俺は今、自分の家のリビングにいる。  
この前の杉並の謀略から起こった工藤叶の暴走により、俺の四股が発覚してから最初の日曜日の朝だ。  
 あの後行われるはずであった音夢、ことり、眞子、叶の問い詰めという名のリンチは、  
叶が暴走状態から復帰することがなかったため延期になった。  
「どうせなら家で徹底的にやりませんか?」  
「そうね、どうやら長い話になりそうだし」  
「了解っす」  
「殺させてー、それがだめなら死なせてー」  
音夢の一声で俺の弾劾裁判は延期されたようだ。  
約1名、理解しているのかどうかわからんが。  
 その後の話し合いで、深く話し合うために日曜にやろうということ、  
叶の無念を晴らすために杉並をどうするかを決めたようだった。  
日曜日がくるまでのことは、あまり覚えていない。  
 
 一つだけ変わったことといえば、杉並の姿をあれから見てない。  
いつものことと済ませようとも思ったが、ヤツの机の上に「人誅」の張り紙が張ってあったのが気になった。  
………グッバイ杉並。  
……  
…  
…  
 
そんなこんなで、日曜日がやってきた。  
今までは無事だったがこれからどうなるかはわからん。  
本気で遺書を書くべきかと考えていると音夢がやってきて、  
「さあ、兄さん準備しましょうね〜」  
といいながら俺に迫ってきた。  
「…何が準備だよ、別に何も用意するモノもないだろ」  
「いいえあります。兄さんにはこれを付けて貰いますから」  
視線を音夢の手に向ける。  
そこにあったのは、「ルパーン、逮捕だー」などとほざきながら逮捕したシーンを見たことがない……  
「兄さん説明が長いですよ」  
地、いや俺の心に突っ込むな。おまえは、ことりか?  
「話を早く進めないとね」  
そう言いながら俺の目の前にそれを掲げる。  
…ジャラ…ジャラ……  
「何だよ、その手錠は…」  
「これを付けて貰います」  
「なぜ」  
「兄さんを逃がさないためです」  
 さわやかな笑顔でいきりやがった。何で俺がこんな目にあわなきゃならないんだ……なんかムカつくな。  
「ほかにもいろんな物を用意してますから、楽しみにしててくださいね」  
そういって机の上にドサッと袋を置く。  
真っ黒な袋なので中に何が入っているかはわからない。  
「ふふっ、楽しみにしてくださいね。みんなでお金を出し合って買ったんです」  
どうやら俺を不利にこそすれ、有利にするようなものはなさそうだ。  
「こんなもんでどうしようってんだ」  
「兄さんにスムーズな尋問が出来るとは思ってませんから。一種の緊急措置です」  
 ちょっと違うんじゃないかと、問い詰めたいが、  
どうやら話は手錠をしてからということなのか音夢は喋るのをやめてこちらに向かってくる。  
俺も音夢から離れる様に移動したが、リビングの入り口は音夢の後ろにあるから逃げ切れそうにない。  
そうこうしてる間に追い詰められた。  
 
目の前に佇む音夢は、自分の優位を確信しているのか笑みを浮かべてやがる。  
……俺を見下してるな………  
音夢の視線から感じられる優越感。  
自分が相手を支配しているといった視線だ。  
そんな音夢の視線を浴びいると、俺の中のある感情が高まっていく。  
……どっちが偉いのか、教えてやらなくちゃな………  
不意に浮かびそうになった笑みを消して、俺は音夢に主従関係の大切さを教えるための行動を開始した。  
「わかった。まいったよ、音夢」  
「そうですか、それじゃ早速つけますね」  
そういって俺の手をつかむ。だがそうはいかない。  
「まてよ、自分でやるよ」  
「??? どうしてです?」  
「だってさ、なんかお縄につくみたいでさあんまりいい気分じゃないからな」  
「そうですか、わかりました。それじゃしっかり見てますからちゃんとはめてくださいね」  
そういって無防備に手錠を差し出す。  
「ああ、わかってるよッ!」  
「キャッ!!」  
音夢の手が手錠から離れる前に、勢いをつけて手錠を引っ張り音夢の体制を崩す。  
こける前に音夢を抱きかかえ床に激突しないようささえてやった。  
「何するんですかっ!!」  
俺に対して文句をいったようだが、そんなことは気にしない。  
ガチャ!ガチャッ!!  
 
「えっ?」  
音夢は、俺の腕の中でほうけている。  
「ふっふっふっ、いい格好だね音夢くん」  
後ろ手に手錠をかけた音夢を床に下ろす。  
「ちょ、ちょっと兄さん何するんですか」  
「なにって。ナニだよ」  
「そういうことを言ってるんじゃないんです。いきなりなに考えてるんですか」  
「別に何も考えてないぞ。しいていえば、おまえが俺に歯向かったのが悪い」  
「歯向かってません。私は、兄さんが逃げないように」  
「それが歯向かってるって言うんだよ。どうやら教育の仕方を間違えたみたいだな」  
そう言いながら音夢が持ってきた袋の中身を見てみる。  
……これは…なるほどね………  
ニヤッと笑う。  
「音夢〜。おまえこんなもん買ったのか?」  
「私だけじゃありません。みんなで買ったんです」  
「それじゃ、やっぱり今までのはみんな物足りなかったんだな」  
「そうじゃありません!!。それは兄さんを懲らしめるために」  
「関係ないよ。今日は楽しもうぜ」  
「ちょっ、まってこれから眞子たちも来る…」  
「ま、あいつらは途中参加で我慢してもらおう」  
 
 
そして、長い宴が始まった。  
 

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