「ん…ちゅぶ…」
ちゅぱちゅぱ、と、俺の肉棒を緩やかにしゃぶっている姫の頭を撫でながら、俺は快楽と罪悪感に精神を蝕まれる。
「ん、ん、んふ、ふぅぅ…」
最近なんだか舐めるのがうまくなったな、とか思いながら、さっさとだそうと思い体の力を抜いた。
「ん、んん…!」
我慢のゆるんだ愚息から、白い精に混じり黒い精、人間性が吐き出される。
それを少し口からこぼしながら姫はゆっくり口の中で精を転がし、飲み込んだ。
病的に白い手で顔についた精を掬い、すべて舐め取り終わったあとに姫は微笑み、「ありがとう、姉さん…」と呟いた。
罪悪感に我慢できなくなり、そろそろ行くことを伝えた。
「さようなら、姉さん…危ないことはしないでね…」
舌を噛み、声を出すのを我慢して、姫の頭を一つ撫で、俺は逃げるようにその場を後にした。
「ちくしょう…」
刀を手から取り落とし力尽きた不死人を前に、俺は愛剣に付いた血糊を振り払った。
「悪いな、いただいてく…」
新たに人間性を得た俺はその世界を去った。
「そろそろ溜まってきたな…」内に感じる人間性。他人から奪ったその量は大分多くなってきた。
「そろそろ、行くか」
俺は彼女の姉を殺した。
他人の受け売りの不死の指名とやらを理由に、ただ妹を守ろうするだけの姉を、殺した。
人間性を捧げられて痛みを和らげる姫は、その提供者の姉を失い、帰らぬ姉を痛みに耐えて待ち続けることになる。
昔魔女にもらった指輪の力か、姫は俺を姉と勘違いして健気にも自分は痛みをこらえて姉を心配している。
俺が罪悪感に押しつぶされないようにするには、彼女に姉の代役を務めるほか無かった。自己満足なのはわかっていたが、そうするしかなかった。
「姉さん、来てくれたのね…」
人間性を大量にため込んだ俺は、彼女の前に立つ、もうなんどめだろうか、数えるのもおっくうだ。
俺は、コートを脱ぎ去り下半身を露出させた。
姫はそれを感じ取り虫とつながる体の腰を曲げ、顔を下に降ろしてくる。
頬に手を添え、肉棒の前に誘導すると、彼女はゆっくりと、すでにいきり立つ肉棒に舌を這わせた。
なんでかは知らないが、姫には祈る形で人間性を捧げることができなかった。
長い間姉から人間性を捧げられなかったからか、誓約者としての力が弱まったのかもしれない。
そんな彼女に人間性を捧げる方法が、こんな下衆な方法しかなかった。(やたら誓約に詳しいオズワルドに聞いた)
俺の腰を腕で…つかむというには弱々しい力で…つかみ、肉棒に彼女は舌を這わす。
「ん…はぁ…」
ぴちゃぴちゃと唾液が汚い音をたてる。
腰を引きたくなるような続々とした、くすぐったさにもよく似た快感。
姫のからだを片手で支え、もう片手で頭を撫でる。
「ふぅ、んむ、あむ…」
急に彼女が肉棒をパクリとくわえ込んだ。驚いたが声は出さない。きっとばれる。
ゆっくりと顔を前後して肉棒に唾液を塗りたくり、舌と頬肉で刺激してくる。
ぬっちゃぬっちゃと音が響く。すべての動作に力はなく、弱々しい快感しか送られないが、罪悪感と征服感が入り交じり高揚した気分にさせる。
「んむ…ちゅは…ふぅん…」
肉棒を舌全体で舐めてきた。不器用に動く舌が、亀頭を、裏筋を、鈴口を、弱い力で舐めまわす。
我慢していたことに気づいた俺は、さっさとだそうと力を抜いた。
「ん、ひゃ…」
いつもよりもため込んだからか、肉棒の先端からは黒い精がやたら多く吐き出された。量が多く姫はたっぷりと顔に付いた黒い精を、指で掬い、ゆっくりと口に運ぶ。
「ありがとう、姉さん…」
抱きしめたい衝動に襲われた。彼女を抱きしめたい。力一杯抱きしめたい、そして、俺が姉ではないこと、姉を殺したこと、いままで行わせた行為は下衆の行う行為だと、吐き出したくなった。それができればどれだけ楽だろう。
「っ…」
舌を噛みしめ、コートを着て俺はその場を離れる。
彼女が姉を心配する声が、後ろから聞こえる。
こんな自己満足な行為を、俺はいつまで続けるのか。俺は首をぶんぶんと振った。
違う、きっと俺も、彼女に人間性を吸われる瞬間を心待ちにしているんだ。
吐き出した瞬間、意識が朦朧とし、大切な何かを失う感覚と、それ以上に激しい快感に、虜になったのだ。
やれやれと肩を落として俺はまた別の世界の不死を狩る。人間性を捧げ、姉の代役を果たすため。…違う。
人の精を吸われる感覚を味わい、罪悪感を和らげる自己満足の他
とんだ下衆に成り下がっているのを実感し、なにを今更と思いながら、緑色の肌で無知を振り回す変態相手に俺は剣を構えた。