<二次予選第3試合 工藤叶 vs 月城アリス>  
 叶は呼吸を整えて入場のコールを待っていた。  
 生徒たちの前でのカミングアウト、それは彼女の今後の運命を左右する  
ことに間違いなかった。勝てば今までの悪ふざけをする親友から一気に  
恋人候補に成り上がれる、いや、それ以上になることも可能であろう。だが  
負ければ・・・ぶざまな敗北を喫すれば朝倉純一の恋人どころか、退学も  
有り得る。  
 彼女の出で立ちはいつも制服、Yシャツに長ズボンの男子生徒の服装。  
いつもは苦しい胸のサラシも今日は何の苦にもならない。おそらく、これが  
彼女の力なのだろう。  
「青龍の方角!工藤叶!!」  
 コールがかかると同時にダッシュする。そして木の柵を開けず、そのうえを  
飛び越え、宙返りして着地する。力がみなぎっているのを感じた。  
 
 アリスは目をつぶり、ピロスと会話していた。その内容は眼前の敵、工藤叶を  
如何にして打倒すべきかの方策である。勝利の方程式を立てるも彼女の不安は  
収まることはなかった。彼女の持つ能力、推定される工藤叶の能力、これらを  
比較した場合、月城アリスにとって工藤叶という相手は相性の悪い相手であった。  
 だが、彼女は自己の能力を確認した後、執事たちとともに考えられうる限りの  
想定を行い、クリアしてきていた。ならば工藤叶相手に勝つことは可能であろう。  
力を貸してくれた人たちのために彼女は負けることができなかった。  
「白虎の方角!月城アリス!!」  
 コールとともに彼女はしとやかに入場する。その出で立ちは運動に不向きな  
黒いお嬢様スタイル、取り合えず、爪は隠しておくべきであると。  
 
「まさかと言うべきか、それともやはりと言うべきなのか。  
 工藤叶、男装スタイルで登場です」  
「一方の月城アリスは動きなど考えていないかのようなお嬢様スタイル。  
 何か秘策でもあるのでしょうか?」  
「試合開始!!」  
 太鼓の音と同時に叶はアリスに猛突進を行い、そして一閃、回し蹴り。  
「命中〜!!いや、違います、これは?・・・人形なのかぁぁぁ!?」  
 アリスと思われたのは人形であった。粉々に砕けた残骸が闘技場に  
散らばる。  
「なんだぁ!?月城アリスが、月城アリスが何人もいるぞ!!」  
 闘技場には5人のアリスが存在していた。  
「それが・・・能力か!」  
 叶はその5人のアリス全てに攻撃を敢行した。次々と砕け散る人形、  
そして本体らしきアリスにパンチを入れるその瞬間・・・  
「跳んだぁ!アリス、飛び上がって・・・月面宙返りで着地したぁぁ!!」  
 叶は逃げたアリスを追いかける。アリスは後ろに下がりながらも人形で反撃を  
敢行する。しかし、その人形はことごとく叶により壊され、無残な残骸と化していく。  
「逃げるアリス!追う工藤!その差は徐々に縮んでいくぞ!!」  
 叶は徐々にアリスを追い詰めていき、そして射程に捉え、ストレートパンチを  
放った、しかし・・・  
「工藤のパンチ!いや、当たっていません!外れています!!」  
 タイミングは合っていたがパンチは外れた。しかし、それはアリスが避けたの  
ではなく叶がワザと外したかのようであった。  
 叶は再度、今度は左アッパーカットを行うが外れる。だが、これは明らかに  
アリスが避けたのではなく、当たる瞬間に叶が身体を後ろに反らしたために  
起きたことであった。  
「工藤、いったん離れた!」  
「(おかしい・・・当たっているはずなのに・・・いや当てに行ってるのに・・・)」  
 アリスは戸惑う叶を嘲笑うかのようにクスリと微笑んだ。  
 
