女騎士は静かに時を待っていた。  
突如現れた伝説の白龍「シース」と思しき鱗無きドラゴンと戦い敗れた。  
死した肉体は最後に訪れた篝火の元で復活する、だが彼女が目覚めた場所は見たことも無い牢獄であった。  
しかも、両手両脚には枷がはめられ、足首から伸びた鉄鎖は巻き上げ機らしきものに掛かっている。  
 
 なぜ彼女が見知らぬ篝火で転生したかは分からない。  
あの化け物が白龍「シース」だとしたら、暗月の火防女が言っていた実験に拠るものなのかもしれない。  
 
 わざわざ拘束までしていると言う事は、誰かが己の前にやって来るであろうと彼女は考えていた。  
実際のところ、様々な「最悪の事態」が次から次と浮かんではいたが、必要以上に自分で自分を追い詰める事は愚かだ。  
出来もしないこと、どうにもならぬ事ではなく出来る事を考え、精神を落ち着かせる事が機会を掴む余裕を生む。  
それは彼女が不死となる以前から身をもって知った教訓であり、彼女が不死となってからも心折れず此処までやってこれた理由の一つであった。  
 
 
 かつん  
 
 足音…であろうか。一つ、二つと回数が増すにつれ聞こえてくる音は大きくなる。  
牢獄の格子の端に白いフードをかぶった人間らしきものが現われ、それは彼女が囚われている牢の前で止まった。  
それは彼女の方を向くと、フードから覗かせた口元に笑みを浮かべたように見えた。  
 
「私をどうするつもりだ」  
 
 感情を表さぬように努めながら問う。  
それは答えぬままに彼女の牢の扉を潜り、彼女の目の前に立った。  
 
「お久しぶりですね…」  
 
 彼女はその声に覚えがあった。忘れたくても忘れられなかったあの声が。  
 
「…レア?レアなの!?」  
 
 かつて一方的に愛し、何処かへ消えた想い人の名を叫んだ。  
 
「はい…。貴女に、会いたかった…」  
「なんで、こんな所に…!?」  
 
 平時で在れば泣いて抱きしめたであろう台詞であったが、鎖に囚われていてはそれは叶わない。  
それに、禁区とまで呼ばれたこの場所へ、ましてやあのか弱かったこの娘が一人でやって来れたはずがないという疑問。  
 
 フードを上げたレアの素顔は、彼女が知っていた清楚で儚げなものではなく、色深い女の眼差しと熱に浮いたような紅みを湛えていた。  
 
「私は、生まれ変わったのです…」  
 
 レアは、吊るされて身動き出来ない彼女の頬を愛しむように優しく包み込んだ。  
 
「レア!?」  
 
 彼女の問いには答えずに、彼女の顔を確かめるように覗き込んでいる。  
 
「貴女は美しいのですね、相変わらず」  
 
 そう言われ彼女は胸に熱いものを感じてしまった。こんな状況だというのに。  
かつて彼女はレアに思いをぶつけ、無理矢理行為に及んだ事があった。  
レアが教会から消えたのはその翌日、だから彼女はレアに恨まれていたと思っていたのだ。  
 
「レア…。どうして貴女は此処に?  
 
 彼女の顔に触れていた手を離し、繰り返された問いに答えた。  
 
「…連れて来られたのです」  
「連れて…って、一体誰に!?此処は誰もが来れるようなところじゃないのよ!?」  
 
 この地はその資格が無い物には足を踏み入れることは出来ない。  
白龍「シース」の実験場である此処へ器無く来れる者は彼の眷属ぐらいなものではないか?  
 
「あの時、貴女の名前を呼びました。きっとあの時のように救いに来てくれるのだと祈っておりました。ふふ、まるで乙女のような事を本気で信じていたのです」  
 
 あの時というのは、連れ攫われた時のことであろう。  
レアの泣いた顔が後になって後悔と共に浮かび上がり、懺悔の言葉をあの薄気味悪い教戒師と共に考えていた。  
帰ってきた時にはもう居なかった、私から逃げたのだと思っていた。  
 
「でも良いのです。私は真に使えるべき方々に出会えたのですから」  
 
 そう言うと、スカートを彼女に見せびらかすようにたくし上げた。  
いきなりの行為に彼女は目を逸らすもすぐに視線をそこに向けた。スカートの下には何も身に着けてはいなかった。  
否、レアの股の間に何か異形が見える。彼女は心無いかのように愛しい者の秘所を食い入るように見つめていた。  
 
