冷たい空気が周りの音を全て閉じ込めてしまったような静かな夜。  
ベットにもたれながら、外に浮かぶ月をぼんやりと眺めていた。  
窓をそっと開けると、流れてくる風が冷たいのか横にある体が小さく丸まった。  
 
(何か・・・・嘘みてぇ・・・・・。)  
穏やかに眠る顔を1度だけ眺め、薄桃色の髪を撫でながら冷たい風の空気を吸い込む。  
別にこんな風に一緒に夜を過ごすのは初めてじゃない。  
マァムが俺の気持ちに応えてくれたのは随分前、あの時の喜びは今でも鮮明に覚えている。  
だけど「恋人同士」になったからと言って、普段の二人が変わる訳じゃない。  
 
マァムは相変わらず皆に平等に優しく、俺は相変わらずそんな姿にハラハラしたり  
嫉妬したりして付き合う前と同じ日常を過ごしている。  
・・・だからこんな風にめったにない『恋人としての甘い時間』を過ごした夜は  
未だに夢を見ている気分で、何だか気持ちが浮き足立って上手く眠る事が出来ない。  
 
「来年は・・・ちゃんと言ってくれるかなぁ・・・」  
自分の中にある小さな願望をポツリと呟きながら、相変わらず余裕の無い自分に苦笑する。  
・・・と手に小さな温もりを感じてベットに目をやるといつから起きていたのか  
マァムが俺の手を握りながら眺めていた。  
 
「・・・・・そんな格好で起きてると、風邪引くわよ?」  
 
―――おいで、とでも言うように自分のシーツを少し持ち上げて俺を誘導する。  
シーツから覗く柔らかそうな素肌にドキドキしながら、大人しくマァムの毛布に潜り込んだ。  
俺が抱きつくとマァムは短い悲鳴を上げて、大げさにため息を付きながら俺をジロリと睨み付けた。  
 
「呆れた・・・・あんたいつから窓開けて風に当たってたのよ・・・。」  
怒ったように言いながら、俺の冷えた体を暖めるように体を寄せて自分の体温を分けてくれる。  
改めて感じる艶かしい肌の温度に落ち着いていたモノがまた湧き上がって来るのが分かった。  
柔らかい腰に手を回していると、体の温もりを感じるのと同時にその上にある大きな胸とか  
その下にあるもっと暖かい場所・・・・を触りたくなってしまう・・・・。  
 
(せっかく暖めてもらってるのに、変な事したらきっと殴られるよな・・・・。)  
腰に回した手を動かす事が出来ずに、小さな葛藤をしているとマァムが俺の顔を見上げてくる。  
何だかまたカッコ悪い所を見られた気がして、恥かしくて目を逸らすと意外な事を口にした。  
 
「来年は、何を言って欲しいの?」  
「・・・・もしかして・・・そん時から起きてた・・?」  
動揺する俺を驚いたように見つめて、マァムが申し訳無さそうにコクリと頷く。  
それと同時に血の気が引いていくのが分かった、情けなくてバカな俺の願いを聞かれたのだ。  
 
数十秒の沈黙の後、俺は顔を真っ赤にしながら大きく自己嫌悪のため息を吐いた。  
一瞬何とか話を逸らしてごまかそうかと思ったが、上手い言い訳が思い浮かばない・・・。  
そんな俺を不安そうに見上げてくる瞳に、情けなく微笑んで頬を撫でながら呟いた。  
 
「・・・俺の故郷ってさ、テランに近いから信心深いって言うか・・・信仰があってさ、  
 年末にに来年の目標を決めんだよ・・・それをつい口に出しちまったって言うか・・・。」  
顔を真っ赤にしてブツブツ言う俺とは対照的に、マァムは興味深そうに俺の話を聞いている。  
話の続きを言い淀む俺を、大人しく見つめながらもその目は無言で続きを催促していた。  
 
「・・・目標を達成すると幸せになる・・・つぅか、俺の一方的な目標なんだけどさ・・・  
 お前に・・・好きって言わせて見てぇなって思ったんだよ・・・。」  
その言葉を聞いた途端、マァムがぱちくりと大きくな目で見つめてくる。  
驚いたような呆れたような、そんな表情がすごく恥かしくてごまかすように大きく声を出した。  
 
