「カーットォッ!!!」
撮影所に監督の声が響く
「流星の双子はこれにて終了です……お疲れ様でした〜!」
プロデューサーが撮影終了を報告する。
「お疲れ様〜」
「お疲れ」
「お疲れでした〜」
次々と出演者達に花束が渡されていく。
「お疲れ様です。黄監督」
「いや〜、流石だな。一期と比べても中々良い演技だったぞ。」
「いえ、黄監督こそお疲れ様です。」
「じゃあ、俺はお偉いさんに挨拶しにいくからな」
黄監督はそういって離れていった。
「お疲れ様……黒」
「お疲れ様、お兄ちゃん」
彼を迎えてくれたのは、彼女の実妹の白とアンバーである。
「ありがとう」
「残るは外伝の収録だけね〜……」
「アンバーさんも出るんだっけ?」
「うん、敵役のソックリさんでね。」
「あれ?銀さんは?」
「ああ、彼女なら「呼んだ?」
突如として、黒の後ろから銀が現れる。
「ちょっと……銀?目の前で何をしているのかな?」
アンバーの口が僅かに引き攣っている。
ついでに銀は、黒の背中にしがみ付くようにしている。
更に言えばまだピッチリしたスーツなので体のラインが綺麗に出て、背中にふにゃとした柔らかいものを当たっている。
いや、押し付けているといった方が適切なのだろう。
「ハグ……それと黒は私の……」
「銀〜……?」
ミシリッと空気が軋む。スタッフ達はコソコソと退避し始めている。
「まぁまぁ……銀さんも程々にして下さいね?」
「ん………」
アンバーと銀は仲が悪い訳ではない。むしろ逆である。日常でもよく一緒にいたりと姉妹みたいに仲が良いのであるが…………
黒が絡むと別だ。
両者は黒が好きだ。だから譲れない。
肝心の黒にしても、二人に対して好意はある。
だけど選べない。それが尚、悪い。
いっそ、中東のどこかで重婚が可能な場所で式でも挙げるべきか?と考えてみる。
取り合えず、この場は白に任せて、元凶の自分は離れる。
しばらくしたら二人も納まるだろう。
黒は他の出演者達に挨拶し回っている。
そんな彼の前に人影が現れる。
「お疲れ様です。黒さん」
まだ撮影用の服装に着替えたままの蘇芳だ。
「お疲れ、蘇芳ちゃん」
黒は彼女に労いの言葉を掛けた。
彼女にとっては初のドラマだが、中々の演技を見せてくれた。
特に彼女の黒への告白シーンなんてドキドキした。
そして二人で今までの撮影での出来事や芝居の演技について話した。
「黒さん」
「なんだい?」
「もし…………劇中のボクの恋心が本物だとしたら……黒さんはどう応えてくれます?」
「それって…………」
瞳は真っ直ぐ、自分を見ている。
彼女は自分の手を掴み、逃げださないようにしている。
「あれ?紫苑?」
こちらに歩いてきたのは私服に着替えた『蘇芳』だった。
というか紫苑?目の前にいる撮影用の服装を着ている蘇芳ちゃんは……蘇芳ちゃんではなく……紫苑君?
