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それは、彼女を「萌」と敬称を略し、彼女が俺を「純一くん」と名を呼ぶようになった最初の日曜日だった。  
 
慣れっこになったとはいえ、あまりにも寂しい朝食。いや時間的にはもう昼食だ。  
しかも、ここのところの節約のためにラーメン一杯だけ、という結構きびしい状態。  
朝を通り越してすでにお昼にすらなっているような時間だ。音夢が本土の看護学校に通いだしてから、ずっと弱い朝に振り回されっぱなし。  
よく遅刻しかけ、そのたびに美春につっつかれる。  
それだけならやや苦痛でやや寂しい男一人暮らしの本校生活といえる。  
そう、それだけなら。  
蓋を開けて中のスープや薬味、具なんかを適当に開け、お湯を注いで蓋を閉じる。  
単調な朝兼昼の飯が、あと3分後にできあがる。あとはこれを一気にすすればいいわけだ。  
ほんとうに他愛のない、いつもどおりの朝、じゃなくて昼、そんなゆったりとした休日が過ぎていく。中間試験の時期も近づいているが、一夜漬けの突貫作業が習慣付けられている俺には、毎日の学習なんか無縁の話だ。  
出来具合を待つ時間が退屈だ。  
3分、あっという間のようでやけに時間がかかる。半端すぎて、フライングしたくなってしまう。  
もういいや、少し固いくらいでも食えりゃいいんだ。  
俺はラーメンの封印を解いた。  
 
割り箸を突っ込んで、麺をずるずるとすする。  
せめて夕飯くらいはもっとマシなものを買って食べよう。でも親が入れてくれるお金もここのところぐっと減って、外食ばかりではいつか食費が光熱費を食う。  
食べるものが食うなんて、滑稽だがギャグにもならない。  
……自炊するしか、ないのか、かったるぃ……  
 
ピンポーン  
 
ラーメンは半分くらい、まだ余ってる。  
口のなかには咀嚼しきれていない麺が俺に粗相をさせようと足を引いていた。  
 
ピンポーン  
 
急いで口の中のものをこなして飲み込む。  
廊下をやや重い音を立てながら玄関に向かい、引き戸を開く。  
白いリボンでポニーテールを作った、ほんわかとして和みのある笑顔を浮かべている、同世代では抜群というに等しい、プロポーションの女性が立ってる。  
「こんにちは、純一くん」  
首に木琴を下げてマレットを両手に、肩にはやや大きめのスポーツバッグをかけていた。  
来ているのは制服だった。今日の音楽部の練習は午前中にあったようだ。  
「あ、萌……?」  
「会いに来てしまいました」  
「会いに、って……」  
「お食事中でしたか?」  
萌が感づいたのは、さっき作ったラーメンの匂いをまとわりつかせていたせいか。  
「あ、ああ」  
そんな唐突な萌の訪問が、すべての始まりだった。  
 
