夢の中へ  −−アイシアの幸せ−−  
 
――キミはそうして、自分の番がくるまでリセットし続けるの・・・?     だったら・・・―――  
 
「―――――あっあっあっ、あんッ!  純一ぃ〜っ!!」  
実に2年ぶりに薄紅色の衣を取り戻した、桜の木々に覆われる三日月型の島。  
その大きいとは言えない島の中の、とある児童公園。  
桜の大樹のあるそれとは場所も規模も違う、とてもとても小さな空間。  
数える程しかない遊具施設と水飲み場。  
トイレットペーパーなどとっくの昔になくなったまま忘れ去られて久しい公衆トイレ。  
背の高い茂みと、桃色の花弁を舞い散らせる木々と。  
段ボールやベニヤ板、水色のビニールシートで覆われた職と財を持たない人々の小屋があちらこちらに建ち並ぶ。  
海岸沿いではなく、島の中程にある森の中の小さな公園だった。  
子供の姿など一人も見あたらない、辺りに民家など見受けられない  
何故こんな場所に立てたのかと必要性を問われるような、  
誰からも忘れ去られてしまった、静かで寂しい場所。  
そんな寂れた公園の薄暗い茂みの中から、場違いな艶を含んだ声が聞こえていた。  
「もっと、ぅん・・・・もっとォ、純一っ、もっと深く!!」  
いきり勃つ怒張の上に跨り腰を振る。  
夏とはいえ屋外で全裸になり、犬や猫のように辺りに構わず行為に耽る様は  
はっきり言って異常だった。  
「へぁ・・・あ〜〜〜〜・・・・あぅ! 好き、好きぃ〜〜〜っ!! 純一、もっと下さい・・・あむぅっ!」  
目の前にいたもう一人の男のイチモツに小さな口でしゃぶり付き、頬張る。  
「んぐ・・・・ちゅううぅぅッ、ん・・・れる、んん〜〜〜っ!」  
肉の塊全体にツバをまぶし、くびれた部分や浮き出た血管にそって舌先を這わせ  
長い年月溜まりに溜まった垢をキレイに舐め取る。  
まるで好きな人の物であれば汚いものなど何もないとでも言うかのように。  
「ぷぇ・・っ!?  アッァッアッアッ!  そこ、そこイイですぅっ!!」  
地面に寝転がる男からの突き上げに、思わず舐めしゃぶっていた男根への奉仕が止まった。  
 
「―――――・・・!?  ゲ、ゲンさん・・・それにタカさんも、なにやってるがね!?」  
先ほどからひっきりなしに聞こえてくる女の喘ぎに何事かと思い  
茂みを掻き分け、一人の男が痴態の繰り広げられている場所に顔を出す。  
全然知らない男だった。  
ついでに言うならば、今アイシアとまぐわっている男達も全然知らない顔で  
この忘れ去られた公園を住処とする、不労者集団の面々である。  
先ほどからアイシアは彼らのことを『純一』と呼んでいたが、顔立ちはおろか  
背格好や年齢もかけ離れていて、似ている部分を探す方が困難であった。  
「いやなに、このお嬢ちゃんかいきなり裸で迫ってきたもんだからよぅ」  
アイシアはまだ未発達で、はっきり言って凹凸などほとんどない。  
大事な部分も産毛すら生えてはいない。  
しかしながら透き通るような染み一つ無い裸身が、なだらかな胸部の頂きに息づく桜色の突起が。  
毛が生えていないおかげで丸見えの秘部が、潤んだ瞳が。  
幼いながらも彼女がオンナであることを感じさせ、日照り続きで  
女体など忘れて久しかった彼らを雄の性衝動へと駆り立てた。  
良識とか児ポ禁なんて、クソッくらえだった。  
黄ばんだ歯を嬉しそうに覗かせ、どうせだから混ざらないかと今来た男に持ちかける。  
「そだそだ、据え膳喰わねばナントカって言うじゃないか。  ほれ、まだ穴はもう一つ開いてるぞ」  
北欧生まれの白磁のような肌を持つ少女にしゃぶらせていた男が、グニッと尻朶を押し開き  
下から突き上げる男からもたらされる性の快楽に合わせて弛緩・収縮を繰り返す菫色の窄まりを露わにし、  
新たにやってきた不労者仲間にこの宴に加わるようにと勧める。  
「エッ!? あ・・・・・・いやあ、いいのかなぁ・・・?」  
などと遠慮がちに言ってはいるものの、薄汚れて所々破れたズボンの股の付け根の部分は  
しっかりとテントを張っていた。  
 
 
「いいんでね? ほれ、この嬢ちゃんも欲しがっちょるがな」  
そう言って、まだ未発達の胸の頂きにある突起をキュッと摘む。  
「ひゃあぅ!?  ア〜〜〜〜ッ!  純一ぃっ・・・きて、来てぇ〜〜〜〜っ!!」  
ブッスリと野太いマラをくわえ込んだ幼い恥裂からトロトロと愛液を垂れ流し  
排泄のための穴を期待にヒクヒクと震わせる。  
3人目の不労者は「じゃあ、失礼してオレっちも・・・」とベルトを外す手ももどかしそうにしながら  
アイシアの全ての穴を埋めるべく近づいて行く。  
 
