あの後も相変わらず、煽情的なセックスをどちらからともなく繰り返している――。  
 
みんなこうなんだろうか?  
それとも言葉足らずの俺たちだけ?  
 
 
あいつは否定もせず、肯定も、しない。  
 
ただ二人で汗ばむだけだ。  
あの日以来、乱暴なことは一切しないようにしているけれど、行為の最中に好きだとか、離さないとか、そういう言葉も無い。  
 
 
それを言えば、もし気持ちが冷めていけば俺は嘘吐きになりそうで、―――嫌だ。  
 
 
あいつもそんな陳腐な台詞は要らないらしく、求めてこない。  
 
 
いいんだろうか?  
 
 
―――こんなの、不健全だろう?  
 
 
 
 
彼はあたしを抱く度に、どこか物哀しい眼をする。  
 
それが何故かわからなくて、どうしてそんな哀しい眼をするのかわからなくて、あたしは夜毎、彼の扉を叩く。  
 
―――いつも何も云わずに抱き締めるから、あたしも何も云わずにそれに応える。  
 
―――本当は、たくさん言葉を交わしたい。  
 
 
知りたいのに。  
 
 
いつもはお調子者の顔なのに、夜は、違う。  
 
 
刺々しくて、冷たくて、暗い――。  
 
いつか夜も、真昼と同じように、優しい眼であたしを見て欲しい―――そう願いながら、あたしは今夜も彼の扉を叩こうとしている。  
 
 

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