とある一軒家の部屋、リビングの中――。  
 
 小太りした醜悪な男が椅子にふんぞり返り、腕組みしながら少女を股下に従わせていた。黒いレースで髪を束ね、セーラー服をまとった女子学生、時槻雪乃である。  
 男はにやつき顔で見下ろす。  
 彼は雪乃にフェラチオをさせていたのだ。  
 ベルトとズボンのチャックを下ろさせ、一物をつまみ出してもらい、そして咥えてもらっている。手で陰茎を握らせ、絶妙な舌使いで研磨させるのがとても心地良い。  
「いいねえ、雪乃ちゃん。とても気持ちいいよ」  
 
 ――ギロッ  
 
 雪乃は口淫をしながらも、上目遣いで睨んできた。  
 当然だろう、男は強引に卑猥な行為をさせている。  
 自ら<人形師>と名づけた断章の力によって、身体の動きを指先一本まで操作している。念じることによって、力をかけた相手は思い描いた通りの動作を取るのだ。  
 だから雪乃ともあろうものが醜悪な男の股につき、肉棒をしゃぶり頭を前後させていた。  
 それを見下ろし快楽に浸るのは、男にとてつもない優越感を与えている。  
 雪乃は始終その目を鋭くして、切れ味さえありそうなほどの視線を飛ばすせめてもの反撃を続けていた。  
 しかし、肉体を意のままにしている以上は攻撃される心配はなく、雪乃も抵抗できない悔しさに苛まれている。それでいてフェラチオに励んでいるのが、絶好の興奮材料だった。  
「出すから飲んでね」  
 言葉の意味を理解してのことだろう。雪乃は鋭く視線を細めつつ、しかし微妙に逃げたくて仕方なさそうな表情を浮かべた。  
 そして……  
 
 ――ドピュッ、  
 
 白い液体を口内へ放出し、飲み込むようにと念じる。雪乃はごくりと喉を鳴らし、汚い男の精を胃に収める。吐き出したい気持ちもあったろうが、そんなことは男の断章が許してはいなかった。  
「美味しかったかい?」  
「――っ! ふざけてるの? そんなわけないでしょ!」  
 怒鳴り返してくるが、口元から精がとろりとこぼれている。  
 その気になれば<人形師>の力は言葉を封じることもできる。何なら好きな台詞を強制的に喋らせることさえ可能だが、男は口だけは自由にしてやっていた。反攻不可能な状態にも関わらず、常に殺意を醸し出しているところを嬲るのが面白いと考えたからだ。  
「俺は気持ち良かったよ? ほら、一回出したのにまだ勃ってる。本番にいきたいから服は全部脱いでもらおうかな」  
「誰がっ!」  
 脱いでたまるものか、とでも言いたいのだろうが、男は欲望のままに雪乃を操作する。  
 
 まずセーラー服をたくしあげ、少しずつ素肌を晒していきながら脱ぎ去っていく。スカートのジッパーに指をかけ、白いショーツを見せるように下ろしさる。下着姿で靴下を脱ぎ、背中に手を回してブラジャーを外す。  
 大事な部分が順々に見えてくるのが色っぽく、男は一層興奮した。  
「必ず殺してやる……!」  
 さすがの雪乃も、逆らえないことは悟ったのだろう。状況を嫌々受け入れはするが、きっとチャンスを見つけて逆転してやる、といったつもりなのは明白だ。  
 だが、雪乃にチャンスはない。  
 身体操作という能力を応用して、相手に禁止行為を加えることができる。「〜を禁ずる」と念じれば、相手はそれができなくなる。男は「俺に危害を加える行為を禁ずる」と念じ、刷り込んでいるので、既に反撃が来ないよう設定済みなのだ。  
 もっとも、雪乃には伝えていないので本人はそれを知らない。だからこそありもしないチャンスを虎視眈々と狙い、睨み続けてくる姿が滑稽でいい。それを犯すのがまた、とても面白いのだ。  
 ただ念じるだけ、それがトリガーとなって断章は発動する。  
 町で偶然見かけた美貌の少女を、さも相手が勝手に家まで上がりこんできたかのような形にして捕らえるのは、いともたやすいことであった。  
 雪乃の名は生徒手帳から知ったのだが、反応から察するに彼女も断章のことを知っている側の人間なのだろう。だが、欲望を満たしたいだけの男にとって、そんなことはどうでもいい。  
 全裸となった雪乃のまぶしい肢体を好きにすることこそ、男には重要なことである。腕に巻きつけられた包帯が彼女がリストカッターであることを物語っているが、傷があるのは腕だけだろう。他の全体が綺麗であれば、肉体を楽しむのに支障はない。  
「さあ、ベッドへ行こうか」  
 男は雪乃を部屋まで連れ、シーツの上に寝かしつけた。  
「せいぜい今のうちに楽しんでおくことね。アンタへの付けは必ず倍にして返す。焼き殺す」  
 倍返しされる瞬間などとっくにありえないのに、雪乃は観念したというより隙をつけ狙うつもりで押しだまったのだろう。  
 男は雪乃の裸体に覆いかぶさり、遠慮なく唇を奪う。むしゃぶって唾液の糸を引かせると、不快そうに顔を歪めた。  
「くっ、気持ち悪い……!」  
 悪態をつくのはせめてもの抵抗か。  
 男は乳房を揉み、乳首を指でこねる。秘所へ手をやり執拗に愛撫した。  
「おやおや、その気持ち悪い相手に濡れているんだねえ? 雪乃ちゃんは」  
 わざとらしくクチュクチュと水音を立てると、雪乃はより悔しげに顔を歪め、目に涙まで溜め込んだ。泣きそうになりながら、それでいて恥じらい、かつこちらを睨むのをやめない。  
「気持ちいいんだろう? ほらほら」  
 男は股間に顔を埋めてなめずった。  
「くっ……うぅっ!」  
 雪乃は人差し指を咥えて、喘ぎ声を出すまいとしている。  
「我慢しちゃってるところが感じてる証拠だよね〜」  
 わざとらしく言葉を投げつけると、キッと視線を飛ばしてくる。目に涙の溜まった、頬の赤らんだ睨み顔ほどそそろものはない。  
「じゃ、そろそろ本番いこうか」  
 男は雪乃の入り口へ亀頭を当てて、ずぶりと挿入する。破瓜の血が股から流れ、痛みに背をのけぞらせた。  
「へぇ、中々の名器じゃん」  
 デュフッ、と男は興奮しながら腰を振り、ついで胸を揉み、尻に手を差し込む。雪乃は髪を振り乱し、よがり、シーツを握って耐えていた。  
「じゃ、出すよ」  
 ドピュ、と膣内へ精を打ち込み、棒を引き抜く。愛液と精液の交じり合ったものが糸を引き、性器の貝からも白い滝がとろりと漏れ出る。  
「ハァ、ハァ……」  
 雪乃は最後まで泣くことはなく、涙目のまま堪えきったようだった。  
 さて、次は禁止設定を刷り込んでトイレでも我慢させてみようか。  
 さらなるたくらみを胸に抱き、男は卑猥なさらに笑顔を浮かべていた。  
 

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