…どれほどの間、ここでうな垂れていただろう  
 
思えば辛く長い道のりだった  
クソでかいデブに、薄気味悪い病み人  
火を吹く犬だのゴキブリだの…  
足場は悪いし汚いし、頭がどうにかなりそうだった  
 
やっと見つけた篝火  
下水道のような場所にひっそりと佇む、目の前は毒の沼という最悪の場所だったが  
そんなことが気にならないほど俺は疲れきっていた。  
少し休憩するだけのはずだったが、折れかかった心はそう簡単に復活しそうにない  
 
「動きたくねぇな…」  
誰に語るわけでもなく呟く  
「このまま先に進むのも心許無いし…うーん」  
手元でゆらめく、黒い精を見つめる  
「篝火、強化しておくか。運がよければどこかの不死と手を組めるかもしれないし」  
黒い精をかざし、祈るように篝火に近づけた  
 
 
…湧き上がる開放感  
鼓動が、呼吸が、肌にまとわりつく湿気さえもが心地良い  
久しく感じることの無かった「生きている」という感覚  
 
俺はしばし、生身に戻った感動に浸る  
 
 
…  
……… はずだった  
 
 
 
…不意に襲う閉塞感  
鼓動が、呼吸が、本能で何かを察知して速くなる  
薄ら寒いような、生暖かいような空気が肌に纏わりつく  
 
これはかつて感じた事がある  
黒い森の庭で、不死街下層の下水道で感じたあの感覚  
ロードランの捩れた時の流れがもたらす呪い  
 
「………闇霊…!」  
 
全身でその状況を理解した時には、すでに何者かが  
バシャバシャと沼地を荒らしてこちらに駆け寄ってくるのが見えた  
 
「ちょっ、マママママジかよ!!!!!!!!!」  
 
心の準備が出来ていない  
慌てて盾を構える  
何か武器になるもの。火炎壷…違うこれは七色玉だ!  
 
なんて焦っているうちに「奴」はどんどん近づいてくる  
 
 
ゴッ!  
 
 
鈍い煌きが頬を掠める  
間一髪で避けた  
 
現れたのは…変態だった  
 
変態としか言い様が無い  
ずた袋を被り肉斬り包丁を振り回す変態  
服を着ているだけ、最下層の料理人の方がマシだと思った  
 
「アアアアァァァアアアッッ!!!!」  
 
奇声を上げ、ふたたび襲い掛かってくる  
力任せの斬撃を何とか回避しながら、俺は右手に集中する  
生命の炎をイメージし、そのエネルギーを投げつける  
 
当たった!  
 
燃え上がる体、この隙に……  
 
 
…ッ!?  
効いていない!?  
 
炎で怯んだ隙を狙おうと思ったがダメだった  
奴はまるで虫でも振り払うかのような動作で爆炎から突進してきた  
 
「ぐあぁっ!!」  
 
横薙ぎの一撃をなんとか盾でガードしたが  
力が強すぎて盾ごと吹き飛ばされた  
 
追い討ちをかけるように襲い掛かってくる  
腹に鋭い痛みが走る  
今度はガードしきれず、冷たい石畳と下水の感覚を背に感じた  
 
このままでは…!  
 
「キィィアアアァァアアアアッ!!!!」  
 
まずい、と感じた時には既に手遅れで  
奴は仰向けに倒れた俺の体に馬乗りになり、包丁を振り回していた  
 
右手の感覚はもう無い  
抵抗できそうに無い  
 
せっかく生身に戻れたのに、こんな所でまた亡者に戻るのか  
 
― 不死である以上、死に直面することは始めてではない  
焼かれ、斬られ、殴られ、落とされ  
何度となく死を経験してきたが、やはり「人」としての本能は薄れていない  
ましてや、生身に戻っているのならなおさらである  
死ぬ事への恐怖、生への諦め、様々な感情が押し寄せる―  
 
 
あぁ、それなのに  
いや、だからこそか  
 
 
「……なんで元気になってるんだよ…」  
 
恐怖と混乱が混ざり崩壊したホルモンバランスが原因なのか  
はたまた、死を意識してなお生命を繋げようとする本能が原因なのか  
 
 
 
完全に勃起していた  
 
 
 
情けない  
どうしてこんな所で  
 
いや、もうそんなこと…どうでもいいか  
もう、どうにでもなればいい  
 
一度は、この期に及んで生命に縋る自分の本能に呆れたが  
すぐに心は折れ、諦めの境地に達していた  
 
もうすぐ自分は斬られて食われて、生身の体を手放すんだ…  
 
 
 
…  
………?  
 
目を瞑り、全てを受け入れるつもりでいたのだが  
急に奴の動きが止まった  
 
 
「フゥッ……ハァッ……!」  
 
息が荒い  
様子がおかしい  
 
「アアアアアアアァァァッ!!!」  
「うおっ!?」  
 
奇声を上げながら、俺のローブを引き裂いた  
毒の沼地を歩くための、防御力より機能性を重視した装備  
金具の類は殆ど無かった上、先の先頭で切り裂かれていたため直ぐに唯の布切れと化した  
 
「ウ、アアァァアッ!!」  
「え、えええぇぇ!?」  
 
次に奴は、あろうことか自分の体に巻きつけている布まで破り捨てた  
申し訳程度の布しか装備していなかった奴は、ほぼ全裸の状態になった  
 
「……あ」  
 
まさか  
 
「………いや、え、あの」  
 
よく見ると  
 
 
 
 
 
