薄暗い森を、彼女は彷徨っていた。
不安げに彷徨うその様子をまるであざ笑うかのように、空にはポッカリ三日月が浮かんでいた。
「多分、パプニカへ抜けるにはこっちの方角でいいと思うんだけど…」
空を見上げ月と星の位置を確認しながら、彼女は方向を定めた。
「もう…まいったなあ、こんな事になっちゃうなんて…」
ため息を付く彼女が思い出すのは、今日の昼間の事。
パプニカ城近くでモンスターと戦った時、敵の魔法でパーテイ−は全員散り散りに飛ばされてしまったのだ。
そしてマァムが行き着いたのは…深い森の中。生えている木々から恐らくパプニカ大陸ではあると
彼女は判断したが
いかんせん右も左も分からないような場所でひとりぼっちだ。おまけにモンスターも出てくる。
ずっと森を彷徨いつづけ、一人で戦い続けてきた彼女の体力は限界で、MPも底をつきそうな状態だった。
「…そろそろ見覚えのあるところに出てもいいんだけどねぇ」
マァムは溜め息をついた。
さすがのマァムも疲れ果てている。
ガサッ!
叢が揺れた。
殺気を感じる。
マァムはとっさに身構えた。
「もぅ…勘弁してよねぇ…?」
ガサッガサガサ…まだ叢は揺れている。
「…ぐすん」
――幼い泣き声。
「…?」
泣きじゃくりながら、五歳ぐらいの女の子が叢の向こうから現れた。
「…どうしたの?」
「…薬草を探していたら迷子に、なっちゃったの…」
「あら、大変ね…あたしも迷子みたいなもんだけど…」
マァムは女の子の頭を撫でる。
「あなた、パプニカの子?」
「…うん」
「一緒に行きましょ?あなたひとりじゃ危険だわ?」
「…うん、ありがと…おねえちゃん…」
微かに女の子の口元が妖しく歪んだ。
しかし闇夜の中でマァムがそれに気付くことは無かった。
幼い子供の記憶を頼りに彼女が住んでいる村を目指す。
途中疲れた様子の子供を背に抱え、ただ子供の指差すままに歩いていく。
ただ、歩けば歩くほど森はドンドンと深くなり、闇は更に濃くなっていく・・・。
「ねぇ・・・あなたの村は本当にこっち?」
「うん。ここは前おとうさんと来た事あるよ、もうすこしでみんな気付いてくれるとおもう」
その言葉を聞いてホッと胸を撫で下ろしていると、子供が自分の髪をそっと掴んで来た。
「おねぇちゃんの髪・・・きれいねぇ?」
うらやましそうに呟く声を聞いて振り向こうとした、がその子供の顔を見ることが出来ない。
背中に嫌な汗が流れる、まるで何かに縛られているように体が言う事を聞かない。
(うそ・・・・でしょ?)
戸惑うマァムを楽しそうに見つめ、子供がクスクスと笑う。
「おねぇちゃんって髪だけじゃなくて、体もとってもきれいねぇ、胸もおおきいし
やわらかい・・・・おとうさんが見たら、私いっぱい誉めてもらえる」
そう言いながら胸元にゾロリと這わす手は、既に子供の形は無く細長い異形のものだった。
黒い影が自分の体に絡まるように巻きついている、子供だった影が楽しげに囁く。
「ふふ・・・っ、おねえちゃんの体とってもおいしそう・・・・。
おとうさんがもうすぐ来るから、もうすこしわたしに味見させてね」
叫ぼうとした声は影に塞がれ、闇に吸い込まれていく。
パプニカの奥にある森――――『人間の精』を吸い取る魔物達の食事が今、始まろうとしていた。
…嘘でしょ?
――嫌!!