萌を家に上げた。  
俺とちがってしずしず歩くさまは、彼女が生まれついてのお嬢様であることを思わせてる。でもそれ以外のことは、萌をお嬢様だなんてとても思わせないようなことばかりだ。  
いつもぽけぽけとしていて、なんとなく捕えどころがない。しかもまだ眠そうにしていたりする。  
薬はいきなり中断することはできないらしく、徐々に減量していると聞いた。確かに、今は昔ほどスリープモードになる頻度は多くないけれど。  
「ふひゅぅ……」  
俺がラーメンをたいらげるのにやや退屈だったのか、萌はもううつらうつらしてきてた。  
「はぁ、食べ終ったよ」  
器をやや大きな音を立てて置いた。でも、萌の眠気を揺するにはやや力不足だった。  
向かい合ってじぃっと俺が食べるさまを見つめつづけていた萌。その待ち焦がれる瞳の輝きも、春眠と午後のひとときに曇らされていた。  
器を流しに置いて、萌のとなりから肩を掴む。  
「萌。もーえ」  
肩をやさしくゆらす。  
「ん……ふぅ……」  
萌が起きる気配はない。萌の寝顔は無垢な天使のように愛らしく、それを食べてしまいたい不謹慎な自分がいる。  
もたげた頭によって、色白い首筋が覗かれる。  
静かで可愛らしい寝息を、すぅすぅと立ててる。  
俺にそれだけ信頼を置いている、ってことなのかもしれないけれど……  
でも、いつもなら俺が起こせばすぐ起きてくれていた。そう、年度末前のテスト期間中のとき、萌先輩がまるで取り残されるように眠っていたのを起こすのに成功して、驚かれたことがあった。  
減量中とはいえ、やや薬が強く効いている、ってことなんだろうか。  
……いや、そんなことはない。  
それを確信できてしまうくらい、萌との関係が深くなっていることを知って、改めて自分の想いの深さを知る。  
かったるい。  
いつかの空に封じた言葉が心の中を突いて出た。ただの、照れ隠しだった。  
息遣いのパターンは目の前で感じ取れる。座ったままうつらうつらする萌先輩だが、息遣いがなんとなくいつもの眠る萌と違う。狸寝入り、といったところかもしれず、なぜそうしているかも見当がつかない。  
俺はそんな彼女の張った線に、あえて足を引っ掛けた。  
「ん……」  
萌が起きるのを促すように、やや強引に頭の位置を固定すると、指で確かめた萌の唇に、自分の唇を重ねた。  
やや乾きめに柔らかな唇の感覚と、ただようフローラルな香りが、今回のキスの味。  
優しく交えただけのキスを離すと、まるで眠り姫よろしく、萌が静かに目を開けた。  
某ゲーム風でいえば、「こうかは ばつぐんだ」といったところか。さしずめ「王子様のキス」という♂限定♀対象限定のねむり解除とくぎ。  
「ふ、ぁぁ……あ、純一くん……ごめんなさい、私また」  
申し訳なさそうな上目遣いで、すぐ目の前の俺を見つめる萌。  
「べつにいいって、俺が待たせたんだから」  
改まられて、さらに照れくさい。首を持ち上げ上体を起こして、足を退く。  
「でも……せっかく純一くんとあえたのに、眠ってしまうなんて」  
「そんな変なこと気にすんなよ。それも含めて萌だろ」  
「はい……」  
まだ申し訳なさそうなのが抜けてくれない。  
「それに……さっきのキスいたずらだったからな」  
「いたずらですか?」  
「ああ。キスはみそラーメンの味もするっていうのをさ」  
「……」  
萌が、口元に手を当て、何かを確かめるようなそぶりをして。  
「おいしそうな味です」  
すぐに答えを出した。  
その満面の笑みに、冗談とかいたずら心とかそういうのを出して萌の罪悪感を晴らそうとしたのが裏目に出たような、このままだと引き返せないことになりそうな予感がした。  
もう一歩後ろに後ずさる。  
すぐ後ろに椅子があって、なんとなく腰掛けてしまった。  
「純一くん、今日いつまでお時間空いていますか?」  
「時間なら、今日一日まるごど大丈夫だ」  
しかも予感をまったく考えないで、なんか正直に言ってるし。  
なんだか本当にかったるい日になりそうだな……今日。  
いや、そんなの、萌との気持ちの両天秤にかけることないんじゃないか?  
「そうですか、じゃあ」  
だいたい俺……あの萌の無防備な姿に、心の中の理性という理性のたがが、完全に外れてしまっていたみたいだから。  
「今日一日、えっちなことづくし、しませんか?」  
萌が抱きついて、唇を交えてくる。  
お互いの、脳をとろけさせるような甘い唾液を、舌で送りあう深い口づけ。  
吐息をまぜ、唾液をまぜ、舌をからめ。  
長い日曜の午後の、はじまりだった。  
 
