彼女がそれを目撃したのは、全くの偶然だった。
どうにも寝つけないその日の夜、喉を潤そうと階下へ降りただけの事だった。
廊下を歩いていた時、ふと、物音が聞こえた気がして彼女は足を止めた。
「…………?」
音の先、向かう先であった居間を覗き込むと、其処には彼女の知らぬ光景があった。
その部屋に居たのは二人。
ソファに座っているのはこの家の主である、朝倉純一。
そしてその前に跪いていたのは外国から帰ってきたばかりの少女、芳乃さくらだった。
見知った二人の取り合わせだったが、しかしそこには二人の普段とは違う様子があった。
純一は下半身に何も穿いておらず、ズボンと下着はすぐ近くの床に投げ出されたままだ。
さくらはと言えば、その純一の股間に顔を埋め、何やら水音を立てている。
静かな夜の居間に響く、ぴちゃぴちゃというその音が廊下の少女―――アイシアには、何故だか酷く耳に鳴り響いた。
最低限の薄ぼんやりとした明かりの中、たださくらの二つに束ねた金髪がせわしなく動いていた。
(あ、あれ……純一の、おちん、ちん……?さくら、あれを舐めてるの……汚くないの?)
暗い中ではっきりとはしなかったが、確かにさくらが唇を密着させているのは純一の性器だと分かった。
性に関する知識を何も知らないアイシアには、それが男女の営みであるとは気付けない。
ただ分かったのは、それをしているさくらも、されている純一も、幸せそうな顔をしているという事だけだった。
汚い行為のはずなのに、楽しくお喋りをしているわけでもないのに、二人とも幸せそうだった。
―――魔法のように。
ただ。どうしてか自分の胸に痛みが走るのもアイシアは感じていた。
他の人が幸せになる事が自分の幸せのように生きてきた彼女が持った、初めての感覚だった。
自分が初めて抱いたそんな気持ちに戸惑いながら、彼女は『それ』を続ける二人をそっと見つめていた。
彼女の行動は概ね緻密で、計画的だった。
ただ一つ、この家の新しい第三者という存在を予想していなかっただけの事だった。
さくらがお泊りセット一式、とやらを持って自宅を出たのは、音夢が研修でしばらく家を留守にしたと聞いた直後。
今なら音夢の邪魔も入るまい、と踏んだタイミングだったのだが……
「えへへ……もう、大きくなったね」
屹立した男のモノに手を添え、さくらは呟いた。
その硬さを確かめるように、添えた両手ですりすりと肉棒を擦る。
「久しぶりの、お兄ちゃん……」
そうして熱い吐息とともに、躊躇いもなくそれを口に含んだ。
口の中で、舌をちろちろと動かしその先端を刺激してやる。
「うっ……」
聞こえてくる純一の呻き声に気を良くしながら、さくらは口の動きを一層激しくしていく。
唾液を溜め、わざと大きな音を立てるように、頬を窄めて動かす。
「んっ、んんっ、じゅぷっ、んうっ……」
幼い顔立ちのさくらが、口腔にぬらぬらと光る肉棒を出入れする姿は酷く卑猥だ。
懸命に男のモノを頬張り奉仕する少女の姿に男の射精感も高まっていく。
「出るっ……!」
さくらはその言葉を聞き、その小さな口の限界まで深く咥える。
さくらの口の中の一番奥で、純一の射精が行われる。
「んーっ……!!ん、んっ、んん!!」
ドクドクと、たっぷりの濃厚な精子がさくらの喉奥に注がれていく。
長く断続的に行われる射精は少女の口内を一杯にしても止む事は無い。
苦く、喉に粘りつく多量の精液を、しかしさくらは嫌な顔一つせず飲み下していった。
量の多い男の子種を、甘露のように飲み干していく。
「やっぱり、お兄ちゃんの……美味しい♪」
濡れた唇の端から白く濁った液体を垂らしながら、少女は笑みを浮かべた。
「ふだんは毎日、音夢に飲ませてあげてるんでしょ?いいなぁ……」
またさくらの顔が純一の両足の間に埋められると、ぴちゃぴちゃという水音が再び奏でられ始めた。
「そういう事、言うなって……」
さくらの頭を撫でながら彼女のするがままにしてやる彼を、アイシアはずっと見ていた。
(……純一……)
自分の吐く息が荒い。
行為を再開する二人を物陰から覗きこみながら、アイシアの指は我知らず自らの下腹部へ滑り落ちていた。