「よく見えませんか?」  
 
 足を開き、腰を突き出す。  
 
「ほら、見えますか?これが私に喜びを与えてくれるのです」  
 
 彼女は何かにとり憑かれたかのようにその一点から目を離せないでいた。  
レアの秘所が、太い棒状の何かをがっちりとくわえ込んでいたのだ。  
 
「最初は痛くて、恥ずかしくて、泣いてばかりでした。でも今はこんなに気持ち良いを知らなかった自分を恥じているのです」  
 
 レアはスカートから手を離し、彼女の頬を掴むと唇を奪った。  
 
「ん!?ふあぁ…むちゅ…」  
 
 愛しい人との再会、知らされた事実、見せ付けられた淫猥。彼女の頭脳はとっくに許容量を超えており、あっさりとレアにその唇を許した。  
 
「あの時は素直になれずに泣いて貴女を拒んで申し訳ありませんでした…。貴女は私にこれを教えて下さろうとしていたのですね…」  
 
 互いの唇を繋げる銀の渡し。それが?がったままレアは続けた。  
 
「貴女になら、捧げても…。そう、思っていたのに…本当にごめんなさい…」  
「レア?…泣いているの?」  
 
 レアは涙を流し始めていた。その顔は先程の妖しさが抜けた、彼女が知っていた頃のように見えた。  
 
「ごめんなさい…。もう、堕ちたつもりでしたのに…貴女と出会えるなんて思ってなかったから…。貴女と話していると昔の自分を思い出して…」  
 
 ごめんなさいと、何度もレアは言い続けていた。  
彼女は、レアが此処でどのような目にあっていたかを理解していた。  
 
「レア、謝るのはこっちよ…。ごめんなさい、助けられなくて。貴女の声を聴けなくて…ひくっ…ごめんなさい…」  
 
 二人は泣いていた。あの時の別れとこのような再会を嘆き、会えなかった時間のぶんだけ泣き続けた。  
 
 泣きつかれたレアは彼女の体に寄り添い、彼女はその温もりを心で感じていた。  
 
 「!?あああぁあ!」  
 
 レアに体が跳ね上がり、同時に何かが振動する音が聞こえ出していた。  
 
「レ、レア!?どうしたの!?」  
 
「あ…だめ、みない、で…」  
 
 股の辺りを押さえ何かに耐えていたが、遂に限界に達しスカートを捲り上げると秘所に突き刺さっていたそれを上下に抜き差し始めた。  
それが激しく振動しレアの中で暴れている事は彼女にも分かった。  
見るなと言われても声は聞こえる。何より愛しい者の淫らな姿から目を離す事など出来るはずも無かった。  
 
「くぅ…ああっゆるして…くだ、さいぃ…ご…しゅいん、さまぁ…あ、あっあああぁぁ!」  
 
 レアが絶頂に達すると、それを確認するかのように振動が収まった。  
しかし、レアは今何と言ったか。ご主人様と聞こえたが。  
 
「あ…」  
 
 彼女は自分の股に異変が起きている事に気付く。濡れている。  
このような時に、何故!?  
 
「中々面白い見世物だった」  
 
 突然の声、低くくぐもった男のもののように聞こえた。  
目の前に光が集まり、その中から六目の伝道者が現われた。  
 
「ごしゅじんさま…」  
 
 床に蹲っていたレアはその男の方を見上げて言った。  
ならばこいつがレアを連れ去った張本人だというのか。  
 
「フフフ、そう怖い目で見るな。股を濡らしながら、な。」  
「な…なにを!?レア、こんな奴の言う事なんか、ひあ!?」  
 
 伝道者は彼女の股を撫上げ、その指先をじっくりと見ている。  
この男が壁に備え付けられた取っ手を回すと、彼女の左の足首から伸びていた鎖が巻き上げられ、片足を上げ股を開いた姿勢をとらされた。  
 
「ほうら、よく見ろ」  
 
 伝道者はレアの頭を鷲掴みにして、彼女の秘所を眼前に近づけた。  
 
「は…はい…。ぬれて、います…」  
 
 命令に従い宣言した。  
愛しい者に最も知られたくはなかった事を直に確かめられ、彼女はそう仕向けた者へと、そして自分への怒りで悔し涙を浮かべた。  
 
「ファファファ…これは愉しみがいがありそうだ。聖女を堕とすのには飽きていた事だしな」  
 
 伝道者はレアの秘所からあの棒を抜くと彼女の頬にぴたぴたと押し付けた。擦り付けられた愛液が頬に跡を作る。  
ファファファ、と低い陰湿な笑いが水晶に輝く牢獄内で響く。これから先、彼女が辿るであろう未来を知っているかのように、レアの瞳には絶望と情欲が渦巻いていた。  
 

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