「これが最後の目撃地点だよね、雪乃さん。」  
「地図に書いてあるでしょ。無駄口叩くようなら殺すわよ。」  
「はは…ごめんごめん。」  
夕焼けが眩しい放課後、、僕達は神狩屋さんからとある事件の調査を頼まれて歩きなれない路地を歩いていた。  
ここ数週間で、人間が動物のように四つん這いになり魚屋を襲う、猫と喧嘩するなど、  
断章の影響としか考えられない事件が起きていたのだ。  
普段の命の架かった泡禍と比べると微笑ましい程度の物であったが、一般人の目を引きやすい特徴を神狩屋が心配して、  
颯姫の<食害>での事後処理と平行して蒼衣たちに原因の究明と解決を託していたのだ。  
 
「ここでサラリーマンが突然喉をゴロゴロ鳴らして同僚に抱きついた…らしいよ?」  
「馬鹿馬鹿しい泡禍ね。」  
「うん。でも、”普通の生活”に大きく関わるから、見過ごせないよ。」  
「………。」  
雪乃はこんな時にも”普通”を守ろうとする蒼衣の精神は果たして普通なのか、とちらりと考えた。  
 
「猫が関係してる悪夢なんだろうけど、今回のは規模が小さくて童話の形を取っていない可能性が高いらしいんだ。」  
「…じゃあ白野君では役に立たないじゃない。」  
「う。だからって訳じゃないけど、その分知恵を絞ってきたんだよ。ほら、あそこの廃工場。」  
現場に×印を付けた地図、その歪な軌跡の中央にある廃工場を指差して言う。  
「あそこなら猫のねぐらにちょうどいいんじゃないかな?」  
雪乃はあからさまに嫌な顔をして言った。  
「私にあそこの野良猫を片端から丸焼きにしろっていいたいのかしら。」  
蒼衣は慌ててかぶりをふり、  
「違う違う、ほら、これで捕まえるんだ」と言い、鞄から首輪とリードを取り出した。  
「白野くんってやっぱり馬鹿なのかしら…。」『浮かんだわ』  
雪乃がため息をつくと同時にぞくりとする声が響いた。  
『アリスは賢いわね。その廃工場の中、小さな小さな泡が浮かんでるわ。』  
「え?!」「行くわよ!」  
 
二人が廃工場に入った瞬間、目に飛び込んできたのは”光る大きな猫”だった。  
既に用意していたカッターナイフを手首に押し当て、雪乃が断章詩を口にする。  
「っ!<私の痛みよ、世…」  
【にゃーん】  
「雪乃さん、危ない!」  
猫の形をした発光体は素早く雪乃に飛び掛ってきたが、蒼衣が雪乃に体当たり  
 
してすんでのところでかわす。  
がしゃーんと派手な音を立てて二人はガラクタの山に突っ込んだ。  
「ちょっと白野君、助けるにしても…?!」  
「う…ぐぁ…っ!」  
不運な事に、蒼衣は右手の上にガラクタが崩れ、押し潰される形で起き上がれないでいた。  
顔面は激痛の為か青白く、普段は穏やかな顔も歪められている。  
思わず雪乃が駆け寄ろうとしたが、  
「だ…いじょうぶ…だか、ら・・・雪乃さんは猫を…。」  
完全に敵の事が頭から抜けていた事に内心驚きながら、素早く振り返り、視線を巡らすが、猫は居ない。  
「消えた…?」  
【にゃーん】  
「きゃっ。」  
 
激痛の中で蒼衣は何も出来ないままそれを見ていた。  
猫の形をした発光体は、上から雪乃に飛び掛ったのだ。  
「雪乃さん!!」  
猫が雪乃に飛び掛った瞬間、一瞬強いフラッシュのような発光があり、目が慣れると…そこには身を硬くした雪乃だけが居た。  
「…雪乃さん?」  
「確かにやられたと思ったのだけど…白野君、猫はどこに?」  
「フラッシュと一緒に消えたように見えたけど…イタタ。」  
「白野君?!まさか骨折してるんじゃ…?」  
 