「・・・・もう、俺って本当にカッコ悪りぃ・・・。そんなのが新年の目標って情けなすぎるよな・・・・  
 あ〜!本当にゴメン!!」  
そう言いながら顔を見ないようにギュウっと抱きしめて大きく息を吸い込む。  
 
マァムと付き合って分かった事は、こいつはとんでもなく不器用で真面目だったって事だ。  
俺の気持ちに応えてくれて、心も体もちゃんと俺を包み込んで受け入れてくれた。  
そう言う意味では俺はこいつの特別になれた、これはマァムにとっての最上級の愛情だと思う。  
 
・・・・でも『受け入れて』はくれるけど、『求めて』はくれない。  
「好きだ」と言えば「うん」と応えてくれるけど、自分から「好き」と言ってくれない。  
真面目すぎる性格が災いしてか、こいつは恋や愛と言うものに過剰反応して重く考える癖がある、  
未だにこいつを抱く時に少し感じる不安は、マァムの戸惑いが肌を通して伝わってくるからだろう。  
俺の事が好きだと分かるのに、マァムの中で上手く消化出来ていない・・・それが少しもどかしかった。  
 
そしてこいつの性格を分かっているのに、そんな事で不安になる自分が情けない。  
もっと余裕を持って接してやりたいのに結局はこんな風にカッコ悪い所ばかり見られてしまう・・・・。  
 
抱きしめた胸の中から苦しそうに俺の名前を呼ぶ声がして、今度はちゃんと顔を見て笑う。  
「まぁ―――――その話は置いといて、さ、もう一個俺の故郷に風習があるんだ。知ってる?」  
これ以上情けない自分を悟られないように、ワザと茶化すような言い方で尋ねると  
何か言いかけた口を一度閉じて、マァムが首を横に振って大人しく俺の問いかけに応える。  
 
「時期はちょっと過ぎたけど、冬にさ・・・好きな子からプレゼント貰うと幸せになれるんだ。  
 バタバタしててすっかり忘れてたけど、俺もプレゼント欲しいなぁ。」  
「え・・・そんな急に言われても、私何も持ってないわよ・・・・・」  
 
冗談で言っただけなのに、真剣に受け止めてくれる顔を見ていたずら心が芽生えた。  
こんな風に俺の言葉一つ一つをちゃんと考えて、困っているマァムはとても可愛いと思う。  
いつも尻に敷かれてる自分の立場が逆転したような不思議な高揚感・・・・・。  
さっきまで余裕が無く、へにゃへにゃだった心と体に色んなものが戻ってくる。  
 
突然の提案に本気で困った顔をしているマァムににっこりと笑いながら軽く口付ける。  
驚いたように見つめる目を眺めながらもう一度確かめるように口付けた。  
 
「・・・うん、モノはいらないから俺の言う事一個だけ聞いてくれる?」  
「ちょ・・・と、ポップ・・・んっ、待って・・・少し話しを――――――っ!!」  
その言葉を塞ぐように今度は少し深く唇を吸って、唾液を絡める。  
少し深い口付けを何度か繰り返しながら、腰に回した手を徐々に上げて豊かな胸に指を埋めて  
柔らかい乳房をゆっくりと揉んでいると、指の動きに合わせて切ない声が漏れてきた。  
 
「んっ、ヤっ!!だめだったら・・・そんな何回も出来な・・っぁん!!」  
そう言うのと同時に空いた手で下腹部の茂みに手を延ばして、小さな突起に手を延ばす。  
乳房を揉む手を強め、その突起を指の腹で優しく撫でると腕の中の体が大きく震え悶え始めた。  
 
「ふぁ・・・!っん!!ちょっと、待っ・・・って!!だっめ・・・ふぁ!!!」  
くちゅくちゅとした音が自分にも聞えるのか、マァムが頬を真っ赤に染めながら俺に懇願する。  
そんな姿を見て止められるはずも無く、俺はマァムの舌を吸いながら意地悪く笑う。  
キスに集中できるように、体を弄る手を少し止めて細い背中を抱きしめる。  
最初は驚いたように受け入れるだけだった舌も、その内応えるように俺の舌に絡めてくれた。  
 
「・・・プレゼント代わりに一個だけ聞いてくれる?」  
「―――――――ん」  
長い口付けの後、唾液光る唇をふき取りながらトロンとしたマァムの顔を覗き込む。  
今の言葉が俺のセリフに反応したのか、キスの合間の呼吸だったのかは分からない。  
でもそれを許可の合図と(一方的に)受け取った俺は、止めていた手を再び動かしながら  
耳元に舌を這わしてそっと囁く。  
 
