テランの夜は、暗い。  
今や女王となったレオナの治める大国パプニカなどは酒場、国営カジノなどが賑わいを見せ、夜更けても人々の喧騒と店のの灯りが絶えることは無い。  
それに比べてテランの夜はといえば、聞こえる物と言えば、虫の音くらい。  
灯りと言えば、月と星くらいなものだ。  
しかし、メルルはこの静けさが好きだった。  
それに、もう、メルルは一人ぼっちではない。  
少しも、寂しくなど、ないのだ。  
『メルル』  
声が聞こえた。肉声ではない。心に直接響く、愛しい人の思念だ。  
『お疲れ様です。ポップさん』  
結婚してしばらく経つが、メルルは夫をさん付けで呼ぶ事を止めない。  
『ああ。くったびれたぜえ。ほんと。いくら新しい土地を開拓したいからっつって、山を一つ削れとはねえ。姫さんも相変わらず人使いが荒いせ』  
くすっ、とメルルは笑う。くたびれた、と言いつつ、ポップの思念は充実感に溢れている。  
 
バーンとの戦い以来、どの国も復興に全力を上げている。  
そんな中、領土問題、食料問題等、小競り合いが活発化してきているのも悲しい事実だった。  
その問題を解決する一策として、レオナは、人の住まぬ荒れ果てた大地の開墾を政策として打ち出した。  
本来、大量の人材と資材、それに時間の必要なこの政策の、強力な切り札。  
それが、ポップのメドローアだった。  
数千人の人間が、必死に作業を行って一ヶ月はかかる工程を、ポップはメドローア一発でやってのける。  
もっとも、それはポップにとっても生易しい作業ではない。  
人や動物、植物の住みやすい地形を算出し、出来うる限りそれに近い形状で山を削り大地を削るという作業は、いくらMPを回復させながらとは言え、ポップに甚だしい疲労を強いていた。  
愛する妻の待つ我が家へ、ルーラで帰る気力すら無くさせるほどに。  
しかし。  
敵を殺す為でなく、誰かの住む場所を作るために呪文を使う、という行為に、ポップはかつてないほどの昂揚を覚えているようだ。  
そんな夫を、メルルは心から誇らしく思う。  
 
『後、もう二ヶ月くらいはかかりそうだ。ごめんな。一人にさせて。』  
『いいえ。いいんです。ポップさんが嬉しそうだと、私も嬉しいんですよ。』  
『・・・・』  
言葉にならなくても、気持ちは伝わる。  
今ポップは、メルルをいとおしく思っている。  
言葉で示されなくても、心で通じ合える自分達は、恐らく世界で一番幸せな夫婦だと、メルルは思うのだ。  
『会いてえ、なあ・・・』  
『私も・・・です』  
『会って、お前を抱きたいよ』  
脳裏にイメージが流れ込んでくる。  
今、ポップは、メルルをベッドに押し倒し、地味だがいかにもメルルに似合っている占い師の衣装を、剥ぎ取りたいと思っている。  
今、ポップは、服の上からは想像出来ないほど豊満な、メルルの乳房を揉みしだきたいと思っている。  
そして、今、ポップは、外見には似合わない人並み外れて逞しいモノを、メルルの、ようやくポップの大きさに慣れて来た秘所に、挿入したいと思っている。  
 
『メルル・・・』  
「あっ!」  
メルルが声を出す。心の声だけでは無い。実際に声を上げてしまったのだ。  
メルルの右手が、きつく左の乳房を握り締めている。メルルの意思ではない。ポップに操られているのだ。心で通じ合った二人は、深く集中する事で感覚すら共有出来るようになった。  
今、メルルの身体は、メルルのものであって同時にポップのものでもあった。  
ふらふらとベッドに足を運び、倒れるように身を投げ出すと、乱暴に胸元をはだける。白い乳房が、ぷるんとまろび出る。その頂点にある薄紅色の乳首を、メルルの細い指が摘む。  
『あ、あ、あ・・・イヤ・・・』  
『じゃ、ないだろ?』  
ポップが笑っている。どう頑張ってみた所で、自分の心に嘘などつけないように、ポップには嘘がつけない。  
『はい・・・』  
『もっとして欲しいんだよな』  
『はい・・・っ!あん!』  
両の乳首が強く摘まれ、引っ張られてゆく。まるで手が自分のもので無いように、執拗に乳首をいじめる。そのくせ、乳首からもたらされる快楽は、オナニーの比では無い。今、メルルは確かに、ポップに乳首を責められているのだ。  
 