俺が望むより萌のほうが望むことを口にするのが多い。  
たんに俺が照れて、萌が照れないだけなのかと思ったが、今では「彼女らしい」で片付けられるごくあたりまえの行動だった。  
固い椅子の上を避けて、今俺と萌はリビングのソファで向き合ってる。  
萌が手に持ってきた荷物はテーブルのすぐ脇に置いたままで、間近にお互いの体温を感じあっていた。  
もう暖房も必要ない。  
「萌、前から思うんだけどさ」  
「はい」  
「こういうことに関してやけに積極的だよな……?」  
「あ……」  
なんとなくいった言葉に、萌の表情が曇る。  
「ごめんなさい、でも、しているとき、とても気持ちよくて、純一くんとつながると、とても幸せで……」  
嫌われる不安より、正直に打ち明けることのほうが上回るのか、全然かみ合っていない。  
「やっぱり、えっちな女の子は、嫌われるんですよね……?」  
でも、こんなふうな結論になるあたりが萌らしい。  
俺は、目線くらい低い萌の頭を胸に抱いた。  
「しているときは気持ちよくて、萌とつながるととても幸せだ。いつもそうしたいエロい俺は嫌いか?」  
「いいえ。純一くんなら、毎日でもかまいません」  
「そういうこと。俺、正直な萌が大好きなんだから」  
背中を優しく撫でる。指に、萌のブラの固いのが当たってる。それを妙に意識してしまって、自身に熱い血が集まるのを抑えられない。  
そんな俺の胸の内で、もぞもぞと萌の頭が動いていた。ボタンをひとつひとつ、上から下まで一気に外し終えてしまう。  
いまさら、なんだけれど、いざこういうことをするって決めたときの萌の行動力は、いつも眠気にぽけぽけしているとは思えないほど積極的で、行き過ぎるほど突っ走る。  
「また、キス、してくれますか? さっきみたいに」  
完全にボタンを外しきった服が留まる場所を見失って萌の肩を抜け落ちそうになっていた。  
胸の上に置いた顔を上目にむけた、萌の上気した頬。湿り濡れた唇を深く吸うと、彼女を抱く腕の動きに合わせ、萌の上着が肩からすべりおちて、やや大きく見えるブラと、その中に収まっている形も大きさも理想的な乳房がさらけた。  
「ん……ちゅ、ば、……ん、はぁ、む、ん」  
声とも吐息とも聞き取れない、舌の絡み合うキスの音が交わされる。  
萌を抱く腕を保つだけの俺の服にも、萌が手を出そうとするのを制する。  
「俺が、やるから」  
唇に話し掛けるように諭して、萌の唇を舌でなぞって、吸いながら、俺もまだ寝間着でいる自分の服のボタンを、ひとつひとつ外す。  
深く、求めるように、萌が俺の唇を覆いかぶすように深く唇を合わせた。  
彼女の熱を帯びた、彼女の鼻息が吹き流れる。  
その、唇の輪郭の下の方から、いつも以上に多めの唾液が注ぎ込まれて……飲み込んでしまう。それは、彼女自身が作り出した媚薬のような艶かしさをもって、俺の頭の中の多くを真っ白にしてしまった。  
意識だけ混濁になる。ふわふわとした感覚が現実の実感になったとき、俺は萌より先に全ての服を脱がされていた。  
完全に、主導権が萌にあった。  
 
