その木は名前も聞かないような小さな村の外れに忘れられたように立っていた。
自分が暮らしていたパプニカには無い、その木に惹かれたように足を止める。
草木を愛でるようなしおらしい感性は持ち合わせていなかったが
凛とした佇まいや、可憐に咲く花の美しさに息を飲んだ。
初めて見た木なのに何故か酷く懐かしい・・・不思議な気持ちで舞い落ちてくる
薄桃色の花びらに目をやっていると、隣にいた男が感慨深げに息を吐く。
「ああ・・・そうか、もうそんな季節なんだな」
落ちてくる花びらを眩しそうに見上げてラーハルトが静かに呟いた。
黙って言葉の続きを待つ俺がよほど珍しかったのか、肩をすくめ軽く笑った後
幹に手を当て、からかうような顔で俺を覗き込んでくる。
「なんだ、珍しい・・・。この木がそんなに気になるのか?この木は」
ラーハルトの言葉を聞いて、この木に目を奪われた意味が分かった。
胸にじわりとこみ上げてくる懐かしさと愛おしさ。
風に合わせて俺を包むようにふわりと落ちてくる桃色の花。
凛としているのにどこか儚さを感じる優しくて不安定なその姿。
(ああ、だから懐かしいと感じたのか・・・)
舞い落ちる花びらを眺めながら、数ヶ月前に別れた彼女の事を思い出した。
「・・・そう、ご苦労様。じゃあこっちを探しても意味無いわね」
地図を広げながら、姫は赤い×マークをつけて軽くため息を付く。
数日後、パプニカに戻った俺は報告の為、姫の待つ広間で今後の打ち合わせをしていた。
彼女が中心で司令塔役をしてくれているおかげで、俺達は効率的にダイを探す事が出来る。
だが、彼女が捜し求めている勇者は一向に見つからない・・・・。
切なげに地図を見る姿に胸を痛めていると、彼女は驚いたように俺を見て首を振った。
「・・・ああ、違うのよごめんなさい。しょげてる訳じゃないの、ちょっと疲れただけで」
「・・・・・?」
その慌てるような仕草に違和感を覚えながら、軽く頷くと彼女が恥かしそうに笑った。
そして地図にある小さな島に指をやり、俺に見せるように赤い◎マークを付けて微笑んだ。
「ポップ君がさっき飛び切りのネタを持って帰ってきてくれたの・・・。
場所によってはあなたにお願いしようと思うから、しばらく城で待機して貰えるかしら?」
「もちろんだ・・・早く、見つかると良いな」
その声に再び姫が驚いたように顔を上げて、マジマジと俺を見つめてくる。
「本当にビックリだわ。あなた・・・・随分変わったのね」
「・・・・・?」
姫の言わんとする意図が分からずに顔をしかめるていると、彼女らしい含みのある顔で
笑いながら俺を眺めてきた。
「ごめんね、決して悪い意味じゃないの。・・・それより食堂に行って来たら?
この時間なら『みんな』いると思うから久しぶりに会ってきなさいよ」
「みんな・・・・?」
「あら?さっき言ったじゃない、ポップ君が帰ってきたって。みんないるわよ」
彼女の口調から『みんな』が、言葉通りでは無く特定の誰かを指しているの分かる。
まるで全部知ってるのよ、と言う目で笑いながら彼女は俺を部屋から追い出した。
(変わった・・・・俺が・・・・?)
その言葉の意味を考えながら、長い廊下を歩いて皆が待機している食堂に向かう。
あの短い会話の中に一体姫は何を感じ取ったのか・・・そんな事を考えながら
兵士達でざわめく食堂のドアを開ける。
静かな城の廊下とは違い、昼食時の食堂はまるで市場のような賑わいを見せている。
突然世界が変わったような喧騒の中で、目は自然と彼女の姿を探していた。
今回の旅の朗報をはしゃぎながら話す魔法使いの方を見てもその姿は無い。
大切な物を失くした子供のような・・・そんな余裕の無さを感じながら
桃色の髪を捜していると、魔法使いから少し離れた場所で小さな人だかりが出来ていた。
途切れる人と人の間、埋もれるように大勢の中心に見えた懐かしい髪の色。
見つけたと思った瞬間、彼女は気付かれるのを待っていたかのように俺を見て
ふわりと微笑んだ。
「――――――――っ!!!」
その瞬間、自分の体が音を立てて赤く染まって行くのが分かった。
どんな危険な場所に立っても動揺する事が無かった心臓が、たった一人に会っただけで
ドクドクと壊れそうな音を立てている。
赤くなった顔を手で覆いながら、冷静さを取り戻そうと呼吸を整える。
いつから俺に気付いていたのだろう?最後に会った時より随分と髪が長くなっていた。
髪を一つに纏め上げ装備も武道家服では無く、僧侶戦士の頃に似た服装に変わっている。
危険な場所を旅していたのか、少し細くなった体を見て彼女の肌を思い出す。
あの肌に触れたのはいつの夜だっただろうか、擦れるような声を聞いたのは―――――。
(バカらしい。いい年をして堪え性の無い・・・)
止まる事無く溢れ出てくる欲望に自己嫌悪を感じながら、軽く首を振り邪念を払う。
言葉すらまだ交わしていないのに、彼女の事になると何故こんな風に余裕が
無くなってしまうのか・・・そう考えた時、ふと姫の言葉が頭をよぎった。
(確かに・・・変わったのかもしれない)
少し熱の引いた頬を触りながら窓の外を眺めて、いつか見た景色を思い出す。
光溢れる場所に凛と力強く佇んでいた一本の木。
初めて人と共有したいと思ったその儚げで色濃い景色・・・。
(まだ、間に合うだろうか・・・?)