「し、紫苑君?!」
「あちゃ〜……バレたか…………」
そういって彼はエクステで付けていた三編みを外す。
「紫苑!黒さんに何していたんだよ?!」
「ん〜?蘇芳の為に少しばかりお節介をね?だって蘇芳ってば奥手だし?」
舌をぺロッ、と可愛く出して蘇芳をからかう。
「紫苑!」
蘇芳は顔を真っ赤にしながら紫苑を追いかける。
本当、仲の良い双子である。
「相変わらず君の回りは賑やかだね。」
「どうもジャック・サイモンさん」
次に現れたのはノーベンバーさんだ。
「いや、それはネタだからね」
彼は苦笑している。
「ジュライ君は・・・寝ていますね。」
彼の腕の中にはノーベンバーさんの弟のジュライ君が静かに寝ている。
どうやら疲れてしまったようだ。
「君の親父スタイルにはファンは絶叫だったらしいね」
「ええ、でも中には渋いといかいう意見もありましたよ。」
「髭を剃った時の反響も凄かったですけどね」
「まったくだ。」
打ち上げ会場
今回の打ち上げには二期の出演者だけではなく、一期にも登場した出演者達が勢揃いしている。
多くの人達が集まっているが、皆が注目しているのは…………
「三期の話も持ち上がっているらしね。」
とにかく会場で話される話はこれだ。
「まぁ……二期の最後があんな終わり方だし…………視聴者の方々にはかなりの不満があると思うよ。」
最終回放映後の反響は大きいだろう。
一期と比べて話数が半分だったというのもあるかもしれない。
「だよね……皆も結構、今回の終わり方に疑問とかあったし……」
「次回に繋げれるのなら問題ないんだけどね……」
三期については『噂』程度しかない。
今は外伝の収録をしないといけないのだ。
「とにかく……今は二期の収録が終わったことだし!乾杯しましょう!!」
「「「「「「「「「「「乾杯ッ!!!」」」」」」」」」」」
こうしてDTBの二期の収録は無事に終了する。
NG&ハプニング集
一話
「大人しくするのならコイツを分けてやってもいい」
ゴランはエイプリルが放った銃弾を避ける為に高速移動をする。
「痛ぇ!」
台本通りに彼は木にぶつかる。
ドサササッ!!
大量の雪が彼の上に落ちてくる。
当然、避けれるわけがないので直撃
「カット!無事か?!」
「い、生きています……」
何とか雪から這い出した。
「ゴランさん、大丈夫ですか?」
「ああ、まさか雪が落ちてくるなんてね……」
四話
「こ、こんにちは」
「ん?何?何、その顔?」
「なんか悪いモノでも食べた?」
「笑えないわよ。その顔」
「カット、OK」
「中々、いい表情だったわよ?」
「あ、ありがとうございます…………」
しかし、蘇芳の表情は青いままである。
「あら?もう演技はいいのよ?」
「…………お腹、痛い」
彼女はその場にお腹を押さえて蹲る。
「えっ……?マジ?どうしたの?まさか本当にアレな日?」
「違います。たぶん……アシカラーメンが…………」
思い当たる原因は少し小腹が空いたので勝手に食べたラーメン。
「あれ食べたの?!本当に賞味期限が切れていたやつよ!?」
「知りませんでした……」
自業自得である。
「ちょっと!誰か胃腸薬か正露丸持ってきて!」
六話
「未咲ちゃん、邪魔しないでよ……丁度、今、お楽しみ中なんだからッ!」
ズルッ……!
巨体が大きく滑る。
「あっ……?」
ズデン……!
背中向けに倒れる変態
「ちょっ?!起き上がれないんですけど!!」
「……カーット!!」
皆で彼を起こしにかかる。
七話
「目……開けたら?」
「心細くない……?この中で一人で……」
「何かさ、言ったほうが良いよ。言いたいことがあるのなら……」
蘇芳はジュライのほほを抓る。
「何やっているんだ?」
「痛くないの?」
更に力を強める。
次の瞬間、ジュライの目がウルッ、としたと思ったら………
「ふぇ……」
「へっ?」
「ふぇぇ……ん…ッ…………」
本気で泣き始めた。
「ご、ゴメン!!強くし過ぎた?!」
「はいカット!」
「ごめんね!ジュライ!」
蘇芳は一生懸命にジュライを慰める。
十一話
「えいっ♪」
マダム・オレイユは掛け声と共に対契約者兵器を放つ
「…………ぷっ」
小さな笑い声
「「「「ぷはははっ!!」」」」
そしてそれに続いて増えていく笑い声
「もう!皆して笑わないでよ!?」
「すみません……!ですけど……『えいっ♪』は少し……」
彼女は泣きながらスタジオを飛び出した。しかも、その格好でだ。