アイツが妹にべったりなのは知っている  
アイツが妹にとても―そう、病的なまでに―慕われていることも  
でも…  
「ああもうっ!!」  
あわてて、その考えを振り払う、もう何十回と繰り返した行為  
「何であんなやつのことでこんなに悩まなきゃいけないのよ!!」  
その望みは、友人から心のよりどころを奪うことだから  
「…はあ…」  
だめだった  
もう、怒鳴ったくらいじゃごまかせない  
焼きついて離れないアイツの顔…笑った顔、照れた顔、考え事をしてる顔、そして…  
「―ッ!!」  
妹だけに向ける顔  
「…いくら彼氏が出来ないからって、よりによってあいつの事なんか―」  
うつぶせにベッドに倒れこむ、気分転換にマットにぶつかるくらいの刺激が欲しかった  
「ひゃっ!?」  
でもその前に何かが体にすれた、それは丸まった掛け布団、アイツの背丈より少し小さいくらいの  
「ぅあ…」  
まずい、ドキドキしてきた、体が熱いのが自分でも解る  
「はあ…ン…」  
目を閉じると布の塊さえアイツに思えてくる、もう末期症状だろうか?  
ぼんやりとそんなことを考えながら、布団に枕を包んで体をこすり付けていった  
 
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」  
だんだんと頭の中からいろんなものが消えていく  
残るのはアイツ、アイツ、アイツ、アイツ…  
「あ、あさ…ひぁあ!?」  
布団を抱きしめていた手が勢いあまって、陰部をかすめた  
きもちいい  
「ふぁ…ひぁぁぁぁ…ごめん…ごめんね…音夢…ごめんね…」  
口では謝りながらも、手は離さない、否、話せない  
それどころか心の中でも謝っていない、口と頭の隅っこだけ  
「あぁ、いい…朝倉ぁ…」  
嫉妬、かっこ悪い、ましてや友達に対して抱くなんて最低だと思う  
でもあたしの心は音夢に対する嫉妬で燃え狂っていた  
「好き…好き…」  
あたしがどうがんばっても手に入らない『兄妹』という関係、それをすでに持ってるくせに…  
「ああ、大好きぃ…」  
その上音夢は朝倉と同級生、友達のような関係でいられる、恋人にもなれる  
「して、もっとして」  
しかも血が繋がっていない、周囲の反対さえ跳ね除けられれば夫婦にさえなれる  
「んぁぁ、朝倉…?」  
あたしはアイツとどこまで進んでも『兄妹』にはなれないのに…  
「あたしの、あたしの、あたしの、あた…ひっ!!」  
独り占めにしたい、友達恋人夫婦兄弟考えられるあらゆる関係の朝倉に一番近い場所がほしい  
そうだ子供が出来たらアイツに似るように育てよう  
「あ…あ…あ…ッ」  
頭が真っ白になっていく、朝倉の声が聞こえる気がする、あたしを呼んでるの?  
「ああああぁぁぁ!!!」  
今そっちにいくからね  
だんだん意識が薄れていく、もうすぐアイツの夢が見れる、あの声は空耳と解ってるのに、あたしはそう確信していた  
 
 
『これは、眞子の夢…?』  
純一と眞子、向かい合う二人を、もう一人の朝倉純一が見つめていた  
『それとも俺の夢か?』  
純一は一瞬そう思ったが、すぐに不審な点に気づいた  
眞子が顔を真っ赤にしてもじもじしている、純一は眞子がこんなに照れる姿なんて想像した事もない  
「眞子…大事な話があるんだ。」  
眞子にこんなに優しく声をかけたこともない  
「俺の恋人になってくれないか?」  
『まてまてまて、早まるなそこの俺!!』  
当然他人の夢の登場人物に話しかけられるはずがない  
「眞子が、好きなんだ。誰よりも…」  
とても優しい、しかし傍から見ていると、からかっているんじゃないかと疑いたくなるほど気障な口調で『純一』が眞子にささやきかける  
純一は目の前の自分がボロ雑巾にされるのを見届ける覚悟を決めた―が  
「嬉しい…嬉しいよ、朝倉…」  
『んなっ!?』  
「あたしも…朝倉のことが…」  
完全に予想外だった  
眞子がいつ『純一』を張り倒すかとハラハラしていただけに、頬を赤らめてぽろぽろと涙をこぼしている眞子の姿は衝撃的で、たまらなく愛しく思えた  
「…好き。」  
眞子が言い終わると『純一』はにっこりと微笑み、そっと眞子に口付けた  
永い、そして優しいキスに傍観者の純一の方がドキドキしてしまった  
夢は無意識の望みの現われだというが、そうだとすれば―  
『な、何だよこれ俺の願望か!?無意識でこんなこと考えてるっていうのか?それともやっぱり…』  
眞子の願望、他人の夢を見ることが出来る純一にとってそれが最も納得のいく説明だった  
しかし、それは同時に、眞子が夢に見るほどこの光景を望んでいるということでもある  
ながいながい口付けが終わり、二人の体が糸を引きながら離れた  
「んむ…ぷぁ…はぁぁぁ」  
「眞子、しようか。」  
『純一』はにっこりと微笑むとそっと眞子の肩を抱き締めた  
「うん…」  
眞子はうっとりした顔で『純一』の胸に手を置き、額をおしつけた  
いつの間にか二人とも一糸まとわぬ姿になっているのが夢の便利なところだろうか  
 