「れろ、れろ……はぁ、む……ちゅ、むぅ、れろ」  
あまりに張り詰まった俺自身が、萌の指と舌と唇に丹念にねぶられていた。  
指でカリや亀頭をなでまわされ、根元を扱かれ、袋を優しく揉まれる。  
舌が裏筋をたどり、舐める。亀頭の郭を這う。鈴口の先走りをしきりに吸い出し、舐め取ってる。  
無駄のない、萌の間断ない愛撫が俺を確実に高みに導いていた。  
気がついたときすでに、萌は生の乳房を晒していた。ほどよく形が整って、しかも掌よりはるかに大きくて、たわわと表現するのがふさわしいくらい、柔らかさと質量感にあふれていた。  
「気持ちいいですかぁ……? れろ」  
「気持ちいいも、なにも……どこでこんなに……上手すぎる」  
上下に舌をたどらせるたびにその双丘が揺すられる。  
思えば……萌の乳房を生で見るのは初めてだった。  
そんな興奮が余計に自分の先に集まってくる。  
気を抜くとこれだけで果ててしまいそうだった。だから、そんな艶やかな萌の胸に、俺は手を伸ばした。  
指でなめらかな肌を撫で、その先にある、頂を通過させる。  
「ひぁんっ! はぁ、ん、れろ、はぁ、ひあぁ……はぁ、あぅ……」  
しばらく、萌は俺の指の刺激に我慢して舌を這わせる。  
萌のほうが刺激を紛らわすように俺にしがみついてくるように舌先が強く押し当てられた。その分、責めが乱雑になって、高ぶる感覚が下へ下へと収まっていってた。  
「じゅんいち、くん……むね、いじられ、たら、感じすぎます……乳首、こりこりになってて……ふぁぁっ」  
「萌、胸弱いのか」  
「ぅぅぅ、だめです、ちゃんとご奉仕、できません……」  
「そうか……じゃあもっといじって萌にも感じてもらわないとな、だってさ、胸いじられながらする萌の一生懸命な顔、かわいいから」  
「はぅ……む、ん、はむっ」  
萌が、すこし意地になった。亀頭を食み、口内の唾液に湿った粘膜に、俺の先を含む。  
「ん、ちゅ、ぁ、はぁん、ちゅ……ば」  
指先をただ萌の乳首のあたりにだけ伸ばして、乳輪をなぞりながら時折、乳首を弾いてやった。  
刺激を強くすれば強くするほど、萌が俺自身をさらに追い落とそうとする。意地の張り合いというか、なんというか。萌はもう完全に俺自身を口内に収め、すぼめて圧迫しながら、吸い上げるように扱き出す。  
我慢するのが絶望的なくらい、圧倒的な快感が俺の下半身を支配した。  
「ん……んっ、ん、ちゅば、んっ……」  
「う、あ……」  
一気に根元から先端へ、精液が駆け上ってる。  
もう俺は、萌の口の中に精液を放つ以外の選択肢はなかった。きゅっと、自分の頂の強さのまま、萌の乳首を摘んでた。  
びゅくっ、びゅ、びゅっ、びゅ……っ。  
「ん、んんっ!? ん……ん……んっ。んん〜〜っ……は、ぁ」  
萌の口内を、俺の精液が脈をうつように染めていく。  
喉をうつ白濁に、萌がややびっくりするように、液を受け止め終えると何かに強く身を絞られるように体を硬直させていた。  
「はぁ……はぁ……」  
息を切らす萌の口の中には、まだ飲み込めていない俺の精液が残っていた。  
「はぁ……口の中、純一くんで一杯です。ん……こくん」  
萌はいったんそれを俺に見せてから、喉に白濁を流し込んだ。苦虫を噛み潰すような表情が、さらに紅潮しているように思える。  
「萌、きつかったら無理に飲まなくても」  
「きつくありませんよ。とてもおいしいです……純一くんのだから格別です」  
「そういうもんなのか」  
「はい。それに……私もイカされてしまいました。純一くん、あんなに強く摘んだらこわれちゃいますよ……ちょっと痛いです」  
「う……」  
無意識のままだったから全然加減ができなかった。  
「ごめん」  
「いいえ。れろ、れろ……」  
「……っ!」  
精液を放ったばかりの敏感な先を、唐突に萌の舌が這った。  
やや力を失っているそれをきれいにするために、丁寧に舐めとるように。  
「はぁ、はむ、れろ、ちゅ……ぱ」  
その丹念さの刺激は、敏感さを失わないままの俺自身を執拗に責めて、萌が粘液をすべて舐め取るころには、力を失いかけた肉の根が再び勢いづいていた。  
「あ、の、萌?」  
「ん……はぁ」  
問い掛ける俺に向き直るためにか、萌は勢いづいた屹立に密着させる体の一部を、口内から掌に変えた。  
「純一くん、まだせつなそう……もう1ラウンドしましょう」  
にぎにぎと握力をくわえながら、萌は上目にそう告げると、まだ唾液まみれの唇でキスをねだる。  
俺は萌の唇を、軽く吸ってやった。  
それが次のステップにつなげるバトンタッチの役割のように、身を引いて、まだ脱いでいないやや長いスカートに手をかけてホックを外しジッパを緩めた。  
 
