<決勝戦>
「場内の皆様にお知らせいたします。次の試合は30分後に開始いたします」
会場にアナウンスの声が響く。観客らは白熱した試合にヒートアップするもの、
予想があたり大喜びするもの、逆に外して券を捨てるもの様々であった。
闘技場では実行委員らが、眞子とことりの、音夢とさくらの試合で破損した
壁や床を修繕するために大童である。しかし、泣いても笑っても次の試合が
最後、誰もが最後の試合を期待して待ち望んでいた。
いまだ歓呼の声収まらぬ闘技場を後に控え室に向かう音夢の前に一人の
男が現れた。保健医の昭島である。
「朝倉くん・・・」
「あっ、昭島先生。こんにちは」
「朝倉くん、話があるのだが・・・」
「何でしょうか?先生」
「決勝戦は棄権したまえ!」
「!!」
「君の力の元が何か、僕は知っている!だが、その力は危険すぎる!!」
「先生・・・・・・」
「だから・・・棄権するんだ!決勝戦を!!」
「昭島先生・・・・・・」
「彼と一緒に過ごす機会はまだあるはずだ!
だから、今回は・・・うわぁぁぁ!!!」
音夢は昭島の手を持つとひねり上げて空中で一回転させ、着地させた。
「あ、朝倉くん・・・」
「先生が恩師でなかったら、殺すところでした・・・」
音夢は昭島の手を放し、一礼してから立ち去った。
「朝倉くん、このままでは君は次の試合で死んでしまう!」
「兄さんをあきらめてまで生き延びようとは思いません・・・
それでは、先生」
「朝倉くんーーー!!!」
控え室では眞子は眠っていた。彼女は決勝の相手である音夢の試合を
観戦していなかった。それは今までの試合で負った傷を少しでも癒すことの
方を選択したからである。
彼女の足元には眠る直前に食したお粥が入っていた折り詰め、梅干の
たね、バナナの食べ跡、コーラのペットボトルがビニール袋に入れられて
まとめられていた。彼女は今、激しい新陳代謝により身体を回復させていた。
しかし、その意識は激しく猛っていた。
眠る眞子は夢を見ていた。控え室を出た廊下に少女たちが並んでいた。
ことり、工藤、姉の萌、そして一次予選に残った少女たち。だが、ただ一人、
彼女の親友である音夢の姿がなかった。廊下の一番向こうにさくらがいた。
そのとき、眞子は直感した。廊下の先にある扉、音夢はその扉の向こう−
闘技場にいると・・・・・・
音声は聞こえず、これが夢であることを眞子は理解できていた。あの扉の
向こうにいる音夢を倒せば・・・・・・眞子の闘志は高ぶり始めた。
昏々と眠り続ける眞子の身体から湯気が立ち上っており、激励に来た
リリアンリッターたちは眞子を起こさずにただ周りで見守っていた。
「眞子さまは滾っておられる・・・」
「ええ、眞子ちゃんは滾っています。萌えに燃えています」
萌は試合直後に振舞った果糖入り砂糖水の鍋の後始末をしながら答えた。
<決勝戦 水越眞子 vs 朝倉音夢>
「まもなく決勝戦を開始いたします!」
実況のコールに会場は大いに沸いた。
「青竜の方角〜身長154cm、体重40kg、B80−W55−H85、推定ブラB65〜
水越眞子〜〜〜!!」
青竜の門を開けて眞子は選手用通路を疾走する。闘技場と通路を隔てる
木戸のような扉を開けず、あたかもジャンプ台であるかのように手を付き、
パンツが見えることも気にせずに宙返りして闘技場に飛び込んできた。
「青竜の方角より、水越眞子入場ぉぉぉ!その闘志を分かりやすく表現した
躍動的な登場です!!チラリとのぞいたパンツは縞模様!
