お風呂から上がって体を拭き、あらかじめ籠の中に隠しておいた下着を取り出します。  
 上下でお揃いのブラジャーとパンツ。レースの入った少しかわいい、今日の為にこっそりと準備した特別なものです。  
 体を締め付ける事と、付けるほど胸が大きくないから普段はブラジャーをしていないので、慣れないランジェリーショップで買ってきたもの。  
 パンツに足を通すといつもとは違う滑らかな肌触り。穿いてみるとぴったりと肌に吸い付くようで、少しきつい感じがしました。  
 思ったよりずっと苦労してブラジャーを付けて形を整え、鏡に体を写してみます。  
「……変じゃないかな?」  
 お風呂あがりの上気した肌に、すっきりとしたブルーのラインが映えています。  
 いつもの色気の無い下着とは違い自己主張の強いそれは、普段はおぼろげなわたしの輪郭もくっきり見せてくれるようでした。  
「ちょっとは、かわいく見えるよね?」  
 鏡の中のわたしはいつもより可愛いはず。緊張する自分にそう言い聞かせます。  
 いつまでも下着姿では湯冷めしてしまうので、そうしてばかりもいられず、同じようなブルーのパジャマを着て部屋に戻りました。  
 
「お風呂、上がったよ」  
「そうか。体の方は平気?のぼせなかったかい?」  
「うん。軽く体洗っただけだから」  
 あなたは頷いて温かいお茶を入れてくれると、自分もお風呂に向かいました。  
 お茶に口をつけながら、緊張に高まる胸を押さえます。  
「ちゃんと言える……言わないと……」  
 その事を思うとまた緊張してきて、カップを持つ手が震えてしまいました。慌てて両手で持ち直します。  
 ほどよく温まっていたカップの熱が手に伝わってきて、少しだけ心を落ち着けてくれました。  
 緊張しながら待つのももどかしいな、と思っていると、大した時間を待つことなくあなたは出てきました。  
「は、早かったんだね」  
「あまり長湯は好きじゃないしね」  
 落ち着く時間が欲しかったので、今ばかりはそれをうらめしく思いました。  
 思いながら、向かいに座るあなたに思いきって切り出します。  
「あっ、あのっ!」  
「うん?どうかした」  
 声がうわずってしまい、あなたは不思議そうな顔をします。  
「えっと、今日は、お風呂も入ったし、えっと……きれいになったから……」  
 恥ずかしさにしどろもどろになりながら、最後の一言を打ち明けました。  
「その……今夜、抱いて下さい……」  
 
 言ってしまいました。  
 真っ赤になっているであろう顔をまっすぐにあなたに向けて答えを待ちます。本当はうつむいて縮こまりたいのを必死で我慢しながら。  
 あなたは少しびっくりしたようでしたが、すぐに落ち着いた調子で答えてくれました。  
「……大丈夫?お風呂入ったばかりだけど」  
「して欲しいからお風呂に入ったの。……きれいになってから、って思って。……それに、今日は用意してあるの。その……お薬も使ったし……直接……その……」  
「……分かった。いいよ」  
 あなたはわたしの言葉をさえぎってそう言い、わたしの隣に来てしゃがみながら髪を撫でてくれました。  
「ごめん、気が付かなくて。いいのかい?今からで」  
「……うん」  
 緊張がそっと和らぎ、くすぐったい恥ずかしさに変わっていきます。もう言葉にしなくても全て伝わる。そんな嬉しさを感じて。  
 そしてあなたはわたしを抱え上げて優しくベッドに寝かせ、ベッドのふちに腰をかけました。  
「じゃあ、脱がすね」  
「うん」  
 一つ一つ、ゆっくりとした手つきでパジャマのボタンを外すあなた。わたしの事を気遣ってそうしてくれるあなたの手つきも、焦らされているみたいでドキドキします。  
 ボタンを外し、パジャマの前を開くと、ついにあの新しく買ったブラジャーがあなたの目に晒されました。  
「あれ?志弦、これ……」  
「えっと、あの、あの、その、新しく……」  
 この時の為に用意した物で、あなたに見てもらう為に付けた物なのに、いざその時になったら緊張して上手く頭が回らなくなってしまいました。  
 あなたが驚くのを見て、なんて説明しようか。そんな事まで考えていたのに。  
「もしかして、今日の為に買ったのかい?」  
「……うん。あなたに、喜んで貰えたらと思って」  
「そうか……ありがとう。似合ってるよ」  
 言いたかった事の半分も言えなかったけれど、正直なところ安心しました。  
 怒られたらどうしようとか、褒めてくれるかどうかを心配していたので。  
「ええと。それだと、これは脱がしてもいいのかな?」  
「うん。いいよ。雅孝さんに脱がせてもらう為に付けたんだから」  
 せっかく買ったんだから付けたままするのも有りかな、なんて思ってもいましたけれど。やっぱりこのブラジャーは外してもらう事に意味があるのかも知れない。  
 たった一瞬の為に価値ある物があったっていい。そんな風に思います。  
 
