「此処まで来れば、大丈夫だわ…」
肩で荒い呼吸を繰り返す彼女は、篝火の前で突っ伏すように座り込んだ。
「いきなりあんな黒くてでかいの、倒せるわけないじゃない」
と、ぶつぶつ言いながら、彼女は己が来ている物を脱ぎ始めた。
「ようやく手に入れた生身ですもん。大事にしたいものね。逃げるのも戦法の一つよ」
彼女が着ているのは、亡者から手に入れた質素な鎧一式だ。それを脱ぎ捨てていく。
「それにっ。せっかくの生身。ようやく、ようやく…で・き・るっ」
鎧を脱ぎ、肌着のみになっても、彼女の手は止まらない。胸を覆う布を取り払うと、その手で乳房を覆う。
「やっぱり、亡者の時とは、ぜんっぜんちがう…」
彼女の荒い呼吸は、さらに深くなっていく。覆うだけでは止まらず、乳房の形が変わるほど、握り締めていく。
「あっ、ああっ…。やっぱり、生身がいいっ」
両手で揉み解されていた乳房は、右手は乳房を揉み解し、左手が中心で主張する突起を押しつぶす。
「あっ、あっ…もう。ほ、ほしい…」
さらに右手は乳房から外すことはできぬようだが、左手は自身の下へと向かう。そして、彼女を覆う最後の一枚
すら、彼女は脱ぎ捨ててしまう。すでに濡れた中心が、待ちかねたようにひくりと動いた。
彼女の左手は尚も中心を目指し、先ほど押しつぶした突起と同じく主張する、肉芽をつまんだ。
「ああっ。やっぱりぃっ…。さ、最高…」
彼女は荒い息の合間に、甲高い声を上げていく。肉芽をついばむ左手はさらに動きを増し、その刺激に誘われる
ように右手がさらに下方を目指す。
彼女のメスが滴る口に、右手指がそろりと入った。
「あっ、はっ…」
彼女の上半身が大きく跳ねる。それが合図のように、右手指はさらに奥へと侵入していく。
「あん、あんっ、あんっ」
全身に電流が走ったような感覚が巡り、彼女の声が篝火を囲む小さな小部屋にこだまする。
それに呼応するように、濡れた音が辺りに小さく響く。
「あ、だめ。こんなんじゃ、足りないっ…」
彼女の体は小さく震えているが、大きくは跳ねない。それがもどかしいように彼女は、濡れた声で言葉を発する。
「でも、あの祭祀場のニートとは絶対イヤ。いくら亡者の姿だったからって言って、そうとう私の体を気持ち
悪いだの、なんだのって。女性を前にして言うこと?それよりも、あの顔がだめ。生理的にムリ!!」
彼女は一旦、両手を自由にして大きく深呼吸をした。
「他に居た人って、あのおやじだけじゃん。奇跡教えてくれたのはありがたいけど、あれは尚ムリ!もしあの
どちらかと寝ろっていったら、はっきり言って、その辺の亡者と戯れた方がまだまし!!」
彼女は小さくも強い口調でぶつぶつ言うが、一旦上昇した体の火照りは、直せそうにもない。
彼女は熱いため息を吐くと、溜め込んでいた荷物を見た。
「そ、そうだ。代わりになるもの…」
何やら思いだしたようで、彼女は荷物を漁ると、その中から折れた剣の柄を取り出した。
何が何だか分からぬ内に入れられた牢から、夢中で抜け出す時に拾った、最初の武器だった。
これがなかったら、あの悲痛しかない場所から抜け出せたかどうか分からない。その為か、思いいれのある武器
だったので、捨てるに惜しかったのだ。
「…、こ、これ…。ちょうどいいかも…」
本来なら過去を振り返り、思い出に耽る品物であろうが、彼女が見つめる視線は全く違うものだった。
彼女は折れた刃の方をそっと握った。刃は折れているので、彼女の手のひらを傷つけるほどの殺傷能力は無い。