水越眞子、猛っています!!!」
「ここまでの全試合で制服を破かれていますが、この試合も制服で勝負です。
さすがは水越家、島有数の金持ちです!!」
青竜の方角から入場した眞子に続いて、白虎の方角から入場する音夢の
アナウンスが始まった。
「白虎の方角〜身長155cm、体重37kg、B79−W53−H82、推定ブラA70〜
朝倉音夢〜〜〜!!」
眞子とは対照的に音夢の入場は静かであった。足元まですっぽりと包んだ
ガウンをまとい、静々と入場するそのさまは清楚であり、木戸を通る際に開けた
実行委員に一礼してから闘技場に入った。
「白虎竜の方角より入場してきた朝倉音夢!こちらは対照的に粛々と入場して
まいりました。ガウンの下はどうなっているのか!?少なくとも制服では
ないようですね〜」
「対戦相手の水越選手、ここまでの全試合を剥いて勝ってきていますからね〜
やはり制服は破かれたくないのでしょう。もしかしたら、あの格好で戦う
のかもしれませんね」
それぞれの入場口の木戸の前で、眞子と音夢の二人は立ち止まっていた。
これより、最後の試合のセレモニーを行われるからだ。理事長が貴賓室から
挨拶をする。
「水越さん、そして朝倉さん!二人ともよくここまで勝ち残りました!!その姿は
風見学園全生徒の鏡となるでしょう。約束どおり、この試合の勝者には副賞と
して賞金10万円と夏休みの宿題の免除、そして夏休みの間、朝倉純一くんを
独占できる権利を差し上げます!!さぁ、がんばって戦ってください!!」
理事長の挨拶が終わり、審判の試合の注意とボディーチェックが行われる。
音夢は身にまとっていたガウンを脱いだ。
「こっ、これは!!なっ、なんと音夢選手!ガウンの下はビキニ姿だぁぁぁ!!!」
「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」
「「ど、どういうつもりだ!?剥き女、水越眞子を相手に!!」」
「「んなことはどうでもいい!写真だ!写真を撮れ!!」」
音夢のガウンの下はビキニ姿−ブラはショルダーとバックが紐で胸の部分
しか布地がなく、パンツはお尻が半分近く隠れてなく、前もローレグ気味の
紐パンという大胆なもので、上下とも濡れると透けてしまうのではないかと
思われるような白色であった。
夏の海辺で披露される大胆ではあるが健康的な色気であろうが、地下の
人工灯の下で大勢の観衆の前で曝け出すと何やら淫靡な感じがしないでも
なかった。とりわけ左右両方の手に前腕をすっぽりと覆ってがっちりとされて
いるテーピングと着用している黒のニーソックスが更にその印象を強化していた。
「場内騒然!まことにいいものを見させてもらいました!!」
「あっ、音夢選手・・・何をしているのでしょうか?」
「おっ、どうやら靴下を脱いで・・・観客席に投げ込んだ!!
音夢選手のニーソックスに観客が殺到していきます!!」
「ファンの心をがっちり捉えて離さない。
音夢選手の一流パフォーマンスですね〜」
靴下を脱ぎ捨てた音夢が構える。そして、既にファイティングポーズを取っている
眞子が音夢と相対する。双方とも相手を睨みつけ、火花が散っていた。両者は、
そして観客も試合の開始を今や遅しと待ち構えていた。
退避して試合開始を宣言する。
「試合開始!!」
ドーン!!!
太鼓が響く。
「いよいよ最後の試合が始まりました!
D.C.ファイト!レディーGooooo!!!」
音夢と眞子はファイティングポーズを取ったまま睨み合う。どのように
攻撃しようか、お互いに考えあぐねてきっかけが掴めないでいた。
「さぁ、杉並さん。この試合、どう占いますか?」
「うむ!まず、眞子の方だが・・・柔の水越萌、剛の工藤叶、そして魔法戦の
白河ことりと3試合とも異なるタイプを相手にしてきている。一方の朝倉妹に
関しては遠距離砲撃の天枷美春、変則攻撃の鷺澤美咲、魔法使いの
芳乃さくらと長距離系の相手に偏っている」
「はいはい」
「眞子が対戦した相手のうち、朝倉妹は工藤叶と似た戦い方をするタイプだ。
だが!朝倉妹の対戦した相手に水越眞子に該当するタイプは存在しない」
「なるほど!では、経験の差で水越選手有利というわけですね!!」
「ただ・・・」
「ただ・・・?」
「試合では勝っているが、眞子は勝負で工藤に勝ったわけではない。ゆえに
眞子は工藤タイプの相手と戦ったことはあるが勝ったことはないと言える。
その意味で眞子の戦術は未知数とも言える。無論、これはデータ収集が
行えないという意味で朝倉妹にも言えることではあるがな・・・・・・」
「う〜ん・・・なんとも言えないですね〜」
実況がこのような会話を行えるほど、眞子と音夢の動きは少なかった。
それでも一歩一歩ジリジリと互いに相手との距離を詰めていた。
「(水越も朝倉も遠距離魔法戦は得手ではない・・・となると接近戦か。
さて・・・どちらが先に口火を切るか・・・・・・)」
暦の読みどおり、二人の制空圏は重なりあい互いの拳が届く範囲に入る。
そして・・・試合が動き始めた。
「水越選手のジャブ!音夢選手、よける!!
