今俺がいるパプニカではバレンタインという習慣があるらしい。
数週間前から姫さんが、ある事無い事適当な事を吹いて俺を陥れようとしていたが
マリンさんが曰く『女性が男性に愛の告白をしたり、お世話になったお礼をする日』らしい。
それにはパプニカ名産のチョコレートをあげるらしい・・・何か政治と金の匂いがするが、まぁいいや。
バレンタイン当日、世界を救った勇者パーティと言う事で名前も知らない子からもチョコを貰う。
生まれて初めて女の子にプレゼントを貰った、10個も貰えてすげぇ嬉しかった。大切に食べよう。
期待を込めながらマァムに声をかけて、バレンタインの話を振ると突然ものすごい勢いで怒り出した。
俺と同じように姫さんにある事無い事吹き込まれて、バレンタインはいやらしい日だと思っていたらしい。
・・・一体何を吹き込まれたのか気になったが、聞くと殴られそうなので黙っておいた。
一通り怒り終わった後、すっきりした顔して俺にチョコを差し出す。
「はい、チョコレート。いつもお世話になっているお礼ね」
予想通りのセリフにガッカリしながらも、嬉しくて落とさないように大切にポケットにしまった。
マァムの脇を見ると、俺に渡したチョコレートと同じ包装の包みが何個かあった。
きっと全員に同じものを渡すんだなと安心した時、姫さんが後ろでニヤニヤして見ていた。
・・・・あいつ、絶対いつかやってやる。
部屋に帰る時、メルルに声を掛けられて綺麗にラッピングされた包みを渡された。
感動しながら包みを開けると、これまた美味しそうな手作りチョコレート。
一口食べるとすげぇ美味い、美味そうに食べる俺を嬉しそうに見つめるメルル。
何を入れたらこんなに美味いものが作れるのかを聞いてみると、数十秒の沈黙の後
「・・・・そんな事言えません、ごめんなさい・・・」
と呟いて走って逃げていった・・・・なんだよ怖ぇよ、何で謝るんだよ。
恐る恐るもう一口食べる、やっぱり美味い。美味いだけに怖い・・・今のは聞かなかった事にしよう。
就寝前、今日一日を振り返る。チョコの食いすぎで気持ち悪い。
一つだけ食べていない、ポケットに入れていたチョコレートを枕元に置いて眠りに付いた。
これだけは大切に食べよう。