「くぅ…」  
 
天井から吊るされたまま彼女の張りの良い乳房はたどたどしい手付きで揉みしだかれていた。  
上手とは言えないその性技であったが、それを行なっている人物が彼女の理性を揺さぶっていた。  
 
「うっ…」  
 
 軽い痛みに声が出る。乳首を爪で引っかかれたのだ。  
化け物との戦いではあらゆる痛みに耐えて見せよう。  
だが、今は一糸纏わぬ姿であり、鎧と共に騎士としての矜持も捨てやられたかのようだ。  
 
「あ…申し訳ありません。痛かったですか…?」  
 
 声の主は慌てて彼女から手を離した。痛みを与えてしまった事を謝罪する。  
 
「レア…気にしないで。少し驚いただけだから」  
 
 狭い牢獄に見目麗しい女が二人。  
一人は高貴なる聖女、もう一人は幾多の剣戟を潜り抜けた戦乙女。  
聖女レアは、囚われた彼女を犯すように命じられていた。  
憧れていた者への冒涜を強いられていたが、それに逆らう勇気も無い。  
 
「ん…」  
 
 それが分かっていた彼女はレアを責める言葉を何一つ言わなかった。  
自分が誤らなければこうはならなかったという自責もあった。  
 
 それに愛している者に奪ってもらえるのなら…  
 
「あん!」  
 
 レアの舌先が彼女の双丘の頂を舐めた。  
女の声を出した彼女の顔を見上げ、頬を上気させたレアは更に彼女の胸に齧り付き、吸い、舐め上げる。  
 
「あ…レアぁ…」  
 
 愛しい者が自分の体に夢中になっている事実が彼女の心胆を蕩けさせていった。  
 
「気持ち、良いですか…?」  
 
 上目遣いで聞いてくる。  
命令された事とはいえ、レアも彼女の体を貪ることに喜びを感じていた。  
調教され、聖女のベールを破り捨てられた今は己の欲に素直になることが出来ていた。  
 
 レアは膝を屈め、彼女の力強く美しい太腿をさする。  
触れるか触れないか、微妙な力加減で走らせる指先は彼女にぞわぞわとしたむず痒さを与えた。  
 
「ひゃう…!?」  
 
 レアの指先が彼女を太腿の付け根をなぞる。しかしそこから先へは進まない。  
指全体で太腿の内側を撫で上げるも、やはり「そこ」へは達さない。  
 
「レア…いじわる、しないで…」  
 
 「そこ」の奥から湧き出る情欲が、彼女にこのような言葉を選ばせていた。  
彼女が感じてくれている、求めてくれている―  
自分の愛撫が彼女に通じてくれた事は、レアの気持ちが彼女に伝わったように感じていた。  
 
「貴女の…を御見せください…」  
 
 人の中心、彼女の大事な部分を示す言葉は声にならず彼女の耳に届く事はなかった。  
初めて見る他人の華、それも愛しき人のそれ。レアは魅入られたように目を離すことなくじっと見つめていた。  
自分より濃い金色の茂みが鼻にかかる。彼女が放つ匂いに誘われゆっくりと花弁を開いていく。  
滴り落ちてきた蜜が指先を濡らした。こんな状況で、これ程彼女が自分を感じてくれていた事が嬉しい。  
 
「凄く…綺麗です…」  
 
 素直な感想であった。まだ誰にも犯されていない声域、かつて自分もそうであったもの。  
 
「あ、あまり見ないで…はずか、しいから…」  
 
 そんな彼女の様子がより欲望を駆り立てる。  
レアの舌が溢れ出る蜜をすくった。幾ら舐めても湧き出る甘露を思うままに味わっている。  
情欲に耐えられず、いつの間にか自分で自分を慰めていたレアの姿を見て彼女は本当にレアが変ってしまった事を実感していた。  
 
「じゅる…ぢゅ…あぁ、はぁん…」  
 
 レアの両腕は、片方は彼女の秘所を押し広げ更に深く舌が入り込めるように、片方は指を自らの秘所へ突き立てている。  
 
「おいしい…」  
「そんなこと…言わないで…」  
 
 未だにレアは彼女の蜜を啜っていた。  
舌先は最奥までは届かず、届きそうで届かない昂ぶりに彼女は。  
 
「レアぁ…もっと、奥まで…」  
 
 ねだるような目付きで訴える彼女にレアは優しく微笑みかけた。  
彼女は欲していたのは分かっていた。彼女の気持ちを引き出したかった。  
 
 レアは隅に置いてある箱から長めの棒を取り出した。  
両端を男性器を模っているそれは女性同士が?がりあうためのものであった。  
彼女が囚われている牢獄は、主に調教を目的としたものである。人体実験の一環として始められた為、あらゆる性具、拷問機器が用意されてあった。  
今では六目の伝道者達の暇潰しの玩具箱と化していたが。  
 
「ねぇ…これで、一緒になりましょう…」  
 
 レアはそう言って、少し背伸びをして彼女に口付ける。  
触れるだけの優しい挨拶。強いられた行為であることを忘れ、二人は互い感じあえることに幸せを感じていた。  
 
 だが。  
 
「良い頃合のようだな」  
 
 声が響いた。光が集まり中から六目の伝道者が現われる。  
伝承者が手をかざすと彼女を戒めていた枷が消え去った。  
伝道者の股間からそそり立った蛇は、青黒く、ふしくれ立ち、そして異様に長かった。  
 
