ボクは過ちを犯してしまった。と、言っても今ここに存在するボクの話じゃない。  
 この世界のすぐ隣にはいくつもの平行した世界がある。  
 ボクが今、存在するこの世界では選ばれなかった可能性の世界が。  
 一度分かたれれば本来、交わることのない世界同士。  
 あろうことかそれを繋げてしまった愚か者がいた。  
 ボクだ。無数にある平行世界の一つ。そこに存在しているボク。  
 本当に馬鹿なことをしたものだ。例え願いがかなったとしてもそんなものは仮初でしかないのに。  
『ボクにも家族が欲しいです』  
 まったくもって愚かな願い。そんなものは魔法に縋らなくたって手に入るのに。  
 本当に愚かでどうしようもないボクだ。止めておけ。そう忠告したいのは山々だけど伝える術がない。  
 ああ、どうやらあのボクの願いは叶えられたようだ。よかったねなんて言わないよ。  
 君は後で死ぬほど後悔するんだ。あんなことを願うんじゃなかったってね。  
 ほら、言わんこっちゃない。繋がってしまった。愚かなボクとこのボロボロで惨めなボクの世界とが。  
 悪夢を知らずに半世紀近くも幸せな時間を過ごした初音島と惨劇の果てに壊されつくしたこの初音島が。  
 馬鹿だね。君のせいだよ。君の身勝手な願いのせいでみんなが苦しむんだ。  
 奴らがやって来るんだよ。君たちの世界にも。ボクはもう知らない。ここで見物するとしよう。  
 もう一つの初音島が無惨に穢されていく姿を。  
 
 ボクは悪夢にうなされていた。思わず目を背けたくなるような悪夢に。  
 しかし夢の中で、ボクはその瞳を閉じることを許されなかった。  
「おいおい。とうとう反応なくなっちまったなあ。こいつ」  
「昨日までは『兄さん!兄さん!』っていい声で泣いてくれたのになあ。くふふ」  
 下卑た笑いを浮かべる男達。彼らは一人の少女を取り囲んでいた。  
 彼らの仲間によってレイプされ続けている女の子。音夢ちゃんを。  
「ぁ……ぅ…っ…………」  
 音夢ちゃんの心は既に死んでいた。どんよりと死んだ魚のように濁った瞳。  
 そんな音夢ちゃんに何人もの男の人が覆いかぶさっていた。  
 何本もののおちんちんが音夢ちゃんの穴という穴を汚しつくしていた。  
 音夢ちゃんはお尻からも、あそこからも、口からもドロドロとした精液を垂れ流して、ただ肉でできた人形だった。  
 もう言葉も無い。泣き叫ぶ気力もないんだね。虚ろな瞳と精液まみれの体でただブツブツ何かを呟くだけだった。  
「これじゃあちっとつまんねぇよなあ。どうするよ」  
「へへっ、こうすりゃちっとは面白くなるんじゃねえ」  
 そう言って男達はなんの反応も示さない音夢ちゃんを犯すのに飽きたのか男達は何か器具を取り出す。  
 電極のようなもの。それを音夢ちゃんの赤くただれたクリトリスに貼り付ける。そして  
「〜〜〜〜〜〜〜!!!!」  
 瞬間、音夢ちゃんの全身がビクンと震える。高圧電流の直撃。そんなものを局部に受けて音夢ちゃんは悶え苦しむ。  
「ひひ、気持ちよかったかぁ?コイツはどうよ?」  
 続いて行なわれた責め。ライターの火で十分に熱された針の先。それが貫く。音夢ちゃんの乳首を。  
「あがっ!ぎゃひぃぃぃぃいいい!!」  
 ここまでされて音夢ちゃんはようやくに悲鳴をあげる。それを下卑た顔で嘲笑うケダモノ達。  
 吐き気がした。殺意さえ覚えた。やめて。こんなもの見たくないんだ。  
 
