ダーククロニクル  

「……モニカ────────────っ!!!!!!!!!!!!!!」  

 

─ガンドール火山。  
飛空軍艦デスアークに乗ったまま、火山口に落ちたモニカとギルトーニ。  

激しい戦いの末、スキをつかれ気絶させられたモニカだったか、  
落ちた衝撃により目が覚めた。  

ゴゴゴゴゴゴ…  コポコポコポ  

「う゛……。あいたたた〜………。ゲホッ、何………?落ちたの……?」  
辺りを見回すと、どうやら深い穴の中に落ちたように感じた。  
横の方には、マグマがコポコポと沸騰している。  
「あつい…。火山口に落ちたのね。…ユリスはどこかし………ら!?ああッ!?」  

ふと見ると、自分はなんとギルトーニの上に居る事に気付いたモニカ。  
「ゲ─────ッ!!!!!!!」   ズザザッ  
大声で叫んで飛び逃げる。  
…しかしギルトーニに反応は無い。モニカはおそるおそる近付く。  

「……ギルトーニ………?」  

ひとつも動かず目をつぶっているギルトーニ。気絶しているようだ。  
「クッションにしちゃったかしら……?……ま、いいけど こんな奴!!  
 ちょうどいいわ、とどめでも刺しちゃおうかしら…!!」  
そう言って剣を振り上げても 何の反応も無いギルトーニを見て、モニカはため息をつく。  

「はぁ…。ユリスまだかなぁ。ライドポットならすぐ下りて来れると思うのに…。  
 寄り道してたら、シメてやる!!!」  
ブツブツ言いながら、壊れたデスアークの破片に座るモニカ。  

「ッ!……いたた…ギルトーニのクソ野郎に殴られた所が…。胃に来たわ…。」  
ビキニを着ていたモニカは、むきだしの腹をさする。  
「私としたことが、スキをつかれてしまったわ。船が落ちなければ、こんな事には…。  
 …一歩間違えば、殺されていたわね……。……………………。」  
独り言を言いながら、何かを考えるモニカ。  
「そういえば、コイツ、なぜ私を殺さなかったのかしら…?剣は持っていたのに、  
 刃を刺されなかったわ、私…。魔法も使われなかったし…。」  
ゆっくりと、ギルトーニの方をむくモニカ。  
「…きっと…何か企んでいるのね。フン、ずっと気絶してろ、バーーカ!」  
ゴゴ……ゴゴゴッ  
その時、いきなり地面が揺れはじめた。  

「なっ、何!?地震………!?」  
ボコ…ッボコボコッ  
周りのマグマの沸騰も、激しくなっているようだ。  
「まさか………噴火!?今の衝撃で……!?!?こ、ここに居たら危険だわ!!……はっ…。」  
モニカは、ギルトーニの方を見る。  
「…………ッ!!!こういう場合は、普通は助けるわよね……!!!」  
くやしそうにそう言うとモニカは、ギルトーニに駆け寄り、体をゆする。  
「ちょっと……!!ギルトーニ!!ここに居たら溶けるわよってば!!!」  
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……………  
「……う゛……ぐ………ぐふっ!!」 ドロ…ッ  
後ろひじを付いて起き上がったギルトーニは、そのまま血を吐いて片手で口をおさえた。  
「ちょっと……、起きれるの……!?」  
ゴゴゴゴゴゴ…  
「……ハァ、ハァ……?っぐ、ゲホッ、何だ……?」  
ゴゴゴゴゴゴ…  
苦しそうに周りを見回すギルトーニ。体は半分しか起こせないようである。  
「とりあえず、水よ!!早く起きて逃げないと、おそらく噴火するわ…!」  
「うぐ……っ!」ビチャッ  
モニカは急いでギルトーニの口に『おいしい水』を流し込む。  
半分くらいこぼれていたが、一応全部飲ませると、空ボトルを地面に置き、立ち上がるモニカ。  