「ひぃ…!?」  
 
 男根を初めて見た訳ではなかったが、人間のものではない、正に蛇に見えるそれに彼女は恐怖した。  
先程までの夢うつつから一気に現実に引き戻された精神は狼狽の極みであり、貶められた彼女の苦痛でむせび泣く姿を堪能できるはずである。  
 
「あ…あの…待ってください…!」  
「……なんだ?」  
「え…その…やめて、いただけないしょうか…」  
 
 意見する事、それがどのようなことかは分かっているはずだ。  
何度も思い知らせたはずのこの小娘に、まさか呼び止められるとは。  
 
「お願いです…あの人の…純潔を、私に…いただけないでしょうか…」  
「…後で如何なる目にあうとしてもか」  
 
 その言葉にレアの体は硬直した。考えただけで震えが来る。  
しかし彼女はもう後悔をしたくはなかった。このような地獄の果てで彼女と出会えたのだ、自分がまだ大丈夫なうちに。  
終わっても良い。彼女の唯一つのものを持って逝ければ。  
 
「レア!駄目よ、私の事は気にしないで…!」  
「ごめんなさい…これは、私のわがままなのです…」  
「…良いんだな?」  
 
 伝道者の声にレアは頷いた。もう、戻れない。  
呪文を唱えると再び光が集まり、光が消えると共に伝道者の姿も無くなっていた。  
再び二人だけの空間に戻る。  
 
「…うう…ばかぁ…!なんで、あんなこと言うのよ…二人で、帰りたくないの…!?」  
 
 二人で帰る、その言葉は自分には無かった。ここに連れて来られた時点で既に逃げる事を考える事は出来なかった。  
彼女はきっと諦めない、彼女一人ならここから出る事ができるかもしれない。  
 
「私は、もう穢れてしまいましたから…貴女と一緒にいる資格がありません…。これは、一度貴女を拒んだ報いなのでしょう…」  
「ばか…穢れてるとか…気にするわけ、ないじゃない…。なんで、なんでよ!?」  
「貴女が、欲しいのです」  
 
 力の限り彼女を抱きしめた。今だけは非力な腕から離れないように。  
 
 
「あ…ちょっと…待って…」  
 
 彼女の秘所に張り型の先端があてがわれていた。レアは仰向けになっている彼女に覆いかぶさっている。  
レアの気持ちは嬉しかった、レアと一緒になる事はずっと望んでいた事だ。  
だが、その為にレアはどのような仕打ちを受けるというのか。  
 
「ねえ、レア…。考え直して…。必ず助けに行くから…」  
「…ありがとうございます。でも、もう止められません。何を言われても変りません」  
 
 食い下がる彼女に言い聞かせるように、はっきりと言い放った。  
 
「…いきます」  
「い…!」  
 
 慣らしもなく、一気に彼女の中心を貫いた。決して加逆心からではなく、自分がされた事をやってみただけであった。  
初めての痛みにを食いしばる。レアと一緒になれた喜び、レアと二度と会えないかもしれない恐れ、相反する感情は涙となって現われた。  
 
「はぁはぁ…すごい…見えますか…?私達、?がっています…」  
 
 レアは彼女に結合部を見せ付けるために腰を軽く浮かした。  
レアの中から伸びているものが私の体の中にも入っている…。  
レアの体そのものではない、それでも自分の初めてを貰ってくれたこの瞬間だけは全てを忘れて喜びが心を埋め尽くした。  
 
「うん、レア…。私達、一つになってるのね…」  
 
 痛みはある。この痛みは忘れない。本当なら二人で分かち合いたかった。  
 
「はあ…あん…」  
 
 レアはゆっくりと動き出した、甘ったるい嬌声が口から漏れ出ている。  
 
「あっ…あ、あの…どうで、しょうか…?」」  
 
 息も絶え絶えに問う。自分ばかりが感じていて、彼女を置いてきぼりにしているのではないか。  
 
「レア…。うん、大丈夫…」  
 
 彼女の答えはレアの問いを正しく捉えてはいなかった。  
まだ痛みはある、レアはそれ気遣って聞いてくれた。誤解とはいえ快楽とは違う充足感が彼女の鼓動を早くした。  
 
「あっああん…レアぁ…すきぃ…」  
「はぁ…わ、たしも…ん…すき、すきです…」  
 
 両の掌を合わせ握り締める。両の唇を合わせ貪りあう。繋がれた掌からは、確かな愛を感じていた。  
 
「ああ…やぁ…らめ…とまらな…あっ…い、く…うぅ…!お‥んこぉ…い、きます…い…いっくぅぅうっ!」  
 
 絶頂の際、レアは散々教え込まれた淫らな言葉を発していた。  
彼女は何も言わない。仕方が無い事なのだろうから。  
 
「も…申し訳ありません……。やっぱり、私は貴女と…」  
 
 先に自分勝手に果ててしまった事、はしたない言葉を口走った事を恥ずかしく、情けなく思っていた。  
自分が変ってしまった部分を彼女に直に見られた事に対し、彼女は優しく抱きしめてくれた。  
 
「う…ひ…ひ…あああぁぁ…!」  
 
 レアは泣いた、泣き続けた。  
今だけは全てを忘れて泣き続ければ良い。お互い、これから先どうなるかは分からないのだから、今は確かにある真実を感じていれば良い。  
この気持ち忘れない限り、それは永遠に在り続けるのだろう。  
 
 

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