ちらり、と思うよな?たまには、「犯る」ほうじゃなくて「犯られて」みたいって。  
え、思わないか?ちっ、かったりぃな…  
ま、俺はちらっと思っちまった訳だ。  
 
                     □■□  
 
足元が揺れる。地面が揺れて、とても立っていられない。  
だけどべつに、地震が起きているわけでもなんでもない。  
ただ、俺が後頭部を殴られて倒れただけなんだから──  
 
視界が戻る。瞼の裏の黒い視界が、暗い視界に取って代わる。  
…身動きできねー。なんか縄で体中変な台に括られてる。  
例えるなら人型の介護ベッド。微妙に腰の辺りから上半身だけ起こすようなカタチの台に、  
手首足首と胴体がしっかり固定されているのだ。  
周りを見渡そうとして目に入ったのは、目の前に置かれた学校の椅子と同じくらいのサイズの椅子と、  
小奇麗な四角い部屋。  
しかしココは薄暗く、その小奇麗さにまるで実験室みたいなイメージを受ける。  
「みたい、じゃなくて、その通りっすよ。純一くん」  
鈴のような声に反応して首だけで後を振り返る。  
明るい色の髪と、整った顔立ち。  
学園のアイドル、そして俺の彼女。  
曇った表情の白川ことりがそこに居た。  
「ははは、何の冗談だよことり?とりあえずこの縄ほどいてくれないか。あと、ココどこだ?」  
声が震えてるのが、自分でも解る。  
だって、ことりの顔は明らかに  
「冗談、なんかじゃ、ないっす。」  
そう言っていた。  
「その縄は解いてはあげられないけど、ココは天枷研究所の地下の、お姉ちゃんの私的実験室っす」  
実験室…  
あの人、こんな台持ち込んでどんな実験したてたんだ…?  
「あ、その台は違うよ。この研究所で開発されてるアンドロイドさんのための台っす。  
 本来は拘束する為に使うものじゃないし」  
「そ、そうか。で…、なんで俺はこんな状態になってるんだ?」  
淡々としたことりの声と対照的に、俺は声の震えが止まらない。  
それでも、まだ何かのびっくりか何かだろうと普段どおりの態度を貫こうと試みる。  
「だから、冗談なんかじゃないよ…」  
僅かにことりの声に怒気が混ざる。  
「なっ、じゃあ一体なんで俺はこんなモノに縛られてるんだよ!?」  
頑なに冗談ではないと主張することりに、思わず声が大きくなる。  
「うるさいっすね…」  
呟き、部屋の隅に行くことり。そこは俺からは死角になって見えない。  
そして俺に近づく  
びーっ  
文化祭の準備なんかの時によく聞く、ガムテープを引く音。  
「な、にを…むぐっ!?」  
おもむろにガムテの接着面を俺の口に押し付ける。  
「純一君、うるさいっすよ。同じ事をいちいちステレオで聞くハメになる私の身にもなって欲しいな」  
「???」  
ことりの言う事は良く解らないが、確かなのは何かとてもヤバイと言うことだ。  
もしかして俺、暦先生の実験台にでもされるのだろうか…?  
かといって抵抗する事も出来ず、ただ身を固める俺の股間に、ことりが跪く。  
「?」  
そして何の気なしに俺に手を伸ばし、  
「ふふっ」  
普段の健全なイメージとはかけ離れた、小悪魔的な笑みで俺のズボンとパンツを引き降ろした。  
 
「????!!」  
いや、別にことりに俺の『男』を見せるのは初めてではない。それどころか肌を重ねてすらいる。  
しかし、なんというか。  
こんな状況でも、いや、この状況だからなのか?ことりの表情がとても蟲惑的に見えて、  
「純一君、もうこんなに…」  
哀しいかな、俺は半ば全開になっていた。  
薄暗い中で尚白い指が、『男』の上を滑る。  
「…っ」  
コレばかりは仕方無い。情けない事に2,3回擦られただけで完全に全開になってしまった。  
「もういい、かな」  
小さく呟き、真正面の椅子に座ることり。  
いや、全然良くない。  
別に望んだわけではないが、それでも中途半端で終られると、とても困る。  
「安心していいよ。まだまだ終らないから…。」  
言って、ことりは椅子に座ったまま靴を脱ぎ  
「よいしょっと。え、と、こう、かな?」  
あろうことか黒いソックスを穿いたままの足で俺をしごき始めたのだ。  
「んー!!?」  
理解できない。なんでこんな事になっているのか。なんでことりがこんな事をしてるのか。  
なんで──  
                   ──こんなに気持ちいいのか  
最初は足の裏。  
サオを両足の裏で捩るように擦られる。  
左足が手前に、右足が奥に。右足が手前に、左足が奥に。  
左足が手前に、右足が奥に。右足が手前に、左足が奥に。  
左足が手前に、右足が奥に。右足が手前に、左足が奥に。  
足の裏を擦り合わせる間に、俺が挟まれている。  
解ってる、これは異常な行為だ。別段俺だってこんな趣味は持っていない。  
でも、その、  
どうしたって感じられる股間の刺激と、  
スカートの中に見え隠れする心持湿った黒い下着とが、強制的に興奮を、快感を高める。  
「ぐっ…」  
「ふふふ…」  
耐え切れず声を上げた頃、動きが変わった。  
左足の五指でサオの上側を押さえ、右足の親指で尿道をなぞられる。  
指の腹で、上から、下。今度は爪側で、下から、上。  
上、下。下、上。上、下。下、上。上、下。下、上。上、下。下、上。  
足だからコントロールが効き辛いのか、時折力の入れ方にムラが出る。  
上、下。下、上。上、下。下、上。上、下。下、上。上、下。下、上。  
だが段々と、ムラによって生まれる淡い痛みすら快感に変わっていく。  
「ん゙、んんん…!」  
一擦り毎に理性が削られていく。快楽に削り取られていく。  
 
