「やはりグウィネヴィア王女はお美しい」  
 
階段を降りてきた獅子の騎士はそう呟いた。  
 
「お前もそう思うだろう、スモウ」  
 
隠れて気配を消していたのに、そして階段から一歩出た途端に姿が見えるようにしていたのに、  
驚いた様子もなくこちらを見ることもなくオーンスタインは投げ言った。  
 
「…さぁ」  
「随分な言い種だな。王への忠誠があれば王女への信仰もありそうなものだが」  
 
グウィン王には心酔している。あの方の強さにも責任感の強さにも器の大きさにも。  
王に娘がお産まれになったときも喜んだ。  
王のご家族を守ることは騎士の務めのうちに入るかもしれない、だがそれが幻であったら?  
 
「彼れが絵画だろうと偶像だろうと幻影だろうと関係ない。似姿を通してご自身を崇拝する。何かおかしいか」  
 
「もしかして、もしかしてオーンスタインはグウィネヴィア様を愛しているのでは?」  
「…何」  
「だってそうじゃないか、火の神に添うたあの方そのものでなく、グウィンドリン様の作り給うた幻影を守るだなど」  
 
オーンスタインは志願した。そしてそれは認められた。  
私も志願した。彼の側にいられて幸せだった。  
 
でも彼と私との接点はただそれだけだった。  
口を開けばグウィネヴィア王女、足を動かせば王女の間。  
毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日  
 
どんどん、私は何かを忘れていった。  
 
「それに王女の間に入れるのは私達だけだ。自由に、好きなときに好きなだけ。お前はあの中で…」  
「スモウ、この任はグウィネヴィア王女の影を守るだけでなく、グウィン王の城を荒らす者を駆逐する意味もある。忘れたか」  
 
それだけ言い捨てて彼はエレベーターを降りていった。  
 
どこかでハンマーが床を打ち鳴らす音が耳に響いた気がする。  
 
 
 
 
「行くな」  
「また馬鹿げたことを言い出すつもりか。厭なら出ていけば良い」  
 
今日もこの男は彼女へ参拝に行く。  
どうしてどうしてどうしてどうして  
 
「厭だ」  
「俺が行かない理由が有るか?或いはここにいなければならない理由が?」  
「そ…」  
 
言葉では彼に勝てない。  
理由はない。騎士としての理由は。  
 
「ならば行って不利益なこと、ここにいる利益でも?」  
 
―――利益…そうだ…  
 
「利益なら、あるよオーンスタイン」  
 
 
 
「ん、ふ、んぅう…」  
 
裸の少女が鎧を着込んだままのオーンスタインに奉仕していた。  
鎧姿の彼にすがり付き、彼女は必死でそれを口に含んでいる。  
頭を動かすたび白く豊満な胸もたっぷりと揺れた。  
細い腰には汗が伝っている。  
 
裸というのは厳密には違う。  
頭から太股までは何も身に付けておらず、大腿の半ばにずり下ろした黒タイツ、その下からは大きな甲冑を纏っている。  
スモウの足甲だけが少女の身に付けている全てだ。  
 
スモウは膝で立って彼に拙い技術を捧げていた。  
 
「ん、ふ、オーンスタイン…気持ちよく…ない…?」  
 
男のモノはやっと硬くなり始めていた。  
彼女にとってそれは恐ろしいほど時間がかかったように思われて、そっと上目遣いで様子を伺う。  
男が隆起するのにかかる時間というものは彼女にはよく分からなかった。  
 
「さぁ」  
「う……」  
 
昨日の仕返しだろうか。怒っているのだろうか。  
 
「もう良い」  
「え、え?待って、行かないで!」  
 
もう良い、と言って動こうとする男に慌てて取り付く。  
まさか今から王女の間に行くのか。  
こんな姿にまでなったのに、こんなことまでしたのに。今からあの王女に取られるなんて厭だ。  
 
