「これはスピノーラ殿、よくぞ参られた。我が国の勢力状況をお教えしよう……」
イングランドの君主はどこか虚ろな声で地図を広げる。我輩は黙って世界の大陸と島々が描かれた図面を見た
が、そこに広がっているのは祖国の絶望的な状況だ。ヘンリー、お前の部下皆使えねぇな。牛肉に爵位与えてる
場合じゃねぇだろ。
「我が国の同盟港の総数は4である」 ちょっと待て。ついこないだまでは6じゃなかったか。
「欧州からの収益は……である」 ごめん、よく聞き取れなかった。そんなに言いたくないのか。でもまあアント
ワープ無事ならいいか。いや待て、欧州ですでに同盟港4つじゃん。もしかして?
「新大陸に我が国の港は無い」
あ、やっぱり。イスパニアに取られちゃったのかな。もう答えは分かりきってるけど、一応他の地域も聞いてみる。
「西アフリカに我が国の港は無い。東アフリカに我が国の港はな(r 中近東に我が国の(r インドに(r」
同じ言葉を繰り返す国王の顔が段々苛立ちに、怒りに変わっていくが、徐々に諦念の色が浮かぶ。
「……東アジア(r 。少しはそなたの役に立ったかな」
そう言って微笑む国王の顔は、覚悟を決めた殉教者の顔のように清清しい。もうだめじゃんこの国。
とりあえず酒場で一杯やりたいと思ったが、せっかくだから金をせびろうと衛兵に声をかける。
「陛下は金貨2000枚の援助をされるそうです!祖国のために頑張ってください!」
まだ幼さの残る顔だちの衛兵が、すがるような目で言う。何だよ2000枚って。だが衛兵の錆の浮いた槍とかボロ
ボロの胸甲とか見てたらホントに可愛そうになってきた。しょうがねえ、抱いてやるよ。
衛兵の身体を覆う甲冑と衣服を無理矢理引きちぎり、王宮の冷たい床に押し倒す。そして