 ブラジャーも外されて上半身が裸になり、たいして大きさの無い胸があなたに晒されます。  
 本当に薄くて、あばらが浮いてしまうかと思うくらいの小さな胸。  
「わたしの胸、もっと大きかったらよかったのにね……」  
 あなたに見られている事の羞恥と、こんなに小さいことの恥ずかしさで、思わず手で隠したくなります。  
 でもそれも何だか恥ずかしくて、けっきょく所在なさげに手をおなかの上で組んでもじもじさせるにとどまりました。  
 あなたはそんなわたしの手を見て、「小さくても志弦の胸は可愛いよ」なんて言って手を握ってくれました。  
 普段は鈍くてぼーっとしているのに、こんな時に機微を察するのも複雑なものですが。でも嬉しくて、ほっとしました。  
 そうしてあなたはゆっくりと両方の胸に手を伸ばして、この胸を揉み始めました。  
 あなたの大きな両手はわたしの胸をすっぽりと包んで、左右に寄せるように揉み込んできます。  
「んんっ……」  
 肉の薄い胸はそんな動きだけですぐに押し潰されて、快感より先に鈍い痛みが走り、思わずうめき声を上げてしまいました。  
 痛がるわたしを気遣って、あなたは手の動きをゆるめてマッサージするように、軽くつぶしながらさするようにしてくれました。  
 本当なら力強く揉みたいのだろうし、わたしも本当はそうして貰いたい。でもこの体はそれを許さず、少しの刺激でも敏感に拒絶を訴えてきます。  
 どうせ敏感に反応するのなら快感だったらいいのに、大好きなあなたに胸を触られて感じるのは痛みばかり。  
「あっ痛っ!いやぁ!」  
「ご、ごめんっ!平気かい、志弦?」  
 つい拒絶の声を上げてしまい、はっとしてあなたを見上げると心配そうに見下ろしてくるあなたと目が合ってしまいました。  
「やっぱり、今日は止めておこうか?」  
「違う、違うの……わたし、そんなつもりじゃ……」  
 わたしの事を本当に心配しているあなたの顔。いつもあなたは自分の事よりもわたしを優先して、第一に考えてくれます。  
 今日だって、いいえこれまでも、わたしから言い出さない限りわたしの体を求めることはありませんでした。  
 いくらあなたは性的な興味が薄いといっても、わたしに求めたくなる時があるのを知っています。それを口に出す事なく自己処理で済ませていることも。  
 でも、わたしはそんなあなたに甘えるだけで満足せず、まだ自分勝手なことを考えていました。  
 