『純一』の手がそっと眞子の肌に触れ、こね回し始めた  
「あぅ…あ…あン…」  
『純一』の指が眞子の体を撫でるたび、眞子は切なげに喘ぎ、体を振るわせる  
「ひぃ…ひぁ…ぁ」  
「かわいいよ、眞子?」  
体を這い回る指がだんだん下に下りていく  
「んんっ」  
胸から腹へそして腰へ  
「ああ、朝倉…朝倉…」  
そしてとうとう、その指が陰部にもぐりこんだ  
「ヒッ!!」  
クチャ…クチャ…クチャ…ピチャン  
あまりにも生々しい水音、やはりこれはそれを聞いたことがある人間の―眞子の―夢だ、純一は目の前で繰り広げられる情事に思考を奪われながらぼんやりとそんなことを考えていた  
「ぅぁぁぁああああ!!」  
『純一』の手が眞子の淫核をつまんだところで眞子は絶頂に達した  
『純一』は腰に手を回し、空いた手で眞子の頭をなでる  
「はぁはぁ…はぁ、はぁ」  
眞子が絶頂の余韻から醒めて息を整えたところで『純一』が囁いた  
「入れるよ?」  
一瞬の間、そして眞子はうれしそうに脚を開き  
「きて…」  
ズブズブズブ…  
『純一』と眞子がひとつに―繋がらなかった  
 
 
「眞子、兄さんと何してるの?」  
『音夢!?』  
「音夢…」  
無表情に眞子を見下ろす音夢  
 
そこで、夢は終わった  
 
 
「兄さん、夢の中まで私に怒られてるんですか?」  
呆れ、喜び、照れ色々な感情がこもった声、眞子の上で俺とすり替わった音夢とは大違いだ  
「あ、あれ?もう朝か?」  
「まだ夜ですよ。」  
時計を見るとまだ3時だった、 あれ?こんな時間に何しに来たんだ?  
「音夢、こんな夜遅くに何してたんだ?」  
「何よ、その言い方!!うなされてるみたいだったから心配して来たのに!!」  
「うなされてた…俺が?」  
「そう、兄さんが。」  
うなされるような内容ではなかったはずだ、驚きはしたが、正直うれしかった  
それに、もしも、もしも眞子を抱くことがあったら―あそこまでうまくは出来なかっただろうが―精一杯気持ちよくしてやりたい、丁寧に扱いたい、そういう意味ではあの『俺』の態度は理想だった  
「…そうか、心配かけたな。」  
「ううん、気にしないで。」  
それにしても、何であそこで音夢が出てきたんだろう 、考えているとベッドに座っていた音夢が立ち上がった  
「それじゃ、私もう寝るね、お休み。」  
「ああ、お休み。」  
眞子の最後の表情を思い出してみる  
申し訳なさそうな、少し怯えたような、そんな表情だった  
だが、眞子と音夢は友達だ、あれを眞子の夢と仮定すると眞子は音夢に後ろめたいこと―それも、あの場面から想像して俺に関係ある―があるという事になる  
「チッ…」  
ドアの無効で何か音がした  
「ふう、わからない事ずっと考えてても、しかたないな。」  
ひょっとしたらあの夢は俺の妄想かもしれない、完璧な空想ならならば知らないはずのことが組み込まれていたことも説明がつく  
「そうじゃなかったら?」  
もし、眞子が本当に俺を思ってあの夢を見たのだとしたら?自分はそれに答えてやれるのか?そもそも、俺は眞子をどう思っている?眞子と友達でいられなくなったら?  
そうだ、それが怖い  
俺のこの気持ちが恋だとしたら?そして、それをうまく伝えられなかったら?おそらく眞子と今までのように付き合えなくなるだろう  
じゃあ、どうすればいい?  
「…かったるい」  
問題を先送りするため、とりあえず俺は、目を閉じた  
 