「もう一度!!」  
 叶はアリスめがけて突進し、パンチを、チョップを、キックを放った。だが、  
そのいずれもアリスに命中することはなかった。いや、むしろ叶自身が当てない  
ようにしているかのようであった。  
「な、なにをしているんだぁぁぁ、工藤叶!?」  
 対戦相手を前に、試合中にシャドーボクシングをする叶に場内が奇異の目で  
見始めていた。叶は再度、アリスに距離を置いてとび蹴りを行った。が・・・  
「えっ!?」  
 叶はアリスの直前で大きくジャンプをし、彼女に当てるどころか、彼女の身長を  
越えて飛び上がってしまった。  
「なぜだぁ!?工藤が当てようとしない!これが月城アリスの能力なのか!?  
 ・・・って、工藤何をしているぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!?」  
 実況の田端が絶叫する。工藤叶は自分のズボンのベルトを外していた。  
「えっ?えっ?えっ?」  
「おい、あれ・・・何に使うんだ?」  
 会場中が叶の奇行に驚いていたが、誰よりも一番驚いていたのは工藤叶本人  
であった。  
「(な、なんで・・・ベルトを・・・・・・?)」  
 だが、次の叶の行動はさらに観客を驚かせた。  
「工藤が・・・ズボンを!?チャッ、チャックを壊したぁぁぁ!??」  
 叶は自分のズボンを持つと両方に無理に引っ張った。その力に耐えられずに  
チャックが壊れた。  
 そのとき、叶めがけて人形が襲ってきた。叶は人形に回し蹴りを食らわせて  
破壊したが・・・  
ビィィィィィ  
 叶の手はズボンを持ったために回し蹴りをした際にズボンを大きく破いてしまった。  
「人形がまたぁ!!」  
 叶目がけて、別の人形が襲い掛かってきた。叶は逃げようとしてがズボンに足を  
取られて、転等しそうになる。  
ビィィィィィ  
 ズボンの裂ける音が、闘技場に響く。何とか人形を撃退したときには叶のズボンは  
引き裂かれ、逃げる際に靴と靴下が脱げてしまっていた。  
 更に人形が襲いくる、叶はまた防戦をするが・・・  
ブチ、ブチ、ブチ  
 叶は自分で、自分のYシャツのボタンを引きちぎった。  
「な、何をしている、工藤叶!なぜ、脱ぐ!?何を考えているぅぅ??」  
 工藤叶は自分で自分のズボンとYシャツを引きちぎってしまった。  
 今、工藤叶の身にしているものは胸のサラシと女物のパンツだけで  
あった。  
 
「くぅぅ・・・・・・」  
 観客同様、叶にも自分の行動が理解できなかった。襲い来る木人形から  
身を守り、攻撃しているはずなのに自分の手は自分の服を引き裂いてしまう。  
なぜ、こんなことが起こるのか彼女には理解できなかった。ただ、それが  
自分の対戦相手である月城アリスの能力なのではないかと思い始めていた。  
「ああっ!!」  
 また叶の手は彼女の意思に反して勝手に動こうとし始めた。叶はできる限りの  
力で身体に押し付け、動くのを阻止した。その時、彼女は・・・いや、観客の目にも  
はっきり映ったのはアリスと叶の間に存在している糸であった。  
「糸・・・?」  
「糸です・・・月城と工藤の間に糸が・・・紫の糸が張られています・・・・・・  
 これは一体、なんでしょう?」  
 その糸はアリスの手から発し、叶のパンツに結びついていた。そしてアリスが  
手を動かすと、紫の色が増して叶へと向かって行った。  
「ひゃあっ!!」  
 叶の手は大きく開こうとする、叶は慌てて、その手を押さえる。  
「一本じゃ・・・もう無理・・・・・・」  
 アリスの手から何本もの糸が伸び、叶のパンツに着いていった。アリスと叶の  
間には明らかに見える糸が張られた。  
「何の・・・つもり・・・!?」  
 叶の問いにしかしアリスは応えない。叶はアリスに向かって走り出した、が・・・  
「くはぁっ!あっ!!」  
「「おおっ!!!」」  
 アリスの手から紫の光が糸を伝って、叶に延びていく。それがパンツに達した  
次の瞬間、叶の手は自らの胸のサラシを解いていた。緩められたサラシは力なく  
下に落ちる。制御された叶の手はサラシを持つことが叶わずにかろうじて胸を  
隠すことしかできなかった。  
「なんと!工藤叶が操られているかのようだ!まさに操り人形だぁぁぁ!!」  
「マリオネット・・・・・・」  
「くっ!」  
 叶がパンツから糸を引きちぎろうとした、しかし、アリスはまた光を伝える。  
ビリィィィィィ  
 音高くパンツが破れる。叶は自分の手でパンツのお尻の部分を引き裂いていた。  
いまや工藤叶が身に纏っているのはボロボロになった女物のパンツだけである。  
「降参・・・する・・・?」  
 叶の首は前後に振られたが、彼女の発した声はそれとは違っていた。  
「しない!絶対しない!!」  
「・・・そう」  
 アリスは残念そうに首を振ると、叶に対する攻撃を開始した。次々と光がアリスから  
叶に向かっていく。  
「くっ・・・、くそ・・・はうっ!!」  
 自分のパンツに延びようとする手を叶は懸命に抑えていた。アリスは攻撃を緩める  
ことなく続けた。二人の大きな動きは止まり、攻防は工藤叶のパンツに移った。  
 