 必死で考えないようにしていた事に気づいてしまいました。  
 体が弱くても得な事もあるとか、そんな風に思ってごまかしても、結局は普通でいられない事を嫌っていることに。  
 こんなに罪深いわたしが、与えられた少しの幸せに満足できずに不相応な夢を追い求めている。  
 これからあなたを困らせる事になるのに、今もあなたはわたしの為にしてくれているのに。それなのに。  
 そう思うと、涙がこぼれてきてしまいました。  
「…………ねえ、志弦」  
「……?」  
 突然泣き出してしまったわたしに、あなたは優しく声をかけてきます。  
「もしかして、自分が普通の女の子のように出来ない事が嫌なのかい?」  
「えっ?」  
 突然の核心を突くその言葉に息を飲みます。  
 わたしは答えることができませんでしたが雰囲気で肯定しているのを察したのか、あなたはきまり悪そうに顔を伏せました。  
「もしそうなら、それは僕も悪かった事になるな」  
「……違うよ。先生は悪くない。悪いのは高望みをしすぎるわたしなんだから……」  
 そんなあなたを真っ直ぐ見られなくて目を反らすわたしに、あなたはなおも声をかけます。  
「いや、僕も悪いんだ。君の体を優先するあまり君の心を軽んじてしまった事になるんだから。……だから、もし君が望んでいるんだったら、僕は僕の欲望のままに君を抱きたい」  
 真剣な表情で語るあなた。そんなあなたを見てますます罪悪感が強くなりましたが、そんなあなたに期待している自分もいます。  
 きっと体は苦しくなります。痛いかもしれない。でも、本気であなたを感じられるなら、それでもいいと思いました。  
 一人でうじうじしているよりは、あなたに全て委ねてみよう。そう思って頷きます。  
「君の体に、負担を強いる事になるよ?」  
「うん……いいよ。わたしの体、雅孝さんの好きにして……」  
 きっとあなたは、それでも優しくしてくれるのでしょうから。  
「分かった。ごめんね、志弦」  
 あなたは座っていたベッドのふちからベッドの上に上がると、おもむろにわたしの足を開いて自分の体をわたしの足の間に滑り込ませす。  
「えっ、やっ……」  
「ごめんね、志弦。少し乱暴にする。痛いかもしれないよ」  
「……うん。あの、痛くはないけど。でも……」  
 足を大きく両側に開かれ、そのわたしの足の下にあなたの足が入って持ち上げられています。  
 
 痛くはないのですが、この格好はすごく恥ずかしいです。  
「……この格好、恥ずかしい」  
「うん、僕もだ。かなり恥ずかしい」  
 そう言って頬を掻くあなたですが、すぐに表情を真剣に変え、わたしに覆いかぶさってきました。  
 そしてわたしの手を取り、手を握ると、もう片方の手をわたしの頭の後ろに回してキスをします。  
「んっ……」  
 そしてすぐに唇を離すと、そのまま唇をわたしの首筋につけてついばみます。  
「はぁっ……」  
 ぞくりと震える体。くすぐったさとはまた違う奇妙な感覚に首筋を中心に震えが走り、ぐったりと力が抜けていきます。  
 ひと口またひと口と首筋や鎖骨のあたりをついばみ、時には舐めるあなたの口づかいに少しずつ体のこわばりが解けていくような気がします。  
 初めて見るあなたの姿。積極的にわたしを愛してくれるその様子を感じて、くすぶっていたわたしの心にも火が灯りはじめ、段々と大きくなっていきました。  
 その熱はわたしの体温も上げて、借り物の心臓が悲鳴を上げますが、不思議と今は気になりませんでした。  
 にじんだ汗をあなたが舐めとるそのいやらしい感触さえも、もはや快感を感じるようになっている事に気付きます。  
「はぁぁんっ!」  
 執拗にわたしを舐めるあなたの舌に、ついに声が漏れてしまいます。  
 それを聞いて動きを止めるあなたですが、わたしが嫌がっていないことを知るとまたわたしの唇にキスをしました。  
「んっ、ん……んんっ……はぁ」  
 少し深いキス。ほんの少し舌を絡めるだけでしたが、いつもの唇を重ねるだけのキスとは違って息が苦しくなります。  
 そうして体に余裕が無くなるにつれて、心の中を占めていた後ろ向きな思いに考えを巡らす余裕も無くなっていきました。  
 そんなどうでもいい事より今はあなたとの行為に集中したい。その思いで頭が真っ白になっていき、それ以外の事は考えられなくなっていきます。  
「もっと……激しくして」  
「ああ……感じるかい、志弦?」  
「うんっ……っ気持ちいいっ……」  
 あなたは手を再び胸に伸ばして、手の平で潰しながら円を描きます。  
 さっきはあんなに痛かった胸も今は嘘のようで、あなたの手の平全体からじんわりとした刺激を感じます。  
 