ひとまず猫が消えたので、雪乃は蒼衣の様態を確かめようと屈んで…蒼衣の手  
 
に舌を這わせた。  
「え?ゆ、雪乃さん!?」  
「ぺろ、んちゅっぷちゅ…ぷはっ、な、何なのこれ?!」  
『私以外のモノが雪乃に憑くなんてね…』【にゃーん】  
「そんな、まさかこれって…」  
『貴方の思ってる通りよ、アリス。雪乃も今までの被害者も、猫に憑かれて操られていたのね』【にゃーん】  
風乃と蒼衣が話している間も雪乃は蒼衣の指を丹念に舐めている。  
「なんで私がこんな事っ…!レロ、ん、ん…ちゅーっ、しないといけないのよっ!!」  
 
『良かったじゃない雪乃?断章持ちじゃなかったら意識も飛んでるだろうし、喋る  
 
事もできないわよ?』【うにゃーん】  
「か、風乃さん、何か打てる手はないんですか?」  
『無理よ、だって私も雪乃もこんなモノ、燃やせないわ。たまにはこんな雪乃も可愛いんじゃなくて?』【うにゃーん】  
 
蒼衣の元に膝をついて様子を見ていたはずの雪乃の身体はいつの間にか猫のように蒼衣にじゃれ付き、愛撫は首筋に移っていた。  
「こ、こんなの冗談じゃ…っ、ちゅ…ちゅっ…」  
「雪乃さ…うくっ!」  
ゴスロリに固められた雪乃の肢体がスカートの裾が乱れるのもお構いなしに蒼衣の全身を這い回り、頬を温かい舌が撫でまわす。  
一つだけ残念なのは、雪乃と目が合う度に射殺すような視線が突き刺さってくる事だが、その温度差に蒼衣はぞくぞくするようなカタルシスを感じた。  
 
『ふーん、唇だけは避けるなんてやっぱり私の雪乃は可愛いわね。』【うにゃーん】  
「はむっ、ぴちゃ…姉さん、それ以上言ったら…!」  
蒼衣の耳を甘噛みしながら鋭い声で雪乃が恫喝する。  
『代わってくれたら私なら喜んでアリスと…』【うにゃーん】  
「んちゅ…ちゅぷ…こ、殺すわよ!」  
 
一方、されるがままの蒼衣は肩に当たる柔らかな双丘と、しきりに手に擦り付けられるふとももの感触でそれどころではない。  
『はいはい、お楽しみの邪魔はしないから怒らなくってもいいじゃない。』【うにゃーん】  
 
「……ぷはっ、何が、楽しみ…って…!(ぐぎゅ〜)」  
突然雪乃の腹の虫が鳴き、蒼衣はすんでの所で意識を取り戻す。  
「そう言えばもうご飯時だね。今から帰っても遅いし、今日はファミレスにでも行こうか、雪乃さん」  
あまりの能天気ぶりに雪乃は一瞬蒼衣の正気を疑った。  
「ハァ…ハァ…白野君…この状況が分かってそれを言ってるのかしら?」  
「今までの目撃例からはこの怪異、2,3時間しか持たないらしいし、死ぬような事もないからね。  
やりたい放題やった後は遊び疲れて昼寝して、起きたら抜けてるらしいよ?」  
『そうね、雪乃が寝たり意識がなくなったら分離しちゃう程度の弱い結合ね。』【にゃおーん】  
 
「それまでこのまま…?冗談じゃないわ!白野君、私の頭を殴るなりなんなりして意識を…」  
「無理だよ、雪乃さんを<否定>するなんて僕にはできない。」  
「くっ………(プチプチ)」  
「ちょ、ちょっと雪乃さん、何を?!」  
雪乃は険しい表情で考え込んだまま、蒼衣のワイシャツのボタンを外し、はだけさせていた。  
 