抵抗したいが身体の何処にチカラを入れて良いのかわからない。
「いいにおい…おねえちゃん」
首筋をぬめぬめとしたものが這う。
マァムの全身から嫌な汗が流れ落ちた。
「この前食べた人間の男…おいしくなかったわ…おとうさんも一口しか食べなかったもの…やっぱり人間の女がいいわ…」
バッ!と背中から数えきれない何本もの触手が広がった。
背中から聞こえる声は、まだ幼い女の子の声だったので、マァムは一層混乱した。
そうこうしている間に、マァムの腕が、脚が、触手に縛られてゆく。
「…っ??」
完全に身動きがとれなくなったマァム――残りの触手は容赦なくマァムの装備を剥がしてゆく。
闇に白い肌が晒された。ばりばりっと布が破かれ、マァムの上半身は裸になった。
「…っ、ぃ、ゃ…!」
やっとかすれた声が出た。でもこんな声では到底助けも呼べない。
「きれいな胸…」
10本の触手がマァムの胸に襲いかかった。
「…!ゃ、ぁ…!」
上手に胸を揉み、胸の先端の突起を擦り上げる。
「…ね、気持ちいいでしょ?硬くなってきたよ…?」
からかうようなその声に羞恥で頬が紅く染まった。
更に楽しむように触手は柔らかな胸を形を変えるように弄り揉み上げる。
8本の触手が乳房を動かし、残りの2本が胸の突起を絡み付くように吸い付いてくる。
その初めて感じる刺激におぞましさを感じながら、マァムは未知の感覚に戸惑っていた。
(や・・・っ、何・・・これ・・・)
触手が這った所がじんわりと熱い・・・むず痒くて体が不思議な疼きに支配されるようだ。
この疼きは快楽から来ているという事は、自慰も知らぬマァムが分かる訳が無く
ただ始めて感じるその疼きに耐えようと、必至に声を押し殺していた。
「おねぇちゃんって見かけよりごうじょうなんだねぇ・・・乳首も硬くいやらしくなってるのに
がまんしないでもっと気持ち良くなっても良いんだよ・・・・?」
「ちが・・・うっ、ん!!!!」
否定しようとした言葉は、一回り大きな触手によって塞がれた。
吐き出そうともがくが、触手は楽しげに歯列をなぞり舌を嬲るように絡みつけてくる。
確かめるようにマァムの口内を這い回った後、動きを変えゆっくりと口の中を出し入れする。
深い森には不似合いなぐちゃぐちゃとした粘膜の音が、闇の中で静かに響く。
「ぁ・・ん、おねぇちゃんのお口とっても気持ちいいねぇ・・・いっぱいぬるぬるしてる・・・んっ」
子供には不似合いな艶を含んだ声で、うっとりと酔いしれるように囁いてくる。
出し入れを繰り返していく内に、口の中にある触手がビクンと震えて大きさを増した。
「――――――――――っ!!んんっ!!!!」
本能的に嫌なものを感じて、口を振り逃れようともがくが頭を押えられ逃げれない。
動いた拍子に白い首筋に零れた唾液を追うように、残りの触手がマァムの体を舐めていく。
「っ・・・おねぇちゃん、のお口本当に気持ち良いから、我慢できないよぅ・・・・出すっね、っんぁ!!」
そう言って短い悲鳴をあげながら、口内に大量の液体を吐き出していく。
驚いて吐き出そうとする口を触手で塞ぎ、強引に顎を持ち上げ全て飲む事を強要する。
息苦しさから逃れる為マァムが全て飲み干すと、やっと子供は触手を引き抜いた。
「――――――――――っは!!」
ゲホゲホとむせながら、呼吸を求めるて大きく息を吐くマァムを見て子供は更に笑う。
動きを止めていた触手を再び動かしながら、ぐったりとしている白い体を持ち上げた。
子供の姿に戻り、背中から触手を生やした状態で優しくマァムに口づけする。
「ふふっ・・・ごちそうさまでした・・・。本当はもっと食べたいんだけど、これ以上たべちゃうと
おとうさんに怒られちゃう。ほら、おねぇちゃん聞える?・・・足音・・・・おとうさんが来るよ・・・」
朦朧とした意識の中でマァムは絶望の言葉を聞いていた。
あたし…どうなるの?
これから起こるであろう出来事が全く予測出来ない。
ガサガサガサ…
目の前の叢が激しく揺れたかと思うと、そこに体格の良い短い銀髪の男性が現れた。
「あ、おとうさん!」
「…良い獲物を見付けたな?偉いぞ」
駆け寄る子供の頭を撫でる姿はごくありふれた父親の姿である。
しかしマァムはただならぬ邪悪な気配を感じた。
「…だれなの…?」
やっとの思いで言葉を発する。
「あんたたちっ…人間じゃ…ないのっ…!?」
マァムの叫びがスイッチになったかのように、先程の少女と同じく、男の背中から無数の触手が勢いをつけて広がった。
「…人間だよ。あんたと一緒でな。ただ…契約をしたんだ…生きるためにね」
「契…約?」
訳がわからない。
あたしと同じ人間ですって?
そうは…見えない…!
