ピンクに彩られた妄想の中で、俺の女神サマは裸体を淫靡に晒け出す。  
「ポップ、私を抱いて…私を貴方の好きにして…」  
俺はたまらず豊満な乳にむしゃぶりつき、両手で力一杯揉みしだく。  
「あっ…あぁん……感じちゃう…」  
桃色な吐息にますます欲情を掻き立てられた俺は、今度は両腕にアイツの太股を抱え大きく開脚させた。  
肝心な部分がぼやけているのが情けねぇが、とりあえず濡れているのは確かだ。  
「いや…恥ずかしい…」  
「何が恥ずかしいだ。こんなにビショビショにして助平なやつだな。」  
赤面するアイツの反応を楽しむように俺は恥辱の言葉を浴びせる。…支配欲ってやつだろうか。  
ふと自分の歪んだ性癖に触れてしまったようで、一瞬自己嫌悪に陥るが  
最高にヒートアップした妄想特急はそれぐらいじゃあ止まらねぇ。  
「欲しいんだろ?ほら、言ってみろよ。ちゃんとおねだりしなきゃやらねぇぞ。」  
支配欲に陳腐な台詞。自分でも呆れる。けれど妄想の中のアイツは従順にそれに従う。  
「…もう、意地悪ね。……おねがい…ポップの…ちょうだい…」  
「ん〜?聞こえないなぁ?肝心な部分が聞こえないっすよ、マ・ァ・ム・ちゃん?」  
まるっきり変態の笑みを浮かべながら、俺の指は映像の不鮮明な秘密の花園をクチュクチュとかき回す。  
「やっ、ああんっっ!…もうだめぇ…っ、我慢できない…!  
おねがい…っ、ポップのおちんちん、私に入れてぇ…っ!」  
現実では口が裂けても言わないだろう台詞をアイツに言わせ、俺は大満足でそそり立った自分の肉棒をスタンバイする。  
「よし、いいこだ。ご褒美だぜっ…と。」  
ズ‥プッ  
「ひゃぁああんっ!!」  
完全にイニシアチブを取った俺は、女神サマの快楽に翻弄されたいやらしい顔を堪能しながら腰を突き動かす。  
…っと、ここで早くも限界がきちまった。  
「ぁあんっ!!イっちゃうぅ!お願い、中に…中にいっぱいだしてぇっ!!」  
とことん最後まで都合のいい台詞を言わせ、俺は妄想の中のアイツと一緒にフィニッシュを迎えた。  
 
 
〜『ポップの苦悩』〜  
 
 
「・・・・・・・・・・ふぅ・・。」  
満足感と空しさと自己嫌悪と反省のたっぷりこもった溜息をつき、俺は衣服を整えた。  
…また妄想の中であいつを汚しちまった…。  
ほとんど毎日の後悔と懺悔。自分でも呆れるぜ。  
夜の帳に染められた薄暗い宿屋の一室、壁一枚挟んだ隣室では汚らわしい「オカズ」にされたマァムが眠ってる。  
アイツは当然、俺に妄想の中で犯された事なんて夢にも思わず  
明日の朝も屈託のない笑顔で「おはよう」って言って来るんだろうなぁ…。  
「…ちくしょう…」  
胸の痛みを誤魔化すように、俺は頭をクシャクシャと掻きむしった。  
 
マァムが俺に「答え」を出してくれて、はや3ヶ月。  
あんときゃ天国に登るぐらい嬉しかったけど、最近の俺は毎晩天国と地獄を行ったり来たりって感じだ。  
てめぇの命より大事な女。汚れを知らないその笑顔を守りたいと思う気持ちにもちろん偽りはない。  
…でもよぉ。  
男にゃ男の本能ってもんがあるんだよ。  
惚れた女を抱きたいと思うのは、世界中の男の共通だと思うぜ?  
そりゃ俺は人よかちょびっとばかしスケベかもしれねぇけど…でも15の身空で毎日美味しそうなバディを  
目の前にして、我ながらよく堪えてる方だと誉めてやりてぇよ。  
まぁ理性が切れて襲いかかったところで、軽〜く返り討ちされるのは目に見えてるけどな。  
それに…無茶なことをしてあいつに嫌われるのは、やっぱり怖い。  
俺のそんな葛藤も露知らず、あいつは相変わらず無防備極まりないんだから嫌になっちまう。  
 
