「…なんて…」
「…姉さん…?また泣いてるの…?泣かないで…私は…」
「大丈夫、大丈夫よ…私が…姉さんが守ってあげるから」
「…姉さん…ありがとう。でも…無理はしないでね…?」
故郷の母からの贈り物。
母が若いとき傷を負った老魔女を休ませた際にお礼として頂いたものだそうだ。
長い旅を生き抜いた彼女のごとく、私も生き抜くことが出来ますように、と不死院へ送られる前に泣きながら渡されたものだ。
人間性か何かだったらと思ったこともあったが、今はこれで良かったと思う。
何度も折れそうになりながら辿り着いた病み村。
私も故郷に妹がいる。生まれて何年もしていない妹も銀髪だった。きっと私ほどの年になればこんな可愛い女の子になるに違いない。
…彼女の姉は、私が手にかけてしまった。
この指輪を持った私にとって、姉である私にとって、彼女を守ることが不死の使命なのだ。
きっとこのエンジーも同じことを思ったのだ。
ここで彼と姫様を守って生きてゆこう…
「貴様とて姫様の従者、必要なものがあれば…」
「どうしたらもっと姫様のお役に立てるだろうか」
「何?…殊勝なことだな、そうだな…やはり卵を宿すに限るだろう」
「た、卵を?」
「姫様は人間性を捧げられて卵をお産みになる。姫様と姉姫様はそれをお孵しになりたいようだ、まぁ姫様がお産みになったものだ、当然だろうが」
ちくりと痛む。
エンジーはまだクラーグ…様が亡くなったことを知らない。
「私もそのお役に立つために卵を頂き、大事に育てている。貴様もそうするがよい。それでやっと一端の従者というものだ」
「わ、分かった…どうすれば良い?」
「この奥に卵背負いがたくさんおる。中には手透きの者もおろう。分けてもらってくるが良い」
エンジーは入り口の向こうの赤い光が漏れる横穴を指す。
建物の中から見るにそちらは不穏そうだが、姫様のためだ。
私は恐る恐る外に出た。デーモン遺跡、というらしい。
今の装備でやっていけるだろうかと思ったが、卵背負いたちはすぐ近くにいた。
幸い篝火も目の前にある。
ほっとした。これなら多少危険でも大丈夫だ。
「あ、の…卵を分けて下さい…」
そろそろと姫様のほうを拝む卵背負いに話し掛けてみる。
が、何の反応もない。エンジーのように言葉が通じる者はそうそう居ないようだ。
姫様への信仰の厚さを阻害することもあるまい。
私はエンジーの言葉を頼りに手が透いていそうなのを探した。
「あの、…!?」
ちょうど歩いている卵背負いを見つけた、が、彼らは容赦なく私に襲いかかってきた。
「ま、待って!私は新しい姫様の従者で…!」
私の足を掴む手は緩みそうもない。自衛のためなら已む無しと、大発火を見舞おうとしたとき。
「そんなことだろうと思ったわ」
「え、エンジー!助けて、この人達話が…」
「通じてはおらんが従者だということは分かっておる」
「え?でも…」
「卵を植えるために掴んどるんじゃ、抵抗するでない」
「う…」
卵背負いは二人がかりで私を羽交い締めにしている。
「な、なんか濡れてる…?」
卵背負いの腹のあたりから液体が染み込んでくる。
―何これ?熱い…
「ね、ねぇエンジー、卵ってそういえばどうやって植え…ひぁあっ!?」
卵背負いは私の衣服を剥ぎに掛かった。
例の液体で摩擦が減り、もともと簡素な呪術師の装備は簡単に半脱ぎにされてしまう。
「ど、どういうことだエンジー!」
「何がじゃ、服など着ておったら卵は植え付けにくいし背負えんじゃろう。まぁ貴様の場合背負わんでも良いが」
「え?あ、や、ちょっとやめてっ!」
エンジーの言葉を聞き返す余裕はなかった。
卵背負いたちは私の体をまさぐり始める。それがひどく感じるのだ。