 
そして朝が来て、何事もなく一日が過ぎた…放課後までは  
「眞子、ちょっといいかな?」  
なぜか声をかけなければいけない気がした、夢のことを確かめようとでも思ったのだろうか  
「ぇ…あ!な、なに?」  
妙な間をおいて大げさに反応する眞子に教室に残っていた連中が静まり返って注目する  
しかし、考えがあって話しかけたわけではない、当然、なんと言って良いのか解らない  
時計の針の音がいつになく大きく聞こえた  
「あ…いや、やっぱいい、ごめんな。」  
固まっていた連中はざわつきながらもぞろぞろと教室を出て行った  
ああ、やっちまった、もう少し考えて行動に移すべきだった  
だが、いまさら後悔してももう遅い、恥をかかせた俺は殴られる覚悟をした、否、いつものように怒って手をあげて欲しかった  
「…………」  
気まずい、顔を真っ赤にしてもじもじしている眞子に申し訳ないと思うと同時に、そんな眞子を守ってやりたい、支えてやりたいと感じていた、この状況を招いたのは俺なのに  
「…いって……」  
「え?」  
「ねえ…いって?今なら二人だけだよ、ねえ朝倉…」  
すがるような口調、期待に満ちた目、物欲しげな手、すべてが俺をクラクラさせた  
「…俺は…お前が…」  
『好き』自分が言いたがっていたことは分かったのに、その一言が出てこない  
「お前のことが…」  
かっこ悪い、俺が踏ん切りをつけられないでいると、眞子がとうとう痺れを切らした  
「ああもうっ!!はっきりしなさいよ!!」  
いつもの眞子だ、本当はそうじゃないとわかっていたが、それで迷いが吹っ切れた  
「眞子が、好きなんだ。誰よりも…」  
言えた、不思議なほどすんなりと  
「嬉しい…嬉しいよ、朝倉…」  
眞子は顔を紅潮させ、目を潤ませた  
「あたしも…朝倉のことが…」  
鼓動が速くなっているのがわかる、口の中がカラカラだ  
「…好き。」  
 
幸せな沈黙、とでも言えばいいのだろうか?もう言葉は要らなかった、おれは一歩歩み寄り、頬に手を添えて眞子の桃色の唇をふさいだ  
「んむ…ぷぁ…はぁぁぁ」  
長い長い口付けを終えると、二人の混ざった銀色の糸が名残惜しそうに残り、切れた  
俺たちは無言で教室を出た、すると廊下の向こうから音夢が駆け寄ってきた  
「ああ、いたいた。まだ教室に…ってあれ?眞子も一緒?」  
「えと…その…」  
眞子が困っている、しかし、まい上がっていた俺は、昨日の夢のことなどすっかり忘れて、眞子が目をそらした理由も考えず、抱き寄せた  
「ま、俺にもようやく春が来たってとこかな。」  
「------ッ!!!!」  
一瞬音夢の顔色が変わった  
「あら、よかったですねえ兄さん。眞子、フォロー大変だと思うけど、兄さんのことよろしくね。」  
「あ、うん…」  
「そうそう、私、今日美春のところに泊まりに行くから、家事自分でやってね。…あ、そうだ。眞子に手伝ってもらったら?」  
いつもの音夢なら絶対にこんなことは言わない、だが俺はそんなことを考える余裕はなかった  
「それじゃ、私は先に帰りますから。どうぞごゆっくり♪」  
音夢が走り去っていった後  
「眞子、家よって行かないか?」  
「…うん。」  
誘惑に負けた、二人とも  
「お姉ちゃん?ちょっと今日遅くなるからご飯先に食べてて。」  
電話を終え、眞子が部屋に入ってくる、お互いに、もうここから先どうなるのかは解っていた  
「ねえ、朝倉。」  
「なあ、眞子。」  
声が重なる、色々考えた気のきいた台詞は全部無駄になった  
 
どちらからとも無く口付けして、お互いの服を脱がせあう  
「綺麗だよ、眞子。」  
「ああ、朝倉…夢みたい…」  
荒れ狂う欲望を必死に押さえつけ、眞子の体をあくまでも優しく、じっくりとなぞっていく  
「はぁ…」  
初めては痛いらしい、せめて痛みが和らぐように、まずは十分に眞子を昂らせ、濡らしてやる  
「ん…んぅ…」  
しかし、そんなにうまく出来るはずが無い、理性の限界を悟った俺は最後の手段に出た  
ピチャリ  
「ああっ!?だめ、そこは汚な…」  
唇にするように、自分の下でじかに濡らす、眞子のそこはお世辞抜きで綺麗だった  
「ひぃ、ひぃ、ひぃ…ッ…」  
クチュ クチュ クチュ  
水音が響くが、いやらしいとは思わなかった、これは俺たちが愛し合って、その結果出る音…愛の囁きだから  
「あ、あたし…あたしもう…」  
そんな照れくさいことを考えていると、ビクン、と眞子の体が波打った、満足させられただろうか?  
「はぁ はぁ はぁ、朝倉も…気持ちよくして、あげるね…」  
 