驚くマァムに男は何か言いかけて、口を閉じた。
そうして軽く首を振りながら哂う。
「ああ・・・別に俺たちの事はどうだって良いじゃ無いか。
・・・あんたは俺たちに捕まり、嬲られ食べられる・・・ただそれだけだろう?」
あごを持ち上げマァムの顔を覗き込みながら、男は下卑た笑いを浮かべる。
その言葉に恐怖の色を浮かべているマァムを味わうように子供が乳房に舌を這わした。
「ふふっ・・・大丈夫、だよ。別に死ぬわけじゃないし、ちゃぁんとおねぇちゃんの事も
気持ちよくしてあげるから・・・・ほら、こんな風に・・・・」
「っぁ―――――――――――やっ!!!!」
這わしていた舌は動きを変え、震える桃色の突起に絡みつきながら歯を立てる。
押えきれずに上がる声が合図になり、無数の触手がマァムの体に巻きついた。
胸からあぶれた触手は、残念そうに体を這い回り、桃色の髪や口内に絡み付いていく。
二度、三度と口の中や髪を往復した後、喜ぶように震え白い液体を吐き出した。
「っえ・・・!!??・・・ぁ、やぁぁ!!!!」
自分の髪や、体を汚していく大量の液体を見てさすがのマァムも取り乱した。
この白い液体はまるで男性の精液のよう・・・知識が乏しくてもそれくらいは知っている。
混乱して暴れる姿を楽しむように、触手はマァムの体を高く持ち上げ
今まで触れなかった下半身に向かって伸びていく。
足を大きく広げ、先程から傍観している男に見せるように下着に包まれた秘部を晒す。
「・・・やめっ―――――――んんっ!!!!」
悲鳴は触手に塞がれ、ぐちょぐちょと体を這う触手の粘膜質な音だけが森に響く。
涙で濡れる顔を眺めた後、男は強引に下着を破り、まだ幼さが残る秘所を覗き込む。
誰にも入られた事が無い、硬く閉ざされたソコを眺めながら男はうっとりと呟いた。
「へぇ・・・あんた、男を知らないんだな・・・これは、本当に久々のごちそうだ」
獣のように舌を舐めて男は顔を近づける、そして薄く濡れて光る秘所に舌を這わし始めた。
「やぁ!」
声とは裏腹に身体は甘い蜜を生産してゆく。
次第に下から湿った音が響く。
「何が『嫌』だ!クリトリスもこんなに硬くしやがって…本当に処女か?」
男はわざと下品な口をきいた。
そしてすっかり硬くなったクリトリスを舌でもてあそぶ。
「い、やぁ…しびれっ…」
初めての刺激。
それは痛いぐらいに責め立てる。
「うふ…ここもね…気持ちいいよ?」
背後で湿った笑い声がした。
子供がマァムの股間に細い糸のような触手を三本ほど伸ばす。
男が執拗に責めているクリトリスの上あたりをそっと触れた。
マァムはびくんと身体を震わせた。
「…あ、そ、そこはっ…!」
「おしっこ、ここから出るでしょ?」
言い切る前に触手が尿道へ押し込まれた。
「ひぐぁっ!?痛ぁ…っ!やだぁぁっ!抜いてぇぇぇ!」
違和感にマァムは叫んだ。細い触手は尿道の中をぐりぐりと刺激し、まだ男の舌はマァムのクリトリスを舐め回している。
―――あ、なにこれ!?
