紀香が外出から戻ると、玄関には剛の靴だけがあった。  
(今日はバイトは休みだって言ってたっけ)  
靴を揃えて家に上がり、台所で麦茶を淹れる。  
麦茶を飲み干してグラスを置くと、自分が着ているには珍しい、ふわりと可愛い服が目に入った。  
(剛とは最近、晩ご飯か朝くらいしか会ってないなぁ…)  
モデルにスカウトされてから、普通サイズの女の子のように髪を飾ってみたり、可愛い服を着てみたり。  
ちょっと変わった自分を、普段は淡白な兄弟にも見てもらいたい。そんな浮かれた気持ち。  
 
男部屋を小さく、しかし聞き逃されないようにノックしてから、そっとドアを開ける。  
案の定剛は三つあるベッドのうちの下段、自分のベッドで寝ているようだった。  
「剛。つーよーしー」  
ベッドを覗き込んで剛の名を呼んでみるが、反応は全くない。  
「剛ってば」  
腕を少し揺らすと、不愉快げな声を上げて剛が目を開けた。  
「あ、起きた」  
「起こしたんだろ…何なんだよ、人が寝てるときに」  
イライラと頭を掻きながら剛が半身を起こす。その横で、紀香はくるっと回ってみせた。  
「ね、見て見て。可愛いでしょ?」  
「はァ?!」  
面倒臭そうに、しかし剛はさっと見て、「興味ねぇ」と切り捨てた。そして寝直そうとまた転がる。  
「興味ないって、剛ってば!」  
紀香はめげずにもう一度剛の腕を引っ張った。うるせぇな、と剛は振り払ったが、紀香も負けない。  
「剛ってば!」  
「うるっせぇよ、もう」  
再び紀香を振り払うようにして剛は起き上がった。欠伸と伸びをしてベッドから降りる。  
「どこ行くの?」  
「喉渇いた。何か飲んでくる」  
「えー?ねぇ剛、見てってば。どう?」  
紀香は剛の前に立って、スカートをひらりと持ち上げてみた。  
瞬間、紀香のむっちりとした太もも、そして白い布まで見えて、剛は目を奪われた。  
ここのところバイトで疲れてすぐに寝るためゆっくりと抜く暇もなく、且つ寝起きだったためその白さは剛の股間を直撃する。  
しかしまだ剛は理性の人だった。紀香には何も言わず部屋を出ることにする。しかし、  
「ねぇ、待って」  
と強く腕を引かれて、紀香の大き目の胸に肩が当たって、そんなものはふいと消え失せていった。  
 
どん、と紀香を壁に突き飛ばす。  
「きゃっ?!」  
急に振るわれた暴力と背中の痛みに驚いて、紀香は小さく悲鳴を上げた。  
軽く頭まで打って、くらりとしたところで、強い音がして顔の横に剛の拳が突かれる。  
「え…何…」  
「見ろってんだから、見てやるよ」  
剛はイラつきを隠せない低い声で呟くと、いきなり紀香のスカートを捲りあげた。  
「きゃあっ!!」  
慌ててスカートを抑えようとする紀香の手を、剛が寸前で止めた。紀香自身に叩き返すように乱暴に放る。  
追い詰められて大人しくなった紀香の足元にかがみこむと、そろそろとスカートを上げていった。  
軽い生地は簡単に纏め上げられて、紀香の年には不似合いな白いショーツを見せる。  
「やだよぉ…」  
ショーツに手を掛けた剛を、弱弱しい声で制止する。構わず剛は、小さな布を紀香の膝上ほどまで引き下ろした。  
「あっ…」  
もっさりと濃い目の茂みが、剛の目の前に晒された。羞恥に少し震えている。  
「夏なんだからさ、手入れくらいしろよ。のんちゃん」  
言いながら剛はそれにそっと触れた。クセのある感触と共に、その下でふるえる紀香の肌も楽しむ。  
茂みを掻き分けて拡げると、やはり大きめの肉芽がぷっくりと膨らんで、紀香の興奮を剛に伝えた。  
「へぇ…」  
剛とて、女性のそれを生で見るのは初めてである。イメージとしてのそれはあるが、現物となるとまた違う。  
触感、匂いを伴う生々しさに、剛はごくりと生唾を飲み込んだ。  
ふくらんだ肉芽にそっと指を当てると、小さな叫びと共に紀香が身を引いた。  
「やっ…」  
体を動かしたことで、肉芽をかばっていた包皮が持ち上がり、小さなピンクの勃起がむき出しになる。  
しかし経験に乏しい剛はそれに気付かず、無遠慮にそこを擦りたてていく。  
「あ、やあぁっ」  
形を確かめるような指。周辺を何度も執拗に撫でられて、紀香は思わず声をあげた。  
硬く閉じられていた膣口が、刺激に反応して徐々に開いていく。じわりとそこが濡れていくのを、紀香は感じていた。  
小さな勃起に触れる剛にも勿論それは伝わって、その指をしとど濡らしていく。それに助けられて紀香の勃起を擦れば、  
僅かだった湿り気がぬるぬると剛の指を汚していった。  
その指が膣口をノックする。  
「やぁっ」  
それまでにないほど紀香が身を捩る。その表情が頑ななのを見て取って、剛はそこは諦めた。  
そのかわりのように、滴るような紀香のそこに顔を寄せる。むわっとした女の生臭さが鼻を突いて、剛は顔を歪めた。  
「臭ぇ」  
それは本心だ。しかしそう言いつつ、その匂いが剛の男を刺激するのも、剛は自覚していた。  
「あ、やだっ…」  
紀香の濃い茂みに、剛は鼻を埋めた。女の匂いが濃厚になり、それに興奮して鼻をすりつける。  
高い恥丘をぐりぐりと刺激されて、紀香は夢中で剛の髪を掴んだ。  
「やだ、止めてよぅ…剛ぃ」  
みじかい吐息で、紀香は反抗を口にする。剛が舌を出せば、それが膨らんだ肉芽をつついて、制止の声は「ひゃんっ」という嬌声に変わった。  
 