息も絶え絶えになりながら、手をひろげ、誘ってくる  
「いくよ、眞子…」  
「ぁぁぁぁぁ」  
ズブリと俺が埋まっていく、力みすぎただろうか?眞子は必死に痛みにたえ、首にだきついてくる  
「かわいいよ、眞子。」  
頭を抱き背中をさすってやる  
しばらくそうしていると痛みが引いてきたのか、少しづつ眞子が腰を動かし始めた  
「くぅぅ…気持ち良い?朝倉…あたしの中…気持ち良い?」  
「ああ、いいよ。凄くいい。」  
じらしにじらされた俺は夢中になって眞子の中で暴れた  
「あっ、あっ、あっ、あああああっ!!」  
また、眞子が果てた、しかし、腰の動きは止めない  
「ヒ、ひぁ…やぁっ!!」  
嫌がってはいない、むしろ肯定であることはわかる、そういえばリズムをつけたり前後以外の動きもするといいと何かに書いてあったっけ  
「な、なんで?なんでこんなにうまいのぉ?」  
喜んでもらえたらしい、調子に乗ってガクガクと腰を振っているうちにだんだん意識が朦朧としてきた  
「くっ、出そうだ…抜くよ?」  
かろうじて、それぐらいの理性は残っていた  
「いやぁ…抜いちゃいやぁ…中に出して…」  
止めを刺された、返事をする間もなく、俺は眞子の一番奥で爆発してしまった  
「あ…ウッ…ク!!」  
「朝倉…大好き…」  
俺は、夢見心地で呟く眞子を無意識に抱きしめていた  
 
体が冷えたのか、落ち着くと、急に尿意を催してきた。  
「あ、眞子。ちょっとトイレにいってくる。」  
「うん。あ、もうこんな時間!!」  
七時少し前、店屋物を取ろうかとも思ったが、音夢が最近赤字だってで悩んでいたっけ  
「そうだな、じゃ、何か作ってくるか。」  
自慢じゃないが料理は多少出来る、なにせ音夢がアレだから  
「え?あ、いいよ、疲れてるでしょ?」  
「眞子ほどじゃないよ。痛くなかったしな♪」  
「もうっ!!」  
幸せな時間、告白して疎遠になるなんてとんでもない、それどころか親友と恋人をいっぺんに手に入れたみたいだ  
だからだろうか?再びまい上がってしまった俺は隣の部屋の気配に気づかなかった  
「じゃ、出来たら呼ぶから。」  
「はーい。」  
 
純一が部屋を出てすぐ  
「いいな、眞子…」  
股間をびしょびしょに濡らした音夢が、隣の部屋から出てきた  
 
 
別にかまわない、さくら以外だったら  
半開きのドアからするりと部屋に入り、静かにドアを閉める  
「眞子、兄さんとなにしてたの?」  
兄さんのことだから私が炊飯器をわざと空にしたことも、冷凍庫の一番奥にしまったご飯にも気づかないはず、一時間くらいは稼げたかな?  
「ね、音夢!?泊まりにいったんじゃ…」  
「私が当日まで兄さんに言わないわけ無いでしょう?聞いちゃった、眞子の声。」  
兄さんと愛し合う声、羨ましい、妬ましい、でも許せる  
なぜなら  
「ねぇねぇ、どんなことしたの?」  
私から逃げられるのはさくらくらいだから  
「…最後まで…」  
「そう…」  
身を乗り出す、右には本棚、左には机、後ろには壁眞子の逃げ道は全部断った  
「で、途中は?具体的に聞かせて。」  
屑籠を確認、湿ってない  
「な…なんで、そんなこといわなきゃいけないのよ!!」  
「きまってるでしょう?想像して、私が抱かれた気分に浸るの…」  
眞子の顔が引きつった  
 