しかし、ジャブの猛烈な連打だぁ!!」
眞子のショットガンのようなジャブが音夢を襲う。音夢はいくつか被弾する
ものの急所には当たらない、むしろ身体をガードして眞子に接近し、攻撃を
敢行する。
「スマッシュ!水越選手のブロックを弾き飛ばす!!そして、この隙に・・・
いえ、反撃します!水越選手、再度のジャブの攻勢!!」
眞子の手数を音夢は被弾しつつも耐えて大きいのを放つ。眞子は音夢の
一発を回避し、手数で応酬する。互いに、このリズムのまま展開した。
「スピードなら眞子、パワーなら朝倉妹というところかな」
「しかし、音夢選手は幾つか貰っていますが・・・」
「ボクシングだったらポイントにはなるが、相手には大きなダメージには
なっていない」
眞子はスピードを犠牲にパワーの入ったパンチを、そして音夢に確実な
ダメージを与えるべく接近した攻撃に方針を変える。至近からの強力な
攻撃に怯んだ音夢にチャンスとばかり、ストレートを放つ。だが、眞子は
それを振り切らずに自ら手を振り払った。
「あっ!何でしょうか・・・水越選手、手を引きました!?」
折角の攻撃機を自ら放棄した眞子に観客らは戸惑った。
眞子は再度の猛ラッシュを見せ、そしてまた大きなパンチを放つ。だが、
これも自ら手を引いた。
「何を考えている〜水越眞子〜〜〜!?」
実況の疑問と同じく、観客らも眞子の不思議な行動にざわめき始めた。
眞子はそんな観客らの疑問に応えず、更に速度を上げて攻撃に入り、
また自ら手を引く。だが、今度は音夢が行動に移った。音夢は眞子の
スカーフをつかむと自分の方に引き寄せた。そして、眞子の手をつかむと
あらぬ方向にひねり始めた。眞子は間一髪、手を引き抜いた。
「こ・・・これは!?」
「サブミッションだ」
「サブミッションンンンン!!?」
杉並の解説に実況が、観客が驚く。
「さっきから眞子が手を引いていたのは、朝倉妹が伸ばした手をつかもうと
したためだ」
「しかし・・・音夢選手がサブミッションとは・・・・・・」
「使っていただろ、天枷戦でも芳乃戦でも」
「たっ、確かに・・・・・・しかし、音夢選手がサブミッションの使い手であるとは
・・・・・・朝倉さん、これはどういうことなのでしょうか?」
「音夢は看護師志望だからな」
「・・・・・・?」
「音夢は昔から看護師に対して憧れを持っていた。そう、俺とさくらがお
医者さんごっこをした時でも看護婦役として・・・・・・」
「危険発言はそこまでにしておけ、朝倉・・・・・・一応、私も教師だからな」
「判りました、白河先生。まぁ、取りあえず音夢は看護師志望だ!