「ああ、もう……!!どこに逃げたらいいの?!ユリス、早く来て……!!」  
そう言いながらモニカは、上を見上げて立っている。  

血が水で洗われ、頭がはっきりしてきたギルトーニは、半身を起こす。  
「何を…訳の分からん事をしているのだ、モニカ=レイブラント……?」  
頭を押さえながら ゆっくりと立ち上がるギルトーニ。  
モニカはそのすぐそばに立って居た。  
立ち上がったギルトーニから少し離れるモニカ。  
「あんたは だまってて!!私はユリスを待ってるんだからね!あんたも、死にたくなきゃ  
 くそグリフォンの所にでも逃げなさいよね!…………はッ!?」ゴゴゴゴゴゴッ  

 人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人  
<ドガガガガッドゴ────ッ!!!!!ガランドガッ!!!!> ブワッ  
 VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVV  

いきなり、墜落したデスアークのあった地面が爆発した!  
「きゃあああああああああああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!???」  
岩や火の玉、デスアークの破片が落ちてくる。  
「…………ぎ………っ………っ!??!」  
ドガガガガガッガラッガラガラッ……ドサァ……ッ  

「………っぐ……っ!!」 ズザザッ  

モニカは、自分の身に何が起こったのか、理解出来なかった。  
「ハァ、ハァ、どうやら水蒸気爆発のようだ……。」  
モニカは仰向けに寝ていて、目の前には、デスアークのある足元の方向を向いているギルトーニ。  

そう、ギルトーニは降り注ぐ岩や火から、モニカを守っているのだった──。  
「………ぐ…っ!ぐふっ!!ゲホッ!!」 ビチャビチャッ  
また咳き込んで、血を吐くギルトーニ。モニカの胸元に血が降り注ぐ。  
「……も…っ、もういいわよギルトーニ……!!あんた、このままじゃ……!!」  
モニカがそんな言葉を泣きそうになって言うので、ギルトーニは思わずおかしくなって笑う。  
「……フ……ックックック……。このままじゃ…死ぬな。だがお前は…その方がいいのではないか?」  
振る岩も 小さくなって来た。しかし、揺れはおさまらない。  
「あ、あんたは……!私が殺すからよ!!!こんな所でくたばられたら…!」  

強い言葉の割に、瞳をうるうるに濡らした泣き顔のモニカを見て、ギルトーニは  
いささか切なくなった。  
気が付くと、岩の雨はおさまっていて、火の粉が振っていた。 

ギルトーニは上を見上げると、モニカの上からよけて座る。  
すぐにモニカは起き上がった。  
「…あんた、回復アイテムも持ってないの?!待ってて!何かあったはず…。」  
そう言うと、小さなバッグを漁りはじめるモニカ。  
「……………。」  
ギルトーニは横目でそのモニカを見ている。  
「ああん、もう!チキンとかチーズは全部ライドポットにつんであるんだったわ!  
 パンとかしかないよ〜…。この際仕方ないわね!さあ早く食べるのよ!」  
「…ッ?!」  
モニカは、また無理やりギルトーニの口にパンや水を押し込む。  
そのお陰か、ギルトーニの体力は半分くらい戻っていた。  
モニカは、食わせるとまた立ち上がり、火山道をキョロキョロしている。  
どうやらユリスを待っているようだ。  
マグマの沸騰のせいか、この場所の温度が上がって来た。  
ギルトーニは、片足立てて座ったまま、下を向いて、水の入った入れ物を持っている。  
それをしりめにモニカが言う。  
「こりゃもうヤバイじゃない…。ルナ研に頼んで、空を飛ぶ乗り物作ってもらったほうが  
 いいわよユリス───!!!!!って、聞こえないかぁ……。」  
がっくりと肩をおとすモニカ。  

ふと横を見ると、ギルトーニが立ち上がっていた。  
デスアークのかけらを見ているようだ。  
ゴゴゴゴゴゴゴゴ  
「!やだッ、またこの揺れ…ッ?!」  
さっきの爆発が起きる前の感覚と同じような、揺れと音がしてきた。  
ギルトーニは地面を見ながらこう言う。  
「今度こそ噴火するぞ。」  
「ッえーー!?!?!?そ、そんな落ち着いて言われても!!」 あたふたあたふた  