『雪乃も大胆ねぇ。』【にゃおーん】  
「え?!な、何でこんなっ…ちゅむっ。」  
困惑した声をあげた雪乃だったが、猫の意識に操られ、蒼衣の乳首に吸い付かされて反論を封じ込まれてしまった。  
「うわっ、雪乃さんっそこ…!」  
『動物は食欲には忠実ね。アリスはおっぱい出ないのに。』【にゃおーん】  
雪乃の舌が蒼衣の胸を細かくなぞり、唇で乳首に吸い付き、たまに歯で甘噛みしてくる。  
「!?ふわぁ、なんでこんな…雪乃さん、激しすぎ…」  
「ちゅーっ、ちゅーっ、んむ、ハァ…ハァ…知らないわよ、この猫が…」  
『アリスがこんなに胸で感じるなんてね。今度実体化したらやってみようかしら?』  
 
【にゃおーん】  
「ぴちゃぴちゃ、ちゅ〜っ、そんな、冗談じゃ…って、きゃっ」  
 
蒼衣も健康な男子高校生である。  
このような状況で股間が屹立してしまうのは不可抗力と言えよう。  
不幸だったのは、ガラクタの山に突っ込んだ時にズボンが切れたのと、  
雪乃と絡み合っていたせいで亀裂が大きくなり、そこからペニスが顔を出してしまっていた事だろうか。  
 
「さ、最低!何考えてるのよ白野君!!」  
「ご、ごめん雪乃さん、でもこれは生理現象で…?!」  
わき目も振らず乳首を吸っていたはずの雪乃がゆらりと身体を起こし、まじまじと蒼衣の股間を観察し始めた。  
「あんまり見られると恥ずかしいんだけど…」  
おずおずと蒼衣が声を掛けると、突然がばっと雪乃の両手が蒼衣のペニスの根元を掴んだ。  
「こ、この馬鹿猫最悪っ…!」  
蒼衣の剛直を両手で掴んだまま雪乃が引きつった顔で叫ぶ。  
「こんなのがおっぱいな訳ないじゃない…っ!」  
 
『でもミルクはでるじゃない?』【にゃおーん】  
「嫌、嫌嫌嫌嫌いやぁ!」  
 
必死に抵抗しているのか、雪乃の肩ががくがく震え、ペニスを掴む手も緩んだり、  
一瞬離れたり、しっかり握り締めたりするが、徐々に顔が近づいて行く。  
蒼衣は生きた心地がしない。  
白く美しい雪乃の手が息子を握ってきゅっきゅっと変幻自在の刺激を与えてくる上、抵抗する雪乃のせいで激しく上下にしごかれるのである。  
 
「こんなのが初めてなんて…嫌ぁ…」  
諦めが混じった声が雪乃の口から漏れた瞬間、蒼衣はその吐息をトリガーとして限界に達した。  
「…うあぁっ!(びゅくっ、どぴゅぴゅっ!)」  
自分でも驚くほどの量の精液が雪乃の顔に、手に飛び散っていく。  
「え…?こ、これ…」  
雪乃も猫もびっくりしたのか、動きが止まり、呆然と手にかかった白い粘着質の液体を見つめる。  
 
『あらあら、アリスったら元気いっぱいね。』【にゃーん】  
「ごめん、その、雪乃さんが可愛い過ぎて、雪乃さんの手が良すぎて…」  
「さ、最悪!そんな事言われたって私は…!」  
「本当にごめん、でも僕は雪乃さんがす…」  
「うるさい!それ以上喋ったら殺すわよ!」  
 
『雪乃ったら顔を真っ赤にして、可愛いわね?』【にゃおーん】  
「赤くなんか…!れろ、ぴちゃ…?!」  
射精の勢いに驚いていた猫が食欲の充足へと動き出した。  
雪乃の不意をついて白濁液に塗れた手をピチャピチャと舐め取り、再び蒼衣のまだ元気なペニスへと向かい合う。  
「に、苦い…いやっ、心の準備がまだ…んちゅ。」  
初めての精液の味に戸惑った表情のまま、雪乃はついに蒼衣のペニスに口付けしていた。  
「う…あ…、雪乃さんの口…あったかい…」  
言葉とは裏腹な雪乃の熱い奉仕に蒼衣は快楽のうめき声をあげる。  
「じゅる…んちゅっ、ちゅーっ、ぷはっ、ぴちゃ…れろ…もごもご…や、やらぁ…こんひゃこほ…」  
 
