むかしむかし、ある北の王国に、鍛冶屋の兄弟がいました。
しかし、ふたりはとても仲がわるく、毎日けんかばかりです。
それをみた、銀色の髪の王さまはふたりをお城によび、なかよくするように言いました。
しかし、ふたりは言うことを聞きません。
「だれがおまえなんかとなかよくするか。おれの剣にかかれば、おまえの盾なんて紙くずとおなじだ」
兄が笑うと、弟はかんかんになって言いました
「それはこっちのせりふだ。おれの盾が、兄さんの剣なんかにまけるもんか」
またけんかです。兵隊たちにふたりをとめさせると、王さまはしばらく何かをかんがえ、言いました。
「兄よ、おまえは何でもつらぬく剣をつくるのだ。その剣で弟の盾をつらぬいてみせよ」
「弟よ、おまえはぜったいにこわれない盾をつくるのだ。その盾で兄の剣をはねかえしてみせよ」
それを聞いたふたりは、「ははー!」とひざまずきました。
つぎの日、たくさんの人がみまもる中で、決闘がはじまりました。
兄が剣をゆびさし、じまんげに言います。
「これこそは、つらぬきの剣。おれのこの剣なら、ドラゴンのうろこだってつらぬくのだ」
弟も盾をゆびさし、まけじと言います。
「これこそは塔の盾。おれのこの盾なら、ドラゴンのつめだってはねかえすのだ」
またけんかをはじめようとするふたりに、王さまは言いました。
「では、決闘をはじめよ。勝ったほうが、この王国いちばんの鍛冶屋だ」
それを聞いたふたりは、剣と盾をもってたたかおうとしましたが、いつまでたっても決闘がはじまりません。
「だめだ。この剣は長すぎる。これじゃたたかえない」
兄はこまってしまいました。つらぬきの剣はとても長く、ふることができなかったのです。
「だめだ。この盾は重すぎる。これじゃたたかえない」
弟もこまってしまいました。塔の盾はとても重く、もちあげることができなかったのです。
それをみた王さまはしずかに言いました。
「おまえたちはその剣と盾とおなじだ。けんかばかりして、大事なことをわすれてはいかぬ。これからはなかよくするのだぞ」
それを聞いたふたりはまた、「ははー!」とひざまずきました。
おわり