知り合って二年と少し。付き合って一年。ポップはもう18になっていた。
ふとポップは今までのマァムとのことを思い出していた。
「……ポップ」
気配を感じると、後ろにマァムが立っていた。
「あ、う、うん……」
戸惑いながら居場所がなさそうに立つマァムは先程の普段着だった。髪は降ろしてタオルで拭き取っている。
「す、座れよ」
ベッドに腰掛けていたポップが、マァムに隣に来るように手招きする。
「……」
マァムは無言で頷き、恥ずかしそうに隣に座る。
(緊張してんだろうな……本当に俺でいいのか…)
…不安になる。
「!!」
するとマァムの震えた手が、きつくポップの手を握る。
ドクッ
その行為でポップの中で何かが動いた。
「やっぱ18にもなって、一年以上も付き合ってる相手と一度もエッチがないなんて
おかしいよなあ…」
ポップはとある喫茶店で、向いに座るマァムの方をじっと見た。
マァムの方はポップの呟きに気付かず暢気にお茶を飲んでいる。
「な、なあマァム……」
思い切ってポップは尋ねることにした。
「ん…?」
「お、俺たち付き合って結構経つよなあ……」
「え?まだ一年くらいでしょ?」
「(だあぁぁぁぁ!!会話にならん!!)」
ポップ、頭を抱えて下を向く。
「どーしたの……」
また何か傷つけることを言ったのでは……と、マァムはおそるおそるポップの顔を覗き込む。
「……一年…一年も経つんだよ………それで俺たちの歳でセックスしないカップルなんておかしいんだよ」
「(ははは……なーんてな)」
ポップはぺろっと舌を出す。
「え!そうなの?」
「え?」
ちょっとからかってみようかなあと軽く言っただけなのに、こうも簡単に引っかかるとは……
が、急にマァムの雲行きが怪しくなる
マァムは少し戸惑いながらもポップに尋ねてみた。
「……ポップは……どうなの?」
「はい?」
「ポップは………セックスしても…いいの?……私で……その…」
モジモジと照れながらマァムは不安そうにポップを見る。
「ば、ばか!俺はお前とセックスしたいんだ。た、確かに俺はスケベかもしれないけど、
お前意外とそんなことしたいなんて一度も思っちゃいねぇよ!」
珍しく真剣に反論するポップにマァムは押され気味になる。
「うん……嬉しい。ありがとう」
にこっとマァムは笑う。
あー幸せだ。
「でも、本当にいいの?セックスって痛いって聞くわよ」
「は?」
……何かこいつ勘違いしてないか?
どうも俺たちにはクールな関係にはなれそうもないな…とポップは思った。
「だ、大丈夫だよ。(まあは俺が大丈夫なのは事実だしぃ)。だ、だから…今度こそ……お前を抱きたいんだ…」
「ポップ……」
……真剣な目だ。その言葉に嘘偽りはないんだろう。何か初めて告白されたときに似てるな、と思った。
だったら、ちゃんと今自分が思ってることを伝えなきゃ…
「……うん。私でよかったら…」
「ほ、ほんと!」
ポップは一応確認を取ってみる。
「うん」
「…よ、よし、そーと決まったら…」
ポップはマァムの手を引いて席を立ち、店を出た。が、しかし途中あることに気付いた。
「やばい……」
「どーしたの?」
ポップはいきなり立ち止まって険しい顔をした。
「悪いマァム、先俺の部屋行ってて」「え、ええ?」
「買い物。大事なもんなんだ」「う、うん?」
マァムに部屋の鍵を渡し、ポップはさっさと行ってしまった。さすがに一緒に行くのは恥ずかしかったらしい。