「音夢、やっぱり…」  
相手が眞子なら簡単に自分のペースにはめる自信があった、そのためには、多少恥ずかしくても言いよどんだりしてはいけない  
「ふふ、兄さんのにおい…」  
眞子に顔を近づけると、女のにおいに混じって愛しい人のにおいがする、体がゾクゾクしてきた  
「や、やめ…あぁっ!!」  
眞子の胸、キスマークに唇をかさねるようになめる、眞子の汗に混じって愛しい人の汗の味がする、でもまだ足りない  
「はぁ…ここも?ここも口でしてもらったの?」  
「いや、やめて…音夢…こんなこと…」  
眞子を組み敷いて、全身に唇を這わせる、赤く染まった部分を特に重点的に、もちろん「お楽しみ」はとっておく  
「やっ、やぁぁ!!ムグッ!?」  
大声を出されると厄介だからキスで口をふさぐ  
「あ、これって間接キスかな?」  
「間接・・ッて…」  
時計を確認するとさっきから十分ほどたっていた  
「そろそろ、話してくれない?」  
「い、いやよ!!朝倉は音夢じゃなくてあたしとしたの!!」  
カチンときた、少し意地悪してみよう  
眞子の耳に顔を近づけ、囁く  
「あんまり意地を張ると…兄さんの前で犯すよ。」  
「え!?そ、それは…!!」  
効いたみたい、ひるんだ隙に畳み掛ける  
「ねえ、いいでしょう?減るものじゃないんだから…少し、幸せを分けてくれるだけでいいんだから…ね?」  
「変な冗談はやめて!!そんなことしたら音夢も見られるんだよ!?」  
なんだ、最後の抵抗がそんなこと?私の気持ちはとっくに決まってるのに  
「兄さんになら見られてもいい…ううん、見てもらいたいな…」  
やっぱりいざという時は本音が強い、眞子はとうとう諦めた  
 
「うぅ…わかったわよ…」  
「えへへへ、感謝感謝。」  
とりあえず承諾させることは出来た、早速尋問をはじめる  
「最初はなにしたの?」  
「胸を…」  
「ふんふん、胸を?」  
「手で…その…」  
照れてる照れてる…でもあんまりいじめたら次の時が面倒だからそろそろ許してあげる  
「言いにくい?」  
コクリと眞子がうなずく  
「言葉でいえないなら…」  
そういいながら手を拡げる  
「して。」  
「うえぇっ!?」  
「ほら、はやくはやく。兄さん来ちゃうよ?」  
ぎくりとして、眞子がぎこちなく手を伸ばしてくる、眞子から漂ってくる兄さんの匂いが心地いい  
「あぁ、兄さん…」  
「それで、胸からだんだん下に…」  
あばらに沿って、手が降りてくる  
「んっ、く…」  
「それから、えと…あっ!」  
眞子が口を押さえる  
「?どうしたの?」  
もしかして「当り」?かなり凄い事?期待しながら次の言葉を待つ  
「口で…あ、あそこを濡らしてもらって…」  
「えーッ!?」  
うらやましい、これはいよいよ眞子に独り占めさせるわけには行かない  
「再現して、再現♪」  
 
「どうしても?」  
「どうしても。」  
この間約0、1秒…くらいかな?いい加減無駄だとわかったのか眞子が口を近づけてきた  
ピチャリ  
「んん…」  
舌が入ってくる、ここまでは予想できた  
でも、眞子が淫核を甘噛みしてきたときは驚いた  
「ひゃ!こんなことまで…してもらったのぉ?」  
うううぅぅ、いいなあ  
なんだか悔しくなってきた、そろそろメインディッシュをいただこうかしら  
「それで…ここから先は…その、入れたから…無理…」  
「そう、じゃ今度は私がしてあげる。」  
「なッ!!」  
眞子が反応する前に体の下にもぐりこみコロンと横に転がす、くずかごは湿っていなかった、眞子の体にもついてなかった、初めての兄さんが、我慢できるとは思えない、つまり…  
「では、いただきます。」  
眞子の中に、兄さんのがある  
「ジュル…ズジュルルル…」  
うわ、びしょびしょ  
「やぁぁぁぁ!!」  
おくまで進んでいく、ほろ苦い、何度も味わった兄さんの味…といっても兄さんは毎晩口でされてるなんて知らないだろうけど  
「あ、あ…ッ」  
ビクンと眞子の体がはねる、私もそろそろ…  
「んっ、くふぅぅぅ」  
いつもよりずっと気持ちいい、いつもの半分くらいの時間で私も達してしまった  
「はぁ、はぁ、眞子、顔拭いて置けば?」  
涙やらよだれやら鼻水やらでぐしゃぐしゃになってる、流石にこれは怪しまれると思った私は、とりあえず自分の―もとは兄さんのだけど― シャツを差し出した  
 
