その日も不死をいたぶり尽くした私は、住処の奥へと戻っていった。
階段を降り、糸が張り巡らされた壁へと向き合う。
その一点を魔剣でなぞると、通路を隠す幻が取り払われる。
私は安堵と期待で、胸がいっぱいになった。
ああ……今日も戻ってきた。
これからの時間が、私の生きる喜び……
通路を進むと、今にも消え入りそうな、か細い声が私を迎えた。
「姉さん……姉さんなの……?」
「ただいま。具合いの方はどう?」
うやうやしく頭を下げる卵背負いを尻目に、私は妹のもとへ駈け寄る。
「うん……なんだか、あんまり痛くないの。
きっと、姉さんが、来てくれたから……」
その言葉に、私は胸を締め付けられる。健気に微笑むその瞳には、
もうほとんど光が届いていないというのに。
「今日はね、新鮮な人間性がたくさん手に入ったの。
これでかなり楽になれるはずよ……」
そう言って私は、妹の青白い頬に手を触れる。
私の意図を察した卵背負いは、ゆっくりと部屋の外へ去っていった。
私は以前、母を捨てた。
母のイザリスは、己の野望に呑まれ、混沌の苗床へと姿を変えてしまった。
私たち姉妹を見境なく襲い、多くのデーモンを産み出した母。
中には、昔の母を信じ、守るために残った姉妹もいたけど……
私は逃げた。妹を連れて。
混沌の炎に焼かれても、その半身が化け物のように姿を変えても……
最愛の妹を連れて、必死で逃げた。
かつて、太陽の光の王グウィンと共に勝ち取った、栄光の日々。
母や姉妹たちと過ごした、幸せな時間。
それらが懐かしくないと言ったら嘘になる。
でも、後悔はしていない。私は今のままでいい。
そう……この子がそばにいてくれるだけで私は……
私はそっと、妹に唇を重ねた。
いつも不死にするのとは違う、本物の愛の接吻。
密着させた乳房は歪み、乳首と乳首がこすれ合う。
何物にも変えがたい至福の時を、私はこの胸いっぱいに感じていた。
「んっ……んぁ……んぷ……」
頃合いを見て、私は人間性を流し込む。
舌を伝って、トロトロと流れていく人間性。
私の体の一部だったものが、今度は妹の一部になる。
胸の奥で興奮を覚えながら、私は妹に人間性を流し込み続けた。
「ん……んっ……ちゅぷ……」
姉からの贈りものを一滴も零すまいと、妹は必死に唇を合わせる。
そんな健気な様子が、胸が張り裂けそうなほど愛おしい。
「んっ……ちゅくっ……んっ……」
人間性を流し終えてもなお、私は唇を求め続けた。
受け取るものがなくなっても、妹はちゃんと応えてくれる。
ああ……なんて柔らかいの……あなたの唇……
「ぷはっ…………ハァ……ハァ……」
ようやく唇を離し、私たちは額を合わせた。
高鳴る鼓動が抑えられない。妹の瞳を見つめながら、荒い呼吸を繰り返す。
「ありがとう、姉さん……なんだかとっても楽になった……」
か弱い声と共に、甘い吐息が鼻をくすぐる。
ダメ…………もう、ガマンできない……
「ねぇ……今度はおっぱいから吸ってみて」
動揺を悟られないように、精いっぱい平常心を装って言った。
人間性を与えるだけなら口移しで事足りるのだが、私は欲望を抑えられない。
「うん……わかった」
さして疑問も持たず、妹は私に従ってくれた。
妹の頭を優しく抱え、ゆっくりと乳房の先端へと導く。
桃色の突起が目の前にくると、妹はおそるおそる舌を伸ばしてきた。
「はっ……うっ……!」
思わず声が漏れ、私はとっさに指を噛む。
ためらいがちな舌遣いが、この上ない切なさをもたらす。
妹は確かめるように舌先で乳首を舐めた後、今後は温かな唇の中に
すっぽりとそれを含めた。
「……ッ!!」
声を抑えるのがやっとだった。
お腹をすかせた赤ん坊のように、ちゅうう、ちゅうう、と人間性を吸う。
乳首から人間性が吸い上げられるたびに、狂おしいほどの快感が駆け巡る。
そして、しばらく乳首を吸い続けていた妹は、空いている手を持て余すかのように、
その指先をもう片方の乳首に伸ばしてきた。
「ひゃんっ!」
思わぬ刺激に、普段なら絶対出さないような声を上げてしまう。
妹はピクリとその手を止め、心配そうにこちらを見上げてきた。
「どうしたの、姉さん……痛いの?」
「ちっ、違うの……大丈夫だから、そのまま続けて」
なおも妹は不安そうに見つめていたが、元の作業を再開してくれた。
先ほどの指先は乳首をつまんで、無邪気な手つきで弄んでいる。
体の中でせり上がる感覚に、私は指を噛んで必死に堪えた。
……あっ……ダメッ……これ以上は……!!
「……ッ…………ッッ!!!」
可愛い妹に乳首を弄ばれただけで、私は簡単に達してしまった。
いっそう強く指を噛み、体の痙攣を無理矢理抑え込む。
幸い妹は気づかずに、夢中になって乳首を吸い続けていた。
私はそっと、妹の頭を抱きしめる。
柔らかな髪を梳くように撫でると、妹は乳首を含みながら
照れくさそうに笑った。
ああ……私の可愛い妹。
私だけの、可愛い可愛い妹。
あなたを愛してる。
私は魔剣を構え、静かに来訪者を待ち構える。
今日もまた一人、白い光の中から愚かな不死が迷い込んできた。
「……あら、また来てくれたのね。とっても嬉しい……
ちゃんといっぱい溜めてきてくれた?」
いつしかの不死の股間を見やり、私は言葉を投げかける。
その傍らにいたずた袋の女に目を向けると、女は怯えたように後ずさりした。
「そう何度もやられると思うなよ……化け物!」
剣を構えた不死が、勢いよくこちらに向かってくる。
私はまっすぐ不死を見据え、髪を掻き上げながらニヤリと笑った。
誰が何度やって来ようと、私のやることは変わらない。
私は、あなたの全てを喰らい尽くす。
最愛の妹のために。そして、私自身の愛のために。