『ダメだよ。目を離したら。これは君の犯した過ちの結果なんだ』  
 すると、ボクの内側で声がはじける。非常に聞き覚えのある声。  
『本当に馬鹿なことをしたね。こんな哀しみを知らずに一生を過ごすこともできたのに』  
 誰?誰なんだ!?問いかける。でもその声の主の正体はボクには分かっていた。間違いない。  
『これはボクの世界の現実。ボクの世界で過去に起こったこと。このボクの世界で』  
「っ!?」  
 息を呑んだ。その声の主はボクの目の前に姿を現した。小柄な女の子らしい。  
 らしいといったのはパッと見ではその容姿をうかがい知れなかったからだ。  
 全身、包帯でグルグル巻き。まるでミイラみたい。声だけでそれが女の子だと分かる。  
『君が繋げてしまったんだ。君の身勝手な願いのせいで君の世界とボクの世界を』  
「待って!君は!」  
 ふいに包帯姿の少女の姿はかすれていく。ボクは必死の思いで追いすがる。  
『もう遅いよ。運命は変えられない。同じことが起こるよ。もうすぐ君の世界にもね』  
「待って、待ってよ」  
 どんなに追っても無駄だった。それと同時に全身の意識が覚醒していくような感覚。  
 夢の終わりだ。ボクはようやく悪夢から抜け出せるらしい。  
『抜け出せる?馬鹿だね。これからだよ。本当の悪夢はこれから』  
 そんなボクの心を見透かしたて彼女はそういった。頭に巻いた包帯を解きながら。  
『それじゃあバイバイ。この世で最も愚かで罪深いボク』  
 包帯を解いた下にあった顔。それは二目と見れないほどに刃物で切り刻まれた、  
 そしてまぎれもなくボク自身の顔だった。  
 
「嫌ぁぁぁああああああああ!!!」  
 悲鳴とともにボクは飛び起きる。汗がびっしょりだった。パジャマが濡れて重くなるほどに。  
「どうしましたか!さくらさん!」  
 悲鳴を聞きつけて義之君は駆け込んでくる。  
「……あ……あぁ……」  
「さくらさん!さくらさん!」  
 愕然とするボクの肩を義之君が掴んでなだめる。ようやくにボクの意識も落ち着く。  
「あ、ごめんね。ちょっと悪い夢見ちゃって、それで叫んじゃっただけ……ごめんね。起こしちゃったりして」  
「そうだったんですか。よかったですよ。さくらさんに何かあったか心配で」  
 そう義之君は胸を撫で下ろす。ボクの様子が落ち着いたのを確認して自分の部屋に帰っていく。  
「何かあったらすぐによんでくださいよ。さくらさん。俺、いつだって駆けつけますから」  
「うん。ありがとう義之君。それじゃあおやすみなさい」  
 そういって見送るボク。だけどボクの心にはさっきの夢で会ったもう一人のボクの言葉が響いていた。  
 
『君が繋げてしまったんだ。君の身勝手な願いのせいで君の世界とボクの世界を』  
 
 
「そ……んな……はずない……そんなの……ボク…は……」  
 布団の中で震えながらボクは頭を抱える。だけど声はリピートする。  
 
『もう遅いよ。運命は変えられない。同じことが起こるよ。もうすぐ君の世界にもね』  
 
「い……やだ……そんなの……絶対に……」  
 惨めにレイプされる音夢ちゃんの姿。それと同じことが現実に起こることをあの夢は暗示していた。  
 それもボクのあの過ちのせいで。  
 
『抜け出せる?馬鹿だね。これからだよ。本当の悪夢はこれから』  
『それじゃあバイバイ。この世で最も愚かで罪深いボク』  
 
 朝になるまで、布団を抱えて一人震えるボクの頭にもう一人のボクの去り際の言葉がエコーのように響き続けた。  
 
 
 
