その噂が流れ出したのはいつだろうか。
『桜並木には眠り姫が通る』。風見学園一部男子で囁かれるソレを少年が思い出したのは、実際にその光景を目にしてからの事だ。
木琴を引っさげ眠りながら歩く姿は奇怪としか言いようが無いが、頑として其処に在った。
(もし噂が本当なら…)
周囲を確認する。人影は近辺に無い。
(やるなら今)
(本当にやるのか?)
(今しかできない)
(気づかれてしまうかもしれない)
(……なるようになれっ!)
内に葛藤を抱えながらもソロリ、ソロリと足音を忍ばせる。
追いつき、かといって抜き去らず、背後にピッタリとくっつく。
異様だが、当の本人は寝息を立てながら、あくまでマイペースに歩を進めている。
「…………」
見られないように。
気付かれないように。
最速、最小限の動きで手を伸ばす。
その先は少女の腰より下、本校制服のスカートの端である。
少年は祈るような気持ちでソレを摘んだ。
「…………!!」
思わず息が漏れる。
めくって見えたものは、ウサギのプリントだった。
ボリュームのあるヒップをすっぽりと包む、子供っぽい白パンツ。
瞬間、やってしまった行為への罪悪感が払拭される。今この時ばかりは、眼前に展開された光景に勝るものは無い。
いつの世も『女の子の下着』は思春期少年にとってのロマンなのだから。
「お……っ!」
目に焼き付けた映像を"使用"すべく、少年は疾風の如く駆け抜けた。
それからというもの。
少年にとって件の眠り姫は絶好のオカズとなりえた。
学園の二大アイドルと称される『白河ことり』『朝倉音夢』など目ではない。
否、そもそも高嶺の花は手に届くものを見つけた時点で意味を無くすのだ。
(今日はピンクか…)
その日も少年は、少女を性欲処理目的で観賞していた。
場所は現在使われていない空き教室。
最初の数回こそ自宅か学園のトイレに駆け込んでいたが、自分なりに研究した結果、彼女は多少の誘導に眠ったまま従わせることができると判ったからだ。
内側から鍵をかけ、カーテンを閉めてしまえば其処は即席の密室。
少女の至近距離で座り込むと、少年はおもむろにズボンのジッパーを下ろした。
「zzz…」
飛び出したのは分身とも言うべき男性器。これから行われる事を知って期待に満ち満ちている。
通常衆目に晒されれば犯罪となる行為も、ここでは御咎めなし。そもそも勃起した性器を見ている者は"目の前の少女を含めて"誰も居ない。
事実、彼女は依然として眠ったままだ。
(それでは、やりますか)
少年はその彼女の足元で、男性器をしごき始めた。
スカートをめくり、薄桃色のショーツを間近に見ながらでだ。
女兄弟のいない少年にとって、少女の下着姿はあまりにも眩しい。
「ハァ……ハァ……水、越、先輩……」
最近知った事だが、少女の名前は『水越萌』というらしい。
本校生で、学園付属一年生の少年にとって少なくとも三つは年上になる。
音楽部に所属しており、いつも木琴を携帯しているのは練習の為のようだ。…眠りながら演奏されては、それこそ怪談になろうというものだが。
容姿は周囲の女子より頭ひとつ抜けていて、スタイルも抜群。普通に出会っていれば、憧れの先輩になっていただろう。
(そんな先輩が、今は僕だけのもの。こんなチャンスそうそう無いよな)
自然、少年の行為はギアを一段階引き上げることになる。
スカートを腕に引っ掛け、下着の上から股間に触れる。
ぷにっとした感触。反応は無い。力を少し込めても同様で、かすかな弾力が伝わるだけ。
「先輩……、先輩……ッ!」
しごく右手にかつてない活力がみなぎる。
きれいな先輩。スカートの中。ピンク。女の子の股間。
それらの単語と光景と感触が、少年の中でない交ぜとなり、持ち堪えられなくなる。
結果、強烈な快感と共に、白濁とした液体が飛び散り、床を汚していった。
「ぅあ……ッ! あ…………」
急速な脱力感と冷めていく熱気。
男性器を丸出しにしたまま倒れこむが、それを見ている者はいない。
眼前の少女は周囲の異様に反し、依然として眠り続けたままだった。