壁は溶けてしまってどこまでも続いてるように錯覚させる、真っ白な四角い部屋。  
その中に詰められているのは壊れた箪笥が一つ、ベッドが一つ、割れたガラス製のテーブルが一つ、座布団が一つ、そして人間が二人。  
白野蒼衣と時槻雪乃はそこに閉じ込められていた。  
「えーと、雪乃さん?」  
 機嫌を伺うような声で声をかける蒼衣。  
「……」  
 それを含めた言葉を一切合切無視する雪乃。  
事の発端は、ちょうど二時間前――  
 
 いつものように、蒼衣は神狩屋に来ていた。  
店内には同じくいつものように来ていた雪乃、紅茶を準備する颯姫、対照的に珍しく部屋の外に出ていた夢見子、そしてその世話をする神狩屋が揃っていた。  
いつもの面子で、日常的な光景。この時に、今の状況を誰が予測できただろうか。  
しかし、悪夢は予測した。  
「ん?」  
店の陳列棚にある一冊の本がことん、と小さな音を起てて床に落ちたのを蒼衣は見た。  
落ちたのはとても古い、傷んだ本だ。  
そのことを認識するが早いか、ばららららと物凄い勢いで古本のページが捲れていく。  
めくっているのは死人のように白い腕。夢見子の断章、『グランギニョルの索引ひき』だ。  
「……」  
 その異常に気付いて、言葉を失ってそれを眺める夢見子を除いた一同。  
「大きいのが、また浮かんだわね」  
 どこからともなく、空気に陰がさしたように現れた亡霊は呟いた。  
 
 古本のタイトルは旧約聖書。  
止まったページはアダムとイヴの逸話。  
 
 
 そして現在に至る。  
「雪乃さーん」  
 蒼衣はむすっとした雪乃に諦めず語りかける。  
いい加減、しつこいくらいだった。  
「なに? 私のせいでこんなことになったとでも愚痴を言いたいの?」  
 うんざりした雪乃は棘を含めて言葉を返す。  
「いや、そうじゃなくて……」  
 反面、蒼衣は言葉を返してもらえた事実を単純に喜び、声のトーンを上げて答えた。  
「この泡禍のこと、理解できたんだ」  
「っ!」  
 ついでのように言う蒼衣。  
「なんでそういうことは早く言わないの!」  
 そんな蒼衣の危機感のなさに思わず声を荒げる雪乃。  
すると蒼衣は困ったような顔をする。  
「だって雪乃さんが聞いてくれなかったから……」  
 次いで出てきた言葉に雪乃の怒りは急激に自分に対する怒りに押さえつけられてしまった。  
「とにかく、わかったから早くここを出て被害が出る前に泡禍をなんとかしないと」  
 わかってくれた雪乃に満足した蒼衣はさも簡単そうにそんなことを言う。  
「それができないからここでじっとしていたんでしょう……っ!」  
 怒りに蒼衣の言葉にさらなる苛立ちを咥えた口調で雪乃は言う。そして自分が怒りの余り、理解力が低下していたことに気がついて、さらに後悔する。  
「大丈夫だよ、雪乃さ」  
「うるさいっ! 出る方法がわかってるならさっさと教えて」  
 宥めるような蒼衣の言葉を遮って、続きを要求する。  
「わかった。まずこの泡禍は、まさしく旧約聖書のアダムとイヴそのものだったんだ。配役は……」  
「そういうのもいいから」  
 しかし雪乃は饒舌に語り始める蒼衣の話の腰を折った。知りたいのはそんなことではない。  
「うーん、わかったよ。端的に言うね」  
 そんな雪乃に少し不満そうな蒼衣は一言で済ませた。  
「僕と子供を作ろう」  
 