 
コンコン  
「眞子、メシ出来たぞー。」  
「えぁ、い、今行く!!」  
まずい、思ったより早かった、とっさにベッドの下にもぐりこむ  
って、この本はなに!?最近少ないと思ったら…あとで処分ね  
ガチャリ  
「眞子、体冷えてない…ひょっとして自分でしてたのか?」  
イエス、イエスよ!!  
「あ…う、うん」  
私の意思が通じたのか、単に言い出せなかっただけか、眞子は私のことを兄さんに言いつけなかった  
「そっか…じゃあ、飯は後で温めなおすとして、もう一度。」  
「ええっ!?」  
ベッドの上でまた二人が重なっている、どうしよう、風邪引いちゃうかも…  
 
 
それから、純一と眞子は付き合いだした、ぎこちないカップルだったが二人ともすぐに耐え切れなくなり  
「朝倉ッ!まぁた、あんたと杉並ねッ!」  
「あわわ、違う、無実だ!!調べればわかる!!だから…な?」  
いつもどおりの付き合いをするようになった、前と変わったことといえば  
「ふう、まあいいわ。」  
眞子が余り手を上げなくなった事と  
「ほら、これで落ち着けって。」  
ちゅっ  
こんなふうにじゃれあうようになった事  
「あ…」  
「落ち着いたか?」  
「まだ…かな。」  
それから人目を気にしなくなったことくらいだ、傍から見ればカップルからバカップルになっただけの話だが、その無遠慮なやり取りは兄妹か姉弟のようだった  
「しょうがないなあ。」  
ちゅ  
そんなことを続けているうちに時計を確認し忘れる事が増えた、チャイムがなっている中、屋上から教室まで並んで突っ走る二人の姿が学園の名物となるのも時間の問題だろう  
しかし  
 
「眞子、昨日は何か新しいことした?」  
実は、隠れてすべて聞いているのだが、そんなことはおくびにも出さない  
「いや…いつもどおり…だけど…」  
まさか毎回覗かれているとは思いもしない眞子は、いつまでも別の恋を見つけようとしない音夢を少し哀れんでいた  
「あれ?うそはいけないよ、眞子。いつもはこんな目立つところに痕付けないじゃない。」  
「…ッ!?」  
ジンジンと痺れるキスマークを不意になでられる  
「まあ、せっかく泊まりに着たんだから私の部屋にもよっていって。」  
「…」  
眞子は音夢がもう壊れかかっていると思っていた  
純一への気持ちに気づいたとき、ただひとつ残った後ろめたさ  
夢にまで出てきて、自分の純一の間に入ろうとする存在  
それでも眞子は音夢が嫌いになれなかった  
「ささ、はやく。兄さんがお風呂から上がっちゃうよ。」  
純一は情事の後、眞子とは別々に風呂に入る、興奮しすぎて疲れると二人で起きていられる時間が短くなり、損だというのがその理由である  
「うわぁ、斑模様。」  
それが眞子を無防備な状態にしているとも知らずに  
「ぅぅ、朝倉…」  
「眞子、私も朝倉なんだけど?」  
眞子とは対照的にすっかり慣れた手つきで眞子をまさぐる音夢  
「ん…ん…!!」  
「兄さん…いぃ…」  
必死に耐える眞子をあざ笑うかのように音夢が乱れ始める  
「ああん、兄さん…もっと」  
「く…ぅぅ」  
「なんで…私じゃ駄目なの?兄さんの事こんなに、こんなに好きなのにぃ…」  
いつもなら、この状態が数十分続くが今日は違った  
ガチャ  
「音夢ッ!眞子になにしてるんだ。」  
眞子が恐れていた事が起こった  
 
「朝倉…」  
なにを言おうとしたのかわからない、黙っていたことを謝ろうとしたのか、助けを求めようとしたのか  
迷っているうちに音夢が口を開いた  
「間接Hですよ、兄さん。」  
「へッ?」  
「兄さんが抱いた女を私が抱けば…ね?」  
純一はワンテンポ遅れてようやく気づいた  
「音夢、お前…」  
「私の居場所は兄さんのそばだけ…兄さんだけなの。」  
「あ、あたしだって、好きなのは朝倉だけだよ!」  
「だから私も朝倉だってば。」  
眞子は二回言われてようやく気がついた、慣れた呼び方をずっと使っていたが、『朝倉』は朝倉 純一だけではない  
しかし、『純一』も朝倉純一だけではない。自分の恋人である『朝倉 純一』が一番だと表現するにはどうしたら良いのか眞子は思いつかなかった  
沈黙を破ったのは純一だった  
「…とにかく、二人とも服を着ろよ。」  
 
