僕たちは二人で洞窟の奥を目指して歩き出した。一か月の間にあった事――なんでも、つい一昨日まで未来での政治等の手続きに追われてたとか――なんかを話しながらの道中。
魔物との戦いで、僕は背中に感じるモニカの存在に、これ以上ないって程の、安心と信頼の入り交じった暖さと――それとは別の、刃の切っ先が触れているような冷たい不安を感じていた。
そして、それは僕たちが再会した広間から数フロア程の所で起きた。
「魔物はこれで全部だね」
モンスターを殲滅し、一息つく。
「さすがにそろそろ疲れてきたな。回復の泉が湧いてる事だし、ここで野営にしよう」
時計を見ると10時を回っている。
「そうね…それじゃ、ちょっと水浴びて来るから剣預かっといて。くれぐれも覗かないように」
剣を受け取り、冗談めかして言うモニカに軽く返事する。
泉が死角になる位置に移動し、待つ……なぜだろう、とても心細い。なんだか怖くて仕方がない。なぜ?
答は、あっさりと導き出された。僕は、モニカがまた去っていく事を恐れているんだ。
モニカと出合ってから今までに、二回の別離があった。一度は火山で、もう一度はダークエレメントとの決戦の後。
前者の時は突発的な事故で、モニカを助ける為に無我夢中だった。
後者の時は『モニカは目的を果たした、だから仕方ない』と諦めていた。
今度は、違う。諦めるに足る理由も無く、一月の間に彼女のいない寂しさ、辛さを知ってしまった。
もう一度別れてしまったら、と思うと心が引き裂かれてしまいそうだった。
―――にしよう―――
何かが僕に囁いた。よく聞き取れなかったが、声は自分の中から聞こえた。耳を澄ます。
―――彼女を、僕のモノにしよう。もう二度と、無くさないように―――
「うん…そうだね…」