「…………………………は?」  
 雪乃は思わず、口を開けて間の抜けた声を出す。  
そして言葉の意味に気がついた次の瞬間、顔を茹で上げたように真っ赤にすると、ギチギチギチギチ、とカッターの刃を取り出す。  
向ける矛先は、蒼衣。  
「ま、待って落ち着いて雪乃さん! これには意味が!」  
「二人きりになったからそういうことをしようってわけ? 白野君ってそういうことはしっかりしてる人だと思ってたのに軽蔑するわ」  
 心の距離は一気に離れて、刃との距離は急接近。  
「ちちち、違うってば! だから説明したかったんだって!」  
 迫るカッターの刃とドスの効いた雪乃の目に本気でビビった蒼衣は必死に弁解する。  
「説明? 私が白野君にこの異常な情況下で体を預けるなんてさらに異常になることが正常になる説明なんて存在するのかしら? いやしないわ」  
「反語で結論付けないでっ! 説明する、説明するから!」  
 ちょっと手が滑れば今度は蒼衣が真っ赤になりそうな距離で、蒼衣は抵抗と説明の意義を提唱し続ける。  
「じゃあ最低限に説明してちょうだい。下らないこと喋りだしたら私の腕と同じ傷が白野君の首に刻まれるわよ」  
 成分中に冗談の一切存在しない口調で言う雪乃。  
「ま、まずこの泡禍はさっきも言った通り、まさしくアダムとイヴの逸話そのものだったんだ」  
 そうして蒼衣は冷や汗だらだら状態でやっと説明を始めることができた。  
「最低限に言うとね、この部屋はエデン、僕たちの持ってきたリュックに入ってたお菓子が知恵の実、そしてこの部屋そのものと外の世界が世代なんだ。配役はもちろん、僕がアダムで雪乃さんがイヴ。  
 僕たちはもう知識の実を食べているから、この部屋の外の世代に戻ってもいいんだ。なのに出られないから、何かが足りない。つまり、知恵の実を食べて、外の現代に戻るのに、間がある。  
 そこで僕は仮定したんだ。二人からいきなり六十億に増えるのはおかしい。でもその六十億もすぐに繋がるわけじゃない。  
 この家の外にいるだろう神狩屋さんたち、さらに街、県、地方、国、こんな感じに繋がってるんだと思う。だから、間の繋がりが必要で、外の世界にあって、この世界にない繋がる、つまり人が増えるきっかけが必要なんだ。  
 だから、僕らが子供を作れば、つまりは三人目の人間を作れば外と繋がることになる」  
 この危機的状況でなんとも饒舌に喋る蒼衣に雪乃は圧倒された。  
そして一瞬遅れて、また赤くなる。  
「……本当に、そうなの?」  
 消え入るような声で雪乃は問う。  
「間違いないよ」  
 それに蒼衣はきっぱりと言う。  
「…………本当に、するの?」  
 さらにか細い声で雪乃は言う。  
「するしかないよ」  
 蒼衣はまたもやきっぱりと言う。  
「……………………わかったわ」  
 悩んで、雪乃は了承した。  
 
 蒼衣は考えた。ああ、なんて雪乃さんは可愛いのだろう、と。  
普段見せない、真っ赤に赤面した雪乃さん。普段見せない、か細い声で弱々しく聞く雪乃さん。こんな雪乃さんをもっと見たい、もっといじめたい。  
そんな黒い気持ちが蒼衣の心に浮かんでいった。  
もちろん、雪乃はそんな蒼衣に気付かない。  
 
