私、なんでこんなことしているんだろう。  
最初はひとりでしていた。これは恥ずかしいことだから誰にも言わなかったけれど、  
私はひとりでするのが好きだった。城に住んでいた頃は自由に恋愛するわけにも  
いかなかったし、時間の旅をしている今も忙しくてそれどころじゃない。だから、  
こうすることで一種のストレス発散していた。私は、白馬に乗った王子様が、  
なんて思っているわけじゃないけど、いつかは普通に恋をしてこうなることに  
密かな甘い期待があった。  
 
だけど、なんで私、ギルトーニなんかにこんなことされているの?  
背中に手をまわされ赤ちゃんが抱っこされているような格好で抱きしめられて、  
さっきからずっとやりたい放題されている。急に目の前に現れて、自慰に  
耽っていた私を見下ろすと何も言わずに抱きしめられて、何が何だかわからない。  
ひとりでしている最中だったから、もう身体のスイッチが入っていて完璧に拒絶出来なかった。  
服を下着ごと捲り上げて、胸の頂点を親指と人差し指でこねられる。そうされると  
電気を流されたように身体が跳ねてしまう。私はもうただただ喘ぐしか出来ない。  
もう既にたくさんの蜜を垂れ流しているあそこも触れられてはいるんだけど、  
戦っているときのコイツからは想像出来ないほど優しく撫でるように触るので、  
早くイきたいんだけどなかなかイケない。たまに思い出したかのように、硬く勃った  
敏感なところをこねられて、もうダメ、と思ってもすぐにやめてしまう。何がしたいのか。  
 
「やぁ、も…ぅ、やだぁ……」  
あまりのじれったさに声が震える。恥ずかしいと思えば思う程出る大きな声を  
抑えることが出来なくて指を噛んだ。  
「何をしている」  
「だっ…て…こ、え」  
答える声すら甘くなってしまって、なんだか泣けてくる。  
「馬鹿なことを」  
なによ!と言い返そうと思って、その前に唇を塞がれてしまった。噛んでいた手を掴まれて、  
そのままさっきまでギルトーニが散々弄んでいたところに持っていかれる。  
今そこを自由に触れるようになってしまったら、私は絶対我慢できなくなる。もうずっと  
焦らされ続けて、寸止めされて、もう欲しくて欲しくてたまらない。そんな状況になることを  
回避しようとして手を振り払おうとするんだけど、さっきから力は入らないし、だいたい純粋な  
力比べでは敵うはずもない。  
「どうした?」  
漸く唇を離して意地悪そうに、そして心なしか嬉しそうにギルトーニは問う。  
とうとう手が辿り着いてしまった。  
ギルトーニは指を絡めて彼の指と一緒に私の指をゆっくり中に入れた。望んでいたものをやっと  
与えられて鳥肌がたって何も考えられなくなった。でもなかなか動かしてくれなくて、つい腰を  
動かしながらギルトーニの顔を窺ってしまう。そんな私の瞳をまっすぐ見て、にやりと笑うと  
私の指を動かすように抜き差ししはじめた。  
「んんっ、あぁ、あっ」  
「そんなにいいか」  
くっと笑いながら見下ろすコイツのことは心底ムカつく。でも今の私には、この衝動に流される方が重要だった。  
中はびくびくしていて、普段するよりずっと濡れていて、気持ちが高ぶっていることが嫌でもわかる。  
すでに自分から指を動かしていて、いつものように絶頂を迎えられるよう促す。もう彼の指が私の中に  
入ってないことは気付いていたけど、止められなかった。  
これじゃ私、ギルトーニをおかずに自慰してるみたいだ。  
見られていることを認識するのが恥ずかしくて目を伏せる。ギルトーニが何か言っているみたいだけど、  
今はぐちゅぐちゅという音と自分の喘ぎ声しか聞こえない。  
「は、あ……んっ、ああぁ!」  
きゅうっと締まって、ちょっとでも動かすとつられて中も吸い付くように蠢く。やっとイけた。ギルトーニに身体を  
預けて息を整える。  
ギルトーニはまた私の手を取ると口元に持っていって舐めはじめた。トロトロとした蜜の付いた指は水あめを  
付けたように光っていて、それを舐めるギルトーニの舌がなんだかとてもいやらしく感じた。  
 
ふと足に触れる熱いもの。  
 
この男、なんでもないような顔して。  
そう思うと、下腹部がずきんと痛んだ。それは不快なものじゃなくて、何かが足りなくて  
切ない、もどかしい痛みだった。  
 
その痛みのおもむくままにギルトーニの熱い塊に触れた。驚いたのか一瞬だけ  
ぴくりと反応して、でもその後は私が触りやすいようにベルトを外して身体を引いてくれた。  
私は自分からそれを出して、自然とそこに唇を寄せて、さっきギルトーニが私の指を  
舐めたのを思い出しながら同じようにして舐めた。最初はいろんなところに  
キスをして、舌で舐めあげて、そうしているうちに、なんだかコレがとても  
愛おしいもののように思えてきて夢中で舌を動かした。  
 
