雪乃は夢を見る。  
夢の中でのみ行われる、魔女の夜会に参加するために。  
今晩もまた、愛しい姉に身を捧げ、心に快楽の刻印を刻み込んで貰うのだ。  
屈服の十字架に縛られて、悦楽の炎に清められる自分の姿を想像しながら、安らかな表情を浮かべて雪乃は夢の中へと堕ちていった…。  
 
 
今晩は不思議な場所だった。  
辺りは薄暗く、老朽化し黒く汚れた煉瓦の壁に四方を囲まれた地下室のような場所。壁には無数の松明が括り付けられていて、特殊な薪を使っているのだろうか、甘い香りが漂う。  
これまで暑さ寒さを気にしたことはなかったが、火を見たせいか身体が妙に火照る。じんわりとした温かさが、壁の放つ圧迫感を遮って身を守っているような気がした。  
裸足の足につるつるとした感覚を覚えて、目を凝らして足元を見ると、何故かタイル張りになっている。  
ひんやりとした冷たさが心地いい。  
これならば、床に転がっても痛くはないだろう。  
 
昨晩の行為を、思い出す。  
 
何度も絶頂を繰り返し、声を上げることすら叶わない程消耗した妹の体をがっちりと掴み、無抵抗のまま口を貪る昨晩の姉を。  
そのまま、自慰の道具でも扱うかのように乱暴にペニスバンドを差し込まれ、ガクガクと激しく揺すられてはされるがままに声もなく絶頂と痙攣を繰り返す自らの姿を。  
 
その記憶だけで、股が潤み乳首が尖る。  
日中の自分では、いや昔の自分であったのなら夢の中でさえそんなことは許さなかっただろう。  
自らの変化を決定的にした、数日前の天国を幻視するほどの激しい絶頂を思い起こした。  
 
…たまらない  
 
ゴクリ、と生唾を飲み込んだ。それに至る為の凄絶な焦らしの過程で、悦楽に煮込まれる自分を思い出した途端。  
下着の中で性感が大きく膨れ上がって秘部を苛み、たまらず股間を抑えてしゃがみこんだ。  
女の子座りと呼ばれる体勢で、俯いて溢れる情欲を必死に堪える。秘部を抑える手からは生温かい液体が漏れだし、タイルの溝を伝って辺りに広がってゆく。  
頭がぼーっとする。気を抜くと、指が勝手に蠢きだしそうだ。  
 
しかし。誰もいないのに一人で勝手に始めてしまうとどうなるか、雪乃は知らない訳ではない。…前回が、正にそうだった。  
『自分で準備しておいてくれるなんて。じゃあ、好き放題しちゃっていいのね』  
と言われ、辛く恐ろしい程の快楽を打ち付けるように叩き込まれる自分の姿が、容易に想像がついた。  
いくら快楽といえど、さすがにアレは勘弁願いたい…。  
 
何か、別の事を考えなくては。  
ふと、自らの纏っている服に気が付く。  
飾りっ気のない、清楚な白いワンピース。  
普段の戦闘服とは対照的なその姿は、この空間における自分の服として相応しいような気がした。  
魔を狩る漆黒の獣となり敵を駆逐する自分と、儚げな純白の供物となって悦楽の渦に飲み込まれる自分。  
ゾクゾク、とした。被虐への期待が背筋を駆け抜ける。  
 
風乃はまだかと顔を上げた瞬間。  
「ひゃあっ!」  
つん、と指の感触。魔女の指は、下着の上からも正確ににクリトリスを捕えた。  
撒かれたガソリンに火花を飛ばすようにして、瞬く間に雪乃の中で情欲の炎が燃え上がる。  
魔女の指は、そのままグリグリとクリトリスを捏ねまわした。  
「あ、はああっ!」  
歓喜の声を上げて後ろ手をつき、身を反らして快楽を迎える雪乃。  
自然と股は開き、胸はその小ぶりな乳房を捧げるように突き出す。  
 
『変わりないわね、雪乃』  
 
妖しい魔女の呪文が、生温かい風となって耳を撫でる。  
それを合図に雪乃の中の理性は活動を止め、快楽を求める本能の炉心に火が入った。  
「ね、姉さん…っ!」  
雪乃は瞳を潤ませ頬を紅潮させた、欲情に染まりきった表情を顔に浮かべ、夜会の主を迎える。  
それを見て、満足げに微笑む風乃。  
 
