「んっ……」
傷口から広がる疼痛に、思わず声が漏れる。
その声を聞き、先刻から丹念に雪乃の手首に舌を這わせている蒼衣は、
ちらりと視線を上げて雪乃の顔をうかがうと再び同じ行為に没頭した。
ざらり、と舌を桃色の肉が見える傷に滑り込ませるたびにくぐもった声を雪乃は上げ、背筋をビクビクと震わせる。
雪乃の空いたもう一方の手が耐えられない様子で己の頭をくしゃくしゃとかき乱していることを、
まったく気に留めた様子もなく、蒼衣の熱心な行為は続く。
そして、蒼衣の頭に添えられた手が力なく垂れてきた頃、蒼衣はようやくその倒錯的な行為をやめ、雪乃の手から離れた。
痛みか、それとも別種の感覚によるものか、頬に血をめぐらせ瞳を潤ませた雪乃の強い視線を受け止めながら蒼衣は問いかけた。
「ね、雪乃さん。どうして欲しい? これから、僕がどうしたらいいか、はっきり口に出して欲しいな……?」
しばしの逡巡の後、雪乃は口を開き、もう何度目になるかわからないその行為を声に出した。
「保守」