ビシッ!!ビシビシ…!メリッ!  
地割れが起きて来た。地の裂け目が、光っている……。マグマだ。  
「き…っきゃあああ!!もうダメ…ッ!爆発する!!!…………う゛っ?!」 バサッ  

 人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人  
<ドガ──────────────────────ン!!!>  
 VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVV  

一瞬、物凄い光と熱に包まれたと思ったら、いきなり暗くなり、冷たくなった。  

「………っ?」  
うつぶせていたモニカは、頭を上げ見回すが、辺りは真っ暗だった。  
ふと気付くと、背中の上に何かが置いてある。  
「まさか……ギルトーニ…!?」  
手探りで探ってみると、ギルトーニの顔らしき場所に触れたモニカ。  
ギルトーニの顔は、少し冷たかった。  
「……ぐっ……ゲホッ、ゲホッ……。」…ベチャッ  
暗い中、ギルトーニの咳と、血の落ちる音が聞こえた。  
真横、しかもすごく近くから。  
「ギルトーニ…?!」  
また手探りでギルトーニの背中を探し、何を思ったか背中をさするモニカ。  

しばらくそうしていると、目が慣れて来た。  
どうやら、夜の海のようだが、少し様子がおかしい。  
波も無ければ、風も雲も月も無い、広大な湖のような所だった。  
空は藍色で、真っ黒では無かった。  
「海……?ペニーティオ?…にしては…静かすぎね…。」  
落ち着くまでなでていたギルトーニの背から手を離したモニカは、立って水の方へ歩いていく。  
「何か…変。何もかもが、止まっているような…。ここは一体、どこ…?」  

するとギルトーニが口を開く。  
「……っく…、しくじった…。ペニーティオへ行くつもりが…。」  
起き上がり、ガケの岩へ背もたれるギルトーニ。  
「ギルトーニ…あんたがここへ…?!なんで私まで…助けたのよ!?」  
ギルトーニは下を向いたまま答える。  
「何故…か…。お前が私を…助けたのでな。」  
「!さっ、先に助けたのはアンタの方じゃない!だいたい何であの時、私を殺さなかったのよ!」  
「………フッ…。」  
必死になっているモニカを見て笑うギルトーニ。少し汗をかいていて、苦しそうだ。  
しかし落ち着いたいつもの声で言う。  
「ともあれ、溶岩からは逃れられた訳だ。しかしここは、時限のはざま──……。」  
それを聞いたモニカはびっくりして叫ぶ。  
「時限のはざま……!?だからモノというモノが止まっているように見えるのね!」  
「…ここが時限のどの辺りだかを解読するまで、時が必要……っ、ぐふ…ッ!」…ビチャッ  
また、大量の血を吐くギルトーニ。  
「!あんた…一体どこをケガしてるの?さっきから血ばっかり吐いて…。」  
そういうとモニカが近寄って来た。  
とたんに、ギルトーニは地面に倒れた。 ドサ……ッ  
「………打ちどころが………悪かったようだ……。」  
「!!ギルトーニッ!?」  

────数分後─────  
モニカは、汚れた靴などを水で洗っていた。  
その横にはギルトーニが寝かされていた。  
「まったくもう、『打ちどころが悪い』っていうから、頭の大切な部分打って危ないのかな、  
 と思ったら、単なる貧血なんだもの…。心配してソンした。」  
ギルトーニは、胃か食道を切ったらしく、そのせいで腹に血がたまり吐いていたのだ。  
それで貧血になって気を失ったのだった。  
「水やパンがいけなかったのね…。悪い事しちゃった…っううん、こんな奴、  
 ちょっとくらい痛い目にあったって構わないわ!」  
そう言いながら、今度はビキニの上(胸の)を取り、洗うモニカ。  
さき程、ギルトーニの血が付着したからだ。  
「ユリス無事だったかなぁ…。早くあの場所に戻らないと…。」 バシャバシャ  