 
それから一週間、眞子は純一に自分から声をかけなかった  
いったいどう呼べば良いのか?普通なら悩むようなことではないのに、音夢にどう言い返していいのか解らなかった  
「はぁ、はぁ…」  
純一が経験の少ないわりにうまかったからか、それとも、眞子にそういう部分があったのか、日曜の夕方になると体が火照り、陰部が濡れてきてしまう  
付き合って間もないのに、もう体が覚えている、いや、溺れているというべきだろうか  
「んんッ…!!」  
クチャクチャと水音が響く  
「ファァァァ…」  
じんわりと快感が広がり、頭の中が恋人のことでいっぱいになる  
「んんッ…ァ」  
遅れて、暖かい幸福感がわきあがってくる  
「うぁ…アッ、朝倉ぁぁ…」  
ピタリと手が止まる、快感も幸福感も全部吹き飛んで眞子は再び考え込んでしまった  
 
「朝倉純一…朝倉音夢…兄妹なんだから苗字が同じなのは当たり前じゃない。」  
なら、何であたしはアイツに声をかけられないの?  
「朝倉」  
苗字で呼んでみる  
「純一」  
名前で呼んでみる  
「兄さん」  
音夢のまねをしてみる  
どれも違う気がする、しかし、どれもこの気持ちを伝えてくれそうな気がする  
悶々とした気分のまま姉の待つ食卓に下りていった  
 
「眞子ちゃん?どうしたんですか?」  
お姉ちゃんが心配そうに声をかけてきた  
「特別な人がいて、その人が大好き、その人が一番って言う気持ちを伝えたいのに、呼びかけられないときお姉ちゃんならどうする?」  
「?」  
「その人にもっと近づきたいのに、呼びかけたら別の一人もこっちを向いちゃうの。そんなときはどうしたら『あなただけが大好きです』って伝えられると思う?」  
「え〜と…?」  
「ああもうっ!!だから、恋人とライバルの名前がかぶってるんだってば!!」  
「…名前…恋人…?ああ、朝倉君と音夢ちゃんのことですね。」  
「うッ」  
ばれてるー!!  
「それで、かぶってるといけないんですか?」  
「へ?」  
一気に力が抜けた  
そうだ、あたしはなにを悩んでたんだろう、音夢と苗字が同じからなんだっていうんだろう、呼び方なんかでどうにかなるほどあたしたちの仲は薄っぺらじゃない  
音夢は『音夢』、朝倉は『朝倉』…あたしが『朝倉』と呼ぶのは  
「アイツだけ…だよね。うん、ありがとう、お姉ちゃん!!」  
「???どういたしまして。」  
明日は朝一番に挨拶しよう  
「あれ?でも音夢ちゃんは朝倉君の妹で…?え〜…」  
え?  
 
純一は疲れていた、一度見られて大胆になったのか、ここ5日間音夢が毎晩迫ってくるようになったからだ  
「音夢、また来たのか。」  
「兄さん、おきてたの?」  
音夢が俺の部屋に来る、そのこと自体は何の問題もない、が  
「もう遅いぞ。ちゃんと寝ろよ。」  
「んんっ、体がね…疼いて…寝れないの」  
甘く囁く音夢は服を着ていなかった、もし俺がいま起きていなかったら…恋人と体を重ねるのは好きだが、自分が寝ている間に、妹に犯されるなんて絶対にいやだった  
「兄さん、一緒に寝て。」  
「だめだ。」  
おそらく寝るだけじゃすまない、家族から身を守るために徹夜だなんて洒落にならない  
「もう、もどれよ。」  
まっすぐに見つめて言う  
「…わかった。」  
眞子と音夢、恋人と妹、大切な女性、自分を取り合ってその二人の仲が険悪になるのは避けたい、もう手遅れかもしれないが、この状況を打破するためには、俺から音夢にはっきりいわなければならない―なのに  
「俺は、なにをやってるんだ。」  
いつかの夢の時と同じ、逃げて、先送りしている、しかもあの時と違い、偶然は味方してくれない  
音夢に「お前は俺の大事な妹だ」とも「お前を恋愛の対象としてみることは出来ない」とも言う事が出来ない  
「…かったるい。」  
そんな風に思う余裕はもうなかった  
 