「…そこに寝ろ」  
「え?う、うん…」  
 
考えを改めてくれたのか、もしかしたら最初からそのつもりでは無かったのか、オーンスタインは何もなかったように指示を出す。  
 
「ひっ…」  
 
冷たい。しかし下に敷くようなものもなく、彼の顔色を見ながらゆっくり石の床に横たわる。  
 
「良いか」  
 
私の両の大腿を持ち上げながら、獅子が尋ねた。  
 
「う、う、…うん…」  
 
何度も夢見たことなのに、身体はこわばり、顔が真っ赤になる。  
あのオーンスタインが、私に跨がっている。私に触れている。もうすぐ一つになれる。  
 
顔は背けながら、しかし目はそれから反らすことが出来なかった。男の黒光りする肉が私のひくつく穴に埋まっていく。  
 
「くうぅっ…」  
 
弱い粘膜が無理に引っ張られる痛みに呻く。  
 
「ちっ、千切れちゃ…い、痛っ…あああうっ!!」  
 
何かが引っ掛かる感覚があり、それがぷつん、と破れる感覚が襲い、痛みに身体中の筋肉が収縮した。  
締めた拍子に、彼の棒が脈打つのを強く感じた。  
 
「どうした、やめるか?」  
「や、やだ!…さ、最後まで、して…欲しい…」  
 
力の入らない足を彼の腰に絡め、手を首に回す。  
金属が少し痛いが、止められるよりずっとマシだ。  
 
「なら動くぞ」  
「、うん…」  
 
涙がにじんでよく見えない。  
 
「ふっ、んぃっ…、あ、ぅあっ…!」  
 
まだ痛い傷口の中をオーンスタインの雄が挿し、引き抜く。  
 
「う、ふぁ、うぅぅっ…ん…」  
 
カリ首が中をこする度、不可思議な感覚が駆け巡る。  
残念ながらまだ気持ちよくないが、幸福でいっぱいだった。  
やっと彼のものになった。  
 
中を引っ掻かれる感覚に集中する。きっとこれが快感になるのだ。  
 
「あ、う、オーンスタイン、オーン…ス…っはぁぁっ…」  
 
顔が見たい。そんなもの越しでなく、直接見て欲しい。  
頭部を外してやろうと手をかけたが、柔らかく制される。  
 
「後ろを向け」  
「え…?」  
「厭なら良いんだぞ」  
「んぅ…言う通りに…する…」  
 
外したくないのだろうか。  
もしかして照れているのか?だとしたらこんなに可笑しいことは今までにない。  
 
私は繋がったまま、ガクガクする足で苦労して四つん這いになる。  
 
「ん、はぁああっ……」  
 
すぐに中の楔が引き抜かれ、また深く貫かれる。  
 
「はひぃっ!」  
 
先ほどとはまた違う感触に声が出る。  
 
(う、後ろからするのって、全然違うんだ…)  
 
「あっ、あァっ!はあぁん!」  
 
抜き差しを繰り返され、声が上擦る。  
もしやこれが気持ちよくなってきてるということなのだろうか。  
気持ち良いのか痛いのか分からない。  
 
「きっ、キツい…よぉ…」  
 
彼のが大きくなったのか、自分が締め付けているのか、下腹部が苦しい。  
先端で奥を突かれるたび、体の下のほうがきゅんとする。  
 
「だらしないな…」  
「ご、めんね、ひぅ、あ、やぁっ」  
 
私は口の端から涎を垂らし、しまりのない顔をしていた。  
ずんずん突かれるごとにはしたない声をあげ、自分でも腰を動かす。  
 
「っ…」  
 
息をもらした彼のピストンの動きが早くなる。  
それにつれて私の何かも競り上がってくるようだ。  
 
「もっと、もっと犯してぇ…もうすぐ、来そう、なの…」  
 
呼吸が苦しい。汗が顎や乳房から伝い落ちる。結合部から透明な液体が滴り、あるいは太股を流れて床をよごす。  
 
「オーンスタ、インっ、あっ!、い、いっしょ、一緒にいくぅっ…はぁあっ!」  
 
肩越しに彼を見ながら哀願する。  
 
「あぁ、出すぞ」  
「は、はひっ!あっあ、ふぁ、あぁあああぁぁっ!!!」  
 
一番奥に強く叩きつけられると同時に中で熱いものが溢れる。  
勢いよく吹き出すものに体をよじって耐えた。  
 
 
 
 
 
「オーンスタイン…大好きだ…私の全部はお前にやる、だからお前の全部も私のものだ…」  
 
寝そべった彼の上に私は寝ていた。  
 
「誰にもやらない…もし誰かが手を出すようなら……」  
 
自分でも目の色が違ったことに気付く。  
私は、この男を手に入れるためなら何だってやる。  
 
強く抱き締めると、オーンスタインは頭を撫でてくれた。  
驚いて顔を上げる。  
顔は分からない。だが笑っていると思った。  
いや笑っているに違いない。私には分かる。彼を一番見ているのは私なのだから。  
 
嬉しい。  
私はゆっくりと愛する男の胸の中でまどろんでいった。  
 
「…もっと妬め。それが王女を守る力になる」  
 
眠りに落ちるその瞬間、オーンスタインが低く笑った気がした。  
 

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