「純一君…んっ…」  
不意にことりが足を『男』から離し、俺の体に自身の体を重ねてきた。  
何処で覚えたのか。妖艶な手つきで俺の首筋を撫で、胸をなぞる。  
余りにも近い甘い香りに脳がオーバーヒートする。  
 
満足したのか、一頻り撫で終わった後、ことりは椅子に座り直し行為を再開した。  
気付くと、いつの間にかまたパターンが変わっている。  
両足の五指で全体を掴み、上下にしごき上げる。  
オーソドックスな動きではあるが、やはり足では力加減が難しいのか。  
今までに感じた事のある動きで、感じた事のない快感を送り込まれる。  
(ヤバ、限界近いかも…)  
射精に向け、一段と張り詰める『男』と、震え出す腰。  
「ふうん…もうイキそうなんだ」  
くすり、と微笑んで、更に足を速めることり。  
こんなに激しくされたら、ここまでで快感に麻痺している下半身でも堪ったモンじゃない…!  
「ん、んん、んんんん〜!?」  
…そのまま、おれは、射精した。  
 
…いや、させて貰えなかった。  
寸前で足の動きが止まった上、あろうことか親指で尿道の根元を押さえつけられている。  
これではとてもじゃないが射精出来ない…ていうかイタイ。マジ激痛。  
ゴソゴソと何処からか輪ゴムを取り出し、俺の局部に巻き付けることり。  
「そろそろ、大丈夫っすよね」  
ぺりぺりと音をさせて口のガムテープが剥される。  
「ぷはぁっ!」  
息苦しかった呼吸が開放される。  
鼻から呼吸は出来ていたが、それでも苦しいモンは苦しい。  
いや、今は下半身が別の意味で苦しいが。  
「はぁっ、はぁっ、こ、ことり、なんで…」  
なんで…イカせてくれないのか?  
「だって、純一君ばっかりずるいよ…」  
ことりが俺に跨る。  
そして、『女』に『男』を宛がい、腰を沈める。  
「ん、んはぁっん…」  
「ぐ、がぁぁぁ゙!!!」  
ことりの甘い声と、俺の絶叫。  
当然だ。今にもイキそうなのに、輪ゴムが邪魔して射精出来ない。  
キモチイイ。が、クルシイ。  
「ん、ん、あ、あぁぁ…ふっ」  
「お゙、お゙゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぅ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!?!」  
身をくねらせ、激しく俺の上で踊りまくることり。  
だがそれどころじゃない!破裂してしまう!俺の『男』が!  
ヤメロ!ヤメテ!!ヤメテクレ!!!ヤメテクダサイ!!!!  
「ん、あっ、だ、ダメ…私ももうさっきので濡れちゃって…」  
ことりの中が収縮する。それは精液を搾り取ろうとする運動だ。  
しかし今俺は射精する事を許されておらず、結果快感がそのまま苦痛に摩り替わり、残った理性を握り潰す。  
「…っ!あっ!ダメ、イ、イ…じゅ、純一君も一緒に…」  
刃物か何かを持っていたのか。ことりが手を股間に伸ばすと、驚くほど簡単に戒めが解けた。  
苦痛が今度は痛みすら伴う強い快感に変わる。  
まるで長いトンネルから一気に外に抜けた時の様だなと、どこか覚めた所で考えた。  
「ん、んはああぁぁぁぁっ!!!」  
「うっ、ううぅぅぅぅぅぅおぉぉ……!!」  
そして今度こそ、おれは、射精した。  
 
                     □■□  
 
「ことり、なんでこんな事を…?」  
問う。視点が定まらない。  
「それはね…」  
答え。声もぼやけている。  
「アサクラクンガノゾンダカラダヨ…」  
振動が体に響く。  
体は縛られたまま。  
何の魔法か、再びムスコが力を得る。  
 
ココは地下室。  
                      ズット…  
なら、きっと夜は明けないだろう。 永久に…  
 

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