それがサブミッションを得意とする理由だ!」
「意味が判らないのですが?」
「看護師は患者の身体をどう扱えばいいか知っている。そして、どう扱っては
いけないかも知っている。それを応用したのが音夢のサブミッションだ!!」
「何ですか、その"紅葉理論"は・・・・・・」
「朝倉・・・・・・おまえ、全国の看護師を敵に回してるぞ・・・・・・」
技の片鱗を見せた音夢に眞子が手を取られるのを嫌がった。何とか掴もうと
する音夢に、捕まれまいとする眞子、この争いは眞子の方の旗色が悪かった。
「水越選手、身体を引く!しかし、制服をつかまれているぞぉ!!」
音夢に制服をつかまれて、眞子は身体を近づけさせられていた。
「くっ!!」
眞子は近づいた音夢を排除しようと回し蹴りを放つ。しかし、この大振りは
却って眞子に不利に働いた。
「音夢選手、水越選手の背後にまわったぁ!そして、背後からつかんで・・・・・・
ジャーマンスープレックスだぁぁぁぁぁ!!」
音夢は眞子の背後に回るとバックを取り、そのままジャーマンスープレックスを
かけた。きれいな弧を描いて、眞子は脳天から地面に叩きつけられた。フラフラと
する眞子に音夢はまたつかみかかろうとする。眞子は咄嗟に身体を引いて、
音夢の手をかわす。音夢が眞子の手をつかもうとしたのはフェイントで
、かわせたと思った手はそのまま眞子の足首をつかんだ。
「音夢選手、眞子選手の足をつかんでぇぇぇ・・・
さっ、さそりだぁぁぁ!!さそり固めだぁぁぁぁぁ!!!」
音夢は眞子の足をつかんで、さそり固めに移る。完全に決まったかに見えたが、
眞子は間近に迫っていた壁を上手く利用して何とか逃れることに成功した。
音夢がバランスを崩し、逃げることはできたものの眞子はまだジャーマンの
衝撃からは完全に回復していなかった。音夢はそれを見越して、攻撃を再開する。
「音夢選手、またつかみに行った!水越選手、何とかにげ・・・えっ!?」
音夢は眞子の制服を足の指ではさんでいた。逃げたつもりで制服を引っ張られ
ていた眞子はバランスを崩す。それを好機と音夢は必殺技を放った。
「卍固めだぁぁ!」
「「えっ〜〜〜」」
「あっ・・・くぅあ・・・・・・」
眞子は音夢によって卍固めを極められた。眞子はパンツが完全に晒されて
いることに、いやギシギシと骨を砕かれるような音が聞こえてきそうなくらいの
技に苦痛の表情を浮かべ、うめいた。
「絡み合う二人の美少女!見ていてよかった!!」
「普段、強気な少女が浮かべる苦痛の表情!ご飯三杯はいけます!!」
苦痛に喘ぐ眞子の悲鳴がこだまする。音夢は試合を決するべく、更に
締め上げた。
「はぁぁぁぁぁ・・・・・・!!!」
「「眞子さま〜〜〜」」
「「ね〜む!ね〜む!」」
両者を応援する声が盛り上がる。眞子をがっちりとホールドした音夢の
勝利は目の前かと思われた。しかし・・・・・・身体の柔らかい眞子がゆっくりと
動きつつあった。眞子は音夢と服を介して接しており、その僅かな間に
身体を滑らせ、引っかかる服を引き裂きつつ、動かした。
「なんと!眞子選手、身体を上手くくねらせて・・・脱出したぁぁぁ!!!」
身体の柔らかい眞子は何とか音夢のホールドから逃げ出すことができたが、
服はボロボロに破れていた。
「水越が服を着ていたから、朝倉と完全に密着していなかった・・・・・・
その僅かな隙間がなければ、いくら水越の身体が柔らかくても逃げることは
できなかったであろう」
「ですが、先生。眞子も服を着ていなければ朝倉妹に捕まらなかったかも・・・・・・」
「そうだな、杉並。服と裸ではつかめる場所が大きく違うからな」
卍固めを逃れたものの、眞子のダメージは大きかった。音夢は試合を
決すべく、眞子ににじり寄っていく。
「はぁぁ!!」
突然、眞子が吼えた。そして、自ら自分の制服を引き裂き始めた。
「うぉっ!なんと、眞子選手自分で自分の制服を引き裂いた!!」
「「いいぞ〜眞子〜〜〜!!!」」
「「剥き女!剥き女!!」」
眞子は自分で自分の制服を引き裂き、ブラとパンツのみになった。
「こいっ!」
音夢は眞子に飛び掛る、眞子はしかし今度は上手くよけることができた。
そして、パンチ一閃!
「眞子選手の反撃だぁぁ!!」
試合の天秤は逆に傾いた。眞子は決定打こそ入れることはできなかったが
パンチやキックを音夢に当てることができた。一方、音夢は眞子をつかめず、
辛うじて身体に触ることができたのみである。
「ボクシングだったら、眞子の判定勝ちというところだな・・・・・・」
「でも、これはボクシングではないからな・・・・・・」
スピードに乗って、音夢を攻撃し続ける眞子。決定打はないものの、徐々に
音夢の体力を削っていった。
「(えっ・・・!?)」
突然、眞子の動きが鈍り始めた。
「どうしたことだ!?水越選手、減速し始めたぁぁ!!」
眞子の動きは目に見えて落ちた。身体が何やら痺れ始めた。少しずつ、力が
抜け始める。だが眞子が戸惑ったのは、もっと異なるものであった。乳首がツンと
立ってブラに擦れる。股間が湿り気を帯び始めていた。そして、身体が熱
く火照り始めた。
「(な、何なの・・・!?)」
眞子の身体が異常な状態にあることは誰の目にも明らかになった。汗が流れ
始める、身体が赤く染まる。そして、パンツが明らかに湿っていた。
「「おいっ・・・水越のパンツ、濡れてないか?」」
「「汗か・・・?」」
「「いや、汗だったら全部濡れるだろ・・・でも、眞子のは・・・・・・」」
「「股間だけ?おしっこか・・・・・・!?」」
「「いや、もしかしたら・・・・・・」」
ふらつく眞子に音夢のパンチが襲い掛かる。まだ身体の制御が効く眞子は
それに対してカウンターを放つ。カウンターを合わされたことに気づいた音夢は
急ぎ反応する。二人のパンチは鋭い速度で交叉、互いに相手には当たらずに
終わった。
「あぶない!まさに一瞬の神技!!
