男は今日も,檻の前に腰かけていた。
「貴公,今日はいい天気だぞ……たまには外に出てみたらどうだ?」
男はそうやって,檻の暗闇に語りかける。
そこには……薄汚れた聖女が一人,うなだれて座っていた。
「…………」
女は返事をしない。
もっとも,不死の世界の天気は不変だ。檻の中からの光景も,何百年と変わらない。
ここ最近で変わった事と言えば……その光景に,金色の男が加わったくらいか。
「相変わらずダンマリか……ツレないねぇ」
クックッと,鎧の中で響く笑い声。
何度も繰り返してきたやりとりを,男は飽きもせずに続ける。
「これからアノール・ロンドに発とうと思う。貴公ともこれでお別れだ」
そう言って男は立ち上がり,女の檻に近づいていった。
檻の外からの光が,どんどん男で塞がれていく。
「短い間だったが……世話になったな」
鉄格子の間から,男の手が伸びる。
柔らかな髪をそっと,愛おしそうに撫でる冷たい手。
その指が女の顔に迫ったとき……女の肩がピクッと震えた。
「……それとも」
瞬間,男は女の顎をつかみ,クイッと正面を向かせた。
異形のものが目を見開いて,まっすぐに男を見つめている。
初めて女の素顔を目の当たりにした男は…………兜の奥でニヤリと笑った。
「一緒に来るか?外の世界に」
男の手つきは止まらない。
檻の中に身を滑り込ませた男は,そのまま聖女の衣服に手をかける。
乱暴に,だが確実に,女の服をはぎ取る男。
女は何かを悟ったように,男の手に身を任せていった。
「哀れな……人間性の漂代が,ここまで醜いものだとは……」
一糸まとわぬ姿になった女に,男は兜越しに目を細めた。
それは人の形をしていたが,人ではなかった。
皮膚は所々膨らみ,まるで無数の生き物のように蠢いている。
顔もほとんど形が崩れていたが……苦悶の表情を浮かべているように見えた。
「かわいそうに……ずっとその痛みを抱えてきたのだろう」
哀れみの言葉を投げかける男。
しかし言葉とは裏腹に,その声には邪悪な笑みが含まれていた。
「せめてもの礼だ……この手で楽にしてやろう」
男はそう言うと,女の足の付け根に,勢い良く手を突っ込んだ。
「……ッ!……ッッ!!!」
声にならない叫びを上げ,大きく身をよじる異形の女。
手甲越しにわずかなヌメリを感じると,男はくぐもった笑い声を発した。
「痛いか?」
見ると,男の手が赤黒い邪気を帯びはじめていた。
邪悪なオーラは徐々に肥大していく。まるで,女の股間がメラメラと燃えているようだ。
「裏のルートで譲り受けた……ダークレイスの吸精の業だ」
割れ目に入り込んだ男の指が,淡い光を放った。
そのまま男は,少しずつ指を動かしていく。
「ァ……ッ……!!」
女の股間が,クチュクチュといやらしい音を立てはじめた。
未だかつてない感覚に,女は囚われていた。
男が指を動かすたびに,体中の人間性が轟き,痛みで我を忘れそうになる。
しかし次の瞬間……男に人間性を吸い取られ,一瞬だけ痛みから解き放たれる。
激痛と鎮静の繰り返し……無限に続く地獄を,女はひたすらに耐えていた。
「どうだ? もう少し我慢すれば,極上の喜びを味わえるぞ……」
嘲笑じみた声を発し,男は指を動かし続ける。
こうしている間も,女は少しずつ違和感を覚えはじめていた。
「何か感じはじめたかな?」
女の様子を見た男は,指の動きを一気に速めた。
「!!……アァッ……ゥァ……ッ!!」
グチュグチュと激しい音を立て,容赦なく膣を責め立てる。
ずっと続いてきた激痛は,いつの間にか痺れるような感覚に変わっていた。
「どうだ……少しは楽になってきただろう」
連続的に人間性を吸い出され,女はガタガタと腰を震わせる。
女の恥部からは蜜が漏れ出し,地面に水溜まりを作っていた。
「クックックッ……おい,自分の体を見てみろ」
男に言われて身体に目を向けた女は,次の瞬間驚愕した。
そこにあったのは醜悪な肉体ではなく,きめ細やかな女の肌だった。
女は人間性をほとんど吸い尽くされ,美しい肢体を取り戻していたのだ。
「感謝するがいい……痛みから開放されただけでなく,このロートレク様の手で,
女の喜びと共に果てるのだからな」
男はそう言って,信じられない速さで膣内をかき乱す。
「アァ……ゥゥゥゥ……!!!!」
もはや痛みはなかった。
代わりにあったのは,激痛から開放された喜びと,狂おしいほどの快感。
容赦のない男の手で,女はメチャクチャにされていた。
「ングゥゥウゥゥゥゥゥゥ………!!!!」
男の手と繋がったまま,ついに女は達した。
癇癪を起こした子供のように歯を食いしばり,ガクン,ガクン,と腰を跳ねらせる。
全てを吸い出された淫らな火防女は,目に涙を浮かべたまま,檻の闇へと消えていった。
「クックックッ……他愛もない」
濡れた男の手に残ったのは,白くゆらめく火防女の魂だった。
男はそれを満足げに眺めたあと,自らの中にしまい込んだ。
「さぁ,外の世界に行こうではないか……」
男は下劣な笑みを浮かべ,暗い檻を後にする。
その後ろ姿を,黒い瞳の眼差しが見つめているとも知らずに……
〜〜おわり〜〜