「雪乃さん、脱がすよ……」  
 ちょうどよく、あったベッドに二人で入ると蒼衣は仰向けになった雪乃のゴスロリ服に手をかける。  
対する雪乃は覚悟を決めた表情でそれを待つ。  
「ってあれ?」  
 しかし、そこで蒼衣は自分がゴスロリ服の脱がせ方などしらないことに気がついた。  
「……」  
 雪乃の無言が蒼衣に突き刺さる。  
しかし、そこで蒼衣はアインシュタイン級の発明を思いついた。  
「このままでいいか」  
「っ!?」  
 着衣である。ゴスロリというコスプレプレイである。  
「だ、駄目よ。自分で脱ぐから」  
 だがそんなのは雪乃のゴスロリ服を着る理念に反するし、このゴスロリ服はそういう対象で見るべきものではない。  
それに、何より恥ずかしかった。  
「それこそ駄目だよ。こんなに可愛いんだから……」  
 慌てて脱ぐために起き上がろうとした雪乃に蒼衣は殺し文句を放つ。  
「こ、殺すわよ」  
 色んなものが殺されかかってる雪乃は焦った風に言う。そんな雪乃が可愛く、蒼衣は微笑んだ。  
「大丈夫、極力汚さないようにするから」  
 そう言うと、雪乃の肩を優しく抱いて、押し倒す。  
なんだかんだ言っても、男子と女子。腕力には逆らえないのである、と雪乃は自分で結論付けた。  
蒼衣にとって、抵抗はほとんどなかったのだが。  
「雪乃さんの胸、可愛いね」  
 小振りな雪乃の胸を服の上から揉みしだく。  
「大きくなくて悪かったわね」  
 赤面しながら、言葉は抵抗の色を見せる雪乃。  
「僕は、雪乃さんの胸、好きだよ」  
蒼衣にとって、そんな雪乃は可愛らしくて仕方がない。  
「んっ」  
 可愛くて仕方がないので蒼衣は思わずキスをした。  
一瞬、雪乃の目が驚きに染まるが、すぐに蒼衣のキスを受け入れる。  
「んん」  
 抵抗がなくなったと判断した蒼衣は、舌を雪乃の口内へと進入させた。  
まずは歯茎をなぞるように。そして歯の防波堤を越え、雪乃の舌に絡ませる。そして口内の天井を犯し、舌の裏まで舐め取る。雪乃もそれに反応し、積極的に舌を絡ませる。  
その間も、胸を揉む手は休めない。  
「ぷはっ……」  
 しばらくお互いに口の味を堪能し、口を離すと銀色の細い唾液の逆アーチが生まれた。  
「雪乃さんも、積極的なんだね」  
 キスの感想を思わず蒼衣は言ってしまう。  
すると雪乃は今までよりさらに赤面し、「うるさい、殺すわよ」と、発してるのか発してないのかわからないくらいの小声で答えた。  
そんな雪乃はやっぱり、物凄く可愛かった。  
「あっ」  
 蒼衣は無意識のうちに、雪乃の首にキスをしていた。  
無防備な人間の急所。いつもならば絶対に雪乃が警戒している場所。  
そこにキスを許した自分に驚き、そして思わずあげたエッチな声に雪乃はさらに驚いた。  
「可愛すぎるよ、雪乃さん」  
 蒼衣は間髪入れずにゴスロリ服の胸元から空いている手を突っ込んだ。さらに下着の中へ手を入れ、直接胸を揉みしだく。  
「ちょ……待っ……」  
 急にやってきたさらに直接的に性的なアプローチに戸惑う雪乃。だが蒼衣はおかまいなしに胸の感触を楽しむ。  
直接触っていると、雪乃の乳首が勃起していることに気がついた。  
その乳首を軽く撫でるようにして、触る。  
 