・・・おっ?今の交差が音夢選手の拳のテーピングが切れ・・・・・・
なっ、なんだ!?音夢選手の右腕、いったい何がぁ!!?」
今の眞子のパンチとの交叉で、音夢の右手に巻いていたテーピングが
切り裂かれていた。そして、その下から現れた音夢の右手はどす黒さを
含んだピンクに染まっていた。
「これはどうしたことだぁ!音夢選手の右手が・・・変色してるぅぅぅ!!?」
会場は驚きとざわめき、そして何が起こったのかいぶかしく思う声で満ちた。
「音夢め・・・"萌エロ手"を使うとは・・・・・・」
「"萌エロ手"!実在していたのか!?」
「すっ、杉並さん!それは一体!?」
萌エロ手−
イモリの黒焼き、オットセイのイチモツ、金○精などの媚薬、催淫剤、
回春薬、精力剤を種類と重量を精密に計測したものを合わせ、丁寧に
すり潰す。その粉を一晩、煮込み煎じたものを壷一杯の砂にまぶせる。
そして、その砂に百回、腕を突き入れた後、中和剤に浸す。
これを日中は5分に一回、夜は7分に一回繰り返すこと三日三晩!
それが終えた頃、腕はどす黒いピンク色に染まる。その腕で触られた
ものは身体が火照り、処女であっても簡単にいかせることができる。
それがたとえ肛門であっても使い込まれたもののように男のモノを銜え
込むことを可能にする、主人公クラスの男の誰もが身に付けていると
言われている技である。
−民明書房刊「48手のサブミッション、108手の技」
「だが、この特訓はきついものであり、耐え切れずオナニーにふけるものすら
いるという。いや、身につけるくらいになってしまえば女が苦手なものでも
"もっとセックスする"と爛れてしまうほどの恐るべき技なのだ!!」
「そっ、それでは・・・今の水越選手は・・・・・・」
「全身性感帯!乳首はビンビン、お○○こ濡れ濡れ状態だな!!」
「(確かに水越はキツい状態だ。だが朝倉の方も中和剤で緩和しているとは
いえ、その毒素が全身に回るのは確実。いや、薬の効果が増強している
だけにもっと短い時間かもしれん!いずれにしても、この勝負・・・
決着は早いかもしれん・・・・・・)」
科学者である暦の目には双方の状態の変化が読めていた。
「はぁ・・・はぁ、はぁ・・・・・・」
眞子の身体の変化は誰の目にも明らかであった。その身体は紅く熱を
帯び、呼吸は荒く、そして股間からは滴り落ちる液がパンツを濡らし、足元
まで垂れ始めていた。
音夢が眞子の手を掴もうとする。喘ぎながらも、その手を何とか弾く。
場内の少なからぬ観客は音夢の対さくら戦で見せた雄姿を期待していた。
「捕まったら終わりかもしれん・・・・・・」
暦の予測は間違ってはいない。眞子のパンチは失速し、力は失われていた。
音夢がいつ眞子を捕らえるか、勝負は時間の問題かと思われた。
「音夢選手、再度捕らえに・・・あっ、魔法です!
眞子選手、魔法で凌ぎました!!」
「小細工を・・・・・・」
掴もうとした音夢の手を眞子は魔法で弾き飛ばした。だが本来、魔法使いでは
ない眞子に速やかな次の魔法攻撃に移れるはずもなく、単なる時間稼ぎでしか
なかった。
眞子は後方に逃げようとする。だが身体が言うことをきかない眞子の足は
もつれる。その足を音夢は引っ掛け、なすすべもなく眞子が地面に倒れる。
「眞子選手、倒れたぁぁぁ!そこに、音夢選手が追い討ちだぁ!!」
仰向けに地面に倒れた眞子を音夢の正拳が襲う、誰もが勝負が決まったと
思ったその瞬間、異変は起こった。
「音夢選手の正拳が決ま・・・・・・っていません!