重力のままに落ちたスカートをその場から取り除くと、丁寧にたたんで絨毯に置いた。  
そのまわりには、俺の分の衣類と萌の分の衣類が、几帳面に折り重ねられていた。  
いつのまにやっていたんだろうと思い起こしても、萌がそうしている様子に覚えがない。でも、萌がそれだけ細かいことにも気を配れる人なのかもと思うと、さらに萌への恋慕を強く自覚した。  
「あの……」  
間延びした声だけれど、その響きにものすごい恥ずかしさをこめているように聞こえた。  
「ん?」  
「今度は、純一くんのしたい体勢で、していいです」  
ソファの上で立ち上がる萌は、ショーツと、ニーソックス以外には何も身に付けていなかった。豊かな乳房の膨らみは、重みを持ち上げるように張り、でもけして自然体を失わないような、造形のない美しさがあった。  
そういえば、身体測定のときに他の女の子たちがしきりに体重を気にしたり胸の大小に一喜一憂しているのに、萌は我関せずだった気がする。  
それでこんなプロポーションをしているのは反則じみているけれど、逆を言えば……そんな萌の体を独占できる特権が、俺の中の支配欲らしいものをくすぐってくれる。  
俺は身を起こして、その支配欲を満たすことにした。  
「じゃあ、後ろ向いて」  
「はい」  
萌は、ソファから降りて俺に背を向けた。  
萌のショーツは木綿のシンプルなデザインのもの。  
彼女のショーツを俺の手で膝の真上くらいまでずらした。  
大きくもなく、小さくもなく、でもきめこまかでなめらかな尻の肌は、柔らかな肉感をたたえて、大事な部位を内側に秘めていた。  
外気と触れ合う綺麗な造形の秘肉は、その内側からの液をショーツから、太ももから伝わらせ、滴っていた。  
尻を持ち上げさせて、自分の屹立を萌の蜜口に宛がい、ゆっくり、埋没させていく。  
「ふぁぁ……あぁ、純一くんの、入り口に……」  
「入れるよ」  
「はい……はぁ……ぁああ」  
先が、萌の狭い襞の中を少しずつ割って入ってく。濡れぼそった膣が俺自身をなめらかに受け入れてく。  
「っ」  
包み込まれるようで、でも熱くて、きつくて。  
「ぅぁぁ……純一くん、が、はいって、きますぅ、はぅぅ」  
「萌……」  
やがて、萌は俺自身をそのすべてで受け入れてくれた。  
最奥まで届いている。先が、萌の一番深いところをこづいてる。  
やんわりと押しているだけなのに、萌の中は招き入れた俺自身を引きとめようとするかのように、内側へ内側へと締め付けてきた。  
その刺激に、俺自身の根から、先へ先へと快感が突き上げかける。  
「はぁ、はぁ……一番、おくまで、はいりました……純一くんで、いっぱい、です……」  
肩を揺らして息を整える萌の尻は、受け入れた俺自身の圧迫に、自然と揺れているようだった。  
それを固定して、まず、少しずつ萌の中から自身を抜いていき……深く、打ち込んだ。  
「ひあんっ!!」  
ぎりぎりまで、引き抜いて、一気に突く。  
それを、何度も繰り返した。  
萌の中から、あふれ返る蜜がむせ返るような湿り気を帯びて俺の下半身に浴びせられる。  
突くうちにだんだんと溜まっていた分が減って収まるけれど、同時に俺自身は確実にそのときに向けて登り始めていた。  
「はぁ……っぁぁぁ、ふぁぁ……ぁ、じゅんいち、くん、が、おくを……」  
無意識のうちに、萌の尻に密着するのを意識しだして、そうしたくて萌の中を蹂躙していた。  
熱く圧搾しようとする萌の中を、より強く押す。  
引き抜くときの萌は俺が抜けないように、打ち込むときは俺を甘く受け入れるように、襞が俺のカリを捉えて、間断なく感じさせてくれた。  
「っあぁ、じゅん、いち、くん……じゅんいち、くんっ……」  
 
萌に体を預けて最奥をこねまわしながら、萌の大きな乳房を両手で掴んだ。  
「ひぁぁ、だめ、ですっ、むね、もんだら、ぁぁぁ」  
指先に、萌の肌の感覚が染み渡ってきそうだった。掌いっぱいに広げても収まらないその乳房を、思うままに揉みしだいた。  
そのボリュームを心ゆくまで堪能する。  
その力の加減をわからないまま好きなようにやっているけれど、今の萌は。  
「あぁぁ、じゅんいち、くん、わたし、はぁあ、あぁぅぅっ」  
いつイッたかわからないくらい、きゅぅきゅぅと俺を強く締め上げていた。  
その熱っぽい求めに、再び俺の根に白濁が滞ってくる。悦が、俺自身を占めていく。  
「もえ……俺、イキそう……」  
めいいっぱい堪えても、精液を留めることなんてできそうもない。  
乱雑に、自分が一番気持ちよくイケるように、萌の中をかき混ぜるように突いた。  
じゅぷじゅぷと、愛液に満ちた結合部が淫らな音を立てていた。  
「ぁぁぁ、じゅんいち、くん、いっしょ、に……ぁぁ、ぁぁぁ……わたし、も、だから、ふぁぁ、ぁああ、っぁああ……」  
「ああ……っ、いく、もう……」  
萌の、子宮の口に、ぴったり鈴口を幾度も押し付けて……  
「くだ、さい、中、いっぱい……いいですからぁっ」  
萌の許しを得ることを聞く前に。  
「っぅぁ……っ」  
「ぁああああああああっ!!!」  
萌の膣内が、俺を今までにないくらい締め付けて……これまで感じてきた中で一番の射精を、びゅく、びゅくと萌の中で脈打たせていた。  
白濁が、萌の中に、2度、3度撃ち出される。  
その震えが、止まらないまま、俺も、萌も、腰が砕けるようにソファにもたれていた。  
お互いに、息が切れたまま、繋がってた。  
 