優しく舞い落ちる花の色を感じながら、懐に入れた小さなアイテムを握り締めた。
――――――― 夜。少し肌寒い空気の中、小さな村の外れにゆっくりと降り立つ。
まるで、吹雪のように舞い散る桃色の花を見て、横に立つ少女が軽く息を飲んだ。
「・・・・すごい、これがあなたが見せたかった場所?」
静かに頷くと、彼女は感嘆の息を吐きながら魅入ったように綺麗・・・と何度か呟く。
そして惹かれるように幹の傍に立ち、零れ落ちてくる花びらを静かに眺めていた。
「こんな木があるのね・・・力強いけど綺麗で優しい、不思議な木・・・」
「ラーハルトに教えて貰ったんだが、この国では一般的な木らしい・・・場所によっては
山全体がこの木の色で染まる所もあるそうだ」
「山が桃色に染まるの?・・・すごい、私の村じゃ考えられない・・・・」
何気ない会話を交わしながら、彼女の肩や髪に落ちてくるそれを取ってやる。
指の動きに身を縮ませ恥かしそうに頬を染める姿を眺めながら
自分のマントで包むように彼女の体を抱きしめた。
「ヒュン・・・ケル・・・・」
「まだ、ここは少し肌寒いな。その格好では寒くないか?」
首元でそう囁くと、彼女は頬を紅く染めて小さく首を左右に振る。
夜、城にいた頃と同じように、簡素な夜着で部屋に来た彼女をここの場所まで連れて来た。
薄い布から伝わる懐かしい肌の温もりを感じながら、抱きしめた腕を強めて首に顔を埋める。
「・・・・っ!ヒュン・・・ケル・・・・」
言葉には応えず強張る体を押さえ、撫でるように白い首に舌を這わしていく。
舌の動きにあわせて震える体を抱きしめながら、朱色に染まった彼女の顔を眺めた。
花と同じ色に染まった頬や、少し色の濃い髪を撫でながらそっと顔を寄せていく。
逃げようとする腰に腕を回し、濡れた唇を舌で舐めるように口付けた。
「―――――――んっ、っ」
口の端から漏れるように聞える甘い吐息や腕の中にある柔かい体の感触に
背中に熱いものが走っていく。
一体どれくらいこの肌に触れていなかったのか
一体どれくらいこの声を聞いていなかったのか
一体どれくらいあの柔かい体温に入れなかったのか・・・。
抑えていたものが一気に溢れ出すように体を駆け抜ける。
戸惑う彼女の口に強引に舌をねじ込み、ふくよかな乳房に手を伸ばした。
手から溢れるその豊かな膨らみを持ち上げるように指を大きく動かしていく。
余りに性急な動きに驚いたように俺を見ながら、頬を真っ赤に染め
俺の手を離そうと力を込めた。
「やっ・・・少し待っ・・・・んんっ!」
「・・・・何故?」
聞き返されると思わなかったのか、俺の問いかけに彼女の手が動きを止める。
重ねるように俺の手を握りながら、恥かしそうな、少し困ったような顔をして俺を見つめる。
「だって・・・。こんな所で・・・・」
「・・・・何故?」
聞き返すと、彼女は頬を染めながら困ったように目を逸らした。
その初々しい仕草を愛しく感じながら、彼女を追い詰めるように、強く抱きしめて
木にもたれるような形で、柔かい体を押さえ込んだ。
その動きで軽く揺れた木から、ふわりと花びらが舞い落ちる。
乱暴な事はしたくない・・・もっと優しく抱いてやりたいと思っているのに
欲望に抑えが聞かず暴れ出している。
花が舞い散る中、驚いたような戸惑いの色を浮かべる瞳を見てそっと頬に口付ける。
そして、わずかに残る理性で彼女に優しく、そして一番卑怯な言葉を投げかけた。
「・・・このまま抱きたいと思うのは、お前にとって迷惑な事だろうか・・・?」
その言葉に、マァムは戸惑いの色を浮かべて静かに俺を見つめて来た。
こう言えば彼女は決して嫌がらない。自分の欲望を吐き出すために彼女の優しさを
利用する自分に嫌悪を覚えながらも、溢れ出した欲望は止まらない。
抵抗が緩まった手を持ち上げて、手の甲に優しく口付けた後、細い指に舌を這わした。
「―――っ!」
驚く彼女を眺めながら小さな指を口に含み、唾液を絡めしゃぶりついていく。
胸の突起を嬲るように・・・指先を軽く噛むと、抱きしめた体が素直に反応して震えだした。