「じゃあ・・・・本当に嫌な事以外、嫌って言うの止める事。・・・な、簡単だろ??」  
 
「―――ぅん、・・・・い、や・・・なこと・・・って?」  
動き始めた手の動きに合わせて落ち着いていたマァムの体が再び震え出した、  
上ずる呼吸を抑えながら俺の言葉をぼんやりと反芻する。  
指の動きに合わせて恥かしそうに変わる表情をしばらく眺めた後、口を押さえていた  
マァムの手を自分の股間に押し当てた。  
驚いたように見つめる目に苦笑しながら、既に硬くなったソコを握るように手を動かす。  
 
「・・・・っちょ・・・と・・」  
「ん?俺の触んの・・・嫌??」  
意地悪く尋ねる俺を困ったように見つめて、嫌じゃないけど・・・と恥かしそうに呟いた。  
そうして握っているモノを見つめた後、俺に応えるように柔らかい手が怖々と動き出す。  
自分の手とは違う柔らかい感触と、たどたどしくモノをしごく不慣れな動きに耐え切れず  
小さな呻き声が漏れる。  
 
俺のその声に反応してか、マァムの手は動きを変え俺のモノを探るようにカリや裏スジを  
確かめるように撫でて、声が上がった所を重点的にしごいてきた。  
自慰ならとっくに限界を迎えそうな強い快感に耐えていると、先走りの液がトロトロと零れてくる。  
先端から出てきた液を驚いたように指で絡めて、顔を赤く染めながらマァムが俺を見つめた。  
 
「・・・こんな風に触られるの・・・気持ちいいの・・・?」  
「―――――っ、ああ・・・やばいくらい・・・気持ち良い・・・」  
そう言うと、少しだけ嬉しそうな顔をしてマァムが更に強く俺のモノを擦り始めた。  
先走りの液が潤滑油代わりになり、にゅるにゅるとした手が竿に絡み付いてくる。  
俺が息を漏らす度、小さく尋ねながらそこをしごく――――それを何度か繰り返した後  
マァムの手の動きが止まり、コクリと喉が鳴らして俺を見つめる。  
 
「あのね・・・もし、嫌じゃ無いなら・・レオナから聞いた事・・・しても良い・・・??」  
突然止まった快感と、出てきた名前に嫌な予感を覚えながらコクリと頷くと  
マァムの顔がゆっくりと俺の下腹部に降りてくる・・・。  
そして、自分が握っている俺のモノをマジマジと見つめた後そこをペロリと舐めた。  
 
「・・・ぅあ!!!!!」  
手の感触でもなく、膣の感触でもないそのザラリとした舌の感触に思わず腰が浮いた。  
そんな俺の様子をほっとしたように見つめた後、マァムは行為を続ける為に俺の股間に顔を埋める。  
まるで猫の子供が毛づくろいをするように、先走り液で汚れた俺のモノを丁寧に舐めて綺麗にしていく。  
 
「んっ・・・っ、んん・・・」  
多分姫さんに聞いた通りに舌を動かしているのか、時々思い出すように動きを止めながら  
マァムがべちゃべちゃといやらしい音を立てて俺のモノを咥えている・・・・。  
初めて感じる口内の刺激だけでも十分なのに、自分の股間に顔を埋めて微かに上下する  
ふわふわとした桃色の髪を見て目眩がした。  
 
「――――っ、マァム・・・ゴメン・・・俺・・・もう無理・・・っ」  
快感で飛びそうな意識を掴むように、咥えていた口を強引にはがして柔らかい体を抱きかかえ  
俺の体の上にまたぐような形で乗せる。  
 
「えっ・・・!?やっだ、こんな格好・・・あっああ・・・!!」  
急く気持ちを抑えきれずに、驚くマァムを無視して茂みにある肉芽とその奥を指で撫で上げ潤していく。  
くちゅくちゅと潤ってきたのを確認して、辛くないように指を入れて肉壁を慣らすように広げると  
悲鳴にも似たマァムの声が聞えてきた。  
 
「・・・だって・・・やっ・・・こんな格好で・・・見られるの・・・ふぁ!!」  
「ダメ・・・。本当に嫌な事以外は、言っちゃダメだった言っただろ??」  
そう言いながら俺の指を慣れてきた膣内をワザと強めにかき回して、愛液を外に出していく。  
俺の腹の上に零れる愛液を指ですくい、大げさな動きで見えつけるように指で遊んだ。  
 
