ま、まだ…あれさえ取り戻せば…!  
 
杖が打ち捨てられている。それも彼女の目の前僅か三歩先。彼女は思考した。トクトクと――胸の鼓動が速まり、体の内が熱くなる。きっと体が命の危機を感じているのだろう。ぎゅっと目を瞑り、開く。  
 
体の熱さにあてられているせいか、くらくらするのだ。目の前の出来事が夢であれば良いのにと、熱くなった頭でぼうとそんな事を考えていた。  
せめて杖さえあれば。だがどうやって手に入れると言うのだろうか。この有り様で。  
 
青黒く発光した腕は掴まれている。後ろ手に。そしてそれを掴んでいる白い霊体に身を預ける格好になっている。  
 
背後を取るなら早く致命の一撃なりなんなりを食らわせれば良いものを。  
そうは考えた。が。自らの使命を思い出し、すぐに首を横に振る。  
 
火守の女性――アナスタシアの仇を。  
そう意を固めたは良いが、今の自らの姿にはほとほと情けなくなる。  
 
ふと何かが視界に入った。うんざりする程金色に輝く手甲が過ぎる。  
身を捩るが虚しいだけ。足は先程まで自由であったが、この金色男を蹴ろうとした時にもう一人の白霊体に押さえられてしまった。  
彼女、復讐霊等といったことは初めてであり、他人の世界へ侵入するのはこれがはじめてだった。相手は手練れな上に三対一。情けないが、こうなってしまうまで実にあっと言う間であった。  
 
「…!」びくりと女の肩が跳ねた。金色男の手甲が女の首筋に触れる。――冷たい。何をする気なのか。  
次に無機質な肌触りはするりと女のしなやかな腰へ伸びてゆく。  
 
「クックック…」  
屈む金色男は手をかける。腰に巡るローブを留めた紐に。男は女を直ぐには殺さないつもりらしい。  
「……!!…っ!」嫌な予感が頭を駆ける。まさか、とは思ったが。予感が見る間に確信へと変わっていくと同時に、体の芯が燃え尽きそうな屈辱の念が高まってゆく――。  
女は金色の男のせんとする事から目を逸らした。渦巻く屈辱の念、嫌悪感からただ逃れたいのだ。だがその僅かな抵抗すら女には許されない。  
視界の脇から白い光が伸びたと思えば黒い服を纏った白霊体の顔が近付き唇を合わせられる。唇を逃がそうとするも、頭を鷲掴みにされては思うようにはいかず。  
 
やがて熱く、柔らかい舌が強引に侵入してくる。固く閉じた唇の隙間を少しずつ。また少しずつ。  
「ほう。頑なに拒絶するか。…良いぞ…その方が眺める此方も愉しいからな…」金色の男が愉しげにその様子を見ていた。彼は少しばかり作業の手を止めていたが、また直ぐにカチャカチャと手甲を鳴らして作業を再開する。  
 
「……!」ずっと堪えては居たが、侵入がある一定を超えると、唇で阻むことも叶わなくなりそうになる。  
 
「…どうした?もう終わりか?そのままでは白霊体に唇を奪われてしまうぞ…クックッ…」  
 
金色の男が嘲笑う。そのすぐ後であった。行き場を得た黒服の白霊体の舌が一気に女の口内を侵したのは。  
粘膜と粘膜がねっとりと擦り合わされる。白霊体の思うがままに。歯の根を、内側を、舌を。更に深く唇を合わせ――唾液を流し込まれる。  
女の口内で、見ず知らずの男の唾液、舌が踊り、混ざり、女を侵す。  
思い切って奴の舌を咬んでやろう。そう思った。しかし白霊体は空いた手で短刀を喉に突き立ててくるのだ。まるでこちらの魂胆を見透かしたかのように。  
 
彼女の頬に何かが光り、こぼれ落ちてゆく。ゆっくりと。  
 
そしてその時。  
…はらり。頬の光が地に落ちるのも待たずして、腰の辺りに妙な開放感を感じた。ローブの裾が捲られていく。  
 
「っ!!」女が拒絶の意を叫んだ。しかし、男達の耳には届かない。復讐霊である彼女の声にならない声。  
 
それと仮に、声が届いたとて、男達がこの悪夢のような戯れを止めるはずがない。むしろそんな彼女を男達はさぞ愉しそうに見ていた。苦痛の表情で声にならない声を叫び、身悶える彼女を――。  
 
ちゅ…。と突然脇腹に浅い口づけがなされる。  
口づけの主は金色の男であり、彼は兜を取り勝ち誇るようにこちらをのぞき込んでいた。  
口づけは柔らかだった。そう、本来ならば愛しい恋人同士で交わされるような。  
 