節くれだった生気も色気も何もない指が皮膚をなでるたびビクビクと体が勝手に跳ねる。
「ふぁ!や、やだ…まさかさっきの液体はそういう…?ひゃん!そ、それは…!」
手の他に、熱くて固いものが私の体をかすめ始める。
股間から生えたそれは、異形ではあったが明らかに性殖器であった。
エンジーの「お前の場合は背負わなくて良い」の意味を理解した。
「やっ!やだ!それだけは…そんな所に卵を植え付けるなんて絶対に嫌ぁ!」
「どうした?多少気持ち悪いか痛いかするかもしれんがの、それくらい姫様のために耐えられるじゃろう?」
そうだ、私は姫様のために、身も心も人間性も捧げなくてはならないのだ。
大切な人を奪った私に、我が儘を言う資格など…。
卵背負いは我先にとアレを私の入り口に宛がう。
液体と、彼らが穴を探す動作で、そこはぐっしょりと濡れ、ヒクついていた。
情けない。
「くっ…いっ、痛…い」
彼はゆっくりと管を挿入してきた。
長い。一番奥へ卵を植える、卵管なのだろう。
それは中でビクビクと血管を震わせ、中を掻き回しながら奥へと分け入る。
「ん、あ!や、やるなら早く済ませてよぉ…ひゃあん!なんで、そんなぁっ、かき混ぜないでぇえ…」
一気に奥まで射し込んで卵を植えて、それで終わりだと思っていた。
なのにその陰の茎は少し挿しては戻り、また少し挿しては戻るとピストンのような動きを繰り返しながら進むのだ。
「人間の体を突き破らんようにではないか、あるいはお前の体が興味深いのかもしれん」
「しょ、んなぁ…あひっ、気紛れみたいな…んあぁっ!」
私はすっかり感じていた。
あの液体のせいだ、そうに違いない。こんな化け物で、贖罪の儀式で、性的な快楽を感じるなんて有り得ない。
そんな理性をかき乱すようにピストンが早くなる。しかもそれはついに最奥に達し、子宮を小突きながらなのだ。
「はひぁああ!しょ、しょれコツコツするのだぁっ、めっ…ん、は、早いよぉっ!感じちゃ、やらぁ!こんなのでイキたくないよぉ!!」
体は感じていたが、必死で抵抗した。
手足は彼らがしっかり固定しており、悶えることすら叶わない。
どんどん何かが沸き上がってくる感覚を、目をぎゅっと閉じ、ギリギリで耐えていた。
しかしそれに追い討ちをかけるように、力強くピストンする卵背負いの性器が質量を増す。
「ま、まさか、やめっ…」
「ぐぅああ!」
「ひぃいぃんっ!?」
卵背負いが奇声をあげたかと思うと、体の中に熱いものがビュルビュルと注がれるのを感じた。
「しょこっ!しょこだめぇっ、しょこで、たまご、植えつけないれぇええ!!」
彼らが下半身から吐き出す液体には固形物が混じっていた。
まだ小さく柔らかい卵。それらが私の膣の中にくっついてゆく。
卵の発射は十数秒にも渡り、その間に2回ほどイッてしまった。
「はう、嘘ぉ…そんな…あぅんっ、中…にっ!?」
異変はすぐに現れた。
中に注がれた際に締め付けてしまったのか、卵背負いの性器が抜かれた後、
幼虫にもなりきらない、掌ほどのヒルのような、例えば人間性の黒い精のような、ぬるぬるした小さな生き物が這い出してきた。
「ん、んひぅ、で、出ちゃだめぇぇっ…」
「半端者が…それでは不十分じゃ、最初から植え付け直しだぞ」
「ま…また…?」
私の卵背負いの儀式はずっと続いた。
中に卵入りの体液を注がれ、膣を締め付けぬようゆっくりと卵を育て、幼虫にして外に産む。
産んだら、また卵を植えられ…。
「ひめしゃまぁ…たまごぉ…いっぱい産まれまひひゃあ…」
私は何でここに居るんだっけ?
姫様の卵を孵さなくては…それは覚えている。
そうだ、これが私の使命だ。私はここで、不死の体を使って、永遠に卵を植え付けてもらっては孵すを繰り返すのだ…