『最近はすっかり素直ないい子になってくれて、嬉しいわ』  
瞳を爛々と輝かせながら、風乃は今晩の「儀式」へ取りかかる。  
『今日はいいものを持ってきたの』  
そう言うと目の前の薄闇を掴み、雪乃の目前へと突き付けた。  
先程まで何も持っていなかったはずのその手には、複雑な黒が入り混じった、鈍色に光るナイフのような長さの物。  
それを風乃は、ためらいなく雪乃の口へと突き立てる。  
「っ…!?」  
それは、黒く禍々しく輝くバイブレーターであった。  
「けほっ、けほっ」  
太くはないが妙に細長く、喉を一突きされた雪乃は堪らずせき込んで吐き出す。  
ゴト、という重量のありそうな音に、一瞬ひるむ。  
「姉さんっ!」  
文句を言ってやろうと顔を上げるが、先程まで覆いかぶさっていた筈の風乃は、既に股間へと回っていた。  
風乃は強引に、下着を剥ぐ。  
そして、息のかかる距離まで顔を近づけた。  
「ん…」  
生温かい湿った息に秘部を直接撫でられ、雪乃は無意識に熱い息を漏らす。  
次に風乃が何をするのか。期待に震える腰が、愛撫をせがんで揺れ始める。  
『ねぇ雪乃。どうして欲しい?』  
こじ開けられた太ももの間から、悪戯っぽい笑みを浮かべながら聞く風乃。  
堕ちきった雪乃には、既に拒絶の意思などとっくに灰と化してはいるのだが…何分、恥ずかしい。  
ただ愛撫を受け入れるのと、自ら積極的に求めるのでは、意外な程の差がある。  
雪乃が顔を真っ赤にして俯くと風乃は優しく微笑み、今しがた自らが剥き出しにした秘所へと口を付けた。  
「ふうっ」  
ちゅっ、と。覆うように、口に含む。  
ぴったりと張り付いた口は吸盤のように秘裂全体を吸い上げ、秘所全体に血が溜まって腫れたような熱がじんわりと広がった。  
柔らかくヌメヌメ、それでいてザラザラとした舌が、まるでレタスを食むカタツムリのように粘液を塗りたくりながら秘裂を嬲るようにじわじわとなぞる。  
「あっ…ふぁ…」  
動物が傷口を舐めるような、いたわりの籠った優しい愛撫。  
血が集まって敏感になった秘裂から、じんわりと滋養に似た温かい快楽が全身に広がっていく。  
「んっ…!」  
きもちいい。  
冷めたシチュー鍋を温めていくような、ゆっくりとじんわりとした愛撫は、身体の芯まで染みるように広がる。  
キスにも似たそれは、思慕の情さえ抱くほどに愛しい。  
だが…物足りない。  
 
もっと、激しくして欲しい。  
泣くほどに啼かせて欲しい。  
夢ごとの度重なる激しい愛撫に慣れきった身体は、もはやその程度の快楽では物足りない。  
腰は勝手に動き出し、こすりつけるように秘部を押し付けては更なる激しい愛撫をねだる。  
 
だが風乃は、嘲笑を浮かべながら口を放し、見下ろす。  
「…あっ」  
愛撫を欲張ったせいで見放されたというのか。募る切なさが堪らず、腰がくねり瞳が潤む。  
熱に溶けかけた瞳で雪乃が見上げると、そこには先程の禍々しい形状をした、黒い儀礼用の短剣を携えた魔女の姿。  
ニタリと笑って。  
一息に、突き立てる。  
 
「くあぁっ!!」  
快楽よりも痛みに近い程の強すぎる快感が、身体で最も弱い部分に深々と突き立った。  
溢れ出る淫液がつつ、とバイブを伝って風乃の手に垂れる。  
風乃はその手を、ゆっくりと動かした。  
「あっあっ!」  
先程の慈愛に満ちた表面を撫でる愛撫とは違い、身体の奥底に突き付けられる恐ろしいほどの快楽。  
こちらは本当にかき混ぜているのだが、先程までの温めるようなものとは比べ物にならない。  
外側から染みていくような愛撫に対し、こちらは直接内側から白く塗りつぶすような、快楽の暴風。  
ただ混ぜられているだけでこれなのだ、もしこの悪魔が目覚めたら、自分はどうなってしまうのだろう。  
恐怖と期待に、胸が震える。  
ふと、風乃と目が合った。あざ笑うかのような瞳が、被虐心を掻き立てる。  
 
『ふふっ』  
 
微かに口元が歪み、淫魔のような淫蕩な表情を浮かべる。  
雪乃の秘部に目をやると、まるで視線で愛撫するかのような熱い視線を送った。  
肌で感じられる程の強い視線。その視線に対してすら、すっかり出来上がった雪乃の秘部は感覚を尖らせ快楽を求める。  
「はぁーっ、はぁーっ」  
自然と、息が荒くなっていく。  
自らの浅ましさが、今は堪らなく愛おしい。  
 
『いくわよ?』  
風乃の親指が、柄を撫でた。  
それを合図に、淫虐のナイフは鼓動しだす。  
女をえぐり、犯し、堕として喰らう、悪魔の指先が、淫液を求めて蠢き始める。  
 