眞子選手は・・・・・・既に立ち上がっているぅぅぅ!?」
音夢が打ち込んだ地面に眞子の身体はなかった。眞子は音夢の後方に
立っていた。
「こっ、これは・・・一体、どのようによけたのでしょうか、白河先生!?」
「判らん!いや、パンチをかわせたとしても瞬間的に立ち上がることなど
できるはずがない・・・・・・」
「しかし、現に眞子選手はよけていますが・・・・・・」
「そうだ・・・だが、どうやってよけたか判らない。
瞬間移動でもしない限り、こんな芸当はできん!!」
音夢は後方に立つ眞子に裏拳を放つ。フラフラになっている眞子は、しかし
それを捌く。更に襲い掛かる音夢の連打を眞子は苦もなく、捌いた。
「信じられません!眞子選手、音夢選手の猛攻を捌いています!!」
「こんな手管・・・・・・今まで温存していたのか、眞子は?」
「いや、動きが違う!」
「えっ!?何ですって、白河先生!!」
「あの動きは水越の本来の動きではない・・・・・・」
「それはどういうことですか?」
「なぜできるのか分からないが、あの動きは・・・工藤の流派のもので、水越の
ものではない!!」
威力の小さいパンチは捌かれることを悟った音夢は大きいのをぶち込もうとした。
「あれは捌けない!」
音夢のパンチが眞子に命中しようとした刹那、魔法が発動した。
「プロテクション」
眞子の前に張られた魔法の障壁が、音夢のパンチを防止し、逆に彼女を
弾き飛ばした。
「あの魔法は・・・芳乃さくらだ!!」
「眞子選手は・・・・・・ここまで温存していたのでしょうか!?」
「まさか・・・ここで、あの技を見ることができるとは・・・・・・」
杉並の呟きに実況が、そして会場が注目した。
「杉並さん、あの技とは一体・・・・・・!?」
「夢想転生だ・・・」
「夢想転生・・・?」
「無より転じて生を拾う回避の技、そこから繰り出される反撃は容易に相手の命を
奪う。それは極限の哀しみを背負った者にしか修得することはできない技だ・・・・・・」
「それをなぜ、眞子選手が・・・・・・」
「それは眞子が極限の哀しみを背負った者だからだ!」
「極限の哀しみ・・・・・・・?」
「そう、シナリオは短い。CDや小説は常に姉とワンセット!いや・・・・・・
小説にいたっては13人中唯一EDが存在しないキャラクターなのだ!!」
「EDが存在しない・・・・・・」
「そう、眞子にとって全ての存在は強敵(とも)であったのだ!
その強敵(とも)たちは常に美味しいポジションにいる音夢と戦う
眞子に加勢している!
見よ!眞子の背後を!!」
「あっ!11人の姿が!!」
「今の朝倉妹は12人を敵に回すキングキドラ状態なのだ!!」
復活する眞子の姿を音夢は唇を噛みながら見ていた。
「(私にとって、強敵はことりしかいなかった・・・だが・・・・・・)」
音夢は呼吸を整え、瞬時瞑想し、叫ぶ。
「腹黒と呼べばよかろう!うざいと呼べばよかろう!
だが!兄さんは渡さない!!」
「朝倉音夢、開き直ったぁぁぁぁぁぁ!!!」
「12人を敵に回して戦うのか、朝倉妹!!」
二人は互いに駆け寄り、闘技場の真ん中で叩き合う。
「互角です!まさに互角の勝負です!!」
「恐るべき!朝倉音夢!!」
両者互角の殴り合いが展開する。そして眞子が切り札を切った。
「逆転のチャンスはここしかない!
俺のこの手が真っ赤に萌える!!朝倉Getと轟き叫ぶ!
