「つまり、お前の相談ごとというのは。」
呆れを交えた表情でラーハルトは溜め息さえつきながら目の前の『相談』をしに来た男を見やる。
「彼女と付き合ってそろそろ三年たつのにちっとも手を出せません。どうしたらいいですか?」
目の前の男-ヒュンケルは繰り返された己の問いを確認するかのように頷く。
ここでラーハルトはまた溜め息を一つ、つく。
そろそろこいつとの付き合いも長くなるがここまで奥手というか、バカというか。
そうだとは思わなかった・・
「・・何で、手を出さないんだ?」
問うラーハルトの声にはより一層の呆れが混じっていたが気付いているのかいないのか、
ヒュンケルは述べる。
「いや、そのだな。別に女が初めてというわけでは無いんだがな。
ただ彼女だけは。
マァムだけは汚してはいけないというか・・そんな気がしてどうしても手が出せないんだ。」
うっとりと彼女の事を思い浮かべるヒュンケルをラーハルトは心の底から軽蔑し、酒をぐびりと煽る。
こんなアホな相談、酒でも飲まないとやってられん!
中学○日記かコイツは。
見て無いからよくは知らんが。
「汚すもなにも、相手はただの人間だ。決して女神や天使じゃないんだぞ。」
ヒュンケルもまた一口酒を含み溜め息を一つ。
「わかってはいるさ。けれどどうしても・・」
本当にわかっているのか、わかっていないのか。
ヒュンケルの言葉にラーハルトは頭を抱える。
「・・まぁ手を出さないのならばそれでもいいがな。
ただしお前が手を出さなければ他のヤツが彼女を狙うだろうさ。あれは良い女だからな」
まぁ、オレの好みでは無いけどな。
ぽつりと付け加えた最後の一言は聞こえなかったのか『マァムは渡さん!』などと絡んだ
ヒュンケルをラーハルトが殴り倒したところで『相談会』はお開きとなった。
―ラーハルトのやつ、思いっきり殴りやがって。
痛む後頭部を擦りながらヒュンケルは保険室の扉の前に立ちすくむ。
『お前が手を出さなければ』
昨夜のラーハルトの言葉が頭のなかで繰り返される。
「・・・」
意を決して扉を叩く。
暫くして「どうぞ」と愛しい声。
「・・失礼します。」
未だ思い悩みながらもヒュンケルは保険室へと足を踏みいれた。
― 「はい。どうぞ」
「ありがとう・・」
マァムの入れてくれた紅茶を一口。
目の前で楽しげに話すマァムに視線を移す。
時は放課後。
生徒はもう殆んど残っていないだろう。場所は保険室。
ベッドもある。
あとは、自分の度胸だけ。
「・・ヒュンケル?」
いきなり頭を抱え考え込んだヒュンケルにマァムはどうしたのか、と問う。
直ぐ側で香るマァムの甘い香りにひどく、心を惑わされる。
『お前が手を出さなければ
他のヤツが彼女を狙うだろうさ』
気が付けばマァムの唇を奪っていた。
口付けていたのは多分本の少しの間だけだ。
けれども柔らかなその感触は消えない。
「ひ、ヒュンケル?」
ヒュンケルの突然の行為にマァムは顔を赤くする。
「マァム、好きだ。」
言ってそっとマァムを抱き締める。
いきなりの事にマァムは戸惑うが直ぐに微笑みを浮かべヒュンケルの背中に手を回しそっと抱きかえす。
「ええ。私も貴方の事が好きよ。」
言ってヒュンケルの胸板に頬をよせる。
「だから嬉しい。」
「え・・」
思わぬ言葉にヒュンケルは言葉を漏らす。
「だって、貴方はちっとも私に手を出してくれなかっだもの。」
すこし、不安に思っていたのよ?