「………っはぁ」  
 
ギルトーニの息が乱れていることにすごく興奮した。  
ギルトーニのすべてを支配しているような気になる。  
私の頭を優しく撫でてくれることにすら欲情して、何もしていないのにまた密が溢れて  
太腿をつたっているのがわかる。ギルトーニを咥えて頭ごと動かしながら吸うと  
じゅぷじゅぷという音が聞こえる。口の端から零れる涎と、彼から出る液体で顔が  
べたべたするけど気にならなかった。  
 
「モニカ」  
 
コイツもこういう時はただの男なんだ、なんて思っていると少し急いたように  
名前を呼ばれた。いつもだったらコイツに対してこんなに素直に従うわけは  
ないのにゆっくりと顔を上げると、食らいつく勢いで口付けられた。  
呼吸も忘れるほどの長いキスをして、腰を持ち上げられる。あ、入る、と思ったと  
同時に中がいっぱいになった。  
 
「あぁぁ、入って…んっ、やぁっ」  
 
初めてだってこと、わかるだろうに、そんなこと気にする風もなくそのまま後ろに  
倒れこんで激しく腰を打ち付けられる。  
「まっ…ぁっ…待って……激し、すぎぃ…」  
たぶん無視されるだろうと思っていたけど、この男、何を思ったのか本当に  
動きが止まった。  
あんなに激しく揺さぶられていたのに、急に止まるものだから身体がついていけなくて、  
中が物足りなさそうにきゅうきゅうと締め付ける。ギルトーニが確かに私の中に  
あることがわかって余計に下半身が疼いた。  
 
「………はっ……モニカ姫様は、ゆっくりと、されるのがお好みで」  
言うその声は掠れていて、くらくらするほど色っぽかった。  
 
ギルトーニは私の膝を持って身体を折りたたむようにして、今度は  
浅く沈めたり急に深くしたり、本当にゆっくりと突いてきた。  
「違っ、そういう、ことじゃ……」  
ゆっくり突いているせいで出たり入ったりするところがはっきりと見えてしまう。  
恥ずかしいはずなのに目が離せない。  
 
「自分が、犯されているところを見て、興奮しているのですか、姫?」  
ギルトーニが耳元で囁く。息が荒くなるのを必死で耐えているように吐息まじりに。  
「いい、みたいだな。随分と締め付けられる」  
耳が火傷したみたいに熱い。耳だけじゃなく、五感のすべてでギルトーニを  
感じて身体中が燃えているようだ。  
相変わらず腰を軽く揺するようにしか動いてくれないギルトーニに焦れて、  
自分から身体を起こして逆に押し倒してしまった。そして一番いいところに  
あたるよう擦り付けて、あとはもうただギルトーニの上でバウンドするだけ。  
気持ちよくて、どうしたらもっとよくなれるかしか頭になかった。  
ギルトーニはさっきまでの余裕がなくなったのか、始めは素直に押し倒されて  
私のやりたいようにさせていたけど、今は下からリズムに合わせて突き上げてくる。  
 
「ね…ぇっ……も、ぅんっ、おねが…っ」  
なんだかんだで私初めてだから、気持ちいいんだけど、なかなか自分で  
いいところをつけない。飢餓感にも似た欲望が早くイキたいと望んでいるのに  
イケなくて、とうとう強請ってしまった。  
 
ギルトーニは向かい合うように半身を起き上がらせた。自分が情けなくて、  
気持ちよくて、もっと欲しくて、彼の身体に縋った。  
「おね、がぃ……」  
「……何を?」  
意地の悪いことを聞く間にも、指を這わせて繋がってるところの上にある芽をこねてくる。  
「はやく…ね……もぉ、や……イカせて……おねが」  
言い切る前に唇を塞がれて、一度強く突き上げられた。声を上げようにも口が  
塞がれているから出すに出せなくて、溺れるような心地がした。もっと今のを  
してほしくて抱きしめる力を強くした。また身体を倒されて激しく突かれた。  
今度はもう待ってほしいとは思わなかった。  
 
「あっ、あぁっ、いぃよぉ!ギルト……ニぃ、」  
涙が溢れてきて、それをギルトーニが舐め取っている。彼に触れている全部が  
気持ちよかった。  
「い…はっぁあ、も……だめぇ…ああっ」  
もうイク、と思った瞬間、今までで一番深く彼が入ってきて何かが私の中に  
広がるのがわかった。  
 
 
 
少しして冷静になって考える。  
本当に私、何していたんだろう。しかも仇であるギルトーニと。とてもいやらしいこと、  
いろいろと口走っていたような気もするし、していたかもしれない。思い返そうとして  
みたけど、どんどん恥ずかしくなってやめた。  
あと、もうひとつ気になることが。  
初めてのときって痛いのかと思っていたけど、痛くはなかった。と、言うより、  
気持ちよかった。これって、ひとりでしすぎたってこと?  
 
 
【おしまい】  
 
 

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