「ひゃっ」  
 雪乃は敏感に反応した。  
その反応を見て、黒い何かは蒼衣を加速させた。  
「雪乃さん、感じてるの?」  
 意地悪く、わかっていることを尋ねる。  
雪乃が認めないのをわかっていながら。  
「感じてなんか……ないわ」  
 やはりというか、雪乃は蒼衣の予想通りに答えた。  
蒼衣は思わずにやりとする。  
「じゃあ、これはどういうことなのかな?」  
「きゃぁ!」  
 すると蒼衣は用意していた言葉と共に、雪乃の乳首を摘み上げる。  
雪乃はこれまた敏感に反応し、可愛らしい嬌声を上げた。  
「雪乃さんの乳首、小さくて可愛いね。でも、こんなにわかるくらいに勃っているよ?」  
 蒼衣は、意地悪く言う。  
「それは……白野君がエッチなことするから……」  
 そんな蒼衣の魂胆がわかったのか、顔を背けながら答える雪乃。  
「つまり、雪乃さんはエッチなことをされたら感じちゃう、エッチな女の子なんだね?」  
 ニヤニヤと、まるでチェシャ猫のような笑顔で問い続ける蒼衣。  
「ち、違うわ……」  
 そんな言葉に雪乃は声を絞り出して否定する。  
「じゃあ、これは?」  
「あっ!」  
 すると蒼衣は何の前触れもなく、服の上から胸を揉んでいた手をスカートの中へ入れた。  
目的地は、もちろん、パンツ。さらにそのクロッチの部分。  
撫で上げるとパンツの上からだと言うのに濡れているのがしっかりと確認できた。  
「濡れてる、ね」  
 蒼衣はわざと区切って言う。  
「……!」  
 雪乃は無言で目を瞑る。  
「嘘はいけないよ、雪乃さん。雪乃さんは胸を揉まれただけでこんなに濡れ濡れになっちゃうエッチな女の子じゃないか」  
「ああっ」  
 布の上からさらに秘部を擦り上げる蒼衣。言葉をかけてそれをするだけで、さらに湿り気が増していくのがわかった。  
(言葉責めで感じてるのかな?)  
 蒼衣の中のサドスティックな感情がさらにわき出してくる。  
そこで蒼衣は思いついた。  
「雪乃さん、ちゃんと本当のことを言おうよ」  
 この気高く、美しく、そして可憐で儚い少女を、屈服させてみよう、と。  
「自分は胸を揉まれただけでアソコをびしょびしょにしちゃう、エッチな女の子です、って」  
「なっ!?」  
 蒼衣の言葉に閉じた目を見開いて驚く雪乃。  
「さあ、言ってみて?」  
 そんな雪乃の反応を楽しんで、蒼衣は強要する。  
「い、言うわけないでしょ、そんなこと」  
 胸を、秘部を優しく、ねっとりと嬲られる快感に逆らい、雪乃は断言する。  
しかし、蒼衣はそれを許さない。  
「言ってみて?」  
「あうっ」  
 胸を嬲っていた手で、乳首を強く摘み上げる。  
「ほらほら、声に出して、ね?」  
 敏感な雪乃の反応を楽しみ、乳首をさらに引っ張る蒼衣。  
「い、痛い、痛いわ白野君っ!」  
 強すぎる刺激に悲鳴を上げる雪乃。  
「言ってみて、ね?」  
だが蒼衣は力を弱める素振りは見せない。  
普段、痛みを受ける場所からかけ離れた部位での痛みは、雪乃の抵抗心を急激に奪っていった。  
 