猫の意識が精液のミルクを欲し、雪乃をペニスに吸い付かせ、亀頭に接吻の雨を降らせ、時折深く咥え込んで強く吸う。  
雪乃の意識が蒼衣の性器を嫌がり、なんとか動く舌で口から追い出そうとし、裏筋を何度もなぞり、尿道口をノックする。  
発射した後で元気を失くしていたはずの蒼衣自身が、図らずも最高のチームワークを発揮した雪乃と猫の激しい奉仕により再び直立する。  
 
『我慢しなくてもいいのよ、アリス?こんなに雪乃が頑張ってるんですもの、報いてあげて?』【にゃおーん】  
「そ、そんな…って、うわぁ!雪乃さん深いよ…それ気持ちよすぎて…!」  
我慢汁を零さず飲み干そうと、猫の本能が雪乃を駆り立てる。  
「ちゅっちゅっちゅっちゅ…はむっ、ちゅるん」  
喉奥まで性器を咥え込み、じわじわと出てくるカウパーを嚥下する舌根が蒼衣にこの上ない快楽を与える。  
 
『ほらほら、雪乃があんなに美味しそうに咥えてるんだから』【にゃおーん】  
「じゅぷぷ…んぐ、んぐ、んぐ…んんん!」  
雪乃は咥えたままの体勢で、かろうじて動く視線だけを上目遣いにして、  
出したら殺すという明確な意思をのせた物騒な視線を蒼衣に送る。  
 
だが喉奥への刺激によって目尻に涙が溜まった目で、上目遣い。  
理性を最大動員していた蒼衣の頭が一瞬真っ白になり、そして…。  
「くはっ、雪乃さん!ごめんっ!!(どぴゅっ!びゅるびゅるびゅる…)」  
「んっ?!じゅるるる、ちゅーっ、ちゅーっ…ごくん。ぷはっ…嘘…。」  
 
限界に達した蒼衣が深々と剛直を頬張ったままの雪乃の喉奥に勢い良く射精すると、  
一瞬驚いた雪乃も猫の食欲に突き動かされ、粘性の高い白濁液を吸い出す。  
夢中の表情で蒼衣の息子から「ミルク」を搾り取り、射精が終わると一息に飲んでしまった。  
 
「はぁ…はぁ…雪乃さん…猫はまだ中に…?」  
欲望を吐き出して若干虚脱状態の蒼衣が雪乃に訊ねる。  
「まだ居るけれど…食欲は収まったみたい…。」  
『そうみたいねぇ、でも、この子猫ちゃん、外に遊びに行きたそうよ?』【にゃあ】  
「外ですって?!冗談じゃ…!」  
 
最初の射精で思い切り顔や服にかけられた格好で、しかも猫の振る舞いで外に出ると聞いて雪乃が顔色を変える。  
「…雪乃さん、雪乃さんの意識を失わせれば猫は抜けるんだよね?さっき方法を思いついたんだけど…」  
「この際何でもいいわ、多少の怪我は覚悟の上だから、猫が動く前にやって。」  
「え…でもこれは雪乃さんに許可してもらった方が…」  
「いいから早く!」  
「分かった、やるよ、雪乃さん。」  
蒼衣の手が雪乃の秘部をそっとなぞった。  
 
「きゃあ!ちょ、ちょっと白野君…」  
『なるほど、アリスらしいわ』【にゃあ】  
蒼衣は雪乃の意外と清楚な雰囲気のパンツの上からゆっくりとスジをなぞる。  
「うん、意識を失わせる為に雪乃さんに害を加えるのはリスクが大きい。  
だから、逆に気持ちよくなって意識を飛ばせばって、さっき自分の意識が飛んだ時思ったんだ。」  
 
