ボクとあの人の出会いは偶然だと思わない。  
 
だって、あの人を見た瞬間…………ボクは恋に落ちた。  
 
『一目惚れ』  
 
陳腐な言葉だけど、当事者にとっては重大な言葉だ。  
 
でも、あの人を好きなったのが一目惚れというのもあるけど………  
 
ボクは見つけた。  
 
ソレが偶然ではなく、必然だったのだ。  
 
ボクはあの人を求めていた。  
 
ずっと………求めていた。  
 
自分の心の隙間を埋めてくれるあの人の存在を………  
 
 
コンコン………  
「………いないのかな?」  
腕時計を見る。  
まだ夕方前………少し、早く着すぎたかもしれない。  
おそらく、まだ会社の廊下でも掃除しているのだろう。  
だけど、このまま外で待つ訳には少し寒い。  
なので、勝手にお邪魔しよう。  
「………あった」  
彼は植木鉢の下に鍵を隠している。  
古典的な手だ。  
鍵を差し込んで、中に入る。  
彼が帰ってくるまで部屋で待っていよう。  
 
ガチャッ………  
 
扉の開く音  
この部屋の主が帰ってきた。  
「おかえり、黒」  
「………勝手に上がるな」  
黒は勝手に寛いでいるボクを少し眉を顰める。  
「それで………?今日は何の用だ?天体観測の約束はしていなかっただろ?」  
「別にいいじゃん………後でご飯作ってあげるからさ!」  
材料は近くのスーパーで買って来た。  
彼にお願いするのなら胃を攻めるのが効果的だ。  
「………わかった。」  
渋々と折れる。  
彼と過ごす時間を得た。  
 
黒との最初の出会い星々が輝く夜空の下  
双子座流星群の極大日での出来事  
その日は、自分の部屋から観測するよりも、外で観測したかった。  
夜遅くに外で天体観測するのは危ないから両親に内緒で、近くの公園へ行った。  
そして公園で双子座流星群の観測をしようとしたら既に先客がいた。  
 
それが黒だった。  
 
そんな彼に興味を持ち、少しだけ喋った。  
今日の観測についてや、今までどんな星を見たのか………色々と話した。  
心が、ほんのりと温かくなる。  
共通の趣味を持つ人との出会いはボクにとって楽しかった。  
時間は無常に過ぎて、別れの時  
最後に彼の名前を聞けただけ………それだけだった。  
 
サヨナラ  
 
短い言葉を交わし………ボクは帰路へつく  
胸が少しだけ苦しかった。  
その時は………分からなかった。  
胸の苦しみが………どんな意味を持つのか…………  
 
二度目の再開は、数日後であった。  
学校へ行く最中、近くのアパートから彼と鉢合わせになった時には少し驚いた。  
互いに近くに住んでいた。人の縁って不思議だなって思った。  
でも、その時はそれだけだった。  
互いに学校や仕事へ行かないといけないので、のんびりと挨拶している暇はない。  
軽く挨拶しただけだった。  
それで終わりと思っていた。  
 
………………思いたくなかった。  
 
ボクは心の奥底で思っていた。  
また・・・彼に会いたいと………  
彼と色々と話したい………彼と………■■に居たい…………  
学校についてからも、ずっと………それだけを考えていた。  
授業や友達との会話なんて上の空だった。  
そして自分の気持ちに………少しだけ気づき始めた。  
 
また………会いたいと思った。  
 
三度目の出会いは公園  
ここで………星を観測していたら、また彼に出会えるのでは?と思ったから………でも、無用心だった。  
夜、公園で女の子が一人でいる事は危険だという事に失念していた。  
知らないオジサンが近寄って来て、執拗にボクの事を聞いてきた。  
どうしてこんな所に?一人なのか?一緒にご飯でも食べないか?  
怖かった。怖くて………泣きそうになった。  
夜の公園には誰もいない。誰も助けてくれない。  
そんな時だ………再び黒に会えたのは………  
黒は、知らないオジサンに跳び蹴りをして横転した隙に、荷物を回収してボクの手を引っ張った。  
逃げる様にその場を離れて、彼のアパートまで逃げた。  
今、考えたら………これも結構、無用心だと思うけどね。  
取り合えず、彼の家に逃げて………そこでボクは彼に怒られた。  
夜遅く、一人で公園で天体観測をするなんて正気か?と散々怒られた。  
外で観測するのなら誰かと同伴しろって言われたけど………いない。  
両親は帰ってくるのは深夜の12時過ぎ、友達は天体観測なんて興味ないから行ってくれない。  
そんな風に呟いたら、黒は少し思案し、だったら自分が一緒に行ってくれると言った。  
嬉しかった。  
これで彼と繋がりができた事に歓喜した。  
 