「はい、どーぞ」  
 段々と抵抗する素振りが弱まってる様子を見た蒼衣は、あえてさらに強く突起を摘む。  
そのあまりの慈悲のなさに、雪乃は抵抗心は屈服した。  
「わ、私は胸を揉まれただけでアソコをびしょびしょにしちゃうエッチな女の子です……」  
 か細い声で、雪乃は言う。  
「聞こえないよ、もう一度」  
 蒼衣は手を弱めず、笑顔で無慈悲に言う。  
「私は胸を揉まれただけでアソコをびしょびしょにしちゃうエッチな女の子ですっ!」  
 先程とはうってかわって部屋に反響するほどの大声で、淫らな言葉を叫ぶ雪乃。  
「アソコじゃ、わからないなあ。ちゃんとどこだか言ってくれないと」  
 だが、それでも蒼衣は許さなかった。  
むしろ、秘部を弄る手が強くなったくらいだ。  
「どこだかって……」  
 雪乃は困惑する。  
「知らないわけじゃ、ないでしょ?」  
 そんな雪乃に蒼衣は容赦なく追撃を加える。胸の最も敏感な部分に爪を立てた。  
「痛い!」  
 憎悪するものではない痛みが全身を駆け巡る。それはとても耐えきれるものではなかった。  
「私はっ」  
 先程の大声より、さらに大きく、雪乃は宣言した。  
「胸を揉まれただけでおまんこをびしょびしょにしちゃう、エッチな女の子ですっ!!」  
 自信を淫乱だと。性に弱い女だと。  
それを言った瞬間、痛みは消える。安心したのもつかの間、自分が大声で叫んだ言葉の意味を思い出して、歯ぎしりと共に、顔を赤く赤く、さらにこれ以上ないくらいに赤く染め上げる。  
そんな雪乃に蒼衣は満足した。  
「素直で可愛いよ、雪乃さん……」  
 胸を揉んでいた手を服の外に出し、髪を撫でるように触って、顔を近づけて呟く。  
「っ!」  
 その瞬間、秘部を布の上から弄っていた手が、下着の中に進入した。  
「凄いね、中は凄く濡れ濡れだよ。僕にイジメられて感じちゃったのかな?」  
 首を左右に振る雪乃。しかし、蒼衣が言葉をかけるとさらに愛液が溢れてくるのがわかった。  
「体は正直だね。雪乃さんも正直になった方がいいんじゃないかな?」  
 提案ではなく、強制。雪乃にはわかっていた。  
 今の蒼衣には逆らえない、と。  
「白野君に、イジメられて、感じちゃい、ました……」  
 途切れ途切れに、それでもはっきりと雪乃は言う。  
従順な様子に蒼衣はこの上なく嬉しくなる。  
「じゃあ、そんな正直な雪乃さんにご褒美をあげないとね」  
「あっ」  
 秘部を触っていた手も、布から取り出す蒼衣。それに雪乃は思わず声をあげる。  
「あ、名残惜しかったりした?」  
 蒼衣はわかっていながら、聞く。  
雪乃は正直に答えるしかない。首を縦に振った。  
「待っててね、もっと気持ちよくさせてあげるから」  
 そういうと、蒼衣は両手で雪乃のパンツを降ろし、股を開き、そこに顔を埋めた。所謂、クンニである。  
雪乃からの抵抗はない。ひたすら従順に、快感を受け取るだけの様子だ。  
「あぁっ!」  
 蒼衣が雪乃の秘部を舐め取る度に、雪乃は色っぽい声をあげる。蒼衣はそれの声を楽しみながら、秘部を舐め続ける。  
「あっ」  
 ひだを。  
「ひゃぁっ」  
 膣の入り口を。  
「そこはっ!?」  
 クリトリスを。  
雪乃は様々な反応を示し、蒼衣を十分に楽しませてくれた。  
 