『メルル・・・』  
優しい声が脳裏に響く。  
夫がするのと、全く変わらない手つきで、メルルの指が太股を這う。  
「ああっ・・・!!!」  
もはや声を出さずにはいられない。周囲には民家すら無いのが幸いした。  
ポップに抱かれる時、メルルは普段とはうって変わって、大きな声を上げてしまうのだ。  
『ははは。相変わらずおっきな声だなあ!パプニカまで聞こえそうだぜ?』  
夫のからかう声がする。そのくせ、指の動きは止まらない。  
陰唇をかき分け、広げ、膣口を空気に晒すようにぱっくりと広げる。いつも夫が、そうやってメルルの秘所を観察する時のように。  
そうやってまじまじと夫に見られるのが、メルルにはたまらなく恥ずかしい。  
・・・そして、たまらなく感じてしまうのだ。  
どろり、と奥の方から愛液が垂れ、余陰をつたって肛門まで濡らす。  
ずぶり、と右手の人差し指と中指が、メルルの膣に挿入された。  
 
「はあああんっ!」  
メルルの身体が真っ白なシーツの上でのけぞる。しかし。  
『え?』  
一しきり、膣内をかき回すと、指はあっけなく引き抜かれてしまった。  
『ど、どうし』  
て、と続ける間もなく、今度は左手の指二本が挿入される。時間差攻撃に、思わずイキそうになる。  
『ダメ・・・まだイキたくないっ・・・せっかく、せっかく一週間ぶりにポップさんが可愛がって下さっているのにっ!』  
夫が、微笑んでいるのを感じる。それは、いたずらっ子の微笑みだった。  
「・・・・・っ!!あああああーーー!!!!」  
メルルの絶叫が誰もいない家に響き渡る。  
先ほど引き抜いた、愛液まみれの指が、優しく、けれども小刻みにメルルのクリトリスの上で震えている。  
「ダメ、ダメ、ダメ、ダメ!っっっっ!!!」  
呼吸すら出来ないほどの快感。刺激が強すぎて、イキたくてもイケない。夫が自分をいじめる時の、いつものやり方。開発され尽くした性感が、メルルを責めたてて止まない。  
 
『イキたいか?』  
「は、はいいい!!!」  
『イカせて欲しいか?』  
「い、い、いかぜてほじいですうーー!!」  
もはや哀願だった。いつも、こうやってお願いしないとイカせてくれないのだ。  
夫が笑っている。嬉しそうに笑っている。目で見るよりも確かに、自分の痴態を見てくれている!  
そう思うのと同時だった。  
『イけ!』  
ずうん、と夫の逞しいペニスが挿入されたのを感じた。  
「はあああああ!!!!」  
痙攣しながら、メルルが絶頂する。  
ポップも今、メルルの膣内の温かさを、湿り気を感じているだろう。  
『メルル!メルル!』  
名前を呼びながら、夫が激しく腰を使っている。戦士の筋肉美とは又違う、しなやかな強靭さが夫にはあった。歴戦を潜りぬけた夫の体力と、繊細すぎるほどの技巧に、いつもメルルはヘトヘトになるまで責められてしまうのだ。  
「ああ!ああ!ああ!」  
大声を出さないと、苦しいのだ。絶叫しないでいると気の狂いそうな快感なのだ。  
 
今のメルルは、メルル自身の性感に加え、ポップの性感までも受信してしまっている。  
クリトリスが肥大化したように、うずく。にゅるにゅるとクリトリスが、柔らかく温かく、湿った何かに包まれ、律動している。これはポップのペニスが受けている快感だろう。  
同時に、膣内ははちきれそうな逞しいペニスに蹂躙され、広がりきってしまっているのを感じる。二人分の快楽に流され、メルルは半ば失神しかけている。  
ベッドの上で、一人股を開き、開ききった股座からは愛液を断続的に噴出しているメルルの姿を、普段の彼女を知っている者が見たら、何と思うだろう?  
もはや両手はだらりと投げ出したまま、どこを触っているわけでも無いのにメルルはイっている。イキまくっている。  
『メルルっ!そろそろ、出すぞっ!』  
ポップももはや限界だった。  
その声を感じ、わずかに残った意識で、メルルが夫を求めるように、両手を宙に伸ばした。  
『キスしながらイキたいっ・・・・!』  
その意識が、どちらのものだったかは、分からない。  
遠く離れていながら、それでも心を重ね合わせた二人は。  
「あああーーーっっっ!!!!!」  
同時に、絶頂を、迎えた。  
 
『メルル・・・・メルル!』  
心配そうな、夫の意識に触れて目が覚めた。わずかだが、気絶していたらしい。  
『だいじょうぶか?全く』  
ほっとしたような、暖かい声に触れた時、メルルの目から涙が零れた。  
『ど・・・どうした?』  
夫の驚く声。でも、わかるでしょう?私がどうして泣いているのか。  
『・・・幸せ・・・か?』  
メルルは微笑むと、遠く離れた夫に、ありったけの想いを込めてキスをした。  
『・・・出来るだけ、早く、帰るから、な』  
照れた声が響く。  
待ってます。ずっと。  
私の大好きな、ポップさん・・・  
 

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