「・・・・・・・・・・・・・・・・」  
だが、そんな彼らの様子を冷ややかに見つめる二つの青い瞳があった。  
嘲るような、それでいてどこか哀れむような。  
そんな視線。  
夏の終わりの風にたなびく、長い金糸のような美しい髪。  
頭髪の左右の結いを束ねる髪留めは、その瞳と同じく青色のリボン。  
揺れる黒のケープ。  
一本の桜の樹のそばに立ち彼女らを眺めていたのは、枯れない桜を作り出した老婆の血を引く孫娘・芳乃さくらだった。  
立っている場所は、アイシアと群がる不労者たちから10メートルと離れていない。  
にもかかわらず、彼らは誰一人として気付かずに行為に没頭している。  
まるで黒衣の魔女の存在になど気付かないかのように。  
 
幼い姿の魔法使いは、心の中でセックスに夢中になっている彼女に呟く。  
(――――『ダ・カーポ』なんていらないよ。  
これは音楽じゃないんだ。  
『始めに戻る』なんて、そんな記号はいらない。  
あってはならない。  
音楽に例えるにしても、これは終わりのない・・・まだ未完成の曲。  
連綿とどこまでも続いて行く、どこまで続くかわからない  
お兄ちゃんと音夢ちゃんが、愛し合う彼らが奏でる二重奏。  
途中、穏やかでゆったりとした小節もあれば、強く激しい小節もあるだろうけど。  
だけど、楽譜の上と下。  
右手と左手。  
ト音のパートとヘ音のパート。  
ときには離れ、ときには近づき交差し。  
どちらが欠けても成り立たない。  
支え合い、互いがあるからこそ続いて行ける。  
そんな二人の関係。  
その行く手を邪魔してはならない。  
誰にも壊させない)  
ことりや眞子、みんなは二人の関係を認め祝福してくれた。  
ただ一人、あとから来た――2年前にはいなかったアイシアを除いて。  
かつて音夢とは純一を掛けて激しい恋の鞘当てならぬデッドヒートまで繰り広げた間柄。  
気持ちは、わからなくはなかった。  
だけどこれは皆もう納得済みのことで、いまさら二人を引き離すことなどできなくて。  
大好きな彼らだからこそ、これからも上手くいって欲しいと思う。  
そんな二人を見守って行きたいと思う。  
 
(だから・・・・・邪魔はさせない)  
男達に囲まれ悦びの声を上げ続ける小さな少女に、吐き捨てるような視線を送りながら  
初音島の魔女は心の中で一人ごちる。  
(もうリセットなんてさせないよ。  
アイシア、キミは誰もが幸せになれるようにと言っていたけれど  
結局は自分が幸せになることを心の奥底で望んでいたんだ。  
そのために愛し合う二人を、身を引いたボクたちの気持ちを踏みにじったんだ)  
両端で結った金髪の房が風になびき、すいっと目が細められる。  
(そんなに幸せが欲しいのなら、幸せになりたいのなら・・・・  
・・・・・・・・・・・だったら、与えてあげるよ。  
幸せな、キミが望む全てを・・・・・・・・『夢』という形で、ね)  
 
 
アイシアは全ての男性を純一と思い込み、見ず知らずの薄汚い不労者たちに身体を預け  
頭の中で幸せな夢を見続ける。  
それはさくらが、救いようのない彼女に与えた罰だったのかもしれない。  
 
 
「はぁうっ! やぁっ・・・!   そこはちが・・・、お尻ぃはむぅっ!?   んっんんぅ・・!」  
3本目のペニスをその幼い後ろの穴にくわえ込み、それでも喜悦の表情を浮かべる。  
端から見るとただの輪姦や乱交だったが、当のアイシアは本当に嬉しそうに  
愛しい人と身も心も一つになっているときの幸せそうな顔で、プラチナブロンドの髪と  
抱きしめれば簡単に折れてしまいそうな程の小さな腰を振り乱していた。  
 
黒衣を纏った魔法使いは木の幹についていた手を離し、夢に溺れる少女に背を向ける。  
(これならずっと、幸せでいられるよ。  
幸せなまま、決して覚めることのない夢を見続けたまま。  
この枯れない桜の樹の花弁が全て散ってしまうその時まで、永遠に)  
 
―――――さようなら、アイシア・・・・―――――  
 
瞳を伏せ、降り積もった桜の花びらを踏みしめ歩き出す。  
悲しげに寄せられた眉。  
穏やかな風に、ひとひらの雫が溶けて流れる。  
「純一に選んで貰えるなんて、とても嬉しいです。 幸せです!   だからもっと、もっと下さい・・・・  
 もっとわたしを見て下さい、触れて下さい・・・・・・もっともっと、愛して下さい」  
彼女の心は、ずっとここに捕らわれたまま。  
この場所に、この行為に縛られたまま。  
一切の不満を感じず、永遠に覚めることのない夢を見続ける。  
幸せに浸る友人だった少女の嬌声を背に受けながら、芳乃さくらは愛の牢獄を後にした。  
 
ハッピー(?)エンド  

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