 ゆっくりと転がすように両胸をこねられ、たまに指を沈ませられながら形を変えます。  
「やぁんっ!」  
 乳首があなたの手にこすれる度に強い快感が走り、わたしの意思に反して腰が跳ね、背中が反ります。  
 あなたが手を離すと乳首はぷっくりとふくれ上がり、わたし自身が興奮していることを主張していました。  
「やだ……もうこんなになってる……」  
「乳首が立ってる……ちゃんと感じてくれてるだね、志弦……」  
「やぁ……言わないで……んっ!」  
 あなたはその乳首の片方を指で挟みながら軽く押し潰し、もう片方の手は乳房を外側から包むようにして揉み始めます。  
 つままれた乳首に痛みが走りますが、その痛みも今は痛いだけではなく強い快感と混ざって、次第にその境が曖昧になって、どちらなのか分からなくなっていきました。  
「あぁっ!……なんだか、もう痛くない……気持ちいいかも……」  
「そうかい?……だったらこんなのは?」  
 あなたは片方の胸を包むように揉みながら、そっちの空いている乳首に口を付けて吸い始めます。  
「えっ、そんなっ…………んっ…………やっ、ああっ!」  
 ちゅうちゅうと小さく音を立てながら乳首を吸い、ときおり先端を舌で舐められます。  
 乳房に吸いつきながら、軽く乳首に歯を立てられ、びりびりとした強い刺激にまた腰が跳ねます。  
 そうして体が跳ねる度に足が開いて上にあがっていき、気づけばさっきよりもさらに恥ずかしい格好になっていました。  
 膝をかかえるような体勢であなたに向かってお尻お突き出して、しかも足は左右に大きく開いている格好で。  
 身をよじってもあなたにがっしりと押さえ込まれていて動かず、逆に更にお尻が持ち上がるだけでした。  
 わたしたちの腰はしっかりと密着していて、パジャマ越しに硬くなったあなたのものがお尻に当たっているのが分かります。  
「雅孝さんの……その……それが……当たってる」  
「うん……もう、君の中に入れたい」  
 そうはっきり言われて言葉に詰まり、たった一言で答えるのが精一杯でした。  
「…………はい」  
 わたしの答えを聞くと、あなたはベッドから降りて自分の服を脱ぎ裸になります。  
 よれよれのシャツを脱ぐと意外に引き締まった体だったり、さっきまでの勢いとは裏腹にズボンを脱ぐのに手間取ったり。そんなあなたの姿にまた胸が鳴りました。  
 
「志弦、脱がすよ」  
「うん」  
 さっきと同じ位置に戻ったあなたは、わたしの足を高く上げてパジャマを引き抜いていきます。  
「こっちも可愛いよ」  
 あなたがそう言ったのはブラジャーとお揃いのデザインのパンツ。  
 空気に触れるとひやりとして、すでに湿ってしまっていることが分かりました。  
「今、そんなこと言われても……」  
 嬉しいはずなのですが、下着一枚になったこんな状況では恥ずかしさが増すだけで、どう反応していいか分かりません。  
 濡れた布の上に指を這わすようになぞり、ゆっくりと往復します。  
 胸とは違う、足の先までびりびりとするような直接的な快感があり、声が漏れます。  
「んんっ……あっ……あっ……」  
 あなたが指を動かすとパンツに滲んだ染みが広がっていき、形がくっきりと浮きだすほどになっていきます。  
 わたしが十分に反応しているのを見ると、あなたは不意打ちのように最後の一枚に手をかけて、するすると抜き取りました。  
「えっ?ちょっと待って。まだ心の準備が……」  
「僕もそろそろ我慢出来ないんだ。……それに、もう志弦の方も準備出来てるみたいだし」  
 そう言って直に手を触れると、くちゅっと水音を立てて指に糸を引きます。指を差し入れられるとすんなり入って行き、ほぐす必要もないほどでした。  
 胸だけですでにこんなに濡れていた事に驚きますが、あなたはその暇も与えずに、ぱんぱんに硬く大きくなったものを重ねてきます。  
 すでに十分に濡れているそこは、お互いの性器が擦れるその感覚だけで声を押さえられないほどの快感を与えてきます。  
 ときおり先端が敏感な部分をめくり上げるようにかすめると、それだけで軽く達してしまった時のように背中まで衝撃が走り、わたしは急かすように腰を突き出していました。  
「やっ……焦らさないで……。んっ!早く、入れてっ」  
「分かった、入れるよっ、志弦っ……うっ、くっ!」  
 あなたも我慢していたのか、急かされるままに先端をあてがい、指で開きながら一気に挿入してきました。  
 