爆熱!ゴッドォォフィンガァァァァァ!!!」
「ふぅぁぁぁぁぁぁ!!!」
眞子は右手の人差し指と中指を白いビキニのパンツごと音夢の肛門に
押し込んだ。
「出たぁぁぁぁぁ!!水越眞子、黄金の右ぃぃぃぃぃ!!!」
「だが、音夢は座薬慣れしている!アナル責めだけでは堕ちないぞ!!」
「しかし、朝倉妹の右手を受けた手だ!肛門から成分が入るのではないか!?」
「それは時間がかかりすぎるぞ、杉並!このままでは水越は朝倉を倒せん!!」
純一の言うとおり、座薬慣れした音夢はアナルに挿入された衝撃から立ち直り
反撃に出ようとしていた。眞子は最後の技を仕掛けた。
「眞子選手、手から何かを出した!あっ、あれは!?」
「音撃バチ!水越萌の武器だ!!」
「灼熱真紅の型!!」
眞子は音撃バチを左手に持ち、そのまま自分の右の二の腕を叩き始めた。
「そうか!自分の右手を叩いて、その衝撃を指から肛門を伝って音夢の身体の
内側から落とすのか!!」
「こっ、これは・・・!これでは朝倉妹もひとたまりもあるまい!!」
「しかし、水越自身にも衝撃が伝わっている!これは諸刃の剣だ・・・・・・」
「はぁっ!・・・くはんっ!!・・・・・・」
杉並らの予想通り、眞子の"衝撃"は肛門から音夢の体内に伝わり、彼女を
よがらせていた。そして同時に、その"衝撃"は眞子自身にも伝わっていた。
「ひぅあ!!・・・くぅぅぅ・・・・・・」
一心不乱に叩き続ける眞子、そして同様によがり声を上げる二人。
「はぁぁぁぁぁぁん!!」
「いっ・・・いいっ!!!」
バチの動きは佳境を向かえ、やがて二人は喘ぎを上げた後、ダウンしてしまった。
「両者、イキましたぁぁぁ!!そして、倒れたぁぁぁぁぁ!!!」
「こっ、これはどうなるのでしょうかねぇ〜」
闘技場に倒れこんだ二人に、暦はカウントを始めた。
「1!」
「ダブルノックアウト!先に立つのは果たしてどっちだ!!」
「3!4!5!」
暦のカウントを観客らは固唾を呑んで待つ。音夢と眞子はそれぞれ何とか
立ち上がろうとするが、身体が言うことをきかないらしく眼に見える動きは
できなかった。
「7!8!」
この段になっても、二人は立ち上がることはおろか上半身を持ち上げること
すら叶わなかった。
「10!」
二人とも闘技場に横たわったまま、無情にも10カウントを迎えてしまった。
「ダブルノックアウトォォォ!これは一体、どうなるのかぁぁぁ!?」
「「おい、どうなるんだよ?」」
「「二人とも優勝?」」
「「いや、二人とも負けだろ!」」
観客らはざわざわ騒ぎ出す。理事長はこの状況を一喝した。
「我が風見学園には"両方優勝"などという玉虫色の決着はない!!
呼び方は問わない!先に立ち上がって『朝倉くんは私のもの』と宣言した方を
勝ちとします!!」
「「おぉぉぉぉぉ!!!」」
「決着方法が決まりました!先に宣言するのは眞子か、それとも音夢かぁ!!」
二人はふらつく身体に鞭打って、何とか立ち上がろうとする。
「はぁぁぁっ!!」
眞子が崩れ落ちた。音撃バチで叩いた右手が身体を支えることができなかった
からだ。その隙に立ち上がった音夢が宣言をする。
「にっ、兄さんは・・・わたしのも・・・・・・」
だが、言い終わる前に音夢は咳き込み、口から大量の桜の花びらを吐き出した。
「マックシングだぁぁぁ!音夢選手、桜の花びらを噴出しています!!
しかし、判定はどうだぁぁ!!?」
全員、暦を注視した。暦は黙って、首を横に振った。
そして、うずくまって桜の花びらを吐き続ける音夢の目の前で眞子が立ち上がって
宣言をする。
「あっ、朝倉は・・・私のものだぁ!」
それを聞いた暦は頷き、宣言する。
「勝負あり!勝者、水越眞子!!」
「試合終了ッ!朝倉純一争奪武闘大会の優勝者は、水越眞子ォォォ!!!」
「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」
眞子優勝の歓声を聞いた音夢は、その場に崩れ落ち、そのまま倒れてしまった。
「担架だ!担架を持ってこい!!」
実行委員が担架を呼ぶ。音夢はそれに乗せられ、会場を後にした。闘技場には
ただ一人、優勝をきめた水越眞子だけが残されていた。
「水越眞子選手には朝倉純一と夏休みを共に過ごす権利、そして副賞として
"夏休みの宿題の免除"が与えられます!」
「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」
「「ま〜こ!ま〜こ!ま〜こ!!」」
眞子は会場の歓呼に手を振って応える。そして、純一の姿を見つけると一際
大きく手を振って叫んだ。
「あさくら〜!!!」
その顔には満面の笑みが浮かんでいた。眞子の脳裏には苦しかった試合の
数々がめぐり、そして純一と過ごす夏休みの計画が次々と浮かんできた。
「感動と興奮の収まらない風見学園地下闘技場から皆さん、さようなら〜!!」
<エピローグ>
8月も残る一週間となったある日の夕方。
「朝倉〜来週から一週間、私の家の別荘にいかない?