そして、柄の部分を自身の中心にあてがった。そのまま、ゆっくりと奥へと入れるが。
「い、いたっ…」
柄が入り口に引っかかり、どうしても奥へ入らない。
「えっ?これくらいが入らないって…。私、マダだったっけ?」
と、火照る脳内で記憶を辿ろうとするが、自身の名前さえ思い出せない状態では、思い出そうにも思い出せない。
亡者としての時間が長すぎたが、それとも不死の体になる時に、全てを失ったか。
だが、火照る脳内では、深い思考ができない。
「もうちょっと、角度を変えたら…。できるかな…」
彼女は冷たい床に尻を当てると、背を壁に当て膝を立てる。そしてそのまま膝を大きく左右に広げて開脚した。
ぱっくりと開いた中心から、さらにメスの匂いが漂った。
彼女は前かがみになるが、どうしても中心は見えない。自身がマダなのか確かめることすらできない。
「はあ、もしマダだったら…。初めてが自分って…。寂しいよな…」
寂しいという言葉の割りには、熱い息を吐く彼女。
「でも、もう…。だめ…。がまん、で、き、ない…」
火照る体を押さえる事ができぬ彼女は、柄を握った右手に力を込めた。
だが、直後。大きな音に驚き、彼女は柄を手放してしまった。
ガシャンという金属音と共に、カランという乾いた音が部屋をこだました。
彼女は驚愕する。その目は熱を失い、青ざめた。
全身が前者とは正反対の冷たさに、震える。
「ど、どうして…。振り切って逃げてきたのに…」
彼女は震える声で、そうつぶやいた。
最大まで見開かれた彼女の瞳には、先ほど恐怖が映っていた。
黒い鉄鎧に全身を覆った巨大な剣と盾を持つ黒騎士が、彼女を見下ろしていた。
彼女は全身の動きが止まった。死すら感じるほどの恐怖を覚えた相手。
「ど、どうして…。此処まで来れば…安全だと…」
死を感じる彼女の思考は、急激に回っていく。黒騎士を垣間見た時、背を向けて逃げ回ったはずだった。
が、手に入れた亡者の鎧が重すぎて、思うようには走れなかった。だが、黒騎士の鎧の方がはるかに重い。
その足は彼女の方が上まっていた。だから、振り切れたと思っていたのだ。
安心しきっていたのだろう。その安堵が油断を呼び、篝火に触れる事を怠っていた。
彼女の脳裏に絶望が襲ったが。
それ以前に、彼女の身は絶望を知っていた。此処に来た時にすでに、絶望を知っているのだ。
それを知らぬ者が、亡者と成り果てるはずなど、ないのだから。
彼女は黒騎士を見上げた。そして、彼女が取った行動は、絶望とは違うものであった。
「んっ…。んんっ…あっ」
絶望を知っている彼女の身は、所詮亡者に戻るだけという結果に行き着いた。
それゆえ、発散できぬ火照りが彼女の恐怖を上まったのだ。
それに、恐怖を与える存在の黒騎士ではあるが、その身は騎士。
漆黒の鎧といえど、人の形をしていた。それだけでない。彼女が見てきたどの亡者よりも勇猛で、美しかった。
また、騎士という姿が男性を模したのだろう。彼女のメスは、雄を目の前にしてさらに飢えを増していく。
「はぁっ。はぁっ。はぁ…」
彼女の声は甲高く、その息は熱く深い。そして、黒騎士を見上げる。
投げ出した柄を握ることすら思考は回らず、ただ夢中で乳房を揉み解し、中心を撫で回す。
いつ、その大剣が振り下ろされ彼女を真っ二つにしてもおかしくない中、彼女は絶望のふちに立つ、恐怖にも
勝る興奮に、声を荒げていた。
ガシャンと金属質な音を大きく響かせ、黒騎士は彼女に近づく。それと同時に彼女の恐怖も増す。だが、興奮
も、増して行く。死を直前にした時、彼女は瞳を閉じた。