それを見せつけるように、わざとらしくやってくる。貴公の体全てを支配した。そうとでも言い放ちたげな薄ら笑いを顔に貼り付けて。  
 
女は歯噛みし誰かに助けを乞う。この悲劇の世に救世の神なぞ居ない。彼女が助けを乞うのはただ一人。意識せずとも彼との別れ際の事が思い出された。  
 
 
「ソラールさん!ソラールさんってば!」側の篝火が女の顔を照らす。炎の揺らぎに頬が照らされ、そして陰る。ゆらゆらと。明と暗の合間を行っては帰る。さながらに彼女の心境を表すかのような。  
 
「何故だ…何故見つからない…」彼、ソラールは譫言を呟く。女の声なぞ届かない。まさか。彼の人間性もとうとう――。いや。  
 
不安な気持ちがこみ上げるをぐっと堪える。  
「返事して?お願い…!」たまらず彼の体に強く腕を回す。ぎゅっと。ぎゅうっと。冷たい。鎧のせいだが、不安になる。彼の心もこの鎧のように冷たく動かなくなってしまうのではないかと。  
 
だから、少し待つ。待ってみる。だが、駄目だった。いつもなら回される優しげな腕も、この髪を撫でた指先も彼女には与えられなかった。  
ガシャ…。重い金属音が響き。小さな悲鳴。続いて女が体を地に横たえた。どさりと。  
 
彼女が見上げるとそこには此方を見下ろす彼。手には直剣が握られている。床に崩れた女へ与えられたのは、差し伸べられた手ではなく。  
 
空を切る直剣。間一髪で何とか避ける。  
前方で岩と剣が響きあった。  
 
彼女は思考した。何か策はないかと。  
 
「あ…」気づく。人間性だ。あれさえあればきっと…いや。あれしかない。あれを彼に与えれば。  
「必ず…戻るから…!」男へ背を向け走り出す。デーモンを倒せば人間性の精が手に入る。急げばきっと…。  
 
 
――でも。  
でもその後、ソラールの下へ戻ってもそこには誰も居なかった。各所を探し回った。でも見つからない。  
アナスタシアの仇討ちだって、手を貸すと約束してくれたのに。彼女一人では心配だ。そう彼は言っていた。  
一縷の望みを賭けて此処へ来たが、状況は何も変わらない。彼女は独りぼっちだ――。  
 
「クックッ…」声を殺した静かな笑い。女の乳房に不快な感触が与え続けられる。  
柔らかく、また張りのある乳房が金色の男の手に確と収められている。節の張った大きな手に若干余るほどのそれを彼は堪能していた。  
 
「悔しいか。卑怯だと思うか?――だが、復讐霊とは孤独なものだよ…」金色の男は諭すように呟く。  
奴は他の侵入霊にもこの様な下衆な真似を働いているのかも知れない。そんな口振りだった。  
 
「っ!!」突如として、ビクリと女の体が跳ねる。金色男が女の胸の膨らみの頂に触れたのだ。  
「―!――っ!―――!!」ビクビクと体を捩る女。  
 
「ほう…」一方男は興味あり気に声を漏らし。  
「貴公…ここが敏感なのだな…?」くりくりと女の弱点を弄ぶ。こいつは女に快感を与えようとしていると言うよりは、プライドをいたぶって遊んでいるようだ。ただ、自分の欲を満たすためだけに。  
 
「ん……そうか。」  
 
男が何かに気付いた。  
 
「ふむ。精力盛んで羨ましい限りだよ…私はまだ弄って居たいのだが。もう我慢ならん、といった様子だなぁ…」金色男がそう呟くと、突然女の腕が解放された。  
 
女が逃げ出そうとする。だが赤服の白霊体が腰を掴んでそのまま膝を折らせた。醜く穢らわしい、獣のような四つん這いの格好にさせられる。  
 
「!!」下衣が乱暴にはぎ取られる。青黒い肌の復讐霊相手では、魅力に欠けるのでは。女はそう思ったが彼らには関係がないらしかった。  
何の合図も言葉もなく刺激が突然始まる。いきなり、秘裂を舐めあげられる。赤服の白霊体の舌が、這う。のた打つ。魔物のように。  
じゅる…ちゅ……くちゃっ。  
卑猥な音がアノールロンドの広間に響く。赤服の白霊体は夢中になって女の大事な場所にむしゃぶりついている。  
 
「さて」金色男の声。女は頭を掴まれる。そして頭を上げられる。無理矢理。  
 
頭を掴まれ首を僅かに横へ振る女。もう。やめて。解放して。声にはならない声をあげて懇願する。  
しかしすべての抵抗も意味はなさず、立派に反り立った肉樹が女の小さな口にぶち込まれる。そして脈打つそれを、女の頭を掴んで出し入れを繰り返す。  
 