「……っ…あ…っく………」  
 軽い呻き声とともに虚像は実体を伴ってボクの前に現れる。誰が現れるかは日によってまちまちだけど。  
 見せられる光景は決まって同じ。女の子が犯されている姿だ。ボクの見知った娘たちの。  
 そして今も、レイプされている娘の姿がボクの目にとまる。ボクと大差ない小柄な身体。  
 アッシュブロンドのクセっ毛に緑色のリボン。見覚えのある姿だった。そうか。今日は君なんだね。  
「くふふアイシアたん……大分馴染んできたね……僕のオチンチン、アイシアたんの膣内でとけちゃいそうだよ」  
「っ…っは……はひっ…んふぅぅ……っふ……くぅ……」  
 気色の悪い台詞を吐きながら男はその娘を犯していた。アイシア、それが彼女の名前だ。  
 彼女は元々、初音島の住人じゃない。魔法使いのボクのお祖母ちゃんを訪ねてやってきたんだ。  
 アイシアはお祖母ちゃんがもういないことを知ると替わりにボクに魔法を教えてもらうために初音島に居座った。  
 そして巻き込まれてしまったんだ。あの惨劇に。  
「あんっ……はぅぅ……っく……ふぁぁっ!!」  
 犯されながらアイシアは喘いでいる。おそらく調教が馴染み始めたぐらいの頃合なのだろう。  
 この間見たときには、アイシアはもう身も心も堕ち果てた雌奴隷と化していた。  
 その前は泣き叫んで許しを乞うアイシアに無惨にも膣内射精が施される姿だった。  
 今はさしづめその中間。彼女が淫らな肉奴隷へと変化していく過程なんだ。  
「ふぁぁっ…はっく…くふぅ…ひぃはぁっ!!」  
 アイシアの喘ぎ声からはどこか艶っぽい響きも混じっている。繰り返された陵辱。  
 それはいつしかアイシアの中で苦痛を快楽へと変質させたのだろう。  
 それも当たり前か。そうじゃなきゃ辛すぎる。あんな凶悪な肉棒に貫かれ続けるなんて。  
 もしずっと苦痛しか感じられなかったとしたら痛みで発狂してしまうだろう。  
 無理やり踏み荒らされた秘肉もいつしか馴染んでいく。肉棒をすんなりと受け入れられる形に。  
「ふぁっ……はぅぁ…ぅ……あはぁ……」  
 アイシアは喘ぎを抑えることもしない。もう気づいてるはずだ。抗うことなどせず、  
 素直に快楽に身をゆだねたほうが楽だってことに。みんなそうなんだ。みんなそこに行き着く。  
 後はそれが早いか遅いかの違い。本当にそれだけ。早くに堕ちた娘は救われる。  
 いつまでも堕ちきれない娘は苦しみ続ける。そうだね、アイシア。君も早く堕ちちゃったほうがいいよ。  
 どの道、待ち受けるのは延々と続く肉奴隷としての人生だけなのだから。  
 ボクは知っている。彼女の、アイシアの末路を。もう何べんも腐るほど見せられたから。  
 
「くふぅぅ。アイシアたんの膣すごいよぉぉ!!ボクちんのが搾り取られちゃうよぉぉ!!まるで魔法みたいだぁぁ!!」  
「…っは…ぁ…あぅっ…っあ……ま……ほー?」  
 どぴゅどぴゅアイシアの子宮に精子を注ぎ込んでいる男の戯言にアイシアはかすかに反応する。虚ろな瞳で。  
「そうだよ。アイシアたんは魔法使いさ。ボクのおちんちんの中身。アイシアたんの肉ツボに全部吸い取られちゃう」  
「まほー………これがまほー……あはっ………ふふふ……」  
 もれ出す乾いた笑い声。アイシアの心が壊れた証。おめでとうアイシア。祝福するよ。君は念願の魔法使いになれたんだ。  
 男の精液を吐き出されるために存在する魔法の肉便器にね。  
「あはっ♪まほー……ふふっ……まほー……あひ……ひふ……」  
 実に滑稽な姿だね。もう哀れを通り越して笑いがこみ上げてくるよ。ねえ、お馬鹿さんのアイシア。  
 魔法で人を幸せにできるなんて本気で思ってるおめでたいお馬鹿さん。  
 そうだね。君は今、君を犯してる男を幸せな気持ちにしてあげてるんだね。その小さな身体を張って。  
 なんて素敵な魔法なんだろうね。本当にまったくもって素敵だ。本当に素敵な精液便所。  
 せいぜい死ぬまでそうやって便器にされてるがいいさ。同情なんてしない。そんな感情、この半世紀で磨耗しちゃったよ。  
 もうボクは何も感じないんだ。仲の良かった女の子達が惨めに犯される姿を見ても。そりゃ感覚も麻痺するよ。こんなの毎日見させられたら。  
 そしてそんな風になってしまったボク自信を嘲笑っている。無気力、無感動。ただそこに存在しているだけのボクを。  
 ただ、一つだけ覚える感情。それは憎しみ。その対象はボクにとって楽園だった初音島を奪った連中に対してじゃない。  
「ああ、アイシアたん。僕もういくよおぉっ!」  
「あっふ……ごひゅひんはまぁぁ!!はふぅぅぅ!!」  
 また便器に白い小便が垂れ流されてるね。ねえ、肉便器のアイシア。それは君とよく似たお馬鹿さんにたいしてだよ。  
 魔法なんかで人を本当に幸せにできるなんて信じてるどうしようもない馬鹿で、あまつさえ手前勝手な願いを安易に叶えたあの馬鹿さ。  
『芳乃さくら』  
 それがその馬鹿の名前さ。ちょっと自分から手を伸ばせば欲しいものはすぐそこにあったのにそれができなかった馬鹿な女。  
 手遅れになってからその遅れを魔法なんかで取り戻そうとしたあの馬鹿。許せないよね。ボクの欲しかったもの全部持ってたくせに。  
 それを自分で棒に振って、幸せに包まれた世界を自分勝手な都合で破滅においやって。  
 いい気味だよ。苦しめばいいんだ。君も。ボクと同じ苦しみを。ボクと同じ生き地獄は。さあ苦しめ。  
 
 苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。  
 苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。  
 苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。  
 苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。  
 苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。  
 苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。  
 苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。  
 苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。苦しめ。  
 
 
 永劫に続くこの時の牢獄の中でボクの呪詛だけが空しく響き続ける。  
 
 
 
「嫌ぁぁぁああ!!誰かぁぁああ!!助けてぇぇええ!!朝倉ぁぁああ!!」  
 今日も見る夢は悪夢だった。ボクの昔仲の良かった友達。それが毎晩夢の中で交代で犯されている。  
 今日の犠牲者は眞子ちゃんだ。突如、押しかけてきた兵隊に取り押さえられ制服をボロボロに引き裂かれて。  
「嫌……やめ……ぎっ……ひぎぃぃいいい!!」  
 そしてグロテスクな肉塊が眞子ちゃんの大事なところにねじ込まれていく。  
 身を引き裂かれる苦痛。それに悶えながら眞子ちゃんは悲鳴を上げる。  
 ああ、酷い。眞子ちゃんのお股の間から赤い血が滲み出している。  
 大切な『初めて』を強姦で奪われる。女の子にとってこれほど辛いことが他にあるのだろうか。  
「痛い……痛い……やめてっ!もう止めてよぉぉ!!嫌ぁぁぁああ!!」  
 泣き叫ぶ眞子ちゃんには構わずに兵士達は眞子ちゃんを嬲り者にする。  
 純潔を奪われたばかりの秘所に次々と突き立てられる肉棒。  
 眞子ちゃんの胎内で擦れて欲望をその中に吐き出す。  
 ドクドクと白いドロドロが流し込まれるたびに眞子ちゃんの瞳から生気が消えていく。  
 男達は更には眞子ちゃんのお尻の穴まで抉る。酷い。  
 二本のペニスでサンドイッチにされて眞子ちゃんの意識はもう絶え絶えだった。  
「嫌ぁぁぁああ!!嫌ぁぁぁああ!!朝倉ぁぁ!!お姉ちゃんっ!!」  
 輪姦を受けて、眞子ちゃんは泣いてお兄ちゃんや萌先輩を呼ぶ。けれどそんな眞子ちゃんに追い討ちがかかる。  
「眞子……ちゃん……」  
 それは萌先輩の姿だった。その瞳は既に虚ろ。身体はもう白いドロドロでベトベト。  
 萌先輩のあそことお尻は、両方とも眞子ちゃんと同じようにぶっといおちんちんを差し込まれていた。  
 それを見た眞子ちゃんの顔が真っ青になる。見せ付けられた絶望にひきつっていく。  
「お、お姉ちゃんっ!い…や……嫌ぁぁぁあああああああ!!!」  
 眞子ちゃんの悲痛な叫びが響き渡る。そしてそのまま二人は大勢の男達に輪姦され続ける。  
 