…なんとか紆余曲折を得ながらキスまでもっていったのが一ヶ月前。  
唇を重ねるだけで真っ赤になって涙目で震えてたあの姿は今でも鮮明に思い出せる。  
いや、今でもキスするときは真っ赤っかになってるんだけどな。  
普段、あの強気な性格で完全に俺を尻に敷いてるマァムが、弱々しくなるあの瞬間。  
…〜〜っ!!たまんねぇっ!俺の鼓動が3倍速になるくらい興奮するぜ。  
可愛いとか愛しいってのはこういう事を言うのかって、勝手にしみじみ理解したりして。  
…うん、本当に可愛いんだ。可愛いから……勃っちまうんだ。  
…あいつにゃ分からねぇだろうなぁ。  
男の性欲にとことん鈍いマァムが、こんな身勝手な理論を納得どころか想像も出来るはずがねぇだろうし。  
結局はあいつが受け入れてくれるまで、俺は耐えるしかねえんだ。うん。  
 
…でも、それっていつなわけ…?  
 
 俺達は相変わらずな日々を過ごしてた。ダイの情報を求めて一緒にあちこちを旅する日々。  
二人きりの日々の中で時々喧嘩もしたり、じゃれあったり、…未だぎこちないキスをしたり。  
 そんで、俺達はある日、森の中を探索してたんだ。  
野宿が三日ほど続き、『ガス抜き』が出来ない俺はちょっと悶々としていた。  
マァムにしつこくキスを迫って怒られ、ふてくされた気持ちと欲求不満が入り交じってた時だったんだ。  
「見て、ポップ!湖よ!」  
マァムの嬉しそうな声に俺はハッと顔を上げた。森の真ん中で木立に囲まれた小さい湖は澄んだ水をキラキラさせていた。  
樹の露や小川で飲み水には困ってなかったけど、久々に体の汚れを落とし癒せる場所を見つけ俺達は大いに喜んだ。  
「うひゃあ、ありがてぇ!これでサッパリ出来るぜ!!」  
派手に水しぶきを上げて顔を洗う。水滴を腕で拭った後、ふとマァムと目があった。  
「あ…」  
なにか言いたげなマァム。それを察せ無いほど俺は鈍感じゃあない。  
「水浴びしたいんだろ?いいぜ、見張っててやるから先に済ませちまえよ。」  
「うん、ありがとうポップ。」  
頬を染め嬉しそうにマァムは笑った。もちろん「でも、覗かないでよ。」と釘を刺すのも忘れずに。  
 
枝枝から覗く空にとんびが飛んでるのが見える。  
俺は湖側の木立を背に向け空を眺めていた。見張るったって、モンスターが出るわけで無し、暇なもんだぜ。  
しばらくすると木立の向こうから水音が聞こえてきた。  
チャプ・・チャポン・・・・・  
忘れかけてた俺の悶々に再び火がつく。  
ゴックンと唾を飲み込み、そ〜っと湖が見える木立の陰まで移動する。  
気配を感じ取られないように、ソロリソロリと後ろを振り向くとそこには…。  
・・・・・・・やべぇ。見るんじゃなかった。  
どうするんだ、この思いっきり勃っちまったモノは!!  
拝んだのは後ろ姿だったものの、降ろした桃色の髪が張り付いた白い濡れた背中に、くびれた腰  
そしてまぁるいボリュームあるヒップと、俺の理性を崩すには充分な破壊力。  
ばっかやろ〜〜〜!!!なんでおめぇはこんなに無防備なんだよっ!!  
無茶苦茶な八つ当たりだとは分かっているけれど、怒ってでもいないと性欲が爆発しそうでどうしようもねえ。  
俺はあちこちの木を蹴飛ばしたり地団駄を踏んだりして暴れた。  
そんな事をしてるうちにいつのまにか何分か経ってたのか。  
「なにやってるの?」  
水浴びを終えたマァムに、急に後ろから声を掛けられて俺は心臓が飛び出しそうなほど驚いた。  
「…っ!なんだよっ!」  
焦りと驚きと誤魔化しから、つい怒鳴り声をあげてしまった俺。馬鹿だ。  
「な、なに怒ってるのよ?」  
マァムがあきらかに戸惑ってる。今なら謝れば間に合う。  
「うっせぇなっ!なんでもねぇよ!」  
…てめぇの馬鹿さ加減に自分でも呆れるぜ。  
「…私、遅かったかな…? ごめんなさい。」  
意味無く怒ってる馬鹿に、しょんぼり謝るマァムの姿は今の俺にとって欲情を煽る以外の何者でもない。  
「うああああああああああ!!」  
「ポ、ポップ!?」  
どぷーんっ!!  
文字通り、頭を冷やすため俺は服のまま湖に駆け飛び込んだ。  
クールにいこうぜ、クールに。…頭の中で独り言を呟く。  
 