「っと、そろそろいいかな」  
 十分に、濡らした秘部は怪しく部屋の光を反射して、うごめいていた。  
その艶めかしい様子に蒼衣の喉がごくりと鳴る。  
これから、ここに蒼衣は自分の欲望を突っ込むのだ。  
固く閉じた様子は明らかに処女。蒼衣はさらに嬉しくなる。  
「そうだ」  
 蒼衣はそこでさらに思いついた。  
すぐにベッドの横のバッグから携帯を取り出し、カメラを起動させる。  
「な、なに?」  
 息も絶え絶えに、蒼衣のおかしな様子に気がついた雪乃が聞く。  
「雪乃さん、初めてみたいだからさ。  
 ――記念写真を撮ろうと思って」  
何気なく、蒼衣は言う。  
「そう……ってちょっと待って!」  
 そんな普通の様子に納得しかけてしまったが、雪乃はすぐに意味を把握し、足を閉じる。  
「雪乃さん?」  
 しかし蒼衣は容赦しない。抵抗できない言葉を、一言かけて、再び屈服させる。  
「雪乃さん、自分で足を開いて」  
 残酷な命令を下す蒼衣。  
雪乃は泣きそうになりながらも、無言で足を開く。  
――チャリーン。  
機械音が無音だった部屋に響いた。  
そして秘部に指が触れる感覚がして、  
――チャリーン。  
機械音は再び響く。  
「どうも上手く撮れないなあ……」  
 しかし蒼衣は納得がいかない様子だ。  
そのことに少し安心した雪乃は、次の瞬間にさらなる地獄へと叩き込まれた。  
「雪乃さん、自分でアソコがよく見えるように開いてくらないかな?」  
 泣きそうになった。でも、泣いたらそれを快感だと認める自分がいそうで、泣くわけにはいかない。  
「返事は?」  
 それをわかって、蒼衣は残酷だった。  
「……わかったわ」  
顔をしかめて、誰にも見せたことのない部位をカメラに晒す。  
――チャリーン。  
三度目の電子音が耳に入ってきた。  
「うん、よく撮れたよ」  
 すると完成したそれを嬉しそうに蒼衣は見せてくる。  
自分の、いやらしく濡れた、自分でもあまり見たことのない秘部。それが携帯のディスプレイに映っていた。  
雪乃はこれを意味することを思い返して、さらにそれを快感だと感じている自分を完全に自覚して、それを恥じた。  
「雪乃さんは本当にエッチだね。カメラで撮られている間も濡れて来ちゃってたんだもの」  
 蒼衣は面白そうに言う。一度、自覚した快感はその言葉にも反応し、雪乃の感覚を撫で上げる。  
「早く、続きをしましょう」  
 自分が自分でなくなってしまいそうで怖ろしくなった雪乃は、続きを急かした。  
「おねだりの仕方は、わかるよね?」  
 それをわかってるのか、蒼衣はさらに責め立てる。  
「私の……」  
「雪乃さんの?」  
 雪乃は言葉を発した瞬間、それに躊躇いがなくなってる自分に驚いた。がしかし止められなかった。  
「私のおまんこに白野君のおちんちんをくださいっ!」  
 言ってしまった。もう戻れない。理解した。  
雪乃は言ってしまった後に後悔と、期待をした。そして期待に後悔した。  
もう、私は堕ちてしまった、と。  
「良い子だよ、雪乃さん。ちゃんとご褒美あげるね」  
 完全に堕ちた雪乃に満足した蒼衣は自身もズボンとパンツをあっという間に脱ぎ、熱り立った性欲を、雪乃のそこにあてがった。  
 
「いくよ?」  
 問う蒼衣。しかし、返答する暇はなかった。  
「痛ぅっ!」  
 瞬間、雪乃を激痛が襲う。胸を苛まれた痛みより、遥かに強い痛み。  
処女を失った痛みだった。  
「雪乃さんの中、凄く狭くて、気持ちいいよ。  
 このまま慣れるまで動かずにいようか?」  
 蒼衣は雪乃が相当の痛みを感じていることをわかっていながら、そして回答すらもわかっていながら、聞く。  
「大丈夫、よ。これくらいの、痛み……」  
 雪乃は強がって答える、いや答えざるを得ない。  
蒼衣がそれを望んでるとわかっているからだ。  
「じゃあ、動くよ」  
 そして蒼衣は動き出す。  
股間に激痛が押し寄せるが、雪乃は歯を食いしばって我慢した。  
繰り返されるピストン運動。処女の雪乃に肉体的快楽は存在しない。  
しかし、蒼衣に痛みを与えてもらっている、と認識することで雪乃は精神に由来する快楽を得ることができた。  
痛みは気持ちの良いものだった。  
蒼衣の動きが段々と早まっていく。  
痛みももちろん、強まっていく。  
それでも雪乃は気持ちよかった。  
 ――白野君とと繋がってる……!  
雪乃の脳内はそれで埋め尽くされていた。  
蒼衣の動きは、限界近くまでに早まっていた。  
膨張する膣内の、肉棒。ああ、これはもうすぐなのかな、と雪乃は予測した。  
果たして、その予測は当たった。  
「雪乃さん、射精すよ!」  
 蒼衣はそういうと極限まで腰の動きを加速させる。  
「来て……来て蒼衣君!」  
 そうして蒼衣は欲望を雪乃の膣内にぶちまけた。  
 
 
 ――そうして数時間後。  
蒼衣と雪乃は交わり続けていた。  
最初の痛みはもうなく、嬌声が上がる真っ白の室内。  
結論から言うと、扉は開かなかった。  
そこで蒼衣は新たな解釈を出した。本当に妊娠するまでは出られないんじゃないかな、と。  
雪乃としては、もうどうにでもなれ、との心境に近かった。よって、彼女は了承。  
そして途中から雪乃も肉体的快楽も得始めたため、積極的に交わり続けている。  
「今度こそ……」  
 少しげっそりした蒼衣がまた射精する。  
もう片手では数え切れないくらい繰り返した快楽。  
そうしてドアを確認しようとした瞬間、  
 
 ドバン!  
 