それが………ボクと黒の出会いであった。  
 
 
黒に晩御飯を作ってあげるといって、ロールキャベツを作ってみた。  
 
でも………失敗してしまった。  
 
巻いたキャベツの紐が緩かったのか、煮込んでいる最中に紐は解けてしまい、キャベツと煮込みハンバーグに別れてしまった。  
これではトマトスープだ。  
「見た目は兎も角・・・食えるから問題ない」  
そんな黒の言葉に腹が立ったので脛に蹴りをいれる。  
「美味しいから………安心しろ。」  
「ッ……?!」  
たぶん、耳まで赤くなっているだろう……恥ずかしさを隠す為に更に蹴りをいれる。  
やがて時計の針は6時を過ぎようとしていた。  
「そろそろ帰るね。」  
ここでご飯は食べない。  
だって家に母親が用意した晩御飯があるのだ。ここで食べて家の晩御飯が食べられなかったら申し訳ない。  
それに………変に勘ぐられたくない。  
「送っていくか?」  
「うん………途中まででいいよ。」  
二人で少しだけ暗くなり始めた道を歩き始める。  
会話はない。黙って歩いていくだけだ。  
そして互いの家の中間地点でお別れである。  
「黒……おやすみ………」  
 
一人、帰路へ着く  
隣に黒がいない………ただ、それだけのなに………凄く……寂しい。  
また………会おう………何度でも会おう  
 
ボクの………ワタシの隙間を埋める為に………  
 
 
今日はペリメニを作ろう。  
パパに作り方を教えて貰って、何度も練習した。  
彼に美味しいって言ってもらいたいから………  
今日は何を話そう?  
他愛もない話や天体観測でもいい  
彼と話したい。  
そんな気持ちを胸に、ボクは材料を持って彼のアパートへと行く。  
「あっ……開いてる。」  
今日は鍵が開いている。中にいるようだ。  
 
ガチャッ………  
 
「ッ………?」  
扉を開けた瞬間に匂う、咽返る様な臭気  
不快な臭いだが、同時に脳が痺れて麻痺する臭い  
だからなのか………心の中で警告がずっと出されていたのに………気付かなかったのは?  
その時に引き返せば………何も知らずに済んだかもしれない。  
 
「えっ………?」  
 
最初に見たのは『靴』  
小さな靴  
自分のでもなく、黒のでもない別の『誰か』の靴  
そして………女性が履く靴だった。  
 
警鐘が鳴り響く  
『引き返せ』と何度も………でも、知りたい。  
ここまで来たら知りたい。  
黒と一緒にいる人を………知りたい。  
そっと……足を忍ばせて居間から死角になるように隠れる。  
黒がいた。  
知らない女性もいた。  
小柄で、肌も白く、銀髪の女性  
 
でも……二人は何をしているんだろう?  
 
嘘だ。  
本当は理解している。  
二人の行為が………何をしているのか………  
理解している。  
この行為は………愛し合う人が行う行為だという事を……性行為だという事………  
二人はキスをし合い、そして貪欲に互いを求めている。  
それだけじゃなく、二人は繋がっている。  
はじめて見る男性の性器が……女性の中に何度も出たり入ったりしている。  
 
見たくない。  
 
目を背けて隠れる。でも目に焼きついてしまった。  
黒は獣様に女性に覆いかぶさり、何度もその人を鳴かしている。  
 
聞きたくない。  
 
耳を塞ぐが、通り越して聞こえる。  
雄と雌の交わる淫欲な匂い  
 
嗅ぎたくない  
 
耳を押さえているから嗅いでしまう。  
二人は交わる度に、互いに名前を呼び合い………愛を囁き合う。  
 
どうして………ワタシは、ここにいるのだろう?  
 
いる必要なんて・・・・『無い』  
だから帰ろう、家へ・・・  
それから、どうやって帰ったのか覚えていない。  
気付いたらベッドの中・・・両親が心配して様子を見にきたが、私は風邪だと答えた。  
たぶん・・・顔がすごい事になっていると思う。  
今は・・・眠い  
寝て・・・忘れたい  
ボクが見たのが・・・夢であって欲しいと願い  
 
ボクは・・・闇へと落ちる。  
 
 
起きたら頭が痛い  
 
体もダルイ………それに少し寒い  
風邪だった。  
まさか本当に風邪になるとは思ってもいなかった。  
両親は心配して、一日安静にしてなさいと言って仕事に出た。  
今は………一人でベッドの中で丸まっている。  
 
昨日の事を思い出す。  
 
分かっていたことだ。  
−分かりたくないことだった。  
彼には『彼女』がいた事を………ボクは分かっていた。  
黒の心は……ボクに向いていない。  
別の人に向いていた事は、彼との会話の中でうっすらと察していた。  
でも………認めたくなかった。  
 