「ア・リ・ス!ア・リ・ス!!」  
「あと1枚!あと1枚!!」  
 観客らはその瞬間を期待して、アリスに声援を送る。  
「・・・ぶざまね、叶さん」  
 理事長は孫娘の恥辱を冷たく見た。祖母と純一の見ている前でこんな恥辱に  
満ちた敗北はできない・・・叶の手は渾身の力で耐えていた。  
「あと1枚!あと1枚!」  
「聞こえるでしょうか、この大声援!観客は月城アリスの教育的配慮勝利に  
 期待しております!!」  
 必死に耐える叶の力はすさまじく、戦いは小康状態に陥った。  
 
 モニターは歯を食いしばる工藤叶の顔、手で隠された胸、丸見えになった尻、  
踏ん張る足、そしてボロボロになったパンツをアップにして映し出していた。  
「しかし、月城アリス嬢も存外サディストだな・・・」  
「そうじゃないよ、杉並くん」  
「ほう・・・何故かな、芳乃さくら」  
「マリオネットの魔法はかなり難しく・・・修練がいるんだ」  
「ほう」  
「生理学・解剖学・運動学なんかの深い知識がいるんだ。  
 簡単に言うと、あの紫の糸を身体の的確な位置にくっつけないとダメなんだ」  
「それはなぜ」  
「正しい位置につけないと上手くコントロールできない・・・いや、コントロールが  
 難しくなるんだな」  
「だが、月城アリスは工藤のパンツに付けているぞ」  
「それはね・・・アリスちゃんなりの作戦かな?」  
「作戦?」  
「うん、動いている相手の的確な身体のポイントに紫の糸をくっつける・・・  
 これをやろうとしたら、かなりの修練をつまないといけない。でも・・・」  
「実際の練習期間は3〜4日・・・」  
「そう。だから確実にくっつけることのできる服を選んだということだね。  
 それに服ならば身体との接触面が多いからコントロールする信号を送りやすい」  
「いいことづくめだな」  
「でも大きな欠点があるよ。効率が悪すぎるんだ」  
「どのくらい」  
「そうだね、鉛筆を持ち上げるのと・・・う〜んとね、鉄骨を持つくらいかな」  
「そのわりには工藤をさくさく動かしていたように見えたが」  
「それはね・・・ちょっとパンチするように動かして」  
 杉並は宙に向かってストレートパンチを放つ、さくらはその手を横から軽く押した。  
パンチは斜め横に向かって動いた。  
「つまりこう。前に向かって押す力に少し横の力を加えると斜めに進む。ベクトルの  
 応用だね。アリスちゃんは工藤くんの力を利用して、脱がせていったんだよ」  
「ふ〜ん。だが、それだったら自分で自分を殴らせてしまえば・・・」  
「それは無理かな。だいたい自分で自分を失神するほど殴らせるのにどのくらいの  
 力が必要かな」  
「だから・・・」  
「そう、だからアリスちゃんは工藤くんの服を剥いでいったんだ。力を節約するために。  
 まずYシャツに糸をつけてズボンを脱がせて、次いでパンツにくっつける。  
 それでどんどん服を脱がせていく。アリスちゃんの作戦勝ちかな」  
 
「とすると・・・工藤の勝ち目は?」  
「ほぼないね。糸にコントロールされている限り、思うように動くのは難しいかな。  
 コントロールから逃げるんだったら、パンツを脱げばいいんだけど・・・」  
「脱いだら・・・負けだな」  
「うん。まあ、あるとしたら、アリスちゃんのスタミナ切れかな。  
 工藤君の胸とか尻とかばっかり映しているけど、アリスちゃんをよく見てよ。  
 かなり汗を掻いているでしょ。アリスちゃんの心身の疲労はかなりのもんだよ」  
「確かに・・・」  
「だから、もし・・・工藤くんが糸のコントロールから逃げることができたら・・・・・・  
 アリスちゃんの対抗する力は残されていないからね」  
「ふむ・・・ならば、それをする方法は?」  
「う〜ん、あるのかもしれないけどボクには思いつかない。  
 それより、アリスちゃんが倒れるより工藤くんのパンツが破れる方が先じゃないかな」  
「そうか、ところで一つ聞いていいかな。芳乃さくら選手」  
「な〜に」  
「お前だったらどっちと戦いたい?」  
「う〜んと・・・特にないね、それに・・・・・・」  
「それに?」  
「どっちが来ても、ボクの敵じゃないよ」  
 闘技場内では戦いは膠着状態に陥っていた。叶のパンツを脱がそうとするアリスに  
それと対抗しようとする叶、手詰まりといっていい状態が続いていた。単純な押し引き  
ではにっちもさっちもいかない。二人ともそう気付いていた。だが次にどうすれば  
いいか、二人は気付いていなかった。  
 それを先に気付いたのは月城アリスだった。  
 