「あ、あ、あぁん…」  
硬く尖らせた舌が肉芽を嬲る。口唇がそこに張り付く。初めての刺激に、紀香は声を上げて震えた。  
とろとろと奥からあふれてきた蜜が剛に伝わり、剛は鼻で肉芽を弄りつつ、蜜を舐めとっていく。  
「剛…つよし、もう止めて」  
切ない声で紀香が泣いた。  
「止めんの?」  
じゅ、と音を立てて吸い上げる。少し開かれた紀香の膝がぶるぶると震えた。  
舌を出せば蜜の雨が落ちてくるほど濡れているのに、止めてしまっていいのか。  
「お願い…」  
むせび泣くような懇願。やりすぎたか、と剛も思う。  
「じゃ、ここだけさせてよ」  
「え…?」  
するり、と自分の舌の横に指を添えた。そのまま、先ほどは硬かった膣口まで滑らせる。  
指は剛の唾液と、紀香の蜜に助けられて、難なく紀香の中に侵入した。  
「あっ痛っ…」  
くり、と中で指を回す。  
「あんっ」  
逃げようとする腰を抑えて、剛は少し無理に奥まで入れていく。肉芽を舐って感覚を散らし、中指が根元まで入ったところで中を掻きまわした。  
「やぁっ、止めて、痛いっ」  
「痛い?こんなになってて何が痛いんだよ?」  
ぐちゅぐちゅと音がする。痛いはずの中からどんどん蜜が溢れて、床にぽたぽたと滴った。  
「のんちゃん、凄い感じやすいんじゃねぇ?」  
「あん、そん、な」  
「初めてなんだろ?指だけでこんなんってどうなんだよ」  
言いながら、人差し指も押し込んだ。  
「あんっ、い、やぁ…」  
熱くて狭い内壁が、ねっとりと剛の指に絡みつく。ぎゅぎゅっと締めてくるそこは、しかし決して指を拒否していなかった。  
「つよし、や、痛いよぉ…」  
激しい異物感は紀香の中を探り、僅かに抜き差しされつつ、紀香の反応を窺っていた。  
敏感な突起を何度も舐めあげられて、その度に切ない声が漏れる。  
剛の執拗な肉芽への舌責めに合わせて、紀香の腰はゆっくりと動いていた。  
「あ…つよし…やめて…」  
はぁはぁと短い吐息でそんなことを言う。しかし紀香の手は、剛の髪をしっかり掴んで、引き剥がす様子はなかった。  
「止めんの?」  
ぐちゅりと音をさせながらまた指を増やす。紀香のそこはまたそれを呑みこんで、あやしく腰を揺らした。  
とろとろと滴る蜜が剛のてのひらからこぼれるほどになる。剛は舌で転がしていた肉芽を、きゅっと口唇で吸い上げた。  
「きゃあああああああっ」  
プシャアアアアアアアアアァァァァァッ  
悲鳴と共に吹き出されたものが、剛の顔を汚した。  
 
「信じらんね…」  
剛は指を引き抜くと、怒りを込めて立ち上がった。実際、初めての手淫で潮らしきものまで吹けば大したものだが、今の剛には顔に分泌物をかけられた怒りしかない。  
力の抜けた紀香の指は、簡単に剛の髪を解放した。短い息を繰り返して放心状態の紀香を裏返して、壁に手をつかせる。  
肩を少し下げさせて、腰を剛に突き出すような体勢にさせた。  
「のんちゃん、膝締めてよ」  
「え…」  
「え、じゃねぇよ。人に汚いものブッかけといてただで済むとか思うな」  
紀香が良く解らないまま膝を閉じると、剛はその内股にすっかり勃起していたものを突っ込んだ。  
「やぁっ!」  
硬く熱いものが紀香の内股を擦っていく。太ももまで垂れていた紀香の蜜がまたあふれ出して、剛の動きを助けた。  
「あん、あん、あっ、やぁっ」  
剛は紀香の腰を掴むと、動きに合わせて前後させる。むちむちとした太ももにぬるりとすべって、剛にえも言われぬ快感を伝えた。  
「のんちゃん、動くなよ、入っちゃうぞ」  
「え、え、あんっ」  
剛の言葉は紀香の耳に届いていなかった。敏感な筋を硬いモノが擦りたて、勃起したままの肉芽を熱いモノが突いて、膝が開きそうになる。  
その度に剛に尻たぶを張られては必死に膝を締めた。  
じゅっじゅっと内股を剛のモノが前後して、腰から膝までが性感帯のように震えが止まらない。  
「や、やん、や、あぁんっ」  
剛に動かされなくても、紀香は自分から腰を動かしている。  
とろとろ、とろとろと蜜があふれて、  
紀香は軽く失神した。  
 
