「まだ起きてる?」  
「ああ」  
蘇芳の問いに、黒は目を開けずに答える  
「ねえ」  
「なんだ」  
「僕と寝てよ」  
「何を言って……」  
「子供の頃、寝れない時はパパが隣で寝てくれたんだ」  
「……」  
「でもきっとそれも僕の思い出じゃない、僕の思い出が欲しいんだ」  
「蘇芳……」  
「来て」  
黒はため息を吐き腰をあげる  
 
「布団、入りなよ」  
「二人は狭い」  
「くっつけば、狭くないし暖かいよ」  
黒からは蘇芳の表情は見えない  
「あとね……」  
「あと?」  
「撫でて欲しい」  
 
「初めての時は怖かったし痛かった」  
「そうか」  
「でも今はなんか気持ちいい、それに暖かい……」  
「……そうか」  
「もっと触って欲しいんだ、なんでなのかな」  
「大人になればわかる」  
「僕だってもう、少しは大人だよ」  
「少しは……か」  
「あっ今笑ったでしょ、僕だって……」  
「……?」  
「僕も大人になればちゃんとわかるのかな……」  
「先のことはその時考えればいい、今は目の前のことだけを見ていろ」  
「……ん、おやすみ黒」  
 

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