「ひゃうっ!」  
 突然、叶は妙な叫び声を上げる。その刹那、叶の身体は硬直し、胴に  
抑えつけられていた左手が僅かに動いた。  
「はっ・・・いぅっ!・・・く・・・ふぅあぅ!!」  
 叶は喘ぎにも似た叫び声を上げながら、身体を反応させた。  
「なっ・・・何を・・・ひゃんっ!ひゃんっ!・・・はふっ・・・はふぅ・・・いぎっ!!」  
 叶が叫び声を上げるたびに左手は徐々にパンツに向かって降ろされて  
いった。その様に観客はいつしかアリスコールを止めて固唾を呑んで推移を  
見守り始めた。  
「ひくっ!ひくっ!・・・こ・・・こんな・・・はぁぁぁっ!!」  
 思うように身体を動かせない叶はなすがままにされていた。  
「う〜ん!剥くだけでは飽き足らないのか!月城アリス。工藤叶を責めて  
 おります!!」  
「いや、彼女はサーカスの出身と聞きます。観客が何を求めているかを  
 知っているんでしょう。多分、サービスの一環なんでしょうね〜」  
「さすがは月城アリス、魅せてくれます!!」  
 だが、さくらはこの実況と解説に首を振った。  
「・・・わかってないなぁ」  
「サービスとは思わないが、残念ながら工藤をイカせ・・・もとい責める理由が  
 分からないが・・・・・・」  
「簡単なことだよ、アリスちゃんに工藤くんと力比べをする気がないだけだよ」  
「力比べ?」  
「そう、力比べ。マリオネットと言っても結局はアリスちゃんが糸で送る力で  
 工藤くんの手足を動かしているだけだから。工藤くんが思い切り力を入れて  
 構えてしまえば、動かすは難しくなるよ」  
「そんなもんか」  
「とどのつまりは、無理矢理手足を動かしているだけだからね。今までは  
 工藤くんの動きに合わせていたから比較的少ない力でできていたけど  
 力を込めてしまえば困難になるよ」  
「確かに。パンツ1枚になった段階から両者は動かなかったしな」  
「いや、工藤くんは動いていたよ。少しずつだけどジリジリと間合いを詰めて  
 いた・・・ほとんど動いていないように見える程度だけどね」  
「そういえば・・・僅かだが・・・・・・」  
「対戦している工藤くんからはアリスちゃんの消耗具合がよく見えている。  
 だから持久戦に持ち込もうとしていた。前進してくる工藤くんを抑える  
 ためにもアリスちゃんは力を使い続けなければならない」  
「だが、工藤の方も・・・」  
「工藤くんはほとんど消耗していないよ。いや力勝負になったら圧倒的に  
 有利だよ。身長差20cm、この差はウエイト差であり、力の差にもなる」  
「工藤が163、アリスが141だからな」  
「前言を撤回するよ、アリスちゃんが工藤くんを押さえつけておくのには  
 予想外の力が必要だと。だから、見た目ほどアリスちゃん有利じゃない」  
「では、アリス嬢が工藤を責める理由は」  
「まあ、くすぐってるみたいなものかな。くすぐられて渾身の力をこめれる  
 人ってそんなにいないし・・・アリスちゃんは工藤くんの・・・感じるところを  
 責めて力が抜けた瞬間に左手を少しずつ動かしている。それを断続的に  
 行っているんだ」  
「なるほど、左手で責めて、右手で工藤の手を動かすと」  
「そう!工藤くんは右手を押さえつけておくのに必死で抗うすべがない。  
 断続的に力を送るアリスちゃんの消耗も大きいけれど・・・」  
「けれど・・・」  
「けれど・・・工藤くんの感じやすいところ、効率よく動かせるところを  
 見つけることができる」  
「あぁぁぁぁぁっ!!」  
 一際大きな叫び声が聞こえた。叶の身体は大きく反り、ついに左手は  
パンツの縁にかかった。  
 