 と大きな音を起てて真っ白なドアが開いて外の色が目に入ってきた。  
そして、  
「大丈夫かい、二人と……も……」  
 全裸でベッドにいる二人の前に神狩屋が現れた。  
雪乃の表情が一瞬にして真っ赤に染まり、ベッドの脇に落ちていたカッターに手を延ばす。  
「い、いや、待ってくれ! 僕は考えたんだ、これがアダムとイヴの逸話の泡禍ならば僕という三人目が行けば君たちが閉じ込められてる状況を打破できるんじゃないか、と。だから決して君たちがこういうことをしているとは考えつかずに」  
 必死に弁解する神狩屋。  
そこでふと、雪乃は気がついた。  
「ねえ、白野君。三人目の人間を、って白野君も言ってたわよね?」  
 ぎくっと蒼衣の体が驚きに跳ねる。  
わき出る冷や汗。生命の危機。早鐘のように鳴り続ける心臓。  
雪乃が、気付こうとするとは、蒼衣の想定外だった。  
「三人目を、わざわざ私たちで作る必要はなかったんじゃないかしら?」  
 氷でできた刃のような視線。蒼衣は初めて、人間とはこんなに怖ろしいものなのか、と認識した。  
『うふふ、あんまり強く焼いちゃ駄目よ?』  
 どこからともなく、今まで存在の欠片すらも匂わせなかった雪乃にそっくりの亡霊が現れる。この助けは期待できそうにない  
次に神狩屋を見る。神狩屋についてきたような颯姫の目を塞ぐことに躍起になってるようで、やはり助けは期待できそうにない。  
「レアで止めておくわ」  
 蒼衣は、どうやって火傷の言い訳をしようかな、とごく普通なことを考えることにした。  
 
「<私の痛みよ、世界を焼け>!」  
 
 
「なあ、シラノ」  
 いつもの学校での放課後。蒼衣が日直の仕事を終わらせて、今まさに帰ろうとしているとクラスメイトの敷島が呼びかけてきた。  
「どうかした?」  
 いつも通りで普通で通常な日常。蒼衣が望んでるもの。  
それの一画だ。  
「前にお前に会いに来てた超絶美少女が校門の前で待ってるぞ」  
 それがちょっと崩れた。  
いつもなら嬉しい、というか泡禍以外で彼女から接触をしてくれるなら蒼衣にとってこれほど望ましいことはない。  
「おい、どうした白野。この馬鹿のデリカシーのないお節介にがっかりしたのか」  
 クラスメイトの佐和野が聞いてくる。  
しかし、蒼衣はそれどころではないのだ。  
今はヤバい。通常ならば予想できることは一つ。  
泡禍であってくれたらいいことか。いや不謹慎だし、一般的にはむしろ喜ばれることだ。  
「大丈夫、今から、行く」  
 機械的なセリフで教室から出て行く蒼衣。  
ヤってしまったことは仕方がない。しかしあの時の自分がどうかしていたのだ。後から物凄く後悔したり色々した。  
などと自分に対して言い訳しながら、下校する生徒のほとんどいない校庭を歩いて、校門まで辿り着く。  
そこには、やはりというか、雪乃がいた。  
――お腹を大事そうにさすりながら。  
「白野君、大事な話があるの」  
 
 遠くから覗きをしていた蒼衣のクラスメイト二人は空気と超絶美少女の動作からから察した。  
読唇術など会得していないのに、最後の言葉は読み取れた。  
そして、敷島は白野蒼衣の顔が、名前通りに蒼白になっていくのを見て、羨ましいやつめ、と嫉妬した。  
 

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