 嫌だ。もう嫌だ。こんなのもう見たくない。もうたくさんだ。そう思っても今日もこの悪夢は中々には覚めやらない。  
『やあ、また会ったね』  
 そんなボクにかかる声。ボクだ。全身包帯グルグル巻きのミイラのようなもう一人のボク。  
「お願いだよ。こんなのもう止めさせてよっ!ボク、こんな酷い夢なんてもう見たくないよっ!」  
 ボクは泣いてボクに縋りつく。だがもう一人のボクは冷たく一笑に付す。  
『無理だよ。ボクにだってどうにもできない。ボクはね……こんな悪夢を半世紀以上もずっと見続けてきたんだ。それも毎日、ずっとね』  
 絶句する。それは想像を超える生き地獄だった。こんな酷い光景を毎日、何十年も……聞いただけで気が遠くなる。  
『世界が繋がっちゃったおかげで君はボクと意識を共有してる。これがどういうことかは分かるかい?』  
 もう一人のボクが見せられている悪夢をボクも見ている。そういうことだ。そして世界が繋がってしまった。それが本当に意味することは。  
『そうだよ。これとほとんど同じことが起こるんだよ。もうすぐ。キミの世界にもねえ!』  
「嫌だぁぁあああ!!そんなの嫌だぁぁあああああああ!!」  
 ボクは絶叫する。耐えられなかった。ボクの犯した過ちでみんながこんな苦しみを味わうだなんて。  
 乙姫ちゃんや由夢ちゃん。ななかちゃんに小恋ちゃん、杏ちゃんや美夏ちゃん。他にもいくつもの顔が頭に浮かぶ。  
 ボクの風見学園に通う可愛い生徒達。みんな自分の子供のように愛しいと思う。それに義之君にとっても大切な娘達だ。  
 そんなあの娘たちがこの悪夢のような悲惨な目にあわされる。想像しただけで吐き気がした。嫌だ。そんなことは絶対に嫌だ!  
「お願いっ!何とかする方法を教えてよっ!ボクはどうなってもいい!だけどあの娘たちだけはっ!」  
『無駄だよ。ボクにはどうにもできない。全部、手遅れなんだよ。君のせいでね』  
 そんな……ボクのせい……ボクのせいでみんなが……みんなが……  
『でも、そうだね君が咲かせたあの桜の木。あれさえどうにかしちゃえば世界同士の繋がりは消えるかもね』  
 その言葉にボクは一欠けらの希望を見出す。ボクが復活させた魔法の桜の木。あれがそもそもの元凶。だとするならば……  
『でも君にできるかな?あの桜の木を枯らすことが。それはつまり……』  
 もう一人のボクは夢の終わりに何かを言いかける。そうして今日も夜は明けていく。  
 
 
「できない……できないよ……そんなこと……ボクには……できない……」  
 魔法の桜の前でボクは一人立ち尽くしていた。この木を枯らす。そのことを決心してここまで来たのだけれど、  
 ボクは気づいてしまった。この桜を枯らすということの本当の意味を。  
「義之君が……義之君が消えちゃう……ボクの義之君がぁっ!!」  
 義之君。桜の木の魔法でボクがこの世に生み出したボクの愛しい子ども。魔法の桜を枯らす。  
 ということは義之君までいなくなってしまうということだ。最初から存在しなかったことになる。  
「できないよぉ……だってボク……義之君のお母さんなんだよ……義之君を…自分の子どもを消すなんてできないよぉ……」  
 一度は決心したのに土壇場になって義之君のことばかりがボクの頭に思い浮かぶ。名乗り出ることはできなかったけど。  
 本当の親らしいことなんて何一つしてあげていないけれども、それでも義之君はボクの大事な息子だった。  
 ずっと一歩引いた位置から見守り続けてきた十年間。ようやく一緒に暮らせるようになったつかの間の一年。  
 刻んできた毎日の記憶の中で義之君の顔がボクの心にちらついて離れやしない。  
「ううぅ……あぅぅ…っぐ…うぅ……」  
 桜の木の前でボクは一人泣きじゃくっていた。義之君を消してしまうことなんてボクにはできない。  
 けれど、このままじゃ大好きなみんながあの悪夢のように酷い目にあってしまう。それだけは許されない。  
 ボクの犯した過ちで。ボクの犯した罪でみんなが。悲しむ。苦しむ。絶望する。嫌だ。嫌だ。嫌だ!!!  
「どうすれば……いいの……ボク……どうすれば……」  
 ふらふらと立ち上がりボクはうつろう。義之君も消さずにみんなを哀しい目に合わせなくても済む方法。  
 そんな方法があるならそれこそ魔法だった。  
『やっぱり予想通りだね。キミにはできない』  
 もう一人のボクが話しかけてくる。  
『ほんと、身勝手だね。我が子可愛さにこの初音島中の人間をキミは地獄に叩き落そうとしている。  
 いや我が子かわいさじゃないね。自分がかわいいだけなんだ。キミは』  
 本当にその通りだった。ボクはいつだって自分のことしか考えていない。だから過ちを犯してしまった。  
『もう、どうすることもできないよ。指を咥えてみているんだね』  
 もう一人のボクは嘲笑してくる。ごめんなさい。みんな、ボクのせいで……っ!?  
「いや、まだだ!」  
 ふいに閃きがはしる。もう一つだけ方法は残されていた。ボクにとって最後の手段が。  
「ボクがこの桜と同化して……それで中から制御できれば……」  
 今までも桜のバグを直すために似たようなことはやってきた。けれど今回は帰り道は無い。  
 行ったら二度と戻ることのできない本当に最後の手段。  
『無理だよ。分の悪い博打だって分からないはず無いよね?』  
 確かにその通りだ。可能性は低い。失敗すればただボクが取り込まれるだけ。  
 だけどボクはやらなくちゃいけないんだ。義之君のために。義之君のお嫁さんになってくれるかもしれないあの娘たちのために。  
『無駄だね。キミには無理だ』  
 無理でもやるしかないんだ。ボクは立ち上がる。その手を桜にかざす。絶対に成功させてみせる。  
『だって……もう……』  
 その言葉の続きをボクは聞き取ることができなかった。  
 ドスッ 鈍い音が頭の後ろで響く。そしてボクの意識は闇に溶ける。  
 