「それとも本当に嫌・・・?お前が本当に嫌ならココで止めるけど・・・・。」  
俺の指に絡みつく愛液を泣きそうな顔で見つめて、マァムが小さく唸りながら首を横に振った。  
その仕草にニヤリと笑い、軽く腰を持ち上げて膣内に入れていた指の変わりに怒張した股間をあてがう。  
 
「・・・・このまま、ゆっくり下りてきて・・・・」  
入りやすいように少し膣を押し広げながら、ゆっくりと腰を落とすように誘導していく。  
そんな俺に嫌がる様子もなく、恥かしそうに目を瞑りながらマァムは震える腰を下ろしていった・・・。  
 
「ふぅ・・・・ん!!ぁ・・・っ」  
くちゃりと生々しい音を立てて、ゆっくりと俺の肉棒がマァムの中に納まっていく。  
入っている事が分かるのか腰を下ろす度にマァムの体が震え、確かめるように息を吐いた。  
その呼吸に合わせるように、俺もゆっくりと時間をかけてマァムの中に入っていく・・・。  
 
「ぁ・・・っん、・・・ん」  
不安げに伸ばされた手を握りお互い感じている快楽を共有する。  
初めてする体勢のせいかいつもより強い締め付けを感じながら、細い腰を少し浮かして  
激しく腰を打ち付けた。  
 
「ぁ、ん・・・ああっ、ポッ・・・プ・・・あんっ!!!!」  
普段とは違う声色で自分の名前を呼ぶ声を聞きながら、俺の動きに合わせて揺れる体を眺める。  
ゾクゾクと湧き上がってくる快感を貪るように、更に腰を動かしてもっと深い奥へと入り込み  
生ぬるいマァムの中の体温を感じて腰を動かす。  
ドロドロとした二人の粘液が混ざり合っていく快楽の中、細い体を抱き寄せる。  
 
「っ、マァ・・・ム!!」  
「あっ・・・ふぁ、っあ!!!・・・あああっっ・・!!!!」  
耐え切れなくなったモノをを吐き出すように最後に大きく腰を動かしていく。  
そんな俺の動きに耐えるように、マァムが背中にしがみ付きながら俺の唇を求めてくる。  
応えるように舌を絡めて唾液を送り合いながら、白濁液をマァムの中に吐き出した――――。  
 
「うっ、ん・・・・!!ぁぁっ、ん、んん・・・・・。」  
ドクドクと打ち付ける精液を確かめるようにマァムが小さく息を漏らして体を震わす。  
震える体を抱きしめながら、まだ動いているモノを引き抜くと白濁とした精液と透明な愛液が  
シーツの上に零れ落ちた。  
 
「・・・・っ、ゴメン・・・我慢出来なかっ・・・た」  
上がる息を抑えてマァムの体が汚れないように抱き抱えようとした時、その汚れを気にする事無く  
甘えるように喉を鳴らして、俺の体に擦り寄ってきた。  
普段とは違うその仕草に戸惑いながら、覗き込むとウトウトと眠そうに俺にもたれ掛ってくる。  
 
(・・・・そっか、そりゃ眠いわな・・・・・)  
疲れて眠っていた所を起こして、もう一度こんな事をしたんだからマァムが疲れるのは当たり前だ。  
ごめんな、と謝りながら汚れたシーツを手早く片付け、寝かしつけようと体を抱えた時・・・・  
 
「――――――好きよ。」  
 
と小さな声が耳元で聞えた。  
驚いたように抱きかかえた顔を覗くと、スヤスヤと眠っているマァムの顔があった。  
 
「はっははは・・・・寝ぼけながら言うなよな、来年の目標もう叶っちまったよ。」  
情けなく笑いながら、マァムの横に寝転んでその顔を眺める。  
内緒にしようと思った目標はあっけなくバレてしまい、その目標も年が明ける前に達成・・・・。  
カッコ悪いよなぁ・・・と呟きながらも、マァムを抱きかかえてゆっくりと目を瞑る。  
 
「来年の・・・・目標何にしおうかなぁ・・・・」  
初めて聞くその言葉を頭の中で反芻しながら、とても幸せな気持ちで俺は眠りについた。  
 
(終)  
 

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