 何となく気まずい雰囲気とびしょ濡れの服を引きずって俺達は夕方を迎えた。  
まだまだ森を抜けられる気配はない。今夜も野宿かと溜息をつきかけたところで目に飛び込んできたのは古い納屋だった。  
扉を開けたが当然使われてる形跡はなく、藁と手綱らしき古ぼけたロープがあるだけ。  
「馬小屋として使われてたのかしら?」  
「なんにせよ屋根があって夜露さえしのげりゃ御の字だぜ。それにこんだけ藁があれば寝床には充分じゃん。」  
俺は床に転がってたランタンを拾い道具袋から取り出した魔石を一個入れメラで灯をともした。  
マァムは藁を寝床用に均等に成らしその上に腰掛けた。  
俺もゴロンと藁の上に寝そべる。  
「洋服冷たくない?乾かしたら?」  
マァムが荷物からパンと果物を取りだし俺に手渡しながら尋ねた。  
「俺にパンツ一丁になれってか?マァムのえっち。」  
ごいん。  
手渡そうとしてたリンゴが俺の頭に飛んできた。  
「ばかっ。心配して言ってるのに!」  
ふくれっ面で横を向くマァム。ランタンの小さな明かりに灯された頬が紅く染まってるように見えた。  
 
「怒んなよ」  
ぷぅとふくれた頬を手で包み顔をこっちに向けさせる。  
怒った顔も可愛いなと月並みな感想を持ったが、ガラじゃないので口には出さねぇ。  
「…ポップこそ…」  
「え?」  
「…もう怒ってない…?」  
俺の手の中でふくれっ面から不安げな色に表情を変えてマァムが言った。  
…ずっと気にしてたのか…。  
罪悪感に胸が痛むぜ。  
「……怒ってねぇよ…最初から。……ちょっと疲れてて八つ当たりしちまったんだ。悪かった。」  
「そう…。野宿が続いたものね。せめて今日はゆっくり休みましょう。」  
「ああ。」  
屈託のない笑顔にまた胸が締め付けられる。無邪気な優しさが嬉しいような辛いような。  
頬に当てた手をスルリと抜けて、マァムは改めてリンゴを俺に差し出した。  
「ちゃんと食べなきゃダメよ。体力無くなっちゃうわよ。」  
へいへい。  
俺は素直に受け取って、キスしようと構えていた口でリンゴにかぶりついた。  
今夜も悶々地獄が待っていそうな予感がするぜ…トホホ。  
 
納屋は狭い。  
野宿の時とは距離が違った。  
外で寝る時のような危険に対する緊張感も無い。  
すぐ隣、肩が触れるほどの近距離で眠るコイツの寝息が気になって、俺はとても睡眠どころじゃなかった。  
昼間見た裸体の後ろ姿が脳裏にチラつく。  
…勘弁してくれぇっ!!!  
限界を感じた俺は、外に出てコッソリ「処理」をしてこようと決意し納屋の戸を出ようとした。が。  
「どうしたのポップ?何処行くの?」  
…さすが一流の戦士は寝てるときでも人の気配に敏感ですなぁ…。  
「……いや…なんでもねえよ…。」  
俺は肩を落として寝床に戻った。  
気配を感じて起きたとはいえ、完全には目が覚めてないのだろう。マァムはぼんやりした顔で俺を見上げてる。  
普段と違ったその無防備な表情にさえ欲情してしまう俺。  
処理が出来ないなら、せめて、せめてキスだけでもっっ!  
「…マァム。」  
「何?」  
「キス…していいか?」  
「…え………………………………………………………………いいよ…」  
長い沈黙のあと出たお許しに、俺はなんだか尋常でない興奮を覚え思わずマァムを強く抱きしめてしまった。  
そしていつもより強めに唇を重ねた。  
「んんっ…!」  
それは半分寝ぼけてたマァムの頭を完全に目覚めさせるほど強引なキス。  
 
