「音姉っ!」
「え? うぅ……んっ!?」
強い力で抱き寄せられた、と思った次の瞬間に唇を奪われ、弟くんの舌が僅
かな隙間から強引に侵入してくる。
「んーーんっ、んーーーーーんっ!!」
弟くんの舌や唇を噛んだりなんて出来るはずがない。だからせめて押し返そ
うと動かした私の舌に、弟くんの舌が巧みに絡みついて無理矢理に引っ張り出
して絡みついてくる。そんな乱暴な弟くんの唾液は……とても甘い。
「音姉……」
「ら、らめっ………あぁっ!?」
私の口を犯すだけでは物足りないのか、背中に回されていた手がお尻の方に
降りてきて、とても優しい動きで撫で回す。これ以上先に進んではいけない。
許されない。私は由夢ちゃんの姉として、弟くんのお姉ちゃんとして精一杯の
勇気で弟くんの逞しい胸板を思いっきり押し返して顔を離す。
「お、弟くんっ! こんなことは……」
「好きだ、好きなんだ。俺は音姉が好きなんだよっ!!」
「あ……」目の前の真剣な眼差しは私の心を揺るがす、が「……きゅ、急に
そんな事言い出して、お姉ちゃんを困らせないで。弟くんには、由夢ちゃんが
いるじゃない。それなのに……」
「由夢は関係ないよ! 俺は音姉が一番好きなんだ!!」
「そそ、それでも駄目なのもは駄目だよ。私はお姉ちゃんなんだから、由夢
ちゃんが悲しむような事は……きゃっ!?」
「由夢は関係ないって言ってるだろッ!!」
いつの間にか私よりも背が伸びていた弟くんが本気を出せば、もう私は全然
敵わない。二人一緒に、もつれ合うような格好でベッドに倒れ込んでしまう。
「俺がこれだけ言っても分かってくれないんだったら、もう音姉の言うこと
なんか聞かない。音姉が嫌がっても、俺は音姉を愛するだけだ!」
「でも、こんな事は……」
「俺は音姉だけが好きなんだっ!!」
「お、弟く………んんっ!」
私の服を無理矢理捲り上げ、露わになった胸に子供のように吸い付く弟くん
は、まるで駄々っ子。だが夢中になって私の乳首をチュウチュウと吸い続けて
いる顔を見ているだけで私は満たされ、、強く優しく吸引され舐められるとジ
ワジワとした気持ち良ささえ感じてしまう。
「俺、小さい頃から音姉が好きだったんだ。こうやって音姉の胸に甘えたい
って、ずっと思ってた……」
「でも………」
「それとも音姉は、俺に触られるのが嫌なの?」
「そ、それは……」
「俺、音姉が他の男に取られるなんて嫌だよ。これからも、ずっと俺だけの
音姉でいて欲しいんだ。こんな風に、音姉の体に触る奴が他にいるなんて絶対
に我慢できない!!」
「………弟くん……」
「いいよね? 音姉を、俺だけの物にしても良いよね?」
「……だけど、由夢ちゃんは……」
「由夢なんか、どうでも良いって言ってるだろ! 音姉は俺のことをどう思
っているかを、音姉の口から聞かせて欲しいんだ!!」
「そ、それは………んあっ!」
弟くんの両手が私の胸を下から持ち上げ、優しい力加減で両方同時に揉み解
すと、それだけで心が蕩けそうな気持ちよさが全身に広がってゆく。ズキズキ
疼く乳首を弟くんに舐められると、もう片方の乳首までもが固く凝ってお強請
りするように尖ってしまう。
「音姉の胸、すごく美味しいよ。」口の周りをベタベタにしながら、弟くん
が嬉しそうに微笑む「他の奴なんかには渡さないからね。音姉のを吸って良い
のは、俺だけなんだ。」
「んんっ! あ………あんっ……」
大好きな弟くんの手と口から絶え間なく与えられる快感。どんなに我慢して
も、抑えきれない甘い声が息継ぎの合間に漏れだしてしまう。
「もっともっと気持ち良くなって良いからね?」
「だ、だめ……ふぁんっ! だめ……なの……にっ!」
「音姉?」こつん、と固くて熱いモノが私の一番大切なところをトントンと
ノックする「良いよね?」
「あ……!」弟くんの言葉が何を意味するかは、まだ経験のない私にだって
充分すぎるくらいに分かる「だ、駄目だよ! それだけは許してっ!」
「駄目って……どうして?」
「どうしてって、どうしてもだよ! ねぇ弟くん、お姉ちゃん弟くんのだっ
たらお口でしてあげても良いよ? 弟くんがそうして欲しいんだったら、全部
お口の中で受け止めて、飲んであげても良いから。だから、それだけは我慢し
て欲しいの、ねっ?」
「……それは、俺が嫌いだって事? 音姉は、俺が嫌いだから一つになりた
くないんだ?」
「そ……そんなんじゃないよ! 弟くんのことは大好きだけど、私は弟くん
と由夢ちゃんのお姉ちゃんだから……」
「好きなんだったら、俺と結ばれたって良いだろ! 音姉が俺のことを嫌い
だって言わない限り、俺は止めないからな!!」
「あ……あ……!!」
もう待てない、とばかりに弟くんが私の入り口を押し広げながら侵入を開始
する。凄く熱くて逞しくて、ドクドクと脈打つ弟くんの愛情が、私の体内を埋
め尽くして押し入ってくるのだ。
「駄目……なのに……」もう、私にはどうしようもない「ごめん。ごめんね、
由夢ちゃん……」
「音姉っ!」
「あ……あ……あぁっ!!」
最後の一突きで、弟くんが一番奥に届いた。私は、図らずも弟くんに全てを