猫の意識が愛撫を受け入れているのか、蒼衣に身体を完全に預けて蒼衣の華奢な胸に頬を擦りつけている。  
「だからってこんな事白野君が私にするなんて…ひゃん!」  
さっき以上に頬を赤く染めて雪乃が反論しようと口をもごもごさせる。  
「ごめん、雪乃さん、でもこれが安全で一番早い方法だと思う。僕が触る前から雪乃さんのパンツ、びっしょり…」  
「白野君、それ以上言ったら…!」  
「ごめん、なるべく早く済むように頑張るから、雪乃さんもあんまり我慢しないで…」  
そういうと蒼衣は下着の間に手を滑り込ませ、陰核を探って手を動かした。  
「あぁっ、ひゃぅん、だ、駄目、そこ…」  
手探りで、しかも利き手が瓦礫の下なので左手だけなので時間がかかるかも知れないと思っていた蒼衣は、意外に雪乃の反応がいいので一気に手を加速させる。  
「ふぁぁあ!白野君っ白野君っーーーーーーーー!」  
『あらあら、アリスったら可愛い顔して手馴れてるのね』  
一瞬雪乃の身体が硬直し、痛いほど強く抱きつき、蒼衣の名を呼びながら果てた。  
 
「ふぅ、上手く行ったかな…?雪乃さん、どうかな?」  
「はぁ…はぁ…はぁ…な、何がよ」  
「猫。無事に出て行った?」  
「あ、そ、そう、猫、ね…。…いいえ、残念ながらまだ居るみたいね。」  
『え、雪乃?』  
「姉さんは黙ってて!!意識が完全には飛ばなかったから…その、左手だけじゃ駄目みたい…」  
「まずいな…そうだ、携帯で神狩屋さんに助けを…僕のがそこに落ちてるから、連絡を…」  
ガシャン!  
「ね、猫の意識が警戒して携帯を踏ませられたわ!」  
『クスクスクスクス』  
「そんな…」  
「白野君、私を…しっかり意識を飛ばす方法、右手が使えなくてもまだあるでしょう?」  
そう言って雪乃は蒼衣の上に投げ出していた身体を起こし、蒼衣の目を見つめた。  
 
蒼衣の目に困惑、躊躇、様子見の光が浮かぶ。  
雪乃の目に恥じらい、覚悟、期待の光が浮かぶ。  
「…いいんだね?」  
「わ、私が望んでる訳じゃないけど、騎士としての覚悟だから。」  
『ぷぷー、クスクスクス。』  
蒼衣は雪乃のの腰に手を当て、自分の上に誘導する。  
「分かった。じゃあ、入れるよ…」  
蒼衣がなるべく早く終わらせようと急ぐと、雪乃が慌てた声を上げた。  
「ま、待って!!」  
「やっぱり止めようか…?」  
「そうじゃなくって…ああもう!ほら、猫がまた暴れそうなの!」  
「えっと、じゃあ…んむ?!」  
『もう、妬けちゃうわねぇ』  
雪乃が蒼衣の唇を奪ったのは一瞬だった。  
そのまま猫のように激しく、蒼衣の口腔を蹂躙する。  
「ん、んっ、ん、…」  
蒼衣もそれに応え、その後自然と二人の身体は近づき、交わって行くのだった…。  
 
 
さて、後日。  
あの日から一週間ほど経った夕方、再び二人は廃工場を訪れていた。  
「姉さんは中央の部屋で泡を感じたっていってたわ。」  
「被害はあれから止まってるし、もしかするとーーー」  
二人は妙に饒舌に事件のあらましを二人がピンチを脱した過程を巧妙に避けながら確認しつつ、工場の奥に歩みを進めた。  
 
「…これね。」  
「…予想してたけど、小さいね…。」  
奥の部屋、廃工場にしては多少綺麗な部屋で、蒼衣達は今回の潜有者を見つけた。  
ダンボールに入った子猫の死体。  
中には食べ物が入っていた痕跡もあるが、死後一週間といった所だろうか。  
「潜有者死亡で解決…ね。」  
「…うん。」  
「神狩屋さんに報告しないと。」  
「…うん。」  
「じゃあ、早く…」  
「ごめん、このままじゃ可哀想だし、僕はお墓を作ってから行くよ。雪乃さん、先に帰っても…」  
『はぁ…アリスは気が利かないわねぇ。』  
「姉さん?」  
『二人で作りなさい、キューピッドの墓をね。』  
 
 
更に後日  
「ねぇ、白野君、私、また光る猫に取り憑かれちゃったみたい。」  
 

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