薄い緑のパジャマの上から自分の下着を擦ってしまう。
知識を持たない少女には、それが高まった性感のせいとも気付けぬ事だった。
無意識の自慰行為に耽りながら、アイシアの目はさくらが奉仕しているそれを注視していた。
初めて見る、男性器。
不思議な熱と、微かな心の痛みを感じながら。
(もう少し……もう少しなら、近づいても……)
熱に浮かされた少女には―――足元へ注意を払うまでの余裕が無かった。
「きゃぁっ!!」
突然の悲鳴に、情事の最中であった純一とさくらは竦み上がった。
「な、なんだぁ!?」
あわてて身支度を整えて振り返ると、そこには―――
「ア、アイシア!?」
倒れていたのは紛れも無い、居候としてこの家に居着いていた彼女だった。
「い、痛たた………」
派手に転んで打った膝を擦りながら起き上がる。
「アイシア……ひょっとして、ずっと見てたのか?」
「ちち、違うんです!これは偶然で、見ちゃったのはたまたまで、見るつもりはなくて、あの、その」
真っ赤になって支離滅裂な弁明をするアイシア。
「……ふぅ〜ん?」
しかしさくらはくすりと笑った。……アイシアのパジャマが乱れているのを見つけたからだ。
「ねぇ、アイシア。ボク達が何をしてたか、分かる?」
さくらは、顔を出した悪戯心でカマをかけてやる。
「えっ!そ、それは……その」
口篭る。
「………え、えっちな事……ですか?」
少女の乏しい性知識ではそう表現する事しか出来なかったが、感覚的にそれぐらいは分かっていた。
女性が、男性のそこを舐めるというのがどういう事かくらいは。
「ノンノン。やっぱり何か勘違いしているみたいね、アイシアは」
「え……?」
「な?」
させていた純一も、思わずさくらの方を振り向く。
さくらは腰に手を当て、薄い胸を反らして人差し指を立てた。
「ボク達は、やましい事をしてたんじゃない……魔法の特訓をやっていたんだよ!」
「な、なんだって!?」
「えぇっ!?」
「そうだよ。アイシアは、『サバト』って儀式、聞いた事無い?」
それから、さくらの高説は長々と続き……レオナルドやらクロウリーやらイシュタルやら、
何だかよく分からない単語も色々と出ていたが、アイシアはずっと真面目に聞き入っていた。
「……以下のように中国においては『房中術』と姿を変え伝わっているのである……
と、民明書房刊『改訂版・目でみる魔術の歴史4千年』にも書いてあるんだよ」
「凄いです……!二人はずっと、こうして夜の特訓を続けてきていたんですね!」
終わる頃にはすっかり、アイシアはさくらの話を信じ込んでしまっているようだった。
「そうだよ。夜の方が、魔力の高まりも大きいからね」
「え、えっちな事が魔法使いに必要だなんて……私、知りませんでした」
「うんうん、分かってもらえてボクも嬉しいよ。それじゃあ、アイシアもやってみよっか」
「………えっ!?」
「魔法の特訓、だもんねー?嫌なことなんて無い、よね?」
「そ、それは……」
「おーい……?」
置き去りにされている純一の前で、あっという間に展開は進んでいった。
今は、ソファに座る純一の前にアイシアが神妙な顔でぺたんと床に正座している。
「あー、アイシア。あのな……」
「止めちゃっていいの、お兄ちゃん?」
何時の間にやらすぐ傍まで来ていたさくらが、そっと耳打ちする。
「今なら、あの子信じてるよ?何しても良いんだよ。処女のアイシアに、お兄ちゃんの匂いつけていいんだよ……?」
淫猥な囁きに身が固くなる。
「ほら、アイシア。教えた通りに、お兄ちゃんにおねだりしてみて?」
「う……うん」
こく、と唾を飲み込み唇を開く。
「じゅ、純一のおちんちん……おしゃぶりさせて、ください」
凡そ少女には相応しくない卑猥な言葉を恥ずかしそうに紡ぎ出すアイシア。
初めての情欲に濡れるルビーの瞳で上目遣いに見つめられては―――男に断る術などあるはずも無かった。
「お兄ちゃん、もう大きくしてる……そんなに期待してたんだ?」
純一が自分のものを取り出すと、それはすでに硬く張り詰めていた。
「これが……純一の……」