けど、昨日………ボクは現実を直視させられた。  
 
あの人が、黒の想い人なのだろう。  
二人の行為を思い出す。  
普段の黒とは違い、乱暴に女性を犯す。  
二人の匂いを思い出す。  
嗅いだ事のない媚臭  
二人の声を思い出す。  
雄の叫び声と雌の喘ぎ声  
 
思い出すだけで………ボクはオカシクなる  
 
だから………こんな行為をしてしまう。  
心臓の鼓動がどんどん早くなる。  
手は自然と下腹部へと伸び、パジャマの中へと進む。  
更に奥へと進む  
そして触れるのは下着、汗を掻いてジットリしているのか、それとも………別のなのかは判別できない。  
 
自慰なんてあまりしない。  
前に興味本位でしたけど………怖くなってしなくなった。  
気持ち良過ぎたから……帰って来れなそうで怖かった。  
 
そっと撫でる。  
それだけで背筋に電流が走り抜ける。  
下着の上から撫でてこれだ。  
 
じゃあ……二人の行為はどれ程のものなのか?  
 
想像する。  
彼に抱かれる自分を  
「ん……ッ……」  
何度も強く擦りあげる。  
 
駄目だ。これだけでは駄目だ。もっと欲しい。強い……快楽を  
 
邪魔な下着を下にずらし、右手で自らの秘部を覆い、直接に秘所を触れる。  
右手が、僅かに動き出す。  
虚ろな表情のまま、きゅっ、と眉を寄せた。  
「は……はぁ……はっ……はぁ……はぁ……」  
切ない吐息が、蘇芳の唇から漏れる。  
確かな性感がその部分から湧き起こっているのだろう。  
たどたどしい、いかにも慣れない感じの指の動き。  
「あ……あぅ……んっ……あっ……あっ……アッ……あっ……」  
次第に、蘇芳の吐息が甘たるいものになっていった。  
指が、割れ目の部分を上下に撫でている。  
その動きが滑らかなところを見ると、そこは、すでに愛液で濡れているのだろう。  
焦燥感に似た鋭い興奮に蘇芳は息を荒げていた。  
「あ……ぅ……ッ」  
その指先が、きらきらと濡れ光っている。  
 
でも駄目だ。これで満足できない。  
 
自慰の知識や経験のない蘇芳はその先を知らない。  
どうやったら満足できるのか知らないのだ。  
出来るのは必死に割れ目を擦るだけ  
だからイクという事も理解できない彼女は、泣いている。  
小さく鳴くだけしかない。  
 
何度も擦っていたせいか、それは偶然か必然か・・・  
触れる秘豆  
 
ビクッ……!!  
 
「ひうッ……?!」  
感じたことのない快感  
そして再び恐る恐ると触れる  
「ッ………!!?」  
今までとは比べもない程の電流  
足を閉じることも、手を止めることもできなかった。  
ニチャッ、二チャッ、と響く音  
「あっ、いやんっ……」  
腰が浮いてヒクヒクと動いているのが分かる。  
 
ヌル……  
 
指先に絡みつくでヌルヌルの愛液に濡れ、指先が滑らかに滑る。  
ただ擦るだけの比にもならないほどの濡れ方  
「ふああああぁぁっ、あっ、あんっ……!」  
直に触れた秘豆は、なんて言うのか、口の中を倍ぐらい柔らかくしたように、熱く、蕩けていた。  
ちょっと触っただけで、ジンジンと堪らない、腰が浮くような快感が湧き起こる。  
「あふっ、うっ、ううんっ、あはあっ、はん……」  
濡れた部分を指で擦ったり、すごく気持ち良い。  
「あんっ、ひんんっ、あんっ」  
ボクは、初めて感じる不思議な昂揚感の中を、少し怖かったけど、進んでいった。  
「あっ、あううっ、はんっ、ああっ……!」  
高まるボルテージ、もっと強烈な快楽が欲しい  
 
だから、その行動は自然だといえる。  
秘豆を軽く摘む  
 
ビクッ!ビクッ!!ビク!!!  
 
抗いようない快感の波  
体が急にすごく熱くなって、それは背骨を伝って弾けるように身体中に伝わっていった。  
絶頂が何度も襲う  
「うっ、あっ?!はああっ、すっ、すごいよぉぉぉっ、あっ、あっ、あはああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」  
それは生まれて初めて味わう衝撃だった。  
何かを乗り越えるような感覚  
身体中が熱くなって、ピクッピクッ、と体が痙攣を起こして震えている。  
やがて硬直させていた緊張がほぐれ、激しかった呼吸が整う  
私は、身体を伸ばして布団に身を任せる。  
「気持ち良かった……」  
 
 
ただ……その行為は逃避にすぎないと分かっていながら………眠りへ導かれる。  
 
 
 

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