 
次の日  
「なあ、杉並。」  
「何だ?朝倉」  
「伝えたいことが二つあって、そのうち片方しか伝えられないとしたら。結局解決にならないかもしれない方と、相手が傷つくかも知れない方、どっちを伝えるべきだと思う?」  
「そんなデメリットばかりのもの伝えるな。」  
「すまん、説明が悪かった。俺を好きだといってくれるやつがいるんだ。そしてそいつも大切にしたい。だけど片方だけ伝えると―」  
「状況が悪化するかもしれない、か?で、その相手も出来るだけ傷つけないように断りたいと、欲張りなやつだ。」  
「両方伝えられればそんなできる思うんだ、でも―」  
「なぜ、片方しか伝えられない?羽交い絞めにしてでも両方聞かせてやれば良いだろう?妹に。」  
「えっ」  
ばれてる!?  
「朝倉妹の様子を見れば察しが着く。それよりも、だ。早くお前の口からいってやれ。」  
「…でも、聞く耳持たないんじゃ…」  
「一度でだめなら、何度も言ってやればいい、家族だろう?いつでも二人で話せるんだろう?お前がもたついてる間に水越は一人でなにやら悩んでいる用だぞ?」  
杉並の表情が変わった、そうか、こいつは眞子のことが…  
「そうか、そうだな、一度で済まそうとするからいけないんだ。音夢はかったるいと思うかもしれないけど、耳にたこが出来るくらいお説教してやらないとな。」  
「ふっ、「かったるい」はお前の専売特許だろう?」  
杉並は満足そうに微笑んだ  
 
 
焦り、音夢の感情を一言で表すとそれだった  
眞子と純一が気まずくなった今、音夢にしてみれば絶好のチャンスだ、それなのに  
「兄さんは、なぜ私に振り向いてくれないの?」  
答えて、黙らないで、目をそらさないで  
「なにが足りないの?」  
せめて、それを教えてほしい  
「なにがあれば、好きになってくれるの?」  
兄さんが気に入ってくれる要素なら、何でも身に付けたい  
「音夢に、何か足りないなんて思ってないさ。」  
「だったら…」  
抱いて、そういう前に抱きしめられた  
「あ…兄さん…?」  
「音夢、聞いてほしいことがあるんだ。」  
 
 
悲しかった、悲しく悲しくて悲しくて…すごく嬉しかった  
「兄さん、ずっと一緒だよ?」  
「どうかな〜、音夢に恋人が出来たら、そいつのところにいることのほうが多くなるかもな。」  
結局私の初めては兄さんにはあげられませんでした  
 
 
そして、月曜日、通学路の途中で  
「おはよう、朝倉。」  
眞子が声をかけてきた  
「おう、おはよう。」  
「おはよう、音夢。」  
「あ、うん。おはよう、眞子。」  
それは、一週間前にあんなことがあったとは思えない『普通』の会話だった  
「兄さん、まだ眠そうですね。」  
もう音夢は躍起になって兄との接点を探そうとはしない、そんなことをしなくても、純一は彼女の兄として、彼女の居場所を守ってくれる  
「ほんとだ、寝癖たってる。ったく、ほら、見せてみなさいよ。」  
もう眞子は、ちっぽけなことで不安にはならない、ちょっとやそっとでは自分と純一の仲は壊れないという自信がある  
「うう〜、次の日曜日は休みが必要かな…」  
もう純一は、変えることを恐れない、間違えたら引き戻してくれる人が二人もいる  
朝日に照らされて、通学路を並んで歩く彼らは少し、背がのびたように見えたのだった。  
 
 
そして、無事に一週間がすぎ、眞子と純一は…  
「今日は、音夢、乱入してこないでしょうね?」  
久しぶりにどちらにも、何の心配もなく  
「こら、冗談でもそんなこと言うなよ。」  
そして、初めて邪魔が入らない、夜を経験しようとしていた  
「あはは、ごめん。」  
「それ、おしおきだ。」  
「ひゃ!?」  
純一が耳たぶを甘噛みして、眞子のスイッチをいれる  
「ふふ。」  
負けじと眞子も純一の耳に息を吹きかける  
「ねぇ、今日は最初から入れて。」  
一週間、間が空いただけで眞子のそこは普段より20分は進んだ状態になっていた  
「ん?ああ、ちょっと待っててくれ。」  
ごそごそと机をあさりだした純一を眞子が背中から抱きしめて制止する  
「ううん、きょうは大丈夫な日だから…じかに頂戴…」  
ゾクリとするほど甘い声  
「少し女らしくなったかな?」  
「ひどいな、前はそうじゃなかったみたいな言い方じゃない」  
「あはは、ごめん。」  
「えい、おしおき。」  
あっという間に立場が逆転してしまった  
将来尻にしかれそうな雰囲気である、が純一はそれはそれで良いかもと思っていた  
「ほらほら、気持ちよくしてほしかったらなんていうの?」  
「う…ク、お願いします。」  
この男は少しマゾの気があるかもしれない  
「よろしい。」  
ゆっくりと、眞子が腰を動かし、純一も体をよじる  
まるで踊っているかのような似合いのカップルだった  
 
終わり  

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