生まれて初めて、男性のものを間近で見せられアイシアが熱い息を漏らす。
膝立ちになり、熱く脈打つそれをそっと両手で包み込む。
「硬くて……熱いです」
細い手が、形を確かめたいというようにゆっくりと動く。
さわさわと這う少女の指が、男の肉棒の感触を覚えていく。
「くっ……」
たどたどしい指の動きに、思わず純一は呻き声をあげてしまう。
「ほら、アイシア?お兄ちゃん、苦しそうだよ。ちゃんとお口でも、してあげなきゃ」
「あっ……は、はい」
言われ、アイシアは純一の先端に顔を寄せていく。
近づけば、漂ってくるのは濃密な男の臭い。
(純一の匂い……すごい……)
男性のきつい性臭を嗅がされ、無垢な少女の理性は静かに壊れていく。
「………ちゅ」
下腹部に甘い疼きを感じながら、アイシアはその桜色の唇を男の亀頭に触れさせた。
キスをした事も無い少女の唇に男の味を覚えさせてやった。
そんな征服感が純一の心を支配する。
「アイシア……一回だけじゃなく、何度もするんだ」
下された命令に従うように、アイシアは二度三度と亀頭にキスをする。
「んっ、ちゅ……ちゅぅ」
やがて唇だけでなく、舌をも使いアイシアは純一の肉棒に奉仕を始めた。
先端をぺろりと舐め、茎の方にもキスの雨を降らせていく。
音夢やさくら、ことり達に比べればまだまだぎこちない動きではあったものの、
それが逆に新鮮な刺激となって純一を高めていく。
「んっ、ちゅう、ぺろっ……純一ぃ……んむぅ」
甘い声で名を呼ぶアイシアに、純一は頭を撫でて答えてやる。
「あぁ……気持ちいいぞ、アイシア」
さらさらの髪を梳いてやると、アイシアは嬉しそうに目を細めた。
純一が喜んでくれると、彼女も嬉しかったから。
出来るだけ、出来るだけ純一に密着できるような体勢で、懸命に奉仕を続けていく。
それは、まだ自分の中に芽生えた愛も、それを伝える言葉をも知らぬ少女の声無き声でもあった。
舌と唇で、時には手を使って必死に純一の肉棒に尽くしていくアイシア。
先走る汁を躊躇わずに吸い取り、口の周りをべとべとにしていく。
いつしか魔法の事は、彼女の頭から消え去っていた。
ただ純一に喜んで貰いたい、もっと撫でてもらいたいなと、心の何処かで思うだけだった。
そうしてしばらくの間、部屋には荒い呼吸音と淫靡な水音だけが響いていた。
「アイシア、もうすっかりお兄ちゃんのおちんちんに夢中だね……。
無理もないかな、あんな凄い匂い嗅がされ続けたら……女の娘なら、誰だっておかしくなっちゃうよね」
さくらが見つめる先の少女には、二人の行為を不思議そうに見ていた頃の面影はもう無い。
男性の愛しい匂いと味に酔い、奉仕する喜びに蕩けた娘がいるのみだった。
そうして、やがて純一に限界が訪れる。
「くっ……!アイシア、出すぞ!」
純一はアイシアの頭をぐっと引き寄せ、限界まで高まった自分の欲望を解き放つ。
「んっ……!?んっ、んんーー……!!」
びゅく、びゅくとアイシアの口の中に白濁の液が注がれていく。
今日二回目でも、全く勢いも濃度も衰えないそれが少女の喉奥に溜まっていく。
「ん、んぅ……っ!」
アイシアは苦しそうにしながらも、少しずつその精液を飲み込んでいった。
こく、こくと細い喉を鳴らす度、純一の濃い精子が自分の身体に染みこんでいく。
男性のミルクを胃の中に取り入れられ、身体の一番奥が甘い疼きを訴えてくるのが分かる。
「んくっ………ぷぁっ」
ようやく全てを受け入れ終え、淫猥な吐息を吐く。
初めての射精を受け、まだ頭の中は熱く痺れたようになっていた。
「ふぁ、あ……」
「頑張ったね、アイシア。でも、一日だけじゃあ特訓の効果が無いから……
これから毎日、お兄ちゃんにお願いして精子飲ませてもらうんだよ♪」
これから、毎日。
こんなすごい事を毎日したら、自分は壊れてしまうかもしれない。
でも、純一が喜んでくれるなら。
そうしてもっと強い魔法を覚えて、もっと幸せに出来るのなら。
他人を幸せにするのが、自分の幸せだと信じていたから。
その相手が自分の中で特別な人だという事には気付けぬまま。
「……はい!私、頑張ります!」
純粋な笑顔で、彼女は答えるのだった。