「あぁぁぁっっ!!」  
 ずぷりと押し広げられる感触と共に、強烈な異物感が一気にわたしの一番奥まで入ってきました。  
「ぁぁっ!んっ、奥までっ、届いてる……」  
 はっきりと感じる訳ではないですが、行き止まりの壁に当たっている感覚があり、わたしの中が一杯に満たされているのが分かるような気がします。  
「うん……っ凄く、締め付けて来て、気持ちいい」  
「嬉しい……わたしも気持ちいいよ。……ねえ、動いて。」  
 もうこれ以上耐えられない。早く気持ち良くなりたい。あなたに先を促します。  
「……大丈夫かい?痛くは無い?」  
「うん……大丈夫。大丈夫だから、だからっ」  
「分かった、行くよ」  
 あなたは腰を動かし始め、少しずつ引き抜いていきます。  
 それだけの事で快感も衝撃も今までに無く大きくて、背中から来る痙攣にも似た震えはシーツをぎゅと掴んでも押さえられません。  
 抜けそうになるまで引くとまた入ってきて、それをくり返しながら徐々にペースを早めていきました。  
 ぐちゅぐちゅと音を立てて膣壁が擦られて、あなたのはぁはぁという息使いがその音に重なります。  
 突かれるごとに快感で意識が飛びそうになって、段々と頭の中が真っ白になっていくような錯覚に落ち入ります。  
「はあっ、志弦っ!志弦っ!」  
「先生っ!先生っ!んああぁぁっ!」  
 あなたの姿を求めて目を動かしますが、視点が定まらず白黒に明滅します。  
 おなかの中から全身に向けて快楽の波が押し寄せて、あなたの動きに合わせてほとばしります。  
「んんっ!やっ、あぁ!だめっ、いっちゃうっ!」  
 すでに何度か軽い絶頂があったかもしれません。息は切れて、心臓は激しく鳴って、わたしの体はもう限界に近づいていました。  
 それを察したのか、あなたは動きを更に早くします。もう視界がはっきりせず、音だけがやけに響いて。  
 もうすぐ、もう少しで。  
「志弦っ!出すよっ!」  
「出してぇ!お願いっ!中にぃ!ああっ……ふあああぁぁぁぁぁっ!!」  
 今まで味わうことの無かった絶頂の感覚。あまりの快感に意識がうっすらと遠のいていきます。  
 そんな意識の中、暖かいあなたの精液がとくとくといいながらわたしの中に注がれる感覚だけを鮮明に感じていました。  
 とくん、とくん、とわたしのおなかの中に注ぎ込まれるそんな音を聴きながら、わたしは絶頂の中で意識を失っていきました。  
 
 
 目を醒ますと、少し熱っぽくて頭がぼうっとしました。  
 体を起こすと全身がだるくて、胸とあそこには鈍い痛みが残っています。  
 体を見ると新しいパジャマに着替えさせてもらっていて、体もきれいに拭かれているようです。  
 傍らにあなたの姿は無く、台所の方から気配を感じます。手を伸ばすとカップがあって、わたしが眠ってからもずっと世話をしてくれていたことを語っています。  
 そんなあなたの事を想い、今日だけは、何も考えずに幸せな気分のまま眠りにつける気がしました。  
「ごめんなさい。ありがとう、雅孝さん。こんな自分勝手なわたしを、許して下さいね」  
 カップに口をつけるとほんのり甘く、すぐにまた眠くなってきます。  
 そのまま身を任せて目を閉じ、幸せな夢が見られる事を願って、わたしは眠りに落ちました。  
 

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