ぐ、と体に激しい違和感を感じる。  
「え?」  
それに気を戻した瞬間、それは紀香の全身を貫いた。  
「ああああああああぁんっ」  
ずっぽりと、剛が紀香の中に入ってしまっている。  
激しい圧迫感と痛み、それに勝る妙な恍惚感に、紀香は慄いた。  
「だから、動くなって、言ったのに…」  
気がつけば、剛の声が驚くほど近い。  
剛は紀香の背中に被さるようにして動きを止めていた。剛の顔がすぐそばにある。  
「やめてぇ…つよし、お願い、もうやだ…」  
またぞろ動き出した剛に、紀香は涙ながらに訴えた。意思に反して、紀香の腰も動こうとしている。  
「もうムリ」  
言い捨てると、剛は少し引いてまた突き入れた。紀香の短い悲鳴は非難ではなく、嬌声だった。  
びくびくと腰と膝がふるえる。それは怖がってるようで、次を期待しているようで。  
剛は紀香の手を取ると、剛を収めているその口に導いた。  
「やだっ」  
拒否はしても、紀香の指はそこを探る。自分で触れても快感の走るそこ、割られた口に硬いモノが突き刺さっているのを確認して、紀香はまたふるえた。  
剛は紀香のチュニックをたくしあげると、ブラジャーのカップを引き下げた。豊満な乳房が飛び出して、ぶるりと揺れる。  
「やめてぇっ」  
胸を掴んで揉みしだく。硬く立っている乳首を捕らえると、紀香の中がきゅっと締まった。  
「のんちゃん、力抜いてよ。痛すぎ」  
「や、だぁ…」  
腰を使い出すと、紀香は怯えたように腰を引いた。  
「ん・・・やだ、あ・・・」  
かまわず、剛はピストンを始める。その度に紀香のそこはじゅるじゅると音を立てて、紀香自身を貶めていく。  
「あっ、あっ、あっ、あぅんっ」  
腰の動きが、剛のせいなのか自発的なものなのかも、もう解らない。  
優しさのない強さで乳房を揉み上げられて、痛みより快感を感じる自分の体も、もう解らない。  
 
「あっ、ああっ、つよし、あんっ」  
ぎゅっと乳首をひねり上げられて、紀香は尻を剛に押し付けた。より深いところに異物を感じて、恥ずかしい声が止まらない。  
「や、やぁあっ」  
ぶんぶんと首を振ると、剛が動きを止めた。  
「あ…?」  
「嫌なんだろ?」  
「………」  
腰がぶるぶると震える。早く続きをして欲しい、と自分とは違うものが叫んでいる。  
「つよし…」  
「何だよ」  
「止めないで…」  
未知の感覚に、紀香はあっさり屈服した。  
剛は意地悪く笑うと、紀香の足を更に開かせ、再び自身を押し込んだ。  
「あああんっ」  
ひときわ高い声が、行為の再開の喜びを謳う。徐々に早くなるピストン、揉まれすぎて赤みを帯び始めた乳房が、お互いの興奮を伝えた。  
「のんちゃん、どう?」  
「あん、あ、あ、」  
「気持ち良い?」  
ベタと言えばベタな問いに、紀香は頭を振る。しかし腰をグラインドされて、紀香の意地は飛んだ。  
「つよしぃ、きもちいいよぉっ」  
「あ、そ」  
ぐいぐいとかき回されて、爛れたはずの紀香の中もまだまだ潤っていった。  
「あん、あん、きもちいい、きもちいいよぉっ」  
「のんちゃん、だめ、もう出る」  
「あ、つよし、あんっ」  
「出る、出るよ」  
「ダメ、まだっ…」  
ドピュルルルルルルル…  
じゅじゅじゅじゅじゅ…  
放たれた精が、中を満たしていくのがわかる。  
行き場のなくなった媚肉が蠢いて、剛のモノを絞った。  
気が抜けて支えを失い、紀香の体ががくりと落ちる。それでも名残惜しそうに、紀香の中はびくびくと剛を締め続けた。  
出すだけ出して硬さを失ったモノが引き抜かれると、紀香はその場でへたり込んだ。剛は肩でぜいぜいと短い呼吸を繰り返す紀香に背を向け、  
「風呂入ってくる。のんちゃん、そこ綺麗にしといてよ」  
紀香の蜜と剛の精の散った床を指して、とっとと階下に下りていった。  
 
紀香は物足りなげにその足音を見送ると、ティッシュを探し出して床を拭き始める。  
そして、泣き出した。  
 

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