久しぶりに感じるその従順な反応に軽く笑って、空いた手で夜着を捲り上げた。
ふるんっと瑞々しい音を立てて白い素肌が夜の闇に晒され、形の良い体の線が露になる。
「っ!!?うそ・・・こんな、所で・・・・」
「そのまま・・・」
動かずに―――。と耳元で囁いた後、指から腕、腕から鎖骨に舌を這わした。
白い肌を汚すように所々で噛み付き、刻印のような跡を付けていく。
軽い痛みに耐えるような短い吐息と共に、彼女の体がゆさりと揺れる。
それに合わせるように、桃色の花が彼女の白い肌に流れるように落ちていく。
温かな素肌と冷たい花びらの感触を舌で感じながら、両手で弧を描くように乳房を撫でた。
「・・・っん、お願い・・・ヒュンケル、・・っ・・・ヒュン・・・」
愛撫に耐え切れないのか、彼女が小さく首を振りながら何度も俺の名前を呼ぶ。
まるで祈るような細い声で呼ぶその名前は、聞き慣れている自分の名のはずなのに
別の言葉のように優しく甘く脳内に響いてくる。
耳の奥で聞えるその甘い音をもっと深く感じたくて、まだ柔かい突起に歯を立てた。
「ひゃ・・・!!ぅ・・・あっ!!」
一番弱い部分を攻められ、抑えきれずに悲鳴のような声が彼女の口から零れた。
すり潰すように舌先で突起を舐めながら、乳房の形を変えるように揉みしだく。
恥かしそうに唇を噛み締めて声を抑える姿を確認しながら、自分が望むままに
肌に吸い付くような温もりを感じていた。
「・・・っ、う・・・・んっ!んん」
漏れる声を抑えるように肩に掛かったマントを口に含んで、彼女は指の動きに耐えようと
必至に俺の体にしがみついてくる。
肩に絡まる細い手や、柔かい髪の香りに目眩を覚えながら、口付けの代わりに耳たぶを
甘く舐めた。
幹を支えにして彼女の足を抱え上げ、引き千切るように清楚な下着を剥ぎ取る。
驚きながら俺を見る彼女を無言で見つめ返して、潤いの足りない蜜壷に指を押し入れた。
「・・・やっ・・・こんな所で、・・・無理・・・んんっ!!!」
声を塞ぐように口付けながら、指が入りやすいように柔かい尻を持ち上げて
宙に浮くような格好で細い体を抱きしめた。
絡まる舌と零れる唾液から、指の動きに合わせて押し殺したような喘ぎ声が漏れていく。
彼女が痛みを感じないように、何度も優しく指を出し入れして狭い膣内を広げていくと
粘り気のある潤いが彼女の内股を濡らし始めた。
「うっ・・ぁん、お願い・・・こんな・・・ぁ」
大きく広げた足から零れる蜜が、尻を伝って俺の手や衣服を濡らしていく。
くちゃくちゃとした卑猥な音を立てて、二本の指を受け入れる濡れた温もりを感じながら
唇を離し、ズボンから硬くそそり上がった欲望を抜き出した。
引き抜いた指の代わりに当たるその大きな塊に、彼女が体を強張らせ俺を見つめる。
その視線には恐怖の色が微かに浮かび、抱きしめた体が逃れようと微かに動く。
怯えにも似た気配を感じながら、その気配を尊重せず、肉棒を濡れた膣内に押し込んだ。
「うっ!!・・・ん、ぁ・・っ!ぁん・・・っぅ!!」
久しぶりに男根を受け入れるソコは硬く閉ざされ、進入する度に苦しい音を立てる。
痛みに耐えるように唇を強く噛み、抱きついてくる体を撫でながら一番深い所まで
半ば強引に全てを埋め込んだ。
全てを迎え入れ、荒い息を吐く彼女を休ませる事無く、俺はゆっくりと腰を動かし始めた。
「えっ!!??ぁ・・んっ、ふぁ!・・・あっ・・・っん!!」
恋人同士の行為では無く、まるで犯すような激しい動きで彼女の膣内をかき回していく。
狭い膣内を広げるように掴んだ尻を大きく広げ、彼女を壊すような激しい動きで
腰を突き動かした。
「ああっ・・・!!んっ、や・・・ぁん!!!!ふっ、んん・・・」
上がる声に合わせてまるで雪のような花びらが目の前に広がり、俺たちを包み込む。
花びらに包まれながら淫らに揺れている彼女はとても幻想的で、まるで別の生き物を
抱いているようなような不思議な高揚感があった。
次第に高まってくる熱を感じながら、涙で濡れた頬を舌で舐めながら彼女を眺めた。
(花にも言葉がある事を知っているか?)