「……はぁ……はぁ……はぁぁ、じゅんいちくんの、が、いっぱい、っぁぁぁ……っ」  
 
意識が、落ち着いてくる。  
出すだけの精液を出し尽くしたそれを結びつけたまま、ソファに押し付けて正常位に変え……ぎゅ、と萌がつぶやいて抱きしめてた。  
「……はぁ……はぁ……じゅんいちくん、あたたかい、です……」  
つながったままの余韻が心地よくて、ソファの弾力に身を任せていた。  
「萌、俺夢中で……中に出したりなんかして……いいのか?」  
「はい……お薬、飲んでますから」  
つまり……避妊薬のことだと思う。  
「でもあれって睡眠薬と飲みあわせていいのか?」  
「はい。問題ないと、お父様が仰ってました」  
「そうか……」  
水越総合病院の院長お墨付きなら問題ないかもしれない。  
「純一くん……好きです」  
そんな、院長令嬢に、想われれているっていうだけでも僥倖なんだろうな。眞子はともかく。  
「俺も、好きだ」  
今はなんにも考えたくない。考えるだけ、かったるい。  
「うれしいです……」  
「ああ……」  
萌をソファと挟むように、体を預ける。  
勢いを失った自身が、位置取りを移すさいに、萌の中から抜ける。  
さんざん愛し合った白濁と愛液が、萌の中からあふれだして、ソファに染みを作る。  
「そ、ふぁ……」  
「ああいいよ、あとで洗っとくから。今は俺ひとりだし」  
「ひとり、なんですか?」  
耳元同士でのささやきあい、だった。  
萌の声は間延びするソプラノボイスだけれど、聞いてるとすごく安心してくる。  
音夢では、こうはいかないよな……  
その萌の、優しいひとこと。  
「まぁ、口うるさい妹がいなくなった分、気が楽になったけど……」  
「でも、寂しくは、ないですか?」  
「すこしはな」  
俺は素直に即答した。  
別に隠しても萌には悟られないんだろうけど、だからこそ萌には、隠し事にしたくなかった。  
「じゃあ、時間の許す限り、純一くんの家にきますね」  
来ていいですか? というお伺いではなくて、来ますね、という断言をした萌は、そのまま萌らしかった。  
「ああ。いつでもいい。どうせ暇だし」  
「嬉しいです……ずっとずっと、側にいさせてくださいね」  
「あたりまえだろ。萌はずっと、俺の側にいるんだ」  
抱き返してやる。  
なんか、照れが先にたって、とにかく……かったるかった。  
「はい……さっき、キス、してくれましたよね」  
「ん?」  
萌を起こすときのキスのことだろうか。  
「あのとき、夢を見ていました」  
「夢?」  
「はい。純一くんの唇を感じてました。その私たちの様子を、啓一くんが暖かく見守ってくれていたんです」  
「……」  
もう見る事のない、他の人の夢の映像がくっきりと映し出されてくるようだった。  
その映像には、俺と萌がキスをする光景を、あの啓一くんが……野暮なことをするもんだ。  
「啓一くん、こういってたんです。『起きているときに夢を見せてくれる人と幸せになってね』って」  
でもそんな野暮も、萌にかかってはドラマのワンシーンになってしまう。  
音夢が好き好んでみていたような、三流脚本のラブドラマみたいな。  
「純一くん……」  
「ああ、わかってる。みなまでいうな」  
そういうときの主人公のセリフっていうのは、決まっている。言うのは、めちゃくちゃ恥ずかしいけれど、萌に対しての返答で、その言葉が最もしっくり来るものに思えた。  
「その夢、俺が見せてやるよ」  
 
はっきりいって、オチにしか思えなかった。  
そうして、その日のちょっとだけ長い午後が始まった。  
 

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