 ヴィーン ヴィーン  
 
「あーっ!あーっ!」  
差し入れられた凶悪な淫具の、自らの中心で発するその機械的な音が、雪乃にはまるで悪魔の嘲笑のように聞こえた。  
…身体の中で、暴風雨が巻き起こる。  
意識と視界を真っ白に染め上げられ、闇雲に身体をくねらせ快楽に耐える事。それが今の雪乃に許された唯一の抵抗。  
「くはぁっ!」  
最奥まで届く漆黒の先端は、容赦なく子宮口をグリグリと圧迫し、膣を破壊せんとするほど激しくのたうち蹂躙する。  
秘所は絶え間なく淫液を溢れさせ、腰は更なる快楽を求めて、一段と激しくくねった。  
乳首は快楽を求めて硬く尖り、手を呼びよせては揉み潰させる。  
「ああっ!ああっ!ああーっ!」  
暴力的な快楽の暴風に至福の声を上げる雪乃。  
風乃は、何かを閃いたような表情でそんな雪乃を見下ろし。  
 
暴れる下腹部を強く抑えた。  
「う、あはぁっ!」  
そして、短剣で秘裂の最深部を激しく抉り始める。  
 
「ああああーーーーーっ!!」  
思考のすべてが吹き飛んだ。  
脳のブレーカーが弾け飛び、全ての思考が強制終了させられる。  
自らの胸をまさぐる手は更に荒々しく動き、乳首を摘んだ指はもぎ取れるかというほどににきつく潰して捻り上げる。  
快楽爆の心地たる股間には、もはや感覚は残っていなかった。  
ただ、凶暴な快楽を伴う異物感だけが「犯されている」事を認識させる。  
 
 
最後に一瞬だけ、下半身の感覚が戻り。  
「っ―――――!!」  
声すら出ない深い絶頂の中で。  
 
雪乃の中の、何かが砕けた。  
 
 
「あぁん、姉様…」  
いつの間に敷かれたか、真珠のように輝くシルクのベッドの上で、二つの影が絡み合う。  
風乃と雪乃だ。  
何故か胸を露出した、いやらしい黒のボンテージに着替えている雪乃。  
下に履いた、ヌメヌメと光るエナメルの下着には、妖しいチャック。  
いつ何時でも下半身を差し出す事ができる、という意思表示なのだろう。なにも付けていないのに、下着の脇からは淫水が滴る。  
風乃は、胸を露出するタイプの赤いボンテージ。  
腰には、男を知らぬ生娘には酷であろう、というほどの巨大なペニスバンドがそそり立つ。  
虚ろな瞳で雪乃は風乃にしなだれかかりながら、まるで本物のペニスであるかのように、風乃の義茎を撫でさすり、求める。  
その眼はもはやなにも映してはいない。泡渦も復讐も忘れ、何時しか思慕の情を抱くようになった姉と、時間の経たない閉鎖空間で永遠に、淫らな宴を続けるのだろう。  
 
『やっと手に入れたわ、愛しい妹』  
「あぁん」  
尖る乳首を摘んでやりながら、誰も聞く事の無くなった空間で風乃は独白のように語る。  
『夢は醒めれば終わり。でも、醒めなければ終らないわ』  
股間に手を回し、粘液でしとどに濡れたチャックを開いて、露出した粘液の出所に巨大な義茎の先端を当てた。  
「ね、姉様ぁっ!すきっ!すきっ!」  
それだけで参ってしまったのか、背を反らして為すがままになる雪乃。  
風乃は苦笑しながら、ぐしょぐしょの秘裂に義茎を押し当て、腰を引く。  
『夢は醒めれば何にもない。でも醒めなければ、ここには何でもあるの。…素敵でしょう?逃がさないわ』  
その眼が一瞬ギラリと光り、偽物の筈の巨根が脈を打ち始めた。  
 
『ずっと一緒に、仲良くしましょうね…っ』  
 
そして。  
ズドン、という音が聞こえそうな程強く、一気に自らの男根を突き入れた。  
 
「あああ―――っ!!」  
『くうっ!!』  
 
よく調教された雪乃は抵抗なく受け止め、その衝撃を全て快楽へ変換して堪能する。  
後はもう、本能のままに押し倒して上等な獲物を淫らに貪るのみ。  
 
 
生贄に覆いかぶさり、淫蕩な顔を浮かべながら実の妹の秘裂を穿ち、魂を穢す風乃の姿はまさに淫魔。  
 
薄明かりに照らされながら、淫液に塗れててらてらといやらしく身体を光らせながら自らの胸を荒々しく揉みしだき。  
自らの中心を姉にゆだねながら堕落による快楽の至福に顔を蕩けさせる雪乃も、哀れな犠牲者と言うには余りにも淫蕩過ぎた。  
 
それはまさに、二つの淫魔の交合。  
上級の淫魔が下級の淫魔を弄ぶ、邪悪で淫らな宴に他ならない。  
 
 
「ああっ、ああーっ!あはあ――――ッ!!」  
『んっ、ふ、う、はっ!くっ…んっ!!』  
 
 
雪乃の目じりに浮かぶ涙は、悦楽か悲哀か。  
 
 
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「ストレスでも溜まってるのかな…」  
うららかな朝の陽ざしの中。  
布団の中の蒼衣は、一人思い悩んだ。  
 

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