「雪乃さん……!!」  
「う、あっ、白野くん……っ!」  
 今日は大晦日、ここはとある旅館の客室。  
 敷かれた布団の上で僕に後ろから羽交い絞めにされながら声を震わせる雪乃さんがいた。  
 旅館の備品である浴衣は凛とした佇まいの雪乃さんにとてもよく似合っていたのだけど……  
 今は大きくはだけられ、白い首筋が、胸が、足が露出していた。  
 そして大きく足を開かせられた雪乃さんの中心には、僕の肉棒が突き刺さっていた。  
 
「くっ、うっ……」  
 その肉杭から逃れるように雪乃さんの腰が動くけど、蜘蛛の巣に囚われた可憐な蝶のようにもがくだけで逃れられる気配はない。  
 否、無駄どころか足掻けば足掻くだけ糸が絡まるように、余計な動きが接合部にかかるはずだ。  
 その証拠に接合部はじっとりと湿り気を帯び、雪乃さんの頬は耳まで赤く染まって、触れた肌からも体温の高まりが感じられた。  
「ふふ……」  
 僕は雪乃さんの黒いロングのポニーテールを手に取り、口づける。  
(すごく、雪乃さんの匂いがする……)  
 雪乃さんの髪の匂いを肺の奥一杯吸い込みながら、僕はまるで夢のようだと思った。  
 あの雪乃さんと、こんなことをしているなんて……  
「はっ、ふっ……ううっ」  
 じたばたと足掻く雪乃さんの白い可憐な足が糊の効いたシーツを乱していく。  
「んっ……うっ……くっ……」  
 声を堪えるそんな様子が可愛くて、僕は手を伸ばし乱れた浴衣から露出した胸の膨らみをさすり――  
 その可愛らしくも硬くなった頂を指でつまむ。  
「んくっ……!?」  
「だめだよ。雪乃さん、僕から逃げようなんて……」  
 僕は雪乃さんの耳元で舐めるように囁く。  
 
「あぁ……でも……こんな……こと……」  
 雪乃さんは恥ずかしがって肩を縮ませる。  
「わかる? 雪乃さんの中に、僕の物が入っているのが……」  
 意識させるように、わざと中の物をゆっくりと動かして、膣内を擦っていく。  
「くっ、あっ、ふぁっ……やぁ、そんなこと、言わない、で……っ!」  
 そういって細い肩をますます縮ませるのに、雪乃さんの膣内は熱く、柔らかく、じゅんと愛液で濡れぼそって、肉襞が肉棒にきゅうきゅうと絡み付いてくる。  
(こんなに恥ずかしがってるのに感じるなんて……本当に雪乃さんはMだな)と思いながら、僕はさらに雪乃さんの顎に手をやり顔をこちらに向けさせて、その唇を食んだ。  
「ん……ちゅ、れろ……」  
 いつもは罵倒か鋭利な突っぱねるような言葉しか発せられない雪乃さんの唇。  
「んむっ……ちゅ、んふっ……んくっ……んんっ……!」  
 でも今は熱く、柔らかく、とても甘い。  
「ちゅ、ぐちゅ、れろ……んむっ……んふっ……んうっ、うぷっ、んむぅ……っ!」  
 割り込ませた舌をねっとりと熱く深く絡ませながら、互いの唾液を混ぜ、それを吸い取り、回した手で胸を優しく、時に激しく揉みしだく。  
「っ、ぷはっ……! ふあ、あっ、……しらのく……っ」  
 そしてついにたまらなくなったのか、雪乃さんがねだるように腰をくねらせる。  
 そろそろかな、そう思って僕は動きを止めた。  
 