シーズンはちょっとズレるかもしれないけど、まだ泳げないこともないし〜」
別荘行きをねだる眞子に困った様子で純一は答えた。
「ごめん、眞子!実は来週から・・・補習なんだ・・・・・・」
「・・・・・・」
「成績が赤点だらけだったんで、夏休み最後の一週間は補習にって・・・」
「・・・・・・・・・・」
「だから、悪い!このとおりだ!!」
「・・・・・・・・・・・・」
「あ・・・あの〜眞子・・・・・・?」
「あ〜」
「あ?」
「あ〜さ〜く〜ら〜のバカァァァァァ!!!」
「ひでぶ!!」
純一の顔面に眞子の連打が叩き込まれる。何発も叩き込まれ、のされた純一を
後に残し、怒り満面の眞子が立ち去る。その姿を陰から三人の少女が見つめていた。
「ふ〜ん、眞子ちゃんもついにキレたか・・・・・・」
「でも、仕方ないわよね・・・さすがに・・・・・・」
「そうですね〜」
金髪でツインテールの小学生にしか見えない少女と白い帽子が目立つ長い髪の
少女、そしておっとりしていて胸の大きな三人の少女が話し合っていた。その会話は
内容ゆえか、それとも病院のロビーという場所ゆえなのか声を潜めて行われていた。
「それにしても、音夢ちゃんも考えたもんだね。薬の中毒を治す解毒剤を用意して
おきながら、それを利用するなんて・・・・・・」
「優勝すれば薬を飲んで回復、公然と楽しい夏休みを過ごす。
優勝できなければ、薬を飲まずに入院して朝倉くんに看病させる・・・・・・
ずるいっす!!」
「そうですね〜」
「お兄ちゃんは初音島での音夢ちゃんの唯一の家族・・・・・・瀕死の病人をほったらかしに
して、遊び呆ける訳にもいかないもんね」
ことりは思った。同居してはいないけどアンタも一応は朝倉家の親戚だろ、っと・・・・・・
ただ眞子に純一を独占させない利害は一致していたために敢えて口にはしなかった。
「で・・・・・・結局、眞子ちゃんはお兄ちゃんと何回デートできたの?」
「確か、3回です。全部日帰りでしたけど」
「「あっちゃ〜」」
「音夢の退院は今日だけど、お兄ちゃんは明日から補習・・・・・・
実質的にお兄ちゃんは音夢ちゃんに独占されたも同然なんだね・・・・・・」
「ずるいっす!卑怯っす!黒いっす!!この次はこんなことさせないっすよ!!!」
「でも、ことりちゃん。次の機会はないのでは・・・・・・」
「フフフ・・・それがあるのですよ」
「えっ!?」
「今回の大盛況に気をよくした学校側が第二回を計画しているらしいのですよ。
名づけて"第二回朝倉純一争奪武闘大会!朝倉純一とクリスマス&年越し正月を
過ごす権利を貴女に!!"、これは確かなルートからの情報っす!!」
「じゃあ、次の機会は・・・・・・」
「そう!あるのですよ!!そして、今回のような事例が起きた時は!!!」
「はい、水越病院の地下隔離病棟において監禁しておきます〜」
「では、優勝すれば・・・・・・」
「そう!朝倉くんとラブラブいちゃいちゃなクリスマスと正月を送れるっすよ!!」
さくらは内心思った。この女、服は白いけど下着と腹は黒いなっと・・・・・・
だが音夢を捕捉しておくという利害は一致しているために敢えて口にはしなかった。
「今度は負けないっす!!」
「それはボクの台詞だよ!」
「あら、私も今度は遠慮しないですから」
三人は互いに睨み合った、そして・・・・・・
「ニヤリ」
「ニヤリ」
「ニヤリ」
秋も近い夏の夕暮れ、少女たちの笑みが零れ落ちる。
<<終わり>>