すると、いきなり後ろから声がした。  
「…この空間に居る場合、どの世界の時間も止まっている。」  
「……ッギャーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」  
胸を押さえて叫ぶモニカ。  
首だけ振り向くと、ギルトーニはまた岩に背もたれて座っていた。  
「ちょ、ちょっと、あっち向いててよ、バカ!!」  
「…………はぁ。」  
あきれ顔でため息をつくと、顔を横に向け腕にふせたギルトーニ。  
それを見るとモニカは、いちもくさんにビキニを付けた。  
「ふぅ…ビキニにしたのがまずかったわ。ワンピースにしときゃよかった…。」ブツブツ  
そう言いながら、髪を洗っているモニカ。  
すると後ろに居るギルトーニがこう言った。  
「……敵に背を向けるとは、凄い度胸だな。」  

「………!………はッ!!」 ズザザァッ!!  
一気に戦闘体制に入ったモニカだが、振り向いた先には、『敵』は居なかった。  
ただ、力が抜けたようにガケに背もたれて座っているギルトーニが居た。  
モニカはいったん、剣をしまう。 …カチャン  
「……貧血でぶっ倒れたヤツがよく言うわね。なんなら、今ここで殺したっていいのよ!!」  
 シャキン!  
細めの剣、シャムシールをギルトーニの首もとへと当てるモニカ。  
しかしギルトーニは、一つも顔色を変えず、そのままモニカの足下を見ている。  
「………はぁっ。…やっぱ頭打ったんじゃないの?!どうでもいいけど、いつ戻れるのよ!」  
 ザクッ!  
モニカは勢い良くシャムシールを地面に刺し、その横にドカッと座った。  
ギルトーニが口を開く。  
「……ペニーティオである事は確かだな…。しかし、いつの時代だかさっぱりだ。」  
うっすらと、ギルトーニの銀の髪を青い瞳が見える。さっきよりも、はっきりしていた。  
「あら…?」  
その事を不思議に思ったモニカは、空を見る。  
さっきは見えなかった、星が見えて来た。 しかし、月は無かった。  

「………どうした。」  
ギルトーニが、モニカに問う。  
「星よ……。さっきは見えなかったのに。」  
「目が慣れたのだろう…。この世界は止まっているだけだからな。」  
ギルトーニは、モニカが近くに居るときは目を合わせようとしなかった。  
話しも、そっぽを向きながら話していた。  
モニカの方は、しっかりと相手を見て話していた。  
「…………。あと、どれくらいかかるのよ。」  
「…分からん…。ちょっと、周りを調べて来る。」  
そういうとギルトーニは立ち上がった。  
「!え…?!あんた、大丈夫なの?!」  
後ろから、モニカの心配そうな声が聞こえたので、ギルトーニは立ち止まる。  
「人の心配より、まず自分の心配をしたらどうだ。」  
そう言いながらギルトーニは、自分の服の砂をはたいている。  
「そ、そういう訳じゃないわよ!あんたが死んだら、ここから  
 帰れなくなっちゃうからよ!あんたの心配ですって?うぬぼれないで!」  
「……フッ、そうだったな。」 …ジャリッザッザッ…  
スタスタと歩いて行ってしまうギルトーニ。  
「ま、待ってよ!私も行く!!ひ、一人が怖いからとかじゃないけどっ!」 ザッザッザッ…  
その後を、モニカも走って追い掛けた。  

パシャン パシャンパシャン…  

ギルトーニとモニカの二人は、海岸沿いに浜辺を歩いていた。  
モニカが、周りを見渡しながらこう言った。  
「ここの洞窟、こんなに狭かったのね…。」  
ユリスの時代のペニーティオで見た海岸の洞窟はとても広かったが、この世界のペニーティオは狭い。  
「洞窟というものは、長い年月をかけて波の水圧で岩が削られたものだからな。  
 …この世界は、相当な昔だという事が分かる。」  
前を歩くギルトーニがそう言った。  
「どのくらい昔かしら……。…………ッ!?」  
その時、いきなりギルトーニの足が止まった。モニカも足を止める。  
「なっ、何よイキナリ止まったりして…びっくりしたじゃない!」  
「───見ろ。シーグラだ。」  
「ええっ!?」  
モニカは、ギルトーニが指差す方向を、勢いよく見た。  
そこには、大中小様々な大きさのシーグラの群れがあった。その時間も止まっている。  
モニカは走って近付いていった。  
「ほんと…!シーグラだわ!動かないけど………うわ、固っ…!」  
その後ろからギルトーニが歩いて来た。  
「水には触れられるのに、生物は固まったままか…。おかしな世界だ。」  
ため息をつきながら、ギルトーニがそう言う。  
しかしモニカは、固まっているシーグラをペタペタと触りながらこう言う。  
「そんな事より、シーグラってかなり昔から生息していたのね…!凄い発見だわ!」  
声を張り上げて、嬉しそうなモニカ。  
そんなモニカを見て、ギルトーニは片方の口角を上げて音も無く笑ったが、モニカには見えていなかった。  