少しだけ、悲しげに言う彼女にヒュンケルは心の底からすまないと思うと同時に
彼女を愛しく思う。
そう。あとは度胸だけ。
「ま、マァム。」
彼女を抱きしめる腕に微かに力がこもる。
「お前を、抱きたい。」
ヒュンケルの突然の要求にマァムの桜色の瞳が大きく見開かれるがそれはすぐに微笑みに代わる。
「ええ。私も、ヒュンケル、貴方に抱かれたい。」
―ベッドの上で、もう一度キスを交わす。
今度は深く長いキスだ。
互いに舌を絡めあいゆっくりと互いの思いを確認しあう。
唇が離れると今度はマァムの白い首筋にキスを落としてゆく。
手はマァムの衣服の中。豊かな乳房を覆い隠すブラジャーを外し上着を捲り上げる。
「なんだか恥かしいわ・・」
白く豊かなマァムの乳房を目にし思わず綺麗だ、と呟いたヒュンケルにマァムは恥かしそうに言う。
ヒュンケルの固く大きな手がマァムの柔らかな乳房を揉みしだく。
「ぁ・・ふぅ・・」
揉みしだく間にも桜の突起は固くしこり室内にはマァムの控えめな喘ぎが響き渡る。
初めて聞くマァムの喘ぎにもっと、もっとその声を聞きたいという欲求がヒュンケルの脳裏によぎる。
固くなった桃の先端に下を這わせ、手はスカートの中へ、ショーツの中へともぐりこむ。
「ふぁ・ぁぁ」
唇は先端を吸い上げ手はマァムの秘部を撫ぜまわす。
ヒュンケルの愛撫に喘ぎは激しくなり秘部は潤い始める。
「あふ・・・はぁっあぁ!」
マァムを、もっと堪能したい。
もっと、もっと、彼女を汚してしまいたい。
欲望は次から次へと湧いてくる。
スカートを脱がせショーツを抜き取る。
眼前には確かに潤う赤い花びら。
指で花びらを割り姿をあらわした真珠に舌を這わす。
「うは・・あぁっ」
ビクリ、背をしならせ更に喘ぎが激しくなる。
「マァム、早くお前と一つになりたい。」
「えぇ。私もよ。」
ヒュンケルの言葉にマァムは紅く染まる頬を更に染め上げ笑みを浮かべた。
ヒュンケルもまた笑みを浮かべキスをかわしながらマァムの脚を持ち上げ蜜の溢れる蕾へと
己の挿入してゆく。
「あぁっ!!」
快楽に、ヒュンケルと一つになれたことにマァムは涙を流す。
「・・辛くは、ないか?」
「いいえ。ようやく貴方と一つになれて嬉しいの・・」
柔らかな笑みを浮かべるマァムにヒュンケルも笑みを浮かべる。
「あぁ、オレも嬉しいよ。」
言って奥へと突き上げる。
「あ・・あぁっ、あ!」
奥へ突き上げるたびに二人の結合部からは濡れた音が響きマァムの喘ぎは激しくなる。
「マァム・・マァム・・マァム・・!!」
「あ・・ふ、ひゅ、ヒュン・・・ケル・・ふぁぁ!」
昇りつめて行く二人にはもう互い以外映らない。
互いの名を呼びながら二人は更に激しく腰を振る。
「あぁ・・ヒュン、け・・・わたし、も・・あぁ・・っ」
絶頂に達しマァムは大きく体を震わせヒュンケルを締め付ける。
「う・・マァム・・!!」
ドクリ、薄れてゆく意識の中暖かな精をマァムは感じていた。
― 「シーツ汚しちゃったわね。」
後で洗濯しなくっちゃ。
言ってマァムは悪戯っぽい笑みを浮かべ、ヒュンケルもつられ笑う。
「マァム、今度はオレの部屋か、お前の部屋で。」
「ええ。楽しみにしてる。」
「あぁ、オレも。」
放課後の保健室には二人の幸せそうな笑いが響いていた・・・。
後日談。
「まぁ、手を出せたことに関しては誉めてやっても良いんだがな。」
酒を飲み交わしながらの同僚の報告にラーハルトは苦い表情を浮かべる。
「なんだ。何か不満でもあるのか。」
そんなラーハルトの態度にヒュンケルは心外だとばかりな態度をとるもラーハルトの次の言葉で
それも崩れ去った。
「放課後だったからよかったものの、おまえらの声。つつぬけだったぞ。」