「馬鹿ッ!ろくでなしッ!!黒なんて嫌いッ!!!」
蘇芳は全力で手当たり次第のものを黒に投げる。
鞄や湯飲み、今日の晩御飯の食材からペーチャまで投げつける。
彼女の怒る原因は、些細な事だった。
ほんの些細な事を……黒が種火に石油注いで大炎上
完全に頭にきた蘇芳は怒りからものを投げる。
しかし、黒は伊達に黒の死神と恐れられたエージェント
その程度の攻撃を難なく避けるのは余裕だった。
だが………例外は存在する。
投げられたモノの中に無機物以外のものが混じっていた。
現在、モモンガに憑依中のマオの存在である。
彼は突然、掴まれて投げられた。
投げられ、宙で滑空し、軌道修正をした彼は黒の顔面に張り付く
「なッ?!」
マオを取り払うと、目の前は白一色に染まっていた。
グシャ…
黒の顔には晩御飯のマーボの食材である豆腐が直撃した。
そこで蘇芳の手が止まる。
拙い
次の瞬間にでも自分は彼に殴り飛ばされると直感し、顔が青くなる。
だけど、いつまでも経っても彼は動かない。
「………ど、どうしたっていうんだよ…?」
やがて黒がを口を開く
「あの……此処はどこで?君は……誰かな?」
いつもの不機嫌そうな顔ではなく、軟弱そうな顔で困ったように苦笑しながら聞く
「黒……?」
「へい?違います。僕はへいじゃなく李といいます。」
どうやら頭の打ち所が悪かったようだ。