あの日、ラーハルトが口にした言葉。
(清楚・清らか、と言う意味らしいぞ。似合っていると思わないか?)
その言葉を聞いて、自分がこんなにも魅かれた理由が分かった。
とてもよく似ている愛しい少女を思い浮かべ、花に似た柔かい肌の匂いを思い出した。
―――――――汚してしまいたい。と
純粋な愛情では無く、清らかなものを汚していくあの歪んだ欲望が真っ先に浮かんだ。
「ヒュン・・・ケル・・・ふっ・・・ぁんんっ!!!」
そして、夢見た通りに少女は自分の腕の中で、普段からは想像も出来ないような
淫らな声で俺の名前だけを呼び喘いでいる。
もう幾度の往復も我慢出来そうに無い荒々しい欲望を、彼女の中で吐き出すために
更に激しく腰を動かしていく。
「ぁっ・・・ああっ!っ・・・・ぅん!!」
膣内で圧迫する肉棒を感じるように声をあげ、頼りない手で俺に抱きついてきた。
そして、ねだる様に舌を出し俺の唇を求めてくる。
それは昔抱いた時に気付いた、彼女が達する前のクセ・・・。
「・・・・っ。マァ、ム」
差し出された舌に応えるように、深く舌を絡め唇を塞ぐ。
きゅうっと締まる膣の締め付けを感じながら、彼女の中に白濁とした欲望を叩き込んだ・・・。
「・・・・・っん・・・・?」
朝、知らない鳥の声で目を覚ます。
ここはどこなんだろう・・・と考えた時、ふと自分の体を包む大きな手に気付いた。
視線を上げると、銀色の髪と花びらがふわふわと目の前で揺れている。
絡まるように髪に掛かる花びらを取りながら、冷めない頭で昨夜の事を思い出した。
あれから木の下で何度か求められた後、私は気を失ったらしい・・・。
目が覚めた時は宿のベットで、彼が開放してくれていた。
・・・そして、目が覚めてからも飽きる事無く彼は私を求め続け、何度目かの時に
また意識を失った事を思い出し、体に残っている鈍い痛を感じて頬が染まる。
鈍い痛みと、体中に残っている痣のような跡を撫でながらぼんやりと呟く。
「初めて見た・・・。こんな風に形に残るんだ・・・・」
想像していたよりも、ずっと鮮やかに自分の肌に残るそれはまるで印のようだと思った。
不思議なむず痒さを感じながら、彼がつけたその跡を辿るように、指でなぞっていく。
その時、彼の腕に残った花びらを見つけた。何気なく取ろうと手を伸ばした時
自分の中に軽い欲望が芽生えるのが分かった。
(・・・どうすれば良いんだろう・・・・)
自分を包む腕を軽く持ち上げて、聞きかじった知識と彼の真似をしてその腕に吸い付いた。
ただ、吸い付いただけでは何も残らない。今度は少し歯を立てて吸い付いてみる。
何度かそれを繰り返した後、自分につけられたものよりも色の薄くて小さな跡が付いた。
まるで花びらのように残る跡が嬉しくて、深く眠る彼の頬をゆっくりと撫でる。
彼が自分を求めてくれる事が自分にとっての最高の幸せだと思っていた・・・けど。
「これが、独占欲っていうんだ・・・・」
自分の中に芽生えた初めての感情。彼の中に自分を残したいと言う欲望・・・・・。
初めて付けた自分の印を撫でながら、ゆっくりと彼に口付ける。
彼によって変わっていく自分を嬉しく、そして少し怖く感じながら甘えるように体を寄せて
呼吸を合わせるように眠りに落ちた・・・・。
――終――