時折、視界の端で銀の刃がちらつく。抵抗すれば、速やかにこの刃が女を切り裂くであろう。  
 
女は只々心の中で呼び叫んだ。愛しい男の名を。  
太陽の、騎士の名を。  
 
頬が熱い。瞳から次々と熱い雫が生まれて女の視界を奪ってゆく。ぼろぼろ、ぼろぼろときりがない。  
 
秘裂はグチャグチャと淫靡な音を立てて、指先にかき回され。口はただ男に快感をもたらす為だけに刺激を繰り返し。青黒い手にも肉樹は握られ、奉仕の為に運動を続けなければならない。  
段々気が遠くなり、思考が鈍る。突然、秘裂が広げられた。そしてめりめり、めりめりと、何かが押し入ってくる。それが何かなど、嫌でも女には分かる。  
 
「……っ」彼女は耐えた。この狂った宴が終わる事を祈る。やがて赤服の白霊体が女の中を突き上げ始めた。  
じゃぷっ…ぬぷっ。ぬめる水音が繰り返し響く。  
 
きっと、もうすぐ解放される。そう希望を持つ反面で。まるでこれが永遠に終わらぬような錯覚が渦巻いて女を精神的に追い詰める。  
 
扱かれている白霊体の肉樹が強く脈打った。精を放たんとしているのか、それは一往復ごとに張りを増して膨張していく。白霊体が扱く女の手に自らの手を重ねおく。刺激が足りないらしく、更なる刺激を女に催促しているようだ。  
 
「!!」やがて――。ひくつく肉樹から白いソウルがぶちまけられた。  
女の青黒い躯…四つん這いでも良い形と分かる乳房に遠慮なく白が彩られた。  
 
手をようやっと解放され安堵するが、宴はまだまだ終わらない。背後では赤服の白霊体が更に高みの快感を得ようと、好き勝手に女の中をかき回す。滅茶苦茶に。どろどろに。  
 
速度は徐々に早まり、それに比例し女の苦痛も増えてゆく。  
「っっ」  
「どうした…口が止まっているぞ…?」  
金色の男の肉樹が喉を貫く。秘裂が感じる耐え難い苦痛に思わず奉仕する口を止めてしまっていた。仕方なく奉仕を再開する。  
 
「…やけに…素直ではないか」金色の男の呼吸がほんの僅か、荒くなる。  
 
「あやつももう直だな」そう言葉が耳に入る。やがて白霊体の動きが一際激しくなる。  
入り口までずるりと引き抜き、最奥まで一気に貫く。何度も、何度も大きな動きを繰り返し、男は上り詰めてゆく。そして。ついにはじけた。  
今度は中へ白いソウルが注ぎ込まれる。どく…どくん。何度か痙攣し、大量のソウルを注ぎきった肉樹がゆっくりと引き抜かれた。  
 
「クックッ…」金色の男が今度は女を仰向けに寝かせ直す。  
女の秘裂からはとろりと白いソウルが流れ出ている。何度も突き上げられ、女の瞳は光を失っていた。今や抵抗する元気もなく、人形の様にくたりとしている。  
そのひくつく箇所に、金色の男は自らの分身をあてがい。…一気に貫く。今日はまだ一度たりとて精を放ってはいない為、彼の分身は非常に堅さを帯びている。  
 
ずちゃ…ぬちゅっ。肉樹が蠢く。初めはゆっくりと往復し、まるで女の中の具合を確かめているようだ。  
 
「ふむ…っ貴公、中々良い体をしているな…っ」女がずっと刺激を与えていたせいだろう。金色の男は割と早く済みそうだ。そうすればきっと解放される。霊体では孕む危険性もないはずである。  
非常に辛かった。しかし、やっと。終わるのかと。ぼうとそんな事を考える。  
青黒い躰が男に揺さぶられる。  
 
ぐちゃっ…ぬぷっ……っ。男がはあ、はあと荒い吐息を吐き、ふと密着するように体位を変える。女に覆い被さるようにする。女の首筋を舐めあげ、そこへ接吻をする。  
 
淫靡な奏が広間に反響する。早く済む、そう考えたものの、実際にみると女にとってのそれは15分にも20分にも感じられた。  
 
「あぁ…出すぞ…!」  
「っ!」漸く男が言うと肉樹が質量と堅さを増す。突然予想外に押し広げられた秘裂に痛みを覚えた。  
鈍っていた思考が痛覚によって呼び起こされ、女はくわえ込まれた肉樹を引き抜こうと暴れた。  
「あぁ…良いぞ、その顔…いたぶり甲斐がある。クックックックッ…」男は女の抵抗すら愉しげに味わう――。  
 
この男達はとことん下衆な者共だ。そして、女はそんな男達の玩具へと成り果てていた。  
…どくん。やがてついに注ぎ込まれた金色男の精の熱さに女は実感する。自らが汚されてしまった事を。  
 
 

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