捧げてしまったのだ。沢山の想いが詰まった涙が溢れ出す目頭が熱い。
「音姉、俺を受け入れてくれたんだよね? 音姉の中、凄く温かくて気持ち
いいよ。」
諦めて力を抜いた私の中を弟くんが幸せそうに動いている。私の体内を全て
味わい尽くすかのように、角度や深さを変えながら何度も出入りする。
「あ……んん……あぁんっ……弟……くん……」
「音姉、愛してるからね?」
その言葉。私が聞きたくて聞きたくて、でも先に由夢ちゃんに与えられた言
葉と共に、体内で膨れあがった弟くんが大きく震えて……
「あ、だ……駄目っ! それだけは本当に駄目! 赤ちゃんが……」
「構うもんか! これで音姉は俺だけのもになるんだ!!」
「そんな、弟……くん……」
そのまま一番奥で、弟くんの愛は弾けた。
「っ!?」
ぴぴぴぴ……と慣れ親しんだアラーム音で目を開けると、私はベッドの中で
独りぼっちでだった。隣に弟くんは居ないし、残り香も温もりもない。夜明け
前の部屋の中は、泣きたくなるほどに冷たくて乾いていた。
「……夢……」
そう呟くことで少しだけ意識がハッキリして、モヤモヤしていた心も軽くな
ったような気がする。どこか重い頭を持ち上げるように起きあがってみても、
パジャマも下着も昨夜、ベッドに入った時のままで全く乱れていない。
「私……」夢だったのだと気付いて安堵する私と、落胆している私「……ど
うしちゃったんだろう……?」
あの夢が私の願望を投影していたとは思いたくない。よりにもよって、由夢
ちゃんを選んだはずの弟くんが私の純潔を無理矢理奪うなんて、自分でも呆れ
てしまうほどに無茶苦茶な発想だ。きっと由夢ちゃんが弟くんのを美味しそう
に舐めていたのを目撃して、その余りに衝撃的な光景に当てられてしまった私
の無意識レベルの何処かが最も身近な異性として選んだ相手とのセックスを勝
手に想像してしまったに違いない。つまりは、これと言った意味もなく他愛の
ない夢の一つに過ぎないのだ。
「ふぅ………」と大きく深呼吸し、頬を叩いて自分に気合いを入れる「こん
なんじゃ駄目じゃない、私!」
所詮は夢。いつまでも気にしていたって仕方がない。綺麗さっぱり忘れて、
気持ちを入れ替え何時も通りにしていれば自然と気分も良くなるだろう。そう
結論付けた私は気持ちを切り替えるために下着まで全部新しいのに取り替え急
ぎ足でお台所へと向かう。
「あ………」
だが、そこには予想外の先客がいた。
「あ、お姉ちゃん。おはよう!」
「由夢……ちゃん?」
そこには、コトコトと美味しそうに煮えているお鍋と可愛いエプロン姿の由
夢ちゃんが立っていた。女の子として満たされ、本当に楽しそうにお料理をす
る由夢ちゃん。弟くんの彼女となった私の妹が、もうすっかりお台所に馴染ん
でしまった光景に、私の胸はズキッと大きく波打つ。
「そ……」そこは私だけの場所なのに、という言葉はギリギリの所で飲み込
む事が出来た「……それ、おみそ汁……なのかな?」
「うん、そうだよ。初挑戦なんだ。」
えへへへ、と照れ臭そうに幸せそうに笑う由夢ちゃん。お台所いっぱいに広
がっている暖かな空気からは、もう以前のような匂いはしなくって、それどこ
ろかお出しとお味噌が程良く混ざり合った美味しそうな香りが私の鼻孔をくす
ぐる。
まるで、私に出て行けと言わんがばかりに。
「そ、そうなんだ。由夢ちゃんも、もう一人前の女の子だね……」
そんな筈はないと分かっていても、由夢ちゃんの得意そうな笑顔が私を見下
して小馬鹿にしているような気がしてならない。そして、家事という名目で未
練たらしく付きまとったりしないで欲しいと。
(な、なに? 私ったら、一体何を考えてるの?)
いままでは堅固で永遠に揺らぐことがないと思い込んでいた足下の大地が、
急激に風化し崩れ出すような感覚。こうして一つずつ、確実に居場所を奪われ
ていくばかりの私は、最後に何処に立てばよいのだろう。由夢ちゃんと弟くん
が恋愛という新たな関係で結ばれたことにより、弾き出されてしまった私は何
処に行けば良いのか、まるで分からない。
「…………っ!?」
「お、お姉ちゃんっ!?」
目の前が真っ暗になり、崩れ落ちそうになる体。慌てて駆け寄ってくる由夢
ちゃんの声が聞こえてきて……
「触らないでッ!!」
「え………」伸ばしかてた腕もそのままに、私が発した拒絶の言葉で真っ青
になる由夢ちゃん「……お姉……ちゃん?」
「あ……ち、違う、違うの! そういう意味じゃなくって……」
「でも、お姉ちゃん……」
「……ごめんなさい。お姉ちゃん、ちょっと寝ぼけただけだから……」自分
で放った言葉の棘で、私の胸の痛みは増し傷ついた所から全ての力が流れ出し
てしまう。途切れる寸前の意識をかき集め、思いつく言葉を並べながら蜃気楼
の様に揺れる世界の中を空気を掻いて進む「……危ないからお鍋、ちゃんと見
ててね。私、ちょっと顔を洗ってくる……か……ら……」
「………お姉ちゃん……」
更なる追い打ちをかけるようにお腹の中から込み上げてくる熱い何かを堪え
ながら私は由夢ちゃんの前から逃げ出した。