下腹部あたりが甘く痺れる。脚ががくがく震えた。
マァムは絶頂を迎えようとしていた。
「うひイッ!?んぐっ!あハっ…あっあ、アンっ!いっ、んやぁぁぁぁぁぁ!!」
ぬる、と触手が尿道から出た、と思うと、マァムは激しく失禁した。
失禁しながら、潮も巻き散らして―――イッた。
男は彼女の小水で汚れた顔面を拭こうともせず、まだひくつく濡れた花びらを甘く噛んだ。
このまま殺されたほうがどんなにどんなに良かったか―――。
マァムの目から大粒の涙が溢れる。
「…どうしてこんな…」
「あんたも、怪物どもと戦う身ならわかるだろう?つまりは弱いものは強いものによっていいようにされたって文句なんて言えないんだ。わかるだろ?」
「…!」
マァムはその言葉に再度絶望した。
「…ただ命は奪わない。そのほうが非力さを思いしることが出来るだろ?」
――死刑宣告のようにそれを聞いた。
これ以上開かないというほど、マァムの両の脚が触手によって開かれ、一際太い触手がマァムの中へ一気に入り込んだ。
「ひぎゃぁぁぁーーっっ!」
味わったことのない痛みが身体の中で弾けた。
「いたっ!いたぁいっ!!いたいのおっ!ぬ、抜いてぇぇ!!」
マァムは泣き叫んだ。
「…く、かなりきついな…も、これはもたんな…っ」
男が苦しそうにうめくと同時に、触手がマァムの中に白濁液を注ぎ込んだ。
「あっ…か…はっ…」
子宮を熱い熱いもので撃たれ、マァムは身体をぶるぶると震わせた。
「…なぁに、おねえちゃん…初めてなのに…感じてるの?…やらしいねぇ」
くすくす、と背後で子供が笑う。
だけどマァムの耳には入らない。
収まりきらない液体がぼたぼたと溢れ落ちた。
抵抗するチカラはもう彼女には残っていなかった。
「俺が淫魔に取り憑いたのがあんたの運のツキだったな」
触手を抜こうともせず男はぼそっと言った。
――彼もその娘も元々はれっきとした人間だった――。
妻を早くに亡くし、娘とふたり行きていこうとした矢先、娘が謎の熱病にかかった。
男は薬草を探しに入ったこの森で淫魔と出会った。
娘を助けるかわりに、人間としての姿を捨てよ。
『契約』。
男はそれでも構わないと思った。
娘とふたり、行きていけるなら――。
人間の精を吸い取れば、少量で20年は生きられる。
今の姿のまま年老いることもない。
娘の成長も止まったままだ。
もう、何年になる?
「こんなことするのもな、俺たちが生きるためだよ。」
「…もう、…わか、ら…な、い…」
マァムは考えることをやめた。
弱いものを拳の前にひれ伏せたことは自分も覚えがある。
だから、
仕方がないのだと諦めるしかなかった。
「安心しな、妊娠はしない。ただ…」
そこまで言った男の声はそこで途切れた。
マァムの目の前で男の身体が一瞬で火に包まれ、焦げた触手がぼろぼろと崩れマァムは地面に落ちた。
「…てめぇぇぇ!!」
マァムが振り替えると、両手をこちらに向けたポップが、怒りをあらわに叫んだ。
「許さねぇぇっ!」
「待って!ポップ!だめぇ!」
マァムが叫んだが遅かった。
親子は再び火に包まれた。
「あの人は人間だって言ってたわ!!」
「どこがだ!…あんな、おまえに酷いことをして…!!あれは違う!」
――ポップはマァムを探していた。
嫌な予感がしたから。
その予感は的中した。
怒りのあまり、加減せず、魔法が手から飛び出してしまった。
ポップはマァムを抱き締めた。
「何を聞いたか、見たか、俺にはわからんけど…忘れろ…!」
固く抱き締められた腕のぬくもりにマァムは初めて安堵を覚え涙を零した。
体にまとわり付いている白濁液。
後ろから聞こえるごうごうと炎の轟く音。
まだ身体に残る鈍い痛みと痺れ。
そして、瞼の裏に残るあの幼い娘の歪んだ笑顔--。
生々しく残る地獄の宴の痕にまみれながら、マァムは暖かい仲間の背中にしがみついてしゃくりあげた。
「…悪い夢だったんだよ…全部。だから…忘れろ、な。……俺が…ついててやるから」
ポップの言葉にマァムはただ黙ってコクリと頷いた。
彼女に他に選択の余地は無い。
この悪夢のような体験を乗り越えるには、忘れるしか無いのだから。
彼等が悲しい事情を抱えた「人間」であったことも、最初にあった時の少女のあどけない瞳も−
−−−・・‥…?
ふと、頭に男の最後の言葉が過った。
「妊娠はしない。ただ…」
−−ただ…?−−
「…?マァム?どした?」
「…なんでもない」
ポップの問い掛けに首を左右に振った。
――嫌な予感がする。
むしろ、男の最期の言葉を思い出して気付いた。
背中の真ん中あたりがうずくのだ―――。
それは、何を意味しているのか!?
――考えたくない――。
自身が変わっていく予感。
今起こったことは全て現実…。
これからを前向きに生きていける?
様々なことがマァムの頭の中を駆け巡り、次の言葉が出てこない。
もうすぐ、自分も、あの親子のようになることだけは、はっきりわかっている。
それは背中の痛みが教えてくれた―――。