「(こ・・・こんな・・・負け方は・・・)」  
 叶は屈辱に震えた。ただ裸にされるだけでなく、衆目の前で、いや純一の  
前で喘ぐ醜態を晒して・・・  
「いきっぃ・・・ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」  
 大きな衝撃が叶のお尻−肛門の周辺に襲い掛かった、そこはこの勝負で  
アリスに開発された叶の最大のポイントであった。  
 叶の左手はパンツを引っ掛けて大きく動いた。  
ビリリィ・・・  
 パンツの裂ける音がし始めた。  
「(まだ・・・こ、こんな負け方は・・・)」  
 叶は持てる限りの最大の力で堪えた。叶のパンツは大きく引っ張られ  
ながらもかろうじて形をとどめていた。  
 やがて疲れたのか、アリスは力を止めて、叶のパンツが引き裂かれるのは  
避けられた。しかし、次の攻撃で叶のパンツが破れるのは誰の目にも明らか  
であった。  
「(こんな・・・貴女に恥をかかせる方法はとりたくなかったけど・・・・・・)」  
「(貴女に勝つ術は・・・ほかにない・・・・・・)」  
 疲労困憊でありながらも、アリスは最後の、勝利への一撃をこめ始めた。  
「(このままでは・・・)」  
 追い詰められた叶は必死になって考え、そして最後の賭けに出た。  
「レイジングストーム!!!」  
 叶は右手で技を放つ。そして砂煙が巻き起こった。  
「窮鼠、猫を噛むか!?工藤叶、砂煙で姿を隠したぁぁぁ!!」  
「くぅっ!!」  
 アリスは糸に力を込めて、叶をコントロールしようとする。が・・・  
「なんだぁ!?なにかが・・・あっ・・・あれはパンツだぁぁぁ!!」  
 巻き起こる砂煙の上でパンツがひらひらと舞い、観客席に落ちた。  
男子生徒の観客はパンツに殺到する。  
「ついに!ついに剥かれた、工藤叶!!」  
 審判はアリスの勝利を宣告する。  
「教育的配慮!勝者、月城ア・・・」  
「まだぁ!!」  
 砂煙の中から声が上がった。  
 
「工藤叶、まだ負けを認めていない・・・おおっ!あれは!?」  
 薄れゆく砂煙の中で工藤叶が立っていた。両手は胸を隠しており、  
露にされたと思われる大事な部分を隠していなかった。その部分は・・・  
「ふんどしだぁ!工藤叶、ふんどしをしている!どこに付けていたのか!?」  
 叶はふんどしで大事な部分を隠していた。  
「これは・・・工藤マジックかぁぁ!!?」  
「サラシだ・・・あれは胸のサラシだ・・・」  
 砂煙の中、叶は外された胸のサラシで応急のふんどしを作っていた。  
「試合続行!!」  
 その声で叶はアリスに向かって突進を開始した。アリスは叶目掛けて糸を  
操るがその動きは緩慢であたることはなかった。そしてアリスの懐に入った  
叶はアリスに回し蹴りを食らわす。アリスの体は砕け散った。  
「判っている!本体はそっちだぁ!!」  
 叶は一体の人形目掛けて進む。人形は一歩下がる、叶が目前に来た時に  
後方宙返りで逃げようとしたが捕捉される。  
「発頸!!」  
 直撃を受けたアリスはそのまま床に叩きつけられた。審判が入り、叶を  
制止し、アリスの容態を確認する。  
「勝者!工藤叶!!」  
 その声を聞いた叶が、そのまま闘技場にへたり込んだ。場内は逆転勝ちを  
決めた工藤叶に大声援を送った。  
「最初は無様だったけど・・・咄嗟の判断は良かったわね。取りあえずは  
 及第点かしら」  
 理事長は孫娘の勝利に不満げながらも喜んだ。  
「(相性の悪い相手をあそこまで追い込んだのは良かったけど・・・引き出しが  
 なかったね、アリスちゃん・・・・・・でも、アリスちゃんに工藤くん、君たちの  
 戦いぶりは参考になったね。なりふり構ってたら勝てないって・・・)」  
 既に本選出場を決めていたさくらはそう呟くと気を引き締めた。  
 そして、二人が勝負をかけた対象はというと・・・  
「工藤はお尻が弱い・・・」  
 その勝者たる工藤叶は闘技場内で叫ぶ。  
「く・ど・う!く・ど・う!ふんどし、ふんどし、く・ど・う!!」  
「ふんどし言うなぁぁぁ!それとパンツ返せぇぇぇ!!」  
 
二次予選第三試合  
 工藤 叶 ・・・ Win  
 工藤のパンツ ・・・ Lost  
 

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