とある秘密の隠れ家にて  
 
「おい齧歯類」  
「Σなにおう、失礼なこというな。モモンガはれっきとした哺乳類だぞ……リス科のな」  
「…そんなことはどうでもいい。すこし留守にするから蘇芳達を頼んだぞ」  
「なんだ?あの女とは手を切ったんだろ?」  
「野暮用だ」  
「対価は?」  
「…………くるみ三個」  
「さて、お嬢ちゃんを呼んでくるかな」  
「…ひまわりの種もつけてやる…袋でだ」  
「おーきーどーきー♪行ってきな」  
「…やれやれ」  
 
〜三十分後〜  
「…ねえ、黒は?」  
「よぉ嬢ちゃん、奴なら野暮用だってよ〜」  
「…野暮用?」  
「俺の勘からして、コレだな」  
「? 何それ」  
「見て分からんか?小指立ててるだろ?」  
「…齧歯類に小指があるなんて知らなかった」  
「哺乳類だっつの。お嬢ちゃん飼い主の癖に知らないのかぁ?」  
「親父臭いモモンガを飼った覚えはないし、どうでもいいよ…で?」  
「少し話がズレるが、あいつの昔から変わってない所が1つあってな」  
「?」  
「女によくモてる」  
「………………ふ、ふ〜〜ん、そうなんだ」  
「おお、二年前東京にいたときなんざ、ひぃふぅみぃ…」  
「…………………」  
「ま、両手の指じゃ足りない位女に好かれてたぜぇ?」  
 
「……オンナの敵だね」  
「俺の勘だが、『女から好かれてしまう』ってのがあいつの契約の対価なんじゃねェかなぁ」  
「…そんな対価あってたまるもんか」  
「対価なんざ人それぞれさ。俺もいろんな契約者を見てきたが、あいつのはいまだに謎だ。…それにな嬢ちゃん」  
「?」  
「目の前で女に死なれるってのは、中々にこたえるもんだぜ?」  
「………」  
「契約者なんぞになっちまったら、まず真っ当な人生は送れない。そんな奴を好きになっったら…お前さんなら分かるだろ?」  
「…………うん」  
「あいつはそれを何度も繰り返しちまってんのさ。懲りずにな」  
「ボクは違うよ!」  
「へ?」  
「ボクは自分の身は自分で守れるし、銀みたいにいなくなったりしない」  
「…………苦労するぜお嬢ちゃん」  
「もうしてるモン」  
 
終わり  
 

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