「っ……え……?」  
 絶頂に到達する前にお預けを食らい、何故止めるのと言いたそうに瞳が潤む。  
 そこで僕は意地悪に問いかける。  
「どうして欲しいの?」  
「……っ……」  
「ダメだよ、言わなきゃ」  
「……うっ……くっ……」  
 涙目になりながら恥ずかしがる雪乃さん。  
 しかし行き場のない情欲が、熱として雪乃さんの中に燻っているはずだ。  
「……っ……く、ださい」  
「何、聞こえないよ?」  
「……して、ください……」  
 雪乃さんはよく言ったと思う。でもそれじゃ僕は満足しなかった。  
「それだけ? ちゃんと言わなきゃ。  
 僕のおち○ちんで雪乃さんのおま○こを突いてくださいって」  
「っ……!」  
 普段は冷徹に強気に振舞っていても育ちがいい雪乃さんは、こんな下品な言葉はとてじゃないが言えないはずだ。  
 否、こんなことを言わせようものなら「殺すわよ」と烈火のごとく怒り出すに違いない(本当に断章で焼かれてしまうかもしれない)  
 潔癖で気高くて誇り高い雪乃さん。  
 だからこそ恥ずかしくて。恥ずかしくて。……感じてしまうはずだ。  
 
「嫌なら、このままやめてもいいけど?」  
 本当はそんな気はないけど、今の余裕のない雪乃さんにその揺すりは効果的だったらしい。  
「……っ、ください……! しら、白野君の……お……ち○ちんを、わたしのおま○こにください……っ!」  
「よく、言えました……!」  
 そして僕は雪乃さんにもう一度キスをすると、雪乃さんを布団の上に四つんばいにさせた。  
 そして大きく腰を引き、一気に強く深く突き入れた。  
「っふああぁぁっ――!!」  
 さんざんお預けを食らった後での強い一撃。  
「あっ、ふあ……ううっ、んんっ……」  
 雪乃さんの膣口がぎゅうっと締まり、引き抜こうとする僕の肉棒を胎内に留めようと強く握り締めた。  
「っ、は……ゆきのさん……すご……」  
 思わず射精してしまいそうなほどの昂ぶりを堪えながら、僕はストロークを続ける。  
「あっ……はぁ、うっ……やっ、はぁんっ、ああっ!」  
 パンパンパンと、肌と肌が打ち合う音が旅館の客室の中に響く。  
 
「や、だめ、も、もう……わた、わたし……っ……」  
 切羽詰った雪乃さんの声。そして僕もまた絶頂へ到達しようと、高めていく。  
「ゆきのさん、ゆきのさん……!」  
「くっ……はぁ……はぁ、しらのくん……しらのく……っ!」  
 絶頂に到達しようとした最中、僕は雪乃さんの手に手を重ね、指を握り絡ませた。  
「あ、ふぁ、あっ……ああああああああぁぁぁっ――!!」  
 もはや離さないとばかりに締め付けた雪乃さんの膣内に、僕は熱い白濁を吐き出した。  
 
 
 気が付けば壁の時計は十二時を回っていた。  
「はぁ……ふぁ……はぁっ……ううっ……」  
 雪乃さんは完全に布団に腹這いになり、僕に抱えられた腰だけを浮かした状態で、全身を白濁に塗れさせていた。  
 特に接合部からはどろどろと、愛液と精液の交じり合ったものがとめどなく溢れ出していた。  
「ふふ。これで僕達、二年に渡って繋がりっぱなしだったね」  
 あけましておめでとう、雪乃さん。  
 僕はそう言いながら、雪乃さんの汗で濡れた額にキスをした。  
 
 
……  
…………  
 
 そして、朝日が昇ると共に僕は目を覚ました。  
「……ふう……」  
 年が明けてもいつもと代わり映えのない『自宅の自室で』  
 とても激しい夢だったな、と思いながら。  
 濡れたパンツとパジャマとイカ臭さの漂う布団をどうしようかと新年早々考えながら、  
 夢の中での昂ぶりと現実の冷たさとの落差に、僕は布団の中で一人涙した。  
 
 あたらしいとしがやってきた。はなしはおしまい。  
 
 
 

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