唇を重ねた勢いに任せて俺はマァムの口内に舌を滑り込ませた。  
「!!!」  
眼をまん丸くして驚いたコイツは、反射的に腕に力を入れ体を引き離そうとする。  
が、寝起きのせいか動揺してるのか腕に上手く力が入ってない。  
それを良いことに俺の舌は遠慮無しに口の中をまさぐる。  
舌を絡ませようとしたが避けられたので更に奥深く侵入し強引に舌の根本をなめ回す。  
「んーっ!んーっ!!」  
マァムが顔を振って逃げようとしたが、両の手でしっかりと押さえてやった。  
俺を引き剥がそうとする腕は武闘家とは思えないほど弱々しく、ブルブルと震えていた。  
ディープキスなんてこいつの知識の中には無かったんだろうな。  
何が起きてるのか、なんでこんな事されるのか分からずにただパニくってるみてえだ。  
そんな状況に俺は…確実に興奮している。  
このまま全部飲み込んでやりてえ。全部飲み込まれてえ。  
もっと深く。もっともっとマァムの奥へ。  
俺の理性が音を立てて崩れ始めたが  
息継ぎしようと一瞬唇を離した隙をつかれ顔を反らされてしまった。  
お互い息をするのも忘れていたから、ハァハァと肩を揺らして激しく酸素を取り込んでいる。  
「…マァム…。」  
「…なんで…っ?どうしてこんな事するの!?」  
案の定、声は怒りを含んでいたが、その瞳は裏腹に怯えの色に満ちていた。  
「…わりぃ、マァム。でも俺、もう止めらんねえわ。」  
 
「なっ…ポップ!?」  
目を白黒させて動揺するマァムに構わず俺は力を込めて抱きしめた。  
あぁぁたまんねぇっ!!柔らかい体の感触が服越しに伝わってきやがる。  
柔らけぇ…温かくて柔らけぇなぁコイツ。  
俺はたまらなくなって熱い吐息と一緒に思いの丈を耳元で囁く。  
「好きだ、マァム。好きだ。好きだ好きだ。…好きなんだよぉっ…。」  
囁きながら耳朶に唇を這わせると、マァムの体がビクンと一瞬跳ねた。  
「…やっ!!何するのポップ!?やめて…っ!今日のあなたなんだか変よ…!」  
一生懸命俺を押し離そうとする手には相変わらず力が入ってない。動揺のあまりまともに抵抗もできねえってか。  
「へへっ、確かに変かもな。でも俺をこんな風にしちまったのはお前だぜ、マァム。」  
「わっ、私が!?」  
「ああ。だから責任取ってくれよ。」  
「せ、責任って…ちょ、ポップ!」  
耳から首筋へ唇を這わせまくり、ますます力の抜けた体をそのまま押し倒してやった。  
無防備なその姿に俺はさらにキスの雨を降らせる。頬に耳に瞼に唇に首筋に鎖骨に。  
「ひゃっ…やぁんっ!な、何?何してるの…?」  
…どうやら愛撫って言葉もこいつの辞書には載ってねえらしい。  
それでも涙目で真っ赤な顔してるこいつがどうにも可愛くて、俺はますます調子づく。  
 
「!!!」  
いきなりシャツを捲り上げられるなんて夢にも思ってなかったんだろう。  
マァムは信じられない、という顔をして目をまん丸くさせた。  
真っ暗な納屋の中でもハッキリ分かるその白さ。その形。  
シャツをまくった勢いでプルルンと揺れたそれは弾力と柔らかさも物語っている。  
・・・・ああ、何回このおっぱいを妄想してヌイただろう・・・。  
今。目の前に。俺の手元に。マァムのおっぱいが…!!  
「すげ…想像通りでかくって、想像以上に綺麗だな…」  
感動のあまり間抜けなことをつぶやいちまった。  
「……!!」  
マァムが羞恥と嫌悪で顔を歪ませたのが分かった。  
「…いい加減にしてポップ…!何をする気なの?」  
この後に及んで何をする気と来ましたか。…本当に分かってねぇんだなぁ、こいつ…。  
まるで魔王軍にでも向けるようなキッツイ睨みに俺は一瞬ビビッちまったが  
気を取り直して、マァムの頬と髪を撫でてやった。  
「何もかにもねぇよ。…抱きたいんだ、おめぇを。」  
俺の真剣な表情に、今度はマァムの方がビビッたようだった。  
「…そんな…そんな、だからって急にこんなの卑怯よ!私、いいなんて言ってない!」  
卑怯という言葉にグッサリきたが、俺はめげなかった。  
「じゃあ、いつならいいってんだよ?おめーは気付いてないかも知れないけどよ、俺だいぶ我慢したんだぜ?  
…ずっと、こんなに好きで抱きたくてたまんねえのに、お前はいっつも無防備で鈍感でよぉ…  
このまんまじゃ一生先へ進めないんじゃないかって、不安だったんだぜ。」  
「………ポップ…」  
「確かに俺は卑怯かも知れねぇ。でも、こんなになるまでお預け喰らわせたおめえも、そーとー残酷だと思うぜ?」  
「…………………………………………。」  
マァムは目を伏せて黙っちまった。納屋の中がしんと静まる。  
てっきり抵抗を止めたもんだと思った俺は丸出しになってるマァムの胸をまさぐり  
再び顔にキスの雨を降らせた。  
「…………?」  
荒い吐息の中、俺の熱い唇に触れたのは冷たい水滴だった。  
 