 
 
『とっくに……手遅れなんだから』  
 
 
 
「ええ、こちら19番。聞こえますか本部」  
 手に持つ無線機に男は話しかける。  
「報告します。風見学園・学園長、芳乃さくらの身柄の確保に成功しましたどうぞ」  
 それが惨劇の幕開けの合図であった。  
    
 
 
 
 貫かれた苦痛は想像を絶するものだった。70年近く生きてきて初めて感じた痛み。  
 痛い。痛い。痛い。苦しい。苦しい。苦しい。何本もの肉の槍がひたすらボクを突きつづける。  
 ああ、これは罰なんだ。許されない罪を犯したボクへの罰。ならば甘んじて受けよう。だけれども。  
「…っぐ……お願いだ……あの娘たちには……この島のみんなには……何も……あぐぅぅぅ!」  
 懇願するボクのお尻の肉を彼らは抉る。太い肉棒がねじ込まれてボクの肛門は引き裂かれてしまう。  
 死にそうなぐらいに痛い。そのまま腸を圧迫されて地獄のように苦しい。  
「あぐっ……がっ……あっ……かっ…はっ……」  
 白目がちになり悶えるボク。それを嘲り笑うような声。  
「くふふふ。駄目ですよ学園長先生。貴女にはここで見届けてもらわないと」  
「あんたの可愛い生徒達が立派な肉便器に変わり果てる姿をなぁ!」  
「嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁぁあああああああ!!そんなの嫌だぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!」  
 どうすることもできない、ただここでひたすら肉を貪られるだけのボクの悲鳴は虚しく響く。  
 肉を裂かれる激痛とおなかの中に流れ込んでくる熱い液汁を感じながらボクの意識は落ちていく。  
 
 
『やあ、また会ったね』  
 深い意識の闇の底。そこでボクはまたしてもボクと邂逅する。  
『見てごらんよ。自分の身体が今、どうされているのか』  
 そう言われてボクは覗き込む。失神した状態でひたすら精液便所にされているボクの身体を。  
「あ……あぁ……ぁ……」  
 それは見るも無惨だった。肉の塊にボクの小さな身体は押しつぶされ無茶苦茶になっていた。  
 白目を剥いたボクの穴という穴に男達は肉棒をぶち込む。吐き出される白濁液。  
 溢れ出して逆流しているというのにまだまだ容赦なく注ぎこむ。  
 ぷっくらとボクのお腹は膨らんでいた。まるで妊娠でもしているみたいに。  
 ボクの子宮も腸も、注がれた大量の精液でパンパンに張っているんだ。  
 ああ、なんて酷い。これが肉便器にされたものの末路。  
『そしてキミの可愛い生徒達もこんな風にされるんだよ。キミのせいで』  
「嫌だ!嫌だ!嫌だぁぁぁあ!!!」  
『目を背けても無駄だよ。あ、ほら何か見えてこないかい?キミのよく知ってる娘じゃないかな?アレは』  
 すると、ボクの目の前の風景は切り替わる。そこでボクが見たのは……  
 

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