「ん………黒?」
起きたら自分の隣にいた筈の存在がいない。
少し心配したが、彼はいた。
「またそんなの飲んで………」
ベッドから這い出て彼から酒の入ったボトルを取り上げる。
もう何度も注意したのに聞いてくれない。
「……もう少し寝てろ」
少し不機嫌になった彼は私を抱えるとベッドに放り投げる。
「眠いけど……寒いの……一緒に寝てくれない?」
「…………ああ」
彼は少し迷いながらも、少女の希望に応えてあげる。
しばらくして少女は彼に声を掛ける。
「ねぇ、黒………起きてる?」
黒の背中越しから少女のか細い声が聞こえる。
無論、黒は起きている。
「ボクは………銀の変わりなの?」
返事は無い。
「黒………答えてよ……………」
少女は彼の服の少し引っ張る。
だが、それは除々に強くなっていく
「……ねぇ………………ねえってば!!」
ついには服を引き千切らんばかりの力で引っ張る。
「蘇芳………」
「答えて!ボクは銀の代わりなの?!」
蘇芳は黒の上に馬乗りになり、護身用の拳銃を彼の額に突きつける。
「どうして………そんな事を聞く?」
彼はどんな時でも平静だ。
そう、自分は彼の『仮面』の下の顔をまったく知らない。
彼が本当の素顔を見せるのは一人だけだった。
「どうして………?あはッ!!黒ッ、いつもボクを抱いた後に寝言で何って言っているか知っている?!」
黒は知らない。
知らないが、彼女の怒りと憎しみの篭った言葉から想像はできる。
「何度も『銀………』って言っているんだよ?!そんな風にボクは毎夜聞かされているんだよ?!」
そして少女は鳴きながら笑う。
「黒………ボクを見て……銀じゃなくボクだけ見てよ……………」
後に続くのは少女の嗚咽
彼に出来るのは少女をそっと抱きしめてあげるだけ
まだ、夜は続く