驚いて顔を離すと、マァムの瞳にはいっぱいの涙がたまって頬に伝っていた。  
「……………!」  
グッと唇を噛みしめてまるで何かに耐えてるような顔して、なのに一切抵抗してこねぇ、  
そんなマァムの姿を見て俺は後頭部をハンマーでぶん殴られたようなショックを受けた。  
 
…なにやってんだ俺は………!!!  
 
俺はこいつのこんな泣き顔、一番見たくねえんだよ!  
なのに…なんでだよっ!!俺が泣かしてどーすんだよっ!?アホか俺は!  
「………………悪かった…………」  
俺は、捲りあげたマァムのシャツを下ろし、体を離した。  
自己嫌悪と…マァムに嫌われる予感でいっぱいになった俺は、顔を上げることも出来ないまま背を向けた。  
もうだめだ。俺ぁ最低だ。てめぇの欲望しか頭にないで好きな女を傷つけちまう最低ヤローだ。  
こんな最低な奴、嫌われて当然だよな。…くそっ!ちくしょう!!我ながら大バカ野郎だぜ!  
「…ごめん…」  
「へ?」  
背後からかけられたマァムの声に驚いて俺は振り向いた。  
「…ごめんなさい…私、あなたがそんなに我慢してたなんて知らなかったから…  
…………今度は私が我慢するから……………してもいいよ。」  
真っ赤になってうつむき、涙を拭いながらそう言うマァムに、俺の理性はまた吹き飛びそうになる。  
ったく、お人好しにも程があるぜ。俺も馬鹿だけどおめーも馬鹿だ。  
肩に手を置くとマァムはビクッとして体を強張らせた。やっぱり怖いんじゃねーか。  
俺はそのままぎゅうっと抱きしめて言った。  
「…しない。約束する。二度とこんな…おめえを傷つけるような事はしねえ。  
我慢とか…そんなんじゃ意味ねえんだ。お前が俺に抱かれたくなって、そんで二人とも幸せになんなきゃ、ダメなんだ。  
だから…俺が悪かった。全部俺が悪かった。だからおまえは謝らないでくれ。」  
「ポップ…」  
そうだ。二人とも幸せじゃなきゃ意味ねえんだよ。なんでこんな簡単なことを俺は忘れちまってたんだろう。  
でも。  
 
「でも…言い訳かも知れねえけど、これだけは聞いてくれ。  
俺、お前を傷つけようとしてやった訳じゃないんだ、絶対。  
ちょっと…気持ちが先走っちゃって…」  
「分かってる。」  
そう言ってマァムは俺から体を離した。  
「でも、もうこんなのは嫌よ。」  
怒ったような厳しい目で俺を見つめながら、その口元ははにかんでるように笑ってた。  
俺はコクコクと首を縦に何回も振った。  
「約束します。もうしません。誓います。ごめんなさい。」  
両手と額を床に擦り付けて謝る俺の姿にクスッと笑ったマァムは、少し間を開けて呟いた。  
「…私も、これからは少しは分かる努力するから…。」  
赤くなってるマァムに俺はまたうっかりムラッときてしまったが、それ以上に  
進展の予感を感じさせる言葉に胸の鼓動が高鳴っていくのが分かった。  
 
 
 
俺は筋金入りのスケベだし、弱虫のクセに調子乗って自意識過剰になったりもする大馬鹿ヤローだ。  
そんな馬鹿の手綱を上手く操ってくれるのが、マァム。おめえなんだ。  
だからさ、これからもこんな俺を見捨てないでくれよな。  
 
「何か言った?」  
「いーや、なんにも。」  
俺は少しだけ間を開けて隣で寝るマァムの手に指を絡ませながら言った。  
「あ、やっぱ言った。」  
「なあに?」  
「愛してる。」  
「…馬鹿。」  
 
 
〜fin〜  
 

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