前の光景が信じられなかった。
「ゆ、ゆめ……!!」
「んふふっ、兄しゃん可愛いっ。 んぐ……んくっ……ちゅ……じゅる
るっ……」
ウットリと潤んだ瞳で弟くんの表情を見詰める由夢ちゃんの頬肉と喉が
複雑に波打ち上下している。まさかと思うけど、頬張ったまま口の中で舐
めたり喉で吸ったりしてるのだろうか。経験がない私には、もはや由夢ち
ゃんが目の前で行っている行為の中身を正確に推測することすら満足に出
来そうにない。確かなのは、お口だけで弟くんを身悶えてしまうほどに
気持ち良くさせる方法………いや、技術を由夢ちゃんが持っているらしい
事実だけ。
(由夢ちゃん、あんなに美味しそうに……)
快感に震える弟くんの様子に満足したのか、目を閉じた由夢ちゃんは顔
を前後に揺らすような感じで弟くんのをしゃぶり始めた。まるでバナナを
頬張ったり細長いアイスキャンデーを溶かし吸い上げるような動きで舐め
続ける由夢ちゃんの横顔は、女の子としての幸福で満たされ至高の一時を
丹念に大切に味わっている大人びた穏やかさ。
(……美味しいの……かな……)
ああいう行為があること位は知っているけど、由夢ちゃんが吸ったり舐
めたりしているのは弟くんのオチンチン、つまりオシッコを出す排泄器官
であり、出口である。一概に不潔な場所だと言い切れないにしても、オシ
ッコの残滓を舐め取っているのは間違いない筈なのに。
「どう兄さん? やっぱり、こうやってちゅぱちゅぱするのが一番気持
ち良い?」
「あ、ああ。でも由夢の方は……」
「や、もう十二分に慣れちゃったから。」
慣れていると良いながらも、やはり疲れる物なのか。弟くんのオチンチ
ンから一旦顔かを離した由夢ちゃんは、今度は舌を伸ばして弟くんの先端
部(つまりオシッコや精液の出口そのものだ)を『ほじくる』ように舐め
ながらご褒美を待つ子犬みたいな瞳で弟くんを見上げている。由夢ちゃん
自身の唾でベトベトに濡れた竿の部分を大事そうに両手で包み優しく扱き
続けるながら、褒めてくださいと目で訴えている。
(………んくんっ!)
その様子をドアの隙間から息を殺して見詰めている私の口の中にも、い
つのまにか溢れるほどの唾液が溜まっていた。
(わ、私……)そして、それが意味することは、一つしかない(……私
も欲しいと思ってるんだ。弟くんのを……)
そう、私は弟くんを欲しがっているのだ。出来ることなら、それが許さ
れるのなら実の妹である由夢ちゃんを押し退けてでも『あの』場所を自分
のものにして、弟くんが望む姿で弟くんのオチンチンを独り占めして弟く
んのオシッコの残り滓を綺麗に舐め取って一滴も残さずに全部飲み込んで
消化して体の一部にしてしまいたいとさえ思っている。倫理観や理性など
を超越した女の子の本能が、それを渇望している。
「慣れてるったって、全然疲れないわけはないだろ。ありがとな?」
(あ……あぁ……!!)
「え…えへへっ……」顔を輝かせ喜びを表現する由夢ちゃん「……で
も、そろそろ兄さんも出したいでしょ? ちゅぱちゅぱ続き、しても良
い?」
「あ、ああ。でも……」
「大丈夫だよ。全部飲んであげるから、いっぱい出してね?」
ありがとうの一言を貰っただけで由夢ちゃんの目が更に細く嬉しそうな
形になる。そうなのだ。由夢ちゃんは弟くんにご奉仕することよりも弟く
んに抱かれることよりも、弟くんに褒めて貰うことが好きだから『こんな
こと』をしているのだ。きっと由夢ちゃんにとってはお料理もデートもエ
ッチも、全て等しく褒めて貰うための行為に他ならないのだろう。
(……私も……)
これも姉妹だからだろうか。あんな風に喜んで貰えて褒めてくれるのな
ら、体を捧げるくらいは何でもなく事に思えてしまう。それこそ由夢ちゃ
んが舐めている物に愛おしささえ感じてしまうほどに。
(美味しそう……)
ちゅぱちゅぱと卑猥な音が一層大きくなる。根本まで飲み込む技とお口
の中で舌を使って舐め回す技とを組み合わせ、そこに頭を揺らして吸い上
げ搾り取る技術を加えた由夢ちゃんが深くて速いストロークで一気に弟く
んを高みへと誘ってゆく。左手を弟くんの太股に添えて抱き寄せ、残った
右手の親指と人差し指で輪っかを作りお口の中から出てくる部分も上下に
擦って絞る。由夢ちゃん自身も感じているのか、舐めながらお尻を揺らし
内太股をモジモジと擦り合わせている様子は、もう私が知ってる妹の由夢
ちゃんからは大きくかけ離れた別の女の子のよう。
「くぅっ………ゆ、由夢……!」
「ん!」
そんな由夢ちゃんの全身全霊を込めた奉仕に流石の弟くんも切羽詰まっ
てきたようだ。ユラユラ揺れる髪に手を乗せて撫で上げる合図に頷いた由
夢ちゃんが今迄以上の力を唇に加え、ほっぺを窄ませて弟くんの全てを受
け止める体制に入る。そして……
「く……うっ……!」
思わず腰を突き上げ、由夢ちゃんの小さな頭を押両手でさえ付けながら
体の奥から沸き上がる全てをお口に中に放つ弟くん。
「んんっ! ん………んぅぅぅぅ……」
お酒か何かに酔っぱらってしまった様に幸せそうな顔と瞳で喉をコクコ
クと鳴らし慣れた動きで弟くんの全てを次々とお腹の中に収めてゆく由夢
ちゃん。喉の奥まで押し込まれた筈なのに、苦しそうにするどころか本当
に幸せそうな顔で……
(っ!!)
……それ以上は見ていられなかった見たくなかった。この感情が悔しさ
なのか悲しさなのか妬ましさなのか。あるいはそれらが全て混ざり合った
物なのか。それすら判らないままにお手洗いに逃げ込んだ私は、後始末を
終えた二人が手を繋いで降りてくるまで水洗レバーを押し下げたまま一人
で涙を流し続けていた。