コイツ、女だ  
 
 
 
 
肉付き良く、やわらかそうな脚  
この胸のハリとツヤは、太った野郎のモンじゃない  
そして何より、破り捨てられた股間の布切れから覗く………  
 
 
「……っく、あぁ……っ!?」  
 
そこまで気づいて、不意に自分の口から情けない声が漏れる  
苦痛しか与えられる事の無い体が感じた、予想外の快感  
 
何が起こったのか、俺は慌てて目線を奴の肢体から下ろし…目を疑った  
 
 
「は、入って…る……?」  
 
 
心地良い圧迫感とぬかるみに包まれる感覚  
呪われて不死となり、戦いに明け暮れ暫く感じることの無かった感覚  
 
「……アッ、…ハァッ、フゥー…フウゥー…」  
 
その感覚を与えた本人は、興奮した様子で鼻息を荒くしている  
しばらくじっとしていたが、やがてゆっくりと腰を上下しはじめた  
 
「……アッ、ア……アァ……」  
「…んっ、……くそっ…こんな……奴に…!」  
 
言葉が通じるかも分からない、異形の人食い女  
興奮する要素なんて何一つ無い奴相手に、勃起し、嬲られ、犯されている  
しばらくご無沙汰だったとはいえ、それを快感と認識している自分に腹が立つ  
 
「アッ、アァッ!!フ、フゥッ、ハァッ!ハァッ!」  
「ちょっ、まっ……!やばっ、やめ、おい、やめ……っ」  
 
動きが激しくなり、快感はさらに強くなっていく  
中々の圧迫感、肉付きが良いのだろうか  
単に締まりが良いだけではない、みっちり詰まった肉に絞り取られる感覚  
しかも、相当興奮しているのだろう。膣内はヌルヌルの愛液で満たされていた  
 
― 気持ち良い…  
悔しい、悔しいが仕方ない。気持ち良いんだ。  
どうせここまでボロボロになった生身の体。もう長くは無い。  
プライドも何も意味は無い。いっそ楽しんでしまおうか…  
 
頭上で揺れている乳も、巨乳だと思えば興奮できる気がした  
女が自ら馬乗りになって腰を振っているという状況も悪くは無い  
だらしない体系も…いや、うん、ポッチャリ系だと思えばいけなくも無い  
古来より女性らしさの象徴とは豊満さで表されていたのだから…  
顔がずた袋で隠れているのは、正直有難かったかもしれない  
 
「アッ、アッ、ハッ、アンッ!?」  
 
開きなおって快感を受け入れると、息子がもう一回り大きくなった気がした  
それに気づいたのか、奴が跳ねるような声を上げた  
色気とは程遠い声だったが、少し可愛いと思ってしまった  
 
俺は、まだ辛うじて動く両膝を立て力を込めた  
 
「ンッ…!? アッ、アゥッ!!」  
 
下から突き上げる  
もっと深く、もっと奥に  
突き上げる度に地面に打ち付けた背に鈍い痛みが走った  
しかしそれ以上の快感が全身を支配する  
全ての神経をその快感に集中させ、何度も何度も夢中で腰を突き上げる  
 
「ハァッ、ンッ…アッ、アンッ、フッ、ハァッ…!」  
「…っく、すげっ……はぁっ、イイ……!」  
 
腰を突き上げる度に、奴が声を上げる  
ヌルヌルとした膣内からは、なおも愛液が溢れ続け周囲にピチャピチャと卑猥な音が木霊する  
時折締め付けるような痙攣が混ざりはじめ、頭の中が真っ白になりそうになる  
 
「うっ…もうっ…限界……っ!」  
「アッ、ハァッ!ハァッ、ンッ!アァアァッ!」  
 
痛みを堪え、歯を食いしばり、全力で腰を動かす速度を上げた  
奴も本能のままに叫び、全身は汗ばんでいる  
 
「…っ、で、出る………っ!!」  
「アッ、アンッ……アッ、アアアアァアアアアァアアッ…!!!!」  
 
 
 
背中から脳髄を走る恍惚感  
全ての感情を解き放った達成感、疲労感  
奴も満足したのか、荒く呼吸をしながらぐったりしている  
心地よい眠気に襲われ、意識を手放しそうになる  
が、奴の様子がおかしい事に気づいて慌てて意識を引きずり戻す  
 
はじめは馬乗りになったまま動かず余韻を楽しんでいたのだが  
次第に落ち着いたのか、息を整え始めた  
そして、馬乗りになった、繋がったままの状態で置いてあった肉斬り包丁を握り締めた  
 
 
 
 
あぁ  
 
そうか  
 
 
 
性欲を満たしたら、次は食欲を満たす番なのか  
 
 
 
もう抵抗もできなかった俺の記憶は  
奴が包丁を振り上げる所で途絶えた  
 
「……うーん」  
 
暖かい  
 
篝火の暖かさを感じて目が覚めた  
しかし四肢は冷たく、目は落ち窪み声はしわがれていた  
 
「亡者に戻っちまった」  
 
座りこみ、しばらく篝火を眺めながら考える  
 
「いやしかし、見た目はアレだったけど…案外悪くなかったな…」  
 
久しぶりの生身での性交  
その感覚で、いくらか過大評価となったのかもしれないが  
どうにも忘れられない。中々の名器だった。  
 
「また生身に戻ったら、侵入してくるかな…」  
 
俺は装備を整え、戦略を練りつつ呟いた  
 
 
「今度は俺の番だ。待ってろよ、人食い女!」  
 

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