するとモニカが振り向く。  
「それで、まだ時代の特定は出来ないの?!」  
いつの間にかモニカは、ギルトーニのすぐ近くまで寄るようになっていた。  
「………。」  
それに気付いたギルトーニが、モニカから離れようと身体を横に向けた…  その時。  

 人人人人人  
<シュバッ!>  
 VVVVV  

  「ッ?!」  
「キャア…………ッ!??!」 ズザザザザッ  
いきなり、モニカの身体が大きくふっとんだ。  

シュタッシュタッシュタシュタッ ザザザザ……ッ  
「何だ……ッ!?」  

モニカを吹き飛ばしたのは、黒い何かだった。  
すばやい動きで、ガケの上から海までの間をぴょんぴょんと飛び跳ねまわっている。  
「いたたた……何なの!?」  

シュタッシュタッ…ザザザッ  

黒い影は、起き上がったモニカの方へ向かっている。  
それを見たギルトーニは叫ぶ。  
「!モニカ…っ!!」  

ザザザザズドガッ!!!!!!!!  

「げふ………っ!!!!!!!」  
影は、モニカの上に飛び下りた。その圧力でモニカの体が一瞬Vの字になると、  
次にモニカの体が黒い影で覆われる。  
「く………っ!」  
シュイイイイイイイイイン  ボスッ!!!   …ザザザッ  
ギルトーニは、とっさに魔法で、黒い影を攻撃する。  
その衝撃で、影はモニカから離れ、また空中へ飛び上がった。  
ジュイイイイイイイイン ボスッ!! シュウウウウウ…  
そのまま影に攻撃していたギルトーニは、ある事に気付く。  
横では、モニカがヨロヨロと立ち上がった。  
「く…っ、げほっげほっ、この怪物……!くたばれっ!!」  
シュイイイイイイイン ボスッ!! シュウウウウ…  
魔法で影を攻撃しているモニカ。  
しかしギルトーニがモニカに叫ぶ。  
「!よせ、よく見ろ…!魔法は『吸収』されている…!」  

モニカは咳き込みながら叫ぶ。  
「げほっ、そんな……!!」  
「大きな反撃を受けぬうちに、ひとまず退散だ。」 ザッ  
「あ…!」 ガクン ズザッ  
ギルトーニを追おうとしたモニカだったが、どうやらうまく歩けずに転んでしまった。  
「…!足をつぶされたか?」  
「うっ、ううん、足はあるわ…!でも、何か力が入らない…!」  

「ゲッゲッゲッゲッゲッゲ……」  
バカにしたような怪物の笑い声が、少し遠くから聞こえる。  
「……仲間でも呼ぶのか……?!ちっ…。」 ザッ…シュルッ…  
ギルトーニはモニカを抱え上げると、ジャンプしてガケの上の森の中へ入って行く。  
「ちょ……っ!?」  
モニカはびっくりしているが、ギルトーニは落ち着いた様子でこう言う。  
「奴は時限の挟間に生息する怪物だ…。わたしが以前見たのと形は違うが、あの種は、おそらく  
 …音が聞こえない。山の中に擬態すれば、やりすごせるはずだ…。」  
しかしモニカにとっては、怪物の事より、ギルトーニに抱えられている